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PiLLEUR DE OEiL -ピヤー ドゥ ウイユ- 〜Eye-Land GAME〜 アイランド・ゲーム  作者: ちゃいあん。
-ピヤー ドゥ ウイユ- アイランド・ゲーム3 第三部 ⒈ 夜云鬼威
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⒈ 夜云鬼威(5) 恐怖の鬼ごっこ

「準備体操(たいそー)屈伸(くっしーん)!1、2、3、4――」


 昼休みが終わり、体育の授業が始まった。


 クラスの男子体育委員が(なん)とも(だる)そうに掛け声を送りながら、悠人はクラスの男子生徒と一緒に校庭の一角で準備体操を(おこな)っていた。


(さっきは絡らまれた一件もあるし、目魂(めだま)持ちのあの不良上級生たちに目を付けられた可能性がある。周囲に目魂主(プレイヤー)がいないこの状況(機会)を連中が逃す手は無い筈――、注意しないと………)


 キョロキョロと周囲を見渡す悠人。


 だが、その魔の手は意外なところから現れた。


 悠人の後ろで準備体操をしていた一人の男子生徒が、突如として悠人の首を掴み掛かる。


 ガッと首根っこを掴まれてしまい驚いた悠人は即座にその手を解き(払い)、スッと後ろを振り返る。


 当然のようにその男子生徒の様子は可笑しく、抜け殻のように生気の無い目をしたその男子生徒は、もう一度悠人に襲い掛かるように両手を伸ばし、彼に向かって飛び出した。


「こいつは一体、どうなってやがる」


 その男子生徒一人だけでない。


 気付けば周囲の男子生徒全員は(おろ)か――、体育の先生までもが死んだ目をして、奴らは一斉に襲い掛かった。


 一体、これはどうなっているのか?


 とにかく悠人は明らかに様子が可笑しいこの者達から逃げるように、その場から走り去った。


 恐怖の鬼ごっこの始まりである。


 ただ逃げ回るのでは仕方が無い。何処(どこ)か身を隠せそうな遮蔽物(しゃへいぶつ)は無いか。


 グラウンド周辺にある建物だと、ラインカーなどが仕舞(しま)われている体育倉庫ぐらいだろうか。


 中でやり過ごすにしても、鍵を持ってないのだからそれは不可能である。


 少し離れたところには野球部やサッカー部などが(つら)なる部室もあるが、こちらも同様に鍵を持っていない。


 ならばと彼は外靴のまま校舎内へと駆けて行き、何処(どこ)か良い隠れ場所が無いか、目を働かせる。


 図書室が目に入る。


 駄目だ。昼休みは終わり、閉館している。既に鍵は掛けられていた。


 近くに別館へと繋がる外廊下が目に入る。


 あれは食堂に続く道だ。


 だが食堂も昼休みが終わった今――、鍵が閉まっていることだろう。


 外廊下はもう一つ体育館・弓道場に繋がる通路もあるが、体育館ではまさに同じクラスの女子生徒組が体育の授業を受けている最中だ。


 そう言えば、華ちゃんの方は大丈夫なのだろうか。


 目魂主が自分だけ(頼れる仲間がいない)という状況は、今の彼女だってそうだ。


 気になるところだが、女子生徒だけで授業を受けているところに男の自分が入り込むのは色々と………それはそれはゴミを見るような目で(にら)まれ、SNSで変態野郎と拡散され、社会的に死ぬなんてことも……………


 今時(いまどき)のネット社会ならではの拡散騒動やら、何でもハラスメントに発展させられてしまう社会性やら、考え得る色々なことを恐れた結果――、悠人は外廊下方面には行かず二階へと進んだ。


 一年生の教室が並ぶ中、少し離れたところに美術室や調理室などが目に入る。


 それらの特別な教室は使用されているところもあれば、使用されていないと言ったところか。


 となると今の時間――、誰もいないクラスの教室の中に逃げ込み、内側から鍵を掛けてやり過ごすのが最も安全な手だと考えた悠人は誰もいない教室のドアに手を引っ掛けようとする。


 だが、(なん)となくは予想していたが、戸締まりがしっかりされていて入ることが(かな)わなかった。


 ならばと他の空いている教室のドアに手を掛けて行くも、一つとして空いている教室が無かった。


 一つぐらい戸締まりしていない教室があったって良いものだが、それもこれも布都部高校に務める用務員さんがこまめと言うか………、如何(いか)に常日頃から施錠確認を律儀に(おこな)っているか、仕事熱心であることが(うかが)える。そのこと事態は悪いことでは無い。


 そう――、決して悪いことでは無いのだが、あくまでもそれは学校関係者という立場で見た時の捉え方であり、人の眼球を奪いに襲い掛かってくる集団に追い掛け回されている今のこの状況において、その仕事ぶりは施錠されたドアに遭遇する度にフツフツと怒りが込み上げてしまうだけである。


「こんなに閉まっていることがあって、たまるかぁぁぁぁああああぁぁ――――ッ!」


 なんて、言葉を吐きながら確認すること数分――


 どうやらこの階にはロクに隠れられるような場所が無いと踏んだ悠人は、死んだ目をした集団に追い付かれる前に急いで三階へと進んだ。


 二年生の各教室が見え、その他に化学実験室や音楽室などが目に入る。


 二階と同様――、この時間に使われている教室もあれば、そうでない教室もあるといったところで………、下の階の教室が施錠の連続だったばかりだからどうだろうかと、望み薄ではあるが僅かな可能性に賭けて片っ端から教室のドアを確認しながら移動する悠人。


 だがしかし、どの教室のドアも一向に閉め忘れが無く、こうなったらひとまずは四階に進むしか………そう思っていた時――、悠人はふと廊下のとある窓ガラスに目を付ける。


「ひたすら上の階に逃げていても、到底活路なんか開きやしない。だったらよぉ………」


 その窓ガラスの鍵を開け、急いで横にスライドし開放。


「……こうするしかねぇだろぉぉおおおおおおおおぉぉぉぉ――――ッ!」


 死んだ目をした集団に捕まる前に、間一髪飛び降りて(のが)れる悠人。


 考え無しにこの窓から飛んだ訳ではない。


 この窓だからこその考えがそこにはあった。


 窓の下にあったもの、それは一階で見た外廊下――、その上に取り付けられた雨風を(しの)ぐ為の高い屋根、彼はそこに向かって飛び降りたのだ。


 慌てて飛び降りたものの、どうにか上手いこと着地を決め、無事に屋根の上に飛び移れた悠人は急いでその上を駆けて行った。


 奴らは彼の後を追うように次々となだれ込むように身を乗り出し、飛び降りようとする。


 だがそんなことをしてしまえば当然の如く、怪我が発生し…………


 飛び降りに失敗し、頭から地面に落下した者や近くの高木(こうぼく)に落下し、運良く枝が身体に引っ掛かって助かったと思ったら、どうにかそこから抜けようとして下手に身体を動かしてしまったばかりに転落事故した者――。


 少し頭を働かせればこんなことにならずに済んだ筈なのにまるで一切の意識が無いゾンビのように、奴らは考え無しに恐怖を(いだ)いている様子も無く、勢いのままに飛び降りて行く。


 このままではクラスの男子生徒が全員死ぬことだって…………


 何一つ悲鳴も無く、ドサッ、ドサドサッと人が落ちる音だけが後ろから聞こえ、(なん)とも気味の悪いゾッとする物音に反応してしまい、思わず後ろを振り返る悠人。


「……嘘、だろ……………………」


 (むご)たらしい光景を彼は目にし、瞬間………気を取られてしまい、思わず足が止まる。


 だが、その一瞬の気の迷いが自分()の危機に直結することになる。


「しまっ…………」


 全員が全員――、外廊下に取り付けられた高屋根の上に乗っかることが出来なかった………、なんて別の意味でそんな奇跡が起きる訳が無く、上手く着地出来た者から順に彼の後を追って来ていた連中に掴まれ、彼はその言葉を最後に追って来た大群に飲み込まれるのだった。

実は、用務員も何者かの術中(コントロール下)にあったり無かったり………

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