表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/158

⒉ 開眼(3) ゲームスタート

「おい、どうなったんだよ」


 走行する未予に腕を引っ張られながら、彼は【未来視(ビジョン)】の内容を知りたがっていた。


「付いてくれば分かることよ」


 そう言うと、未予が【未来視(ビジョン)】で視た、例の防波堤(ぼうはてい)周辺へと二人して足を運ぶ。


 予知通り、そこには金髪と茶髪の二人の少女が存在していた。


 だが、始めに視た二人の闘っている姿は見られず、何か話している様子だった。


「あのどっちかが未予の言う、目魂主(プレイヤー)なのか?」


 何も知らない悠人は未予に聞く。


「どっちもよ」


「どっちも?いやいや、複数なんて聞いてないぞ。本当にこの二人から目を取ろうって言うのか?」


「生き延びるにはやるしかないわ。そういうことだから手伝ってくれるわね」


「何だって、俺がこんなことに………」


 出来ることなら、この状況から一刻も早く逃げ出したいのが彼の本心だった。


 それに今は、まだ自分たちが同じ目魂主(ゲームプレイヤー)であることを相手方に気付かれていない為、その思いが一層強くなるばかりだ。


 だがその思いもすぐに打ち砕かれることになる。


 二人の少女は腕に付けられたEPOCH(エポック)をイジっていて、すぐに悠人と未予が《目魂主(プレイヤー)》であることがバレてしまったのである。


「あんたら、目魂主(プレイヤー)だろう。いきなりだが、お二人の目をこちらに渡して貰えないか?」


 そう言ってきたのは、金髪少女の方だった。


「あら、何を馬鹿なことを言っているのかしら?答えは言うまでも無いわ」


 即座に未予は反抗の意志を見せる。


「ははっ、そりゃあそうだ。ここで、『はい、良いですよ』、なんて言う馬鹿がいた方が可笑しな話だ。

 ……けどあんた、言い方にはちと気を付けるべきじゃねぇのか?」


「機嫌を(そこ)ねてしまったかしら?ごめんなさいね。

 その上で貴女には、更に怒らせる()ような()真似()する()ようで悪いけれど、なにぶん、人の名前を覚えるのが苦手でね。

 (まこと)に勝手ではあるけれど、貴女のことはその髪色から取って、シンプルに『金髪』と呼ばせて頂いても宜しいかしら?」


「テ……テメェ、喧嘩売ってんのか?良いか、俺には『百目鬼瀬良(どうめきせら)』ってちゃんとした名前があるんだ。ざけた命名言ってんじゃねぇぞ、ゴラァ!」


「これはこれは、どうもご親切に。ですがそもそも他人の名前を覚えようとしたところで、そんなの(なん)の役に立つと言うのです?」


「おい、未予。(なん)で相手を挑発させるような真似を………」


「そうかい。どうやらあんたには口でどうこう言うより、実力行使が一番手っ取り早いようだな」


 そう言って、瀬良は未予の眼球を奪いに飛び掛かった。


 奴の手が彼女の右目を(とら)えようとする瞬間――、未予は迫り来るその手を右手で掴んでは瀬良の脹脛(ふくらはぎ)(かかと)で打ち、残った左手で奴の(あご)を押し当てて勢いよく瀬良の身体を投げ倒した。


 この時――、瀬良の瞳が(わず)かに発光する。


「すっげぇ、俺との手合いの時は本気出してなかったんじゃないのか」


 だが近くで見ていた筈の悠人はその異変に気付かず、それ以上に未予の突拍子もない対抗に目を奪われ、驚きの声を上げるばかりだ。


「がはっ………」


 未予の大外刈(おおそとが)りのような技が決まると、瀬良の身体は受け身を取る暇も無く、アスファルトで舗装(ほそう)された地面に叩き付けられてしまった。


 腰を強打し、脹脛(ふくらはぎ)を痛めた瀬良は思うように立ち上がることさえ出来ず、かといってかすり傷ならともかくあの怪我では例の治癒力を持ってしてもその回復には時間が掛かりそうであった。


 それでもどうにか上半身だけ立ち上がると、彼女は意味深な言葉を口にする。


「な……何故(なぜ)()()()()()()………」


 彼にはその言葉の意味が分からなかった。


 そう、()()がその意味を話すまでは。


「あははっ!突然、()()()()()()()()()()()()()びっくりしたことだろ?」


「未予……なのか?」


 彼女の突然の豹変(ひょうへん)っぷりに頭を(かし)げる悠人。


「私は確かに、金髪を投げていた筈………」


「面白いだろ、俺の持つ目力(のうりょく)は。目にした相手と自分の精神を互いの肉体から入れ替えたり、集団相手だろうが視界に入った連中の精神を無差別に移し替えてしまう――、【精神廻替(エクスチェンジ)】と言ったところか?」


「……道理でこんな不可解なことが――、私に投げられる寸前に目魂(めだま)を開眼………そうしてすぐに私の姿を目にし中身(立場)を入れ替えたと…………」


「実に滑稽だったぜ。ああもあっさりと引っ掛かっちまうんだからよ。ま、それだけ発動機会(タイミング)が完璧過ぎて手も足も――、目も出なかったってか?」


 未予の身体に乗り移った相手は、出し抜いたとばかりに(すこぶる上機嫌に)自らの能力を()かし出しては、完全に調子に乗った様子で皮肉めいた発言を漏らす。


 これを聞いた瀬良―〈未予の精神〉はその話が本当であることを前提(ぜんてい)として、思ったことを口にした。


「でもそれなら、今度はこっちがその力を利用しない手は無い筈………」


「バーカ。そんなことも考えず、能力をバラした間抜けだと思ったのか?

 残念ながら、この力は入れ替わりで私の身体に憑いたからといって、目力のコントロール権(支配権)は一貫してこの私にある。だから、その力を利用するなんざハナッから出来ねぇんだよ」


「……(なん)とも、金髪に都合の良い能力ね」


(なん)なら更に都合の良いことを言うならば、この目魂(めだま)には()()()()()()()()()()の力も兼ね備えている。

 移動した先の身体で目魂(めだま)が二つ奪われたとする。本当なら、相手側の身体に憑いていた私の精神が死んじまうってのが道理だが――、

 まるで所有者を守るかのように、目魂(めだま)を奪われそうになるその一瞬……、()()()()()()()()()()()()()()()()、入れ替わりに相手方の精神が御陀仏(おだぶつ)って訳だ。

 どうせなら、今ここで試してみようか?」


 なんて冗談のように言いながら、本当に未予の身体から両目を抉りに掛かるように勢いよく両手を突っ込もうとしたその瞬間――、颯爽(さっそう)とその()()めに掛かった。


「やっぱお前は未予じゃなかったんだな。良いからこんなことは()めるんだ」


「なっ!どうして悠人(てめぇ)が俺を()めに………ッ、あいつは何をやっているんだ!」


 そう言って、彼女―瀬良の精神改(せいしんあらた)め〈()()()()()〉は、茶髪の少女を視界に(とら)えようと周囲を見回すが、何故(なぜ)かその少女の姿はなかった。


「あの野郎、どっか行きやがったな。クソっ、その手を離せこの野郎!」


「こんな争いに巻き込まれるのは正直に言って真っ平御免なんだが、生憎(あいにく)と俺はその身体の持ち主さんの手助けをすることになっていてね」


 そう言うと悠人は、未予の前頭部に勢いよく頭突(ずつ)きした。


「イッてぇな、このクソが!どうやら先に、てめぇから始末されたいようだな」


 頭突きの反動で蹌踉(よろ)めく〈未予もどき〉であったが、そう言って真っ向から飛び掛かってきた。


 彼は驚異の動体視力でその動きを捉えると、身体を()らして避けてみせた。


「チッ、避けてんじゃねぇよ」


「いやいや、命を奪われるって時に棒立ちしている方が可笑(おか)しいだろ」


「御託はいいからよぉ、さっさとこの俺に大人しく奪われてりゃあ良いんだよッ!

 仮にも俺本来の身体から両目を取り除けば元の肉体に戻れなくなるからと、直前で魂を入れ替わざる得なくなり、()(よう)によっては未予(この女)を救うことが出来るのでは……?なんて残念な考えは持たない方が良いぜ。

 そうなったらそうなったで、俺の魂は自身が死んだ直前で最後に宿っていた身体に()()()()ような仕様になっている。

 ッても、口の利き方がなっちゃあいねぇ、生意気女の筋肉の一つも()ぇヒョロヒョロボディになんぞと成り代わりたくは()ぇけどな。

 ま……、さっきから一向に手を出してこないてめぇを見てっと、人の眼を奪う度胸があるようには思えねぇけど」


 「―――ッ!」


 まさしく最後の一言は、ブスリッと彼の核心を突いていた。


 命懸けで〈未予もどき〉――、()()は執着するように目を狙い続けるのに対し、悠人は眼前に迫り来る手を何度も避けては()なし続けるだけで、ただの一度として反撃に出る素振りが無いのである。


(たとえこの闘争(ゲーム)を収める方法が目を奪うことしか、他に手が無いのだとしても、知り合って間も無かろうと知った相手の――、未予の身体で襲い掛かって来る者に対して俺にはとても………)


 などと言うのは、単なる建前なのかもしれない。


 だが、それ以前に人の目を奪う残虐(ざんぎゃく)非道な行いをしたくは無いのである。


 それが人として、同族として本来思うべきことだと――。


 しかし、この場にいる二人の少女は違った。


 互いの命を賭けて闘い、そして目を奪ったところであのいかれたゲームのルールに従った者が、本当に生きて明日を迎えることが出来るかどうか分からないというのに…………。


 いや、未予はそれを知っているのかもしれない。


 目魂主(プレイヤー)の目を奪った先に、訪れる未来を―――


「何をそこまでして………」


 〈未予もどき〉の迫り来る猛攻(もうこう)を避けながら、()なしながらそうつぶやく悠人。


 その時だった。


「ぃぁあああああああああああぁぁぁぁ――――ッ!」


 突然、悲鳴を上げた未予………〈()()()()()〉に反応した両者に戦慄(せんりつ)が走る。


 左眼が抜かれ(あら)わになった眼窩(がんか)から多量の血を流すその姿は、あまりに痛々しいものだった。


「きゃはははは、楽しぃ~♡」


 そこにはいなくなった筈の茶髪の少女が――、血まみれの眼球を手にしながら狂喜(きょうき)する姿があった。

前話のあとがきにて出題されたクイズの答えはこちら!


A.泥眼(でいがん)  ←恐らく誰も出てこなかったであろう答えか、も?


泥眼とは、能面の一つで目に金泥を塗った女面のこと。能では金色は人間を超越した存在であることを示しており、目魂主(めだまぬし)が女性ばかりなところは、まさにその部分が一番大きかったりしますね。



[人物紹介]

百目鬼 瀬良 (どうめき せら)


好きなこと:喧嘩   嫌いなこと:水泳

好きな食べ物:豚しゃぶサラダ  嫌いな食べ物:チョコレート


一人称:『俺』  

男兄弟に囲まれて育った一人娘という環境からきているのか、女の子らしからぬ非常に男勝りな性格をしており、兄弟の影響からか気付けば自然と『俺』で話すようになっていた。

(なお、両親は少しは女の子らしく改善させようと健闘したらしいが、頑なに反発されてしまい、そのまま育ってしまったのだとか)


年齢:ヒ・ミ・ツ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ