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鬼の一族

異変が起きたのは20日前から・・・・




この、今や廃れた鬼灯町は周りを山で囲まれた町

かつては宿あり、温泉あり、山でとれる新鮮で美味しい果物・山菜や動物の肉を料理で出す

秘境の町とも呼ばれていた

ただし、その町に住む住民は皆鬼族であった


また鬼族は少数の種族でありながら、ずば抜けた力のステータスと鬼族だけが持つ

特殊スキル、『鬼化』を持っており、世界から恐れられていた


『鬼化』はステータスを1日だけ100倍まで高める特殊スキル

しかも使用するのにゴールドもかからない

ただし副作用もある

まず発動中は意識がない。そのため仲間、家族関係なく攻撃し暴れる

そして発動後は鬼族の特徴である角が砕ける

角は鬼族にとって重要な部位であり、角がなくなったものはステータスが異常に低下し

スキルすら発動できなくなる

このためこのスキルを使用するものはいなかった

だがかつて、たった一人の鬼が妻を失った悲しみから発動した『鬼化』は世界を恐怖させた

その鬼は王国周辺で暴れまわり、対抗した王国軍300人の死者を出し一大ニュースとなったらしい



5年前事件は起きた

鬼族の女子供の失踪が相次いだのだ

原因不明の神隠しと呼ばれていたが、実際は宿に泊まっていた王国の兵が誘拐していた

誘拐の目的は角だった

鬼族の角は煎じて飲むことでステータスを一時的に上昇させる秘薬として高値で取引されていた

誘拐された鬼たちは奴隷のように扱われ、角を折られたことで衰弱していた


それに気づいたのは事件が起きてからしばらくして、誘拐現場を目撃し誘拐犯を拷問して

事件の真相が明るみになった

これを鬼族は王国へ訴えに行った

しかし王国は取り合わなかった

理由は2つ

王国の兵士がそのような不祥事を起こしたことを国民や他国に知られるわけにはいかなかったため

もう一つは秘薬の売買を上層部が絡んでいたためだ


しかし鬼族をないがしろにするわけにはいかなかった

そう『鬼化』を王国は恐れたのだ


そこで王国は非情な作戦に出た

まず角を折った鬼族を皆殺しにし事件をなかったことにした

そして無垢な兵士を拷問した罪で鬼族を皆殺しにすべく王国軍を動かしたのだ

それに気づいたときはすでに手遅れだった

王国軍は山を取り囲み全方位から攻め入られていた

いきなりのことで、ほとんどの鬼がなすすべなく殺された


だが一部の鬼は武器をとり戦ったが、あまりの戦力差。どんどん殺されていく

なにせ王国の兵が3000人も投入されていた

その中で村の長である私の父と母は最終手段に出た

『鬼化』を発動し王国兵を・・・いや町の住民もすべてを攻撃し、殺しつくした

最終的に丸1日暴れまわり力尽きて父と母は殺され

王国兵総死者2000人以上だす大惨事となった


5年前の鬼族の反乱である

王国が鬼族の町を攻めたにもかかわらず鬼族のクーデータということで片づけた

そして王国の発表により鬼族は滅びたと正式発表された


実際には調べてはいない

なぜなら鬼灯村は・・・・・・・・

山にあふれた王国兵の死体がゾンビ化したことで誰も近づけない廃墟となっていた



生き残りはいた、私を含めた8人

私以外は子供だけだ

王国兵に襲われることにいち早く気付いた母が近所の子供を集め協会の隠し部屋にかくまっていた


そして現在この廃墟で暮らしている

町へのゾンビの侵入はゾンビが嫌う彼岸花を町中に植えることで対応した

たまに入ってくるゾンビを金棒で撃退するだけ

ゾンビのせいで脱出は不可能、山を越えている間に集団に襲われて死ぬのがおちだ

どっちみち行く当てなどない、外の世界では私たちは反乱者であり、頭にはお宝があるのだ

周りのすべてが敵である

怨みはある・・・がどうしようもない

子供たちをほおって仇討に行くわけにもいかない

そのため町で細々と暮らしていた





最初は気のせいかと思った

だがその異変は徐々に確信へと変わっていく

「ゾンビが少ない・・・」


日に日にゾンビが減っている

まさか王国兵がゾンビ討伐しているのではないか

だがペースが速すぎる

異変に気付いてから10日ではゾンビがほとんど見当たらない

まさか私たちが生き残っていることに気づかれたのか

確かにごくごくまれに冒険者が山の幻の黄色い果実を探しに山へ入ってくることはあった

その黄色い果実は食べることで謎の特殊スキルを手に入れられると噂の果物

そのうえ果樹の周りにはカッターモンキーやカッターゴリラがうろついている

並みの冒険者が4人集まっても歯が立たないため、手に入れるのはとても難しい

まぁ手に入れてもスキル自体が発動できない謎スキルのため、物好き以外探しには来ない

しかも5年前の事件以来山に入るものはいないはず

でも探しに来た冒険者がたまたま山を越えてこの町にたどり着き、私たちが生きていることに気づいて

王国に報告した?

いやいや考えすぎだ

そんなはずない

でもゾンビが減っているのも事実

移動すべきだろうか?

どこへ?

判断しかねていた


そして現在

現れたのは約30人の盗賊

警戒はしていた

しかし突如現れた盗賊にできることは一緒にいたヤスケとニナを連れて

協会に戻り立てこもるしかなかった


しかもヤスケは途中ではぐれてしまう

協会の隠し部屋に子供たちをかくまい、自分は協会の入り口で立ちふさがる

そのあと盗賊たちは集団で協会の入口へ集まった


どうやらこいつらは山向こうの盗賊で、いち早くゾンビが減ったことに気づいたようだ

あわよくば鬼族の生き残りがいない確認しに来たようだ

そして見つかった

結局ゾンビが減った原因は不明だが

今はそれどころではない

やはり移動しておくべきだった、後悔が頭をよぎる


「ここから先には誰一人入れない」


盗賊の男達はあざ笑い、先頭の頭領が手を挙げると

「エア・スマッシュ」


私は10メートル近く吹き飛ばされた


こっちはゴールドがないためスキルは使えない

子供たちは戦闘力などないに等しい

さすがに30人相手に1人では私のステータスでは太刀打ちできない

できて3~4人道連れにできるかどうかぐらい

勝てない


だが逃げるわけにもいかない

ここを通したら遅かれ早かれ子供たちが見つかってしまう

かといって『鬼化』を使えばこいつらは倒せるかもしれないが、意識のとんだ私が

子供たちもろとも一帯を吹き飛ばす可能性が高い

なんで、私たちが何をしたというの?

神様、なぜ私たちにこんな仕打ちを

いつもいつもいつも・・・運が悪い


もうこれしかできることがなかった

「お願いします、私は、私は好きにしてください。角を売るなり、奴隷にするなり、殺すなり好きにしてください。その代わり子供たちには手を出さないで、お願いします」

私は額から流れる血もぬぐわずに土下座してお願いする


「あはははははははあはははは」

「んな話聞くわけねーだろ、目の前にお宝があって取らない盗賊がいるか?

言われなくても好きにさせてもらうさ、お前も、仲間の子供もな」

「なんてったって角1本1000万ゴールド、2本角があるから1人当たり2000万ゴールド。5人いれば1億ゴールドで、さらに奴隷として売れば1人2000万ゴールド、5人で1億ゴールド。全部で2億ゴールドだぜ」

「まだ何人いるかわかんねーだろ、あははははは」

「もちろん鬼族は国中の犯罪者だからな奴隷にして売っても何の問題もない」

「安心しろ、貧乳は興味ないが、ちゃーんと遊んでからうってやるからよ

アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャッ」

頭領は笑いながら私の頭を踏み押し付ける


涙が止まらない

くそっ、ちくしょう、くそ野郎が、ゲスがっ

涙が、鼻水が、あまりの悔しさにあふれ出てくる

それをあざ笑う盗賊たち


覚えていろ、絶対に許さない、殺してやる

復讐してやる、今は殺されないために抵抗しないが

角が折られても、ステータスが下がっても、奴隷にされても

必ず強くなって、人族を皆殺しにしてやる

私は貧乳じゃない、成長途中なんだ!

この怒り、怨み絶対に忘れない



「やめろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」


誰?

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