表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サヨナラの向こう側  作者: こころ龍之介
5/16

第五話 ホワイト・モカのグランデを二人で

台所では、機嫌良く芽久美が厚焼き卵を焼いていた。

卵の焼ける匂いが食をそそる。

芽久美が優斗に気づき、

「あっ、おはよう。優斗」

「うん、おはよう」

優斗は昨夜の事が照れ臭いのか、ちょっと素っ気ない。

「とりあえず、顔洗ってきたら、その間にお味噌汁(あった)めておくし」

芽久美はまだ眠気眼の優斗の背中を軽く叩き、洗面所に送り出した。


優斗が洗顔を済ませ台所に顔を出すと、芽久美が隣の居間へ行く様に促す。

座卓の上に純然たる和朝食が並べられていた。

厚焼き卵を始め、焼き鮭、小松菜のお浸し、小田原から取り寄せてる蒲鉾、どれもシンプルだが芽久美の愛情がいっぱい籠っている。

優斗は思わず漏らす。

「芽久美、お前凄いな。俺、感動したわ」

芽久美は照れ、

「それは食べてから言うセリフでしょ?」

座った優斗の目の前に、ご飯と味噌汁の碗を置く。

炊きたての白米がツヤツヤ輝き、味噌の香りが食をそそった。

芽久美も優斗の向かいに座り、自身の碗を置いて、

『いただきます』

二人同時に手を合わせた。


優斗は味噌汁の碗を啜り、

「んまいなぁ。これ(しじみ)か?」

芽久美は頷き、

「パパ、どうせ二日酔いで帰って来るからと思って、蜆にしたの」

優斗は納得したのか、

「大将、喜びはんで。ん?」

「優斗、どうしたの?砂残ってた?」

芽久美の問い掛けに、優斗は首を横に振り、

「そーいや、大将昨晩帰って()ーへんかったやなと思てん」

「多分、“銀猫”の美幸ママん処でもお泊まりしてるんじゃない?昨日、気合い入ったスーツ着て行ったから」

芽久美は興味無さげだ。

優斗は厚焼き卵を頬張り、米を一口食べ、

「んまっ。芽久美、腕上げたなぁ。これやったら毎日食べたいわ」

「そう?毎日食べさせてあげてもいいよ?優斗だったら」

芽久美は嬉しそうに優斗のほっぺたに着いた米粒を取ると、笑って食べてしまった。

優斗は照れる。

芽久美が諭す様に、

「優斗、毎日食べたいとか簡単に言っちゃダメ。早とちりする子だったら、プロポーズされたと思うんだから」

「ふーん、そんなもんなんや。俺は普通に美味いから、毎日食べたいって言うてんけどな。気ぃつけよ」

その言葉に芽久美は拗ね、

「アタシにだけは、気をつけなくていいんだからね」

ぷぅっと膨れる。

優斗はまぁまぁとなだめるが、直ぐ正気に戻り、

「あんま、ゆっくりもしてられへん。芽久美も築地行くやろ?早めに終わらせて、帰りにスタバのドライブスルーでコーヒー(こう)って、公園で飲もうや」

芽久美がボソりと、

「ホワイト・モカ・・・」

「ん?」

優斗が聞き返すと、

「アタシ、ホワイト・モカのグランデがいい。そして、優斗も一緒の飲むの」

「へっ?グランデって、いっちゃんデカいヤツやんな。俺、飲めるかな・・・」

芽久美は照れながら、

「飲めるよ。買うの1つだし・・・」

優斗は芽久美以上に照れ、

「それって、1個のコーヒーを二人で分けて飲むって・・・」

芽久美はコクンと頷いた。

こんな時の芽久美の表情は、凄く可愛い。

《アカン、惚れてしまいそうや・・・》

優斗は陥落寸前だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ