表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サヨナラの向こう側  作者: こころ龍之介
10/16

第十話 好きは好きゃねんけど・・・

夕暮れのちらほら雪が降り始めたJR仙台駅一階のロータリーに、真っ赤なトヨタ・アクアが入って来る。

鮎美の運転するアクアだ。

牛タン通りの近くに停車すると、助手席からショートカットの女性が降りる。

薄いブルーのSamantha Tiaraのバッグを袈裟懸けにし、右手には石巻と書かれた紙袋を持っていた。

中身は干物だ。

おそらく、家族へのお土産だろうか。

「綾ーっ、ここで良いの?家までじゃなくて?」

ステアリングを握って鮎美が問い掛ける。

綾はペコリと頭を下げ、

「ええ。ここで大丈夫です。帰りに、そこのパルコのタワ・レコ寄って、“雛もも”ちゃんのセカンド・アルバム買って帰ろうかと・・・」

鮎美は納得したのか、

「“Fairlytale II”ね。ウチも聞きたいから、又貸してね」

「いいですよ。鮎美サンには特別に“無料(タダ)”で貸してあげます。くすっ」

にこやかに微笑み、別れを告げた。

「じゃぁ、明日、病院で」

鮎美のアクアは静かにロータリーから出ていく。

鮎美を見送った綾は、少し寂しそうに、

「仙台駅来るの久しぶりだな・・・」

ポツリと呟いた。

何か物思いに耽っている様子である。

「売り切れて無かったらいいのにな。“雛もも”ちゃん・・・」

足をパルコに向け歩きだした。


その数時間前、東京駅の東北・北海道新幹線のホームにはキャリーバックを引っ張る一組のカップルの姿が在った。

優斗と芽久美である。

平日ということもあり、ホームはそんなに混んでもいない。

優斗は芽久美からもらった腕時計をチラリと見て、

「お腹すいたなぁ。発車迄時間在るから、弁当買ってきてーや、芽久美。車内で食べよ」

芽久美は鞄見ててと言い、売店に向かって走り出す。

心なしか後ろ姿はウキウキしてる様に見えた。

《何か楽しそうやなぁ・・・》

優斗は優しく芽久美を見つめるが、

《でも、ホンマに俺でエエんかな?》

流されていく自分に、まだ気持ちが整理出来ずにいた。

《好きは好きゃねんけどなぁ・・・》



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ