趣味の終わり。旅の始まり。
私は趣味をこよなく愛する。
なにせ長い時間生きているのだ。
…楽しみはこの命に無くてはならないものだ。
人の子がスポーツをするのと同じように、
私もスポーツ感覚でやっていることがある。
『殺し合い《ゲーム》』だ。
強き者をねじ伏せ、殺し合い、
首を絶ち切り、その血を啜る。
ああ…。これほど素晴らしい趣味は無い。
だから今日も私は戦うのだ。
己の渇きを癒すために。
そう考えたときには『そいつ』が居た。
「さあ、始めようか!
『また』、私の渇きを癒してくれ!!!」
1年ぶりの好敵手。
1年ぶりの男。
ああ、この荒ぶり昂ぶる気持ちが、喜びなのだろう!
ワクワクすると言うのはこの事だ!!!
さあ、楽しませてくれ!
3つ前の年は肩を斬られた。
2つ前の年は左手を飛ばされた。
そして去年は翼をもがれた。
ああ、次は私のどこを斬ろうというのだ!?
この首か!?この足か!?この心臓か!?
それとも…それとも!我が魂かぁあ!!?
もう傷はとっくに治っている。
もう雑魚ばかりの相手でこの1年はうんざりしていたのだ。
さあ、私を楽しませろ!!!
だが私は狂気の爪を振り下ろすのを止めた。
『あいつ』が勝手に倒れたのだ。
思わずその男を抱き起すと、青ざめた顔と目が合った。
よく見ると、身体中は傷だらけで、
どうやってここに来たのか解らないぐらい、そいつはボロボロだった。
直感でこいつの命が長くないのを悟った。
「グラスファール…」
男は私の名を呼ぶ。
「お前にか、託せない。
生涯の宿敵であるお前にしか…。
我が娘を…ハルを……頼む…」
「…」
「頼む…彼女を…守ってくれ…」
男は…我が友は私の返事も待たず息絶えた。
私はおのずと立ち上がる。
それに合わせて、メイドが一人傍に来る。
「お供しますよ♪」
私は頷くと、
友を抱えたまま、居城である城をあとにした。