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5 奇襲

時間を空けてしまい申し訳ありません。


今回の文章、どう頑張っても不自然さが残ってしまい四苦八苦しておりました(;'∀')

まだまだ不自然さが消えませんが、一応形になったので投稿しました。


皆さまの貴重なご意見、どうかお聞かせください。


 廃寺の荒れ模様は、思っていたよりは酷くない。


 月日を経て朽ちたというよりは、破棄された砦のようである。門には小さな穴が空き、あちこちに矢が刺さっている。

 ゴーレム達が反応しないのだから、中に危険はないのだろう。子供になった自分にとって、この門は試しの門のようなものだろう。


 力を込めて寺の門を蹴破ったつもりだった。つもりだったが、門は滑るように開いたのだった。転がり入ったその境内も、思っていた程ではない。


 手のひらに感じた石畳は、雑草や苔の感触はなくまるで磨き上げられたかのように。木陰に佇むお地蔵さんは汚れてはいるが、緑色に浸蝕されているわけではない。涎をたらしそうなその顔を判じることが出来る。彼ら(もしくは彼女ら??)は御本尊「熊鍋」を向いている。は、汚れのない赤い涎掛けがよく似合う。


 ご本尊と地蔵の間を抜けて石畳を進むと、後ろの壁と一体になったお堂がある。中に入ると気がつく。何もない。本尊の仏像でさえない。これはもしや、熊鍋本尊説は本当だったのだろうか。


「なぁ、将門。この熊って、お前が倒したの。」


「おぉおぉ。よくぞ聞いて下さった。心躍らす戦記物。琵琶の調べに乗せて唄わせて頂こう。寺ぞなにゆえ、琵琶無きかなぁ。」


 娘が野良で昼寝して、猟師が槍を突んだ、猟師は熊をとるものだ~っ♪


 鼻歌混じりに家捜し始めた将門は、今まで見た中でも最速の動きだ。助さんも、何だか楽しげに手伝い始める。

 口ずさむその唄のどこに心躍らす所があるのかは全く分からない僕には、古めかしい人の感性は理解できない。できないが、この空気は真面目に探さないと顰蹙を買いかねないような熱気を帯び始めていた。


 探すところもほとんどない寺の中を、隅々まで調べた。魔王討伐に向かう勇ましい者と見まがうほどに。棚の中……棚がない。本棚も、花瓶も、樽もない。小さな小銭(コイン)も見逃さないほどに探し回ったのだ。それなのに捜し物が見つからない。


 もちろん、当然、疑いようもなく、一応補足するが、金目のものをついでに探したなんてことはない。戦略物資の補給任務中に余計なことをすると反逆が起きかねない。



 そして、何もない寺で物資の調達をするのは|ミッションインポッシブル《Sランクの依頼》だった。隅から隅まで探したがついぞ見つからなかった落ち込むゴーレム達。将門や助さん、子鬼達は思い思いの姿勢でその気持ちを表しているかのようだった。そこまでは付き合いきれない俺は石畳に座り込んでいた。


 そうして小男を待つ俺には、一つの悩みがあった。”ご本尊を食うべきか、食わざるべきか”である。

 毒の可能性。先に食べてしまうという非礼による男への第一印象。冷めるという料理への冒涜。理性と食欲が入り乱れたのだった。


 理性はすぐに白旗を揚げそうになるが、踏みとどまる。後ろのお地蔵さんの目線のおかげだ。お前だけズルいだろう……という欲に塗れた視線ではあったが。これはなんと言ったか。そう、主観的な相対性理論とでも言うのだろうか、あの鼠男を待つ一刻一分が尋常ではないほどに引き延ばされているように感じられる。


 それにしても猿顔のあの男が来ない。寺の中を物色していた時間は短くは無かったはずだが……。そんな独白がフラグを建てたのかは分からないが、現代アートのようになっていたゴ-レム達が反応を示した。


「もーし。もーし。旦那ぁ、少し手伝ってくだせぇ。」


 待ってた。一言で空気が塗り替わった。そしてなにより、これで鍋を食える。


 相変わらず顔を隠している彼は、水瓶を手に、ふらふらと歩いてくる。そんな彼が、先ほどとは違い、かわいらしく思えてくる。


「あなあやし。飛猿の背につけたはずの、斥候達がおりませぬな。兄者の陰に隠れ、一人再召喚して下され。もしや。」


 将門は立ち直ったようだ。のっそりとした歩みではあったが、男の元へと向かおうとする。さて、再召喚のやり方はいつもの通りに、砂をこう持って、スッと。


 そして石畳の中程に鬼のゴーレムが出てきた。確かにこいつは、斥侯やってた鬼の中の一人だ。


「一門、ここに。」

 将門と見分けのつかない、小さな鬼がキーキーとした声で名乗る。


「旦那、いるんならせめて返事をくだせぇ。手伝いも欲しいっすけど。」


 鼻にかかった男の声に、対応するように将門は手を広げた。未だに諦めず探索している小鬼達が飛び込むと。再び元の大男に戻っていった。


「今、行く。」

 将門は滑らかな寺の門をあけ、男の元へと駆け寄った。



「一門、今までくっついていたあの男について報告してくれる。」


「はっ。私共が”憑”いていた男には、仲間の元に。数は二十程。場所は廃寺を真下に見下ろす位置にある洞窟。中は大きく分けて3つの部屋があり、弾正と呼ばれる者に何やら報告していたようでした。その後殴られ気を失い、現在は牢の中に。以上。」


「えっ。気を失って、牢に入っているって……、」

意味が分からない。


「じゃあ、今あそこにいるのは。」

「あの無礼な猿とは、別者ですな。」


「まさk。」


 将門を呼び止めようとした声は、腹の底に響く鈍いおとにかき消された。


 子供がスッポリ入れるほどの水壺は、偽捨猿とともに弾け飛ぶ。胸に迫る音は、思ったよりも小さい。しかしその爆風は、土人形を原料に戻すには十分だったようだ。髪を吹き上げるほどしかない風が、砂を目に運ぶ。


 ”これは、目に土が入ったからだ。……まだお前の唄を聞いていないじゃないか、馬鹿者が……”などとは言う気にはならない。

 いや、ねえ。ゴーレムだから壊れても治るし。しばらく償還できない程度だから、そこまでショックはうけないっすよ。


「自慢の護衛もお終いだねぇ。なぁ、もう一人いただろう。こっちに来ないかい。どんな生まれでも、大和に捨てられた者でも受け入れるよ。その子供を渡してくれたらねぇ。」 


 女の声がする。ヒロインだろうか、否。おばさんだ。全身、柿色一色の着物は大阪のおばちゃんにも負けないほどの派手さだ。だが耳にこびり付くような言葉に気が付いた事がある。

 将門がいないと、俺の護衛は実質的に助さんだけだ。子鬼達では檜の棒をもった子供にも勝てないだろう。


「よぉ、童よ。あんたにとっても悪い話じゃないんだ。暫くは国主のように暮らせるんだぉよ。」

「姉様。鬼が参ってしまえば。」

「そうだったぁねぇ。さぁさ、童。とくとく出てまいれ。殺されてしまうぞよ。」


 まさかのピンチに口上を返さない俺たち。それを弱気とみた柿色の女は、勢いに乗って言葉をさらに重ねる。副官のような男との会話には劇場型の詐欺という言葉が頭に浮かぶ。芝居の見物料は三文で十分だ。


「あの柿色のおなごこそが、弾正と呼ばれし者にございます。」

 一門が肩に上り耳打ちをした。


「姉様。鬼の真壁が野伏りを率い参ったとのこと。」

「おい、子供。出てまいるなら今しかなぁいぞ。……仕方がない。」


 なぜだろうか。満干の思いがこぼれたような女の呟きは風に乗って僕の耳に届いた。


「殿。上です。」

 一門が示す方向に目を向ける。切り立った崖の上から水瓶が3つ。もしかして……。あれ。戦国時代って火薬は貴重だよね。山賊みたいのって、ほとんど追い出された農民だよね。


 ブルジョアで頭が回るとか、聞いてないんですが。


投稿に関してです。

最低でも週1で頑張ります。

+αで、スムーズな時、調子に持っている時に投稿になります。

(毎日は実力不足です。ごめんなさい<m(__)m>)

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