前世が未来で、今世が過去
はじめまして。
ニャニャオ丸と申します。少しでも楽しんでいただけたらと思います。
よろしくお願いしますm(__)m
強烈な飢餓感で目が覚めた。
周りを見渡すと目に入るのは、土にまみれたボロボロな小屋の内部。
周りを見回すと、ボロをまとった10人位の男女が眠っている。
薪をくべる場所には水滴のついたクモの巣が張ってあり、長い間使われていない。
いつもと変わらないようすだ。
天井に開いた亀裂を通った月影が土の塊にあたっている。
暖かな色の"それ"はなぜかおいしそうに見えた。
僕はそれを口に入れた。
なぜだか急に眠くなった。
……なぜだろう。
まだまだ、太陽が出てきていないのに体を揺すられている。
バシリッ!
頬を強烈な衝撃が襲った。
あっ。
「おはようございます。先生!」
眠気は急激に吹き飛び、頭が働き始める。
高校のころを思い出す。
毎日のように、居眠りをする。そして、毎日のようにたたき起こされる。
何だかんだ言って、そんなやり取りを気に入っていた。
「わんらーよー!なーにゆーとる!おんべくったい」
なんだこれは。
まだ頭が働いてなかったようだ。もしくは、腹が減っているからに違いない。
目の前にいる、手足がやせ細った女性は訛り過ぎて現代っ子の俺には意味すらわからないことを宣っている。ボロボロで皿と呼んでよいのかわからないものに、ベッチョリとした白っぽいものがちょっとだけ乗っている。そしてそれを押し付けてくるのだ。
なんだこれは。
いや。
僕の好きなアケビをお母様がくれている。朝からなんて贅沢なんだ。
いつもなら、寝坊なんてしたら一日食べるものがないのに。
あっ。僕の兄弟姉妹達が狙っている。
すぐ食べるから!!
ちなみに、お母様は「あんた、何言ってるの。アケビをお食べなさい。」と言ってたけど、
……なんで理解できなかったんだろうか。
大きな木に背を預け、大きく伸びをすると空腹がまぎれるような気がする。
森に入ってドングリを拾っていた。冬に備えて少しでも食料をためなければならないからだ。
どれだけ米を作ろうと、どれだけ畑を耕そうと、お寺のお坊さんに取られてしまう。一家そろって冬を生き抜くには、食べ物が必要だ。しかし、一つだけ気を付けなければならないことがある。
動物を殺してはいけない。
隣の家に住んでいたキュウベイがクマを殺してきた。その肉を集落に持ち帰ってきたのだが、殺生すると極楽に行けなくなるといって、お坊さんは山師の財産を没収した。家も道具も妻も子も。
そして、熊肉はお坊さんに食べられることで極楽往生できるらしい。特に、熊の手を食べることが大切なのだとか。
お世話になった人だけに、殺生をするなんて…、とショックを受けたのを覚えている。だが、平成マインドの今の俺からすれば、動物を殺さないで餓死するくらいなら…と思うのは普通だろう。
さらにいえば、珍味として有名な熊の手。是非、熊の極楽往生の手伝いさせてほしいものだ。
森の奥まった木陰で休憩をしながら、混乱している頭を整理する。
二つの記憶が頭の中にある。21世紀の日本を生き、とても早死にをした大学生。難民家族の三男、弥平。
感覚からすると、二十代で死んだあと、弥平としての5年間を経験して今に至る。大学生の記憶が前世だとすると、「前世が未来で今世が過去」という意味の分からない状況になっている。
ここで問題になるのは二つ。
過去とはいうが、今の時代はいつなのだろうか。そしてここはどこなのだろうか。
・恐ろしいほどに訛ってはいたが日本語が話されている。
・テレビも車も電気もない。人権なんて何のその。
・テレビで見たものに比べると、完成度はかなり低いが、丁髷をした武士のような人も見たことがあった。
・農民の人たちが堂々と刀を持ち、「戦働きがどうだ」と話していた。
以上のことから、
きっと、そうなのだろう。きっと今は、戦国時代なのではないだろうか。
場所については、学のない農民が知ることのできる情報からは特定できないが、方言からして関東地方のどこかでのような気がする。
さて。今後はどう生きるべきなのだろうか。歴史に関わってみたいとは思っている。ただ、生き残ることに精いっぱいだ。ひとまず、このすきっ腹を何とかしなくては。
一度投稿ミスがありました。
ごめんなさい。