1夢想世界・前編
1 夢想世界・前編
「うわああああああああああああ・・・・ん?」
そこは見慣れた部屋、自分の机があり、ありふれたポスターがはってある。
デジタル時計は5月20日の午前7時を写し出していた
「なんだったんだ・・・・あの夢・・・・」
自分の額や体が汗びっしょりかいていて、気持ち悪い。
(昨日みたユキの首だけ死体、夢・・・・だったのか? それにしてはリアルな夢だった・・・)
などと思いふけていると、自分の部屋の窓がガタガタガタっと揺れている、またか・・・・
勢いよく窓がバッと開かれた
「おっはよー♪まっこちゃぁああん」
そこにいたのは、髪は黒髪ロング、前髪はちょっとしたピン止めで止めている、見た目
清楚系お嬢様で、多分初めて見る人はずっと見てしまうような美貌の校内一の美女でありオレの幼馴染
み
有馬ユキであった。
オレは毎度の事過ぎて飽き飽きしていた。
「ユキっ毎度毎度窓から入ってくんなっつってんだろ! だいたい朝からお前うるさいんだよ! たまには小鳥のさえずりで爽やかな朝を迎えたいもんだよ」
「ひっどいな~、マコちゃん、マコちゃんの好きな非日常、幼馴染みの女の子が起こしにきてあげるを毎回やってあげてるのに」
「あのな~、ユキ~ これも毎度言ってると思うが、非日常も日常になってしまえば日常なんだよ!
もう飽きたんだよ!だいたい朝早くから塀をのぼって、屋根から二階までよじ登って窓から入ってくるバカお前くらいだよ」
「マコちゃんは、ひねくれてるなぁ~! でもこれもアタシにとっての日常になっちゃったから止めてあーげない」
そう、こんなアホみたいな会話からオレの日常は始まる。
オレの名前は結崎誠、ごくごく普通の高校2年生
てか世の中普通すぎてマジ飽きた、てかまずオレが普通すぎるまである。
座右の銘は〔非日常も日常になってしまえば日常〕
常に新しい事を探しているが、この世の中そんな事が頻繁に起きるはずもなく、ただただ過ぎていく日常を生きる日々に。
朝の幼馴染みが起こしにくるイベントは毎日に退屈していたオレが偶然いた幼馴染みに中学一年の時に思いつきで言っただけなのだが、それ以来ユキはその日からずっとオレを起こしにきている。
ただでさえいるだけで存在が目立つやつなのに、こんなひねくれた幼馴染みの為に律儀なやつである。
そんな普通の人が、羨ましがるイベントを毎回やられているわけだが、正直飽きてきた・・・
提案したのがオレなので仕方ないのだが、ユキもこのイベントにハマってしまい、今ではこちらから止めろとは中々言い出せない。
そんな事を考えていると、
「おっす!誠と有馬さん!」
そんな元気な爽やかボーイの声が聞こえてきた。
「なんだよ、翔、お前まで入ってくんじゃねーよ」
「そんな硬いこと言うなよ、お前ん家とはお隣なわけだし、朝からお前達の声が聞こえてこないわけないだろ?」
「だからって何でお前も窓から入ってきてんの? 家には玄関というものがあってだな・・・」
「まぁまぁいいじゃん、どうせオレの部屋も二階の向かい側なんだし、こっちの方が楽だって」
この軽薄そうだが誰にでも気軽に接する、髪は短髪、片方にピアスを開けている、笑顔が素敵なクソイケメン。
野球部のエースにして、一応オレとは中学の頃からの腐れ縁、天城翔である。
こいつのタチの悪いのが、異性にやさしくするとすぐモテるって所、おかげでファンはオレ達の学校だけでは収まらなくなってきた。
近くにいるオレの身にもなってくれ。
そんな周りからモテモテの二人と、オレは友達なわけで、まぁこれもオレにとっての非日常的であり、もはやオレにとっては日常なのだ。
重い腰をあげ、憂鬱な朝におはようする。
「さってと、学校行く準備しますか~、着替えるからお前達外出てろ」
「え~、マコちゃん気にしなくてもいいのに」
「むしろお前が一番気になるわ!さっさと出てけ」
「仕方ねぇな!誠は恥ずかしがり屋だからな、有馬さん外で待ってようぜ」
「ふぁい」
「んじゃ!誠、玄関で待ってんな」
「はいはい」
着替え終わり、二人と一緒に学校に行く事に、これもいつもと変わらず、たまには一人でのんびり学校も行きたいものだ。
通学中はそれこそ他愛ない会話ばかり、来週末テストがあるので、その話や、部活動の話。
ちなみにユキは弓道部のエースである。
(なんでこいつまでイメージぴったりなのだろう、てかこいつ出来ない事がないな、完全無欠かよ)
常にお茶目な行動をとるユキだが、これでも成績優秀で学年トップなのだ。
そうこうしている内に学校の校門の前まできていた。
ここは市立九音学園7年前に建てられた新設校なので見た目は綺麗だが、それ以外は特に普通の学校だ。
グランドの方から怒号が聞こえてくる。
「まぁああてぇえええ 流先輩ぃい~ 今日こそ相詩先輩の為に公正してもらいますからぁああ」
「うっせぇえ~!誰があいつの為に公正なんかしてやっかよー」
これもいつもの光景である。
追いかけられている方は髪は左側が編み込んであり右側を流すという、今時の不良スタイル、それでも律儀に、制服を着ているあたり、この人も学生なのだと言うのが分かる
今年3年生になった榊原流先輩、 一年の頃からやんちゃをやっており、自称九音の番長らしい。
だがその伝説は凄まじく、他校の生徒が30人近く学校にかちこみに来たとき、一人でその30人を倒してしまったという伝説が残っている。
(本当か嘘かは知らんし、興味もない)
そんな凄い人が誰に追いかけ回されているかというと、
髪は後ろに結ばれたポニーテール、体は細身(特に大切な部分は)
目はパッチリとしており、学年でも3~4番目には可愛いのだと思う、オレは興味はないが・・・
オレ達と同じ2年の相澤華那である。
一年の頃から生徒会に入っており、現在の生徒会長、蔵本相詩を溺愛していて、相詩に迷惑をかける流先輩が許せないらしく、一年の頃からずっと流先輩を追いかけている。
ここまでくると逆に流先輩の方が好きなんじゃないの?っと思いがちだが、それを本人の前で言うと殺されるから止めようね♪
流先輩が校門の方へ走ってきて校門を出ていってしまった、それを追いかける相澤さん。
「おはよう、華那、今日も朝から忙しそうだね」
「あっ!おはよう、ユキ、でも急いでるんだ、また後でね」
そう言うと相澤さんは流先輩を追いかけ校門から走っていってしまった。
「華那相変わらず忙しそうだね」
「まぁ本人が好きでやってるんだからいんじゃね」
「またマコちゃんは人の事だとおもって~」
「実際人の事だしな、深く関わろうとは思わん」
「そういう所、本当誠らしいよな」
「笑ってんじゃねぇよ」
なんて話ながら歩いていると、学校の花壇までやってきていた、この道は教室にいくなら必ずと言っていいほど通らなければならない道。
そこまで来ると、一人の少女が花をしゃがんで見ていた。
銀髪のロングヘアーに、赤渕眼鏡、肌は透き通るくらい白い。
その姿はひとつの絵画のようで見るものを魅了する、校内の二大美女、有馬ユキと、
もう一人がこの白夢初音である。
「おはよう!白夢さん」
「・・・・・・」
挨拶をしたユキを無言で見つめてくる。
ユキとは対象的に無口で謎が多いのが、この白夢初音なのだ。
一部では、無口でずっと花を見ているだけなので不気味がって近寄らない人間も後をたたない。
同じ二年生のはずなのだが、授業をうけている姿もとんと見ないので、正直よくわからない奴。
白夢さんに会釈し、翔は別のクラスなので別れて
ユキと一緒に教室まできた所で、ふっと今朝の夢を思い出した。
あの生々しくリアルな夢、本人に言おうと思ったのだが、 さすがに縁起が悪いので止めておいた。
まぁユキなら笑って許してくれそうだが、それでも嫌だったのだ、曲がりなりにも、幼馴染みでずっと一緒にいた相手なのだ、自分の目の前で死んでほしくはない。
(なんであんな夢みたんだろう?何か嫌な予感がする)
考えていると授業のチャイムがなった、あの夢の事は忘れよう、そう決めたのだ。
授業が終わり、日は陰ってきた。
帰宅する生徒や、部活動に勤しむ生徒などそれぞれだ、無論オレは部活があるので帰る事はしない。
オレの部活は文芸部、放課後本を読み、読み終えた本をレポートにして提出し、うちの新聞部の一コーナーにそのレポートが載る、という普通の人なら嫌がりそうな活動だが、オレは好きだった。
本の世界は無限大だ、現実と違い色んな場所につれてってくれる。
その感想が新聞に載り、あまつさえ
他の人に広める事ができるなんて素敵な活動ではないか!
そんな事を考えていたら、ポンポンっと肩を叩かれた
「これは君の文庫本ではありませんか? 落としましたよ」
「あっ!すいません! ありがとうございます、生徒会長」
「いえいえ気を付けてくださいね」
この物腰柔らかく、優しさと誠実さを兼ね備えてそうな方こそ、相澤さんが溺愛している、
この九音学園の生徒会長、蔵本相詩なのである。
文武両道で勉強もでき、スポーツもできる、それに周りからは慕われる生徒会長。
正に理想のトップと言っても過言ではない人なのである。
オレは生徒会長に軽い会釈をし、その場を去った
。
今日生徒会長に、会えるなんてオレはツイている。
普段は多忙すぎて会う事すらレアなのだ、(というか全校集会以外見たことがない)
なので生徒会長と落とし物とは言え話せるのは、オレにとっては日常から脱却した非日常なのである。
ルンルン気分でガラにもなくスキップしていると
「セェ~ンパ~イ」
首に絡まれ、背中には柔らかい感触が・・・・
「おっおっおりがみ~ 抱きついてくんなぁあ~てか当たってる、当たってる」
「当たってるんじゃなくてぇ~ 当ててるんです~」
「相変わらずお前はあざといな」
「えへへ、そこに先輩がいたからですよ~♪」
この後ろに抱きついている、小動物みたいなのは
オレの文芸部の後輩であり、
九音学園一年の折神緋色。
両方に結ばれた長いツインテールとぱっちりおめめが特徴で、基本小動物みたいな奴なのでほっておけないのだ。
こいつが入学してきて、図書館で本を読んでいると、読んだ事のある本なのか? 話しかけられ、
話が弾み、何故か妙に気に入られてしまった・・・
それから文芸部に入部し今に至るわけである。
「折神いい加減離れてくれ、息苦しい」
「んもぉ~、こんな可愛い後輩が抱きついてあげてるのに先輩ツレないですよぉ~」
「というか折神暑苦しい・・・」
「先輩ひっどーい」
折神と馬鹿みたいなノリをしながら文芸部にきた
なんだかんだ案外こいつは嫌いになれないのである。
だんだんと日も落ちてきた、今日も文芸部はオレと折神の二人だった。
他の部員はいるもののちゃんと活動はしていなく
ほとんどの者が暇潰し程度に入る部活動なので、基本的に参加は自由だ。
折神と本を読んでいると、いつの間にか下校用のチャイムが鳴っていた。
「そろそろ帰るか」
「そうですね~、先輩一緒に帰りましょ♪」
「まぁ嫌だと言っても強引についてくるし、仕方ないな」
「当たり前ですぅ」
折神は子供のようにほっぺをぷくぅっと膨らませた。
相変わらずからかうのが楽しいやつである。
折神と、共に正面玄関を出ると、ユキと翔も部活終わりらしく、オレを待っていた。
その日は4人で帰る事となった。
折神はどこか不機嫌そうだったが渋々了承した。
4人で帰りにファミレスに寄り、一番学校からの帰り道が遠い折神を送ってから帰る事に。
「折神ちゃん、マコちゃんは部活ちゃんとやってる?サボってない?」
「先輩が、サボってるわけないじゃないですか、むしろ真面目すぎます」
「そうだよね~、マコちゃんそういう所だけは真面目なんだよね~」
「おい、そういう所だけって失礼だぞ!主にオレに」
「確かにな~、誠はそういう所律儀だよな~」
「翔お前もか!オレはいつだって律儀だ」
「そうですよ!律儀でちょっとドジっ子です」
「ちょっ!え~、折神さ~ん?」
折神は視線をユキに向けていた、とても鋭い敵意
、そうこうしているうちに折神の家に付いた。
そしてユキに視線を向けたまま、
「有馬先輩、絶対負けませんから」
っと言い家の中に入っていった。
なんのこっちゃ?っと思いながらも折神を見送っていた。
登校と同じく3人になっていた、翔がアホな事ばかり言うのでツッコんでいたら疲れた。
本当お前はオレを疲れさせる天才かよ、なんて思っていると、今まで黙ってやり取りをみていたユキが口を開いた。
「マコちゃん、沢山の人に好かれててよかったね」
「どういう意味だ?むしろ嫌われてるの間違いじゃないのか?」
「マコちゃん気づいてないんだ~、本当鈍感~」
「うるさい!オレは鈍感ではない、バカなだけだ」
「そっか、でも早めに気づかないと、手遅れになっちゃう事もあるんだよ・・・」
「それって、どういう?」
「んんー 何でもなーい」
ユキのそのはっきりしない態度が珍しかったため何かあったのかと疑ってしまう・・・
今朝の夢の事が頭をよぎる・・・
(いっいやあの事は忘れるって決めたじゃないか)
でも何故か忘れる事ができなかった・・・
ユキを送って、翔と二人で帰る。
これもいつも通り、の筈なのに、何か違和感がある。
(なんだ?この気持ち悪い感覚)
そんな感覚にうなされていると、翔がらしくない事を言い出したんだ。
「なぁ、誠、オレら親友だよな?」
「なんだよ?いきなり? まぁ中学からずっと一緒だしな、腐れ縁ってやつじゃねーの?」
「そうか、ならお前はオレの事覚えててくれよな、じゃあな」
「おっおう・・・」
今日はユキといい、翔といい、一体なんなんだ?
オレの嫌な予感はどんどん増幅していった・・・
その日の22時、だいたいこの時間か23時には寝るオレ、だが昨日みた悪夢のせいで寝るのが少し怖かった。
また大切な何かを失ってしまうような・・・
そんな感覚・・・・
(考えても仕方ないな!寝るか)
嫌な予感は残しつつもベッドに横たわり 、寝る事にした。
どれくらい時がたっただろう、まるで自分の体が浮いているような不思議な感覚・・・・
ん?てか浮いてね?
勢いよく目を開けたそこは真っ白な世界・・・
自分の体は宙を浮き、まるで無重力空間のような場所。
そこに一つの大きなディスプレイがあった。
なぜ?こんな所にっと思っていると!
「ハロハロー! ご機嫌いーかがー?」
そこには 黒い長髪が右目の方にかかって左目がネコのような目をした男が写し出されていた。
「ここは、どこだ? てかあんた誰だ?」
「人に物を尋ねる時はまず自分から名乗るって小学校で教わらなかったのかい? 結崎誠君」
「何故オレの名前を知っている?」
「何故?ってここは君の夢の世界、そう夢想世界だからさ、その夢たちを管理し、楽しんでいるのが僕さ」
「夢?夢想世界?なんの事を言ってるんだ?」
「はぁ~ 、状況が飲み込めないようだね、一言でいってしまえば君が望んでいる非日常はここにある」
「何言ってるんだ?お前? 仮にここがオレの夢の世界だとして、オレにどうしろと?」
「今から君には、僕主催のゲームをしてもらう、君はこの世界で、現実の君の体が眠っている内に、知人を助けてもらう・・・そうだねぇ~ 君の睡眠時間が現実の世界の7時間だと置き換えてもらえれば話は早い」
「助ける?どうしてオレが?」
「君も昨日みた筈だ、君の幼馴染みちゃんの首だけ死体を」
「何故お前がそれを!!」
「そうだ紹介が遅れていたね、僕の名前はロキ、君たちの世界では北欧神話というものに出てくるんだろ? 僕は悪神ロキだ」
にっこりと笑う悪神その表情は無邪気に見えるがとても黒くも見え、恐怖さえ覚えてしまう。
「その悪神が、どうして・・・オレの夢を管理している」
「君だけではないよ、全世界の人々の夢の世界は僕が管理しているのさ♪ 正確には今は・・・だけどね」
「どういう意味だ?」
「最初は全知全能の神ゼウスと共にこの夢想世界を管理していた、だがゼウスは人々に幸せな夢ばかりを見せていた、僕が欲しかったのは人の恐怖や絶望の顔、故にゼウスは僕にとって邪魔だったのさ」
「まっ・・・まさか!殺した・・・のか・・・」
「まっさか!人には死という概念があるが、僕ら神にそれはない、だからこの夢想世界から消滅させただけさ」
「消滅?ってことはゼウスはもういないのか?」
「この夢想世界にはね♪ 他のワールドに飛ばしただけさ♪ また戻ってくるだろうね~
当分は戻れないと思うけど」
「お前はそうまでして、人の恐怖が見たかったのか?」
「うーん、どうなんだろうね~?所詮僕にとっては恐怖や絶望は暇潰しさ、ただ最近は悪夢を見せるだけでは物足りなくなってきてねぇ~、もっと強い絶望が見たいのさ
だからこそ最近悪夢を見せた君をここに呼んだというわけさ」
「やっぱり、あれはお前が見せてたのか!胸くそ悪いもの見せやがって」
「まぁまぁ これから君がやる事はもっと過酷なわけだしあんなもの序の口だよ」
「ゲームがどうたらと言ってたな!何をやらせるつもりだ」
「そう!君には今からゲームをしてもらう、君の夢から知人の夢へのゲートは開いておいた、君は知人を悪夢から救い出すヒーローさ、ただし時間は7時間以内、それを越えたり 君が知人を条件内で救えなければゲームオーバー」
「ゲームオーバーになったらどうなる?」
「その夢が仮に正夢だった場合その夢と同じ事が起きる、その夢が悪夢だった場合、その人間から君の記憶はなくなる」
「なん・・・・だよ・・・それ」
「そうそう僕は君のそんな絶望の顔が見たいのさ、一つずつ大切なものが無くなっていく絶望の顔をね」
どうすればいい?負ければ死より辛い絶望がまってる、こんな非日常オレは望んでいたのか?
少なくともこれじゃない・・・
どうすれば・・・
「情けねぇ顔してんじゃねー」
後ろから声がしたと思ったらケツを蹴られぶっ飛んだ。
体が逆さまになりながら浮いて見たのは、白いフードコートをきた若干顔は見辛いがショートのボブヘアーのだいたい15、6歳くらいの女の子がそこにはいた。
「おやおやぁ~ 、これはゼウスの使い魔であり、あまつさえ僕に封印されていたバクのシロナちゃんじゃあ~ありませんか~?」
「ここにご主人様がいないのをみると、ロキてめぇの仕業だな」
「何せゼウスは邪魔でしたからねぇ~、少し消させて貰いました」
ロキがそう言ったとたんに 、シロナという女の子は仕込んでいた小太刀のようなものをロキのモニターに向かって投げつけた。
「いつかお前の息の根を止めてやる!それには力が必要だ」
といいシロナはオレの方に顔を向けた
「今はお前がボクの力だ、ロキを倒すため協力してくれ! 勿論さっきの話は聞いていた、お前がボクの協力をしてくれるなら、ボクもお前のゲームの協力をしてやる」
「その前に君は、一体誰なんだ?」
「ボクはバクのシロナ、悪夢を食べる妖怪であり、ゼウス様の使い魔だ」
「でも、ゼウスは消滅したってロキが、なら使い魔の君はなんで消えていないんだ?」
「ボクはもともとこの世界の住人だからだ、ロキやゼウスは言ってしまえば別世界のただの管理人さ、だからロキもボクには、封印しか出来なかった、ただその鍵が君になるとも知らずにね」
「どういう事だ?」
「君はゼウスなど神の力なしでも、ボクに使役のできる人間、10000人に一人の逸材だ」
つまりロキが、オレに見せた悪夢、その影響でシロナが目覚めたという事らしい。
理屈はよくわからんが・・・
「という事だ!ロキ、そのゲームとやらボクも参加させてもらうぞ」
「んまぁ~ お好きにどうぞ~、たかだかバク一人が増えた所でなんら問題はありませから~」
ロキは自分の爪をいじりながら興味なさげに答えてみせた。
いわばそれだけロキにとっては戦力外というような態度だった。
「わかったらさっさと始めろ」
「せっかちですねー、まぁそろそろゲームを始めようと思ってましたし」
「ちょっちょっと待てよ!まだオレは納得」
「してなければ、このまま誰も救えず終わるだけですよ~」
「くっ わかったよ!やるしかないか・・・」
「その通りあなたには最初から選択権などないのです」
この世界での事だ、ロキの言ってる事が本当に起こるかはわからないが、少なくともこのゲーム勝つ以外選択肢がないようだ。
「大丈夫だ!誠、ボクもついてる、ボクたちは今からバディーだ、ボクがいるかぎり絶対に勝ってやる」
「すまない、ありがとう、シロナ」
「かっ勘違いすんなよ、あくまでボクの目的はロキ討伐とご主人様復活だ、それまで手を貸すだけなんだからな」
「ああ、それでも一人より心強い」
「おーい!友情ごっこはすみました~? それなら今回のゲームの説明に入りますよ~、サマナー、後は頼みましたよ」
「承知しました、ロキ様」
ロキの写っていた、画面は消え、上から小悪魔の格好をしたロリータファッションの女の子が降りてきた。
「ハロー、久しぶりね~、シロナ、死んだって聞いてたけど?」
「残念だったなサマナー、ボクはこの通りピンピンしてる」
「本当に、残念、あんたさえ居なければ私とロキ様の完璧な世界が作れたのに」
「お前と、ロキの世界なんてボクは死んでもごめんだね」
などと言い合いをしていた、このままでは長引くと思ったので
「ゲームの説明?お願いできるかな?」
っと切り返すと渋々サマナーは腕組みをした、オレは今にも殴りかかろうとするシロナの腕をつかんで止めていた。
「仕方ないわね~、ここはそこの彼に免じて、ゲームの説明をしようかしら、まず自己紹介が遅れたわね、私はロキ様専属悪魔のサマナー、これからのゲーム私がルールや条件を伝えていくのであしからず」
どうやらロキは重要な場面以外はこの悪魔、サマナーに任せるようだ、高見の見物ってやつか 、
本当にイライラする奴。
「今回のゲームは隠れんぼ、フィールドはここよ」
っというと白い空間から亀裂が入り、崩れて行く。
そこには古い建物が沢山ならんだ城下町のような空間が広がる。
「そして今回のゲストはこの方」
っとサマナーが言うと時空の光のような穴から翔が出てきた。
翔は出てくるなり辺りをキョロキョロしている。
そしてオレを見つけたらしく、慌ててこっちにむかってきた。
「誠?なにやってんの?これ? オレ確か寝てたはずなんだけど?」
くっ知人の夢とリンクしてるってこういう事か、ロキの野郎本当にいけすかないやつだ!
「翔を、この空間につれてきて何がしたい!!」
「さっきも言ったじゃないですか、隠れんぼだって、今から7時間この鬼たちから隠れてもらいます」
パチンっとサマナーが指を鳴らすと 大きな鬼が10匹くらいでてきた、鬼の右手にはデカイ金棒が握られている、あんなもの食らったら一発で死んでしまう。
「そして、あなた方の勝利条件は天城翔さんを鬼に殺されない事、そして決して鬼に見つからない事、これがあなた方の勝利条件です」
「隠れる時間はあるのか?」
「はい、あなた方には一時間さしあげます。その間に逃げて隠れてください」
「時間はどうやって確認すればいい?」
「忘れてましたわ」
と言いサマナーは全員に小型ディスプレイの腕時計を配った。
「今は1時10分今からあなた方には隠れていただきます、そして2時10分になったら鬼達は、あなた方を殺す為に探しにいきます、何か質問はございますか」
「一時間もオレ達に隠れる時間を与えるって事はお前達は自信があるという事か?」
「勿論です、何故なら勝つのはロキ様に決まっているからですわ」
「そうかよ、ならオレ達が勝ったら文句なしな」
「望む所ですわ、それではそろそろゲームスタート」
サマナーは不敵な笑みを見せながらゲームスタートを宣言する。
「誠、これは一体?」
「翔すまない、説明は後だ、いくぞシロナ」
「あぁ誠、絶対に勝つぞ」
俺達は気合いを入れて走り出した。
「ゲームスタート、早く君の絶望が見たいよ♪結崎誠君♪」
ロキは鼻歌混じりにモニターから傍観していた。