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巡り廻る・流転

作者: カナメ

以前書いた短編、巡り廻るの続編です。そちらを見てから読んでいただければ幸いです。

僕は目覚めた。



目の前には見覚えのある天井。



どこであろう、ここは僕の自室・・・つまり、自宅。

僕はいつ寝たのだろう?あまり記憶がはっきりとしない。

・・・華煉。

・・・死体。

・・・涼子。

急に様々な言葉が脳内に浮かび上がり、僕の意識は今度こそ完全に目覚めた。

僕は、過去に・・・涼子が生きている時まで戻ってきたんだ!

華煉とのやり取りがまだ夢だとは否定出来ないが、それを確認する為にもいま行くべき場所はたった一つ。

涼子の入院していた病院!




居ても立ってもいられなくなった僕は、寝巻き姿のままで外へと飛び出した。

ジッとしているなんて今は出来ない。

周りの風景など、脳内には残りもしない。

ただ涼子のことだけしか考えられない。

だから僕は走る。

がむしゃらに。

転びそうな勢いのままに。

道中、何人もの人とぶつかったが「すいません!」と言い残して、僕は走り続けた。

数え切れないほど、通い続けた道。

涼子が入院している病院へ続く、歩き慣れた道だ。

その道を、僕はただ走った。

全力で。

止まれば、全てが幻だったのかと・・・

それが、怖くて、恐ろしくて・・・

だから、視界の端に病院が見えた時、僕はようやく一息つけた。

立ち止まった瞬間に、安堵か疲れかわからないが、膝から力が抜けて思わずその場にしゃがみこむ。

呼吸するだけで苦しい。

脇腹も痛い。

けど、いまはそれどころじゃない。

未だに息も整ってはいない状態だが、病院が目に見える範囲にあるというのに、落ち着けるわけがない。

疲労困憊している体に鞭打って、僕はまた走りだす。

サッカーで鍛えた自慢の健脚とスタミナも全力フル回転、フル活用してただ走る。

街中を全力疾走する僕を、すれ違う人々が奇異の視線で見送る。

だが今はそんな事、どうでもいい。

そしてそんな視線を振り払うように、僕はまたスピードのギアを一段階アップした。



・・・あれから更に走ること十五分。

僕はようやく目的地である病院に到着した。

病院に入った僕は息も絶え絶え、全身汗まみれの状態。

そんな僕を、見舞い客やら入院患者、看護師が何事かと見つめている。

そんな人々の、どこか問うような視線を一切合切ムシして、僕は歩き出す。

急いで涼子がいる病室に向かいたいのだが、病院内は走ってはいけない。

いや、それ以前にさすがの僕自慢のスタミナも尽きて、走る気力すらわかない。

むしろ、こうして立って歩いているだけでも限界。

今なんて足がもつれて転びそうな足取りだ。

心臓もバクバクで胸が痛い。



「だ、大丈夫?」



そんな僕を見かねたのか、おばちゃん看護師が声を掛けてきたが、僕は手を左右に振るだけで『問題ない』とジェスチャーのみで返答した。

しゃべるのも億劫な僕を、おばちゃん看護師が心配そうに見つめているが、いまはそれに構っている暇はない。

涼子の病室は三階。

・・・常日頃なら苦にもならないこの距離が、今はすごくもどかしい。

エレベーターを待つ、この一秒すらも。

スタミナに余裕があれば階段を上るのだが・・・今は無理。

こうして壁に寄りかかっていないと地面に座り込んでしまいそうな状態では特に。

そして永遠とも思えるわずか数十秒の待ち時間は終わり、エレベーターの扉が開いた。



時間帯か?

はたまたタイミングがよかっただけなのだろうか?

エレベーター内には誰もいなかった。

エレベーターに乗り込むのも、僕一人のみ。

今まで何回もこの病院には足を運んだが初めてとも言える事態。

珍しいことがあるもんだと思いつつ、僕はエレベーターに乗り込み、閉ボタンと同時に三の数字を押す。

扉が閉まると、駆動音と共にエレベーターが上昇していく。

早く着け、速く着け、はやくつけ!

僕の焦りとは裏腹に、一定の速度でエレベーターは三階に到着。

エレベーターの扉が開かれる。

その時の僕は、慌てていたせいか前方不注意だった。

エレベーターを待っていたであろう人とぶつかってしまった。

反射的に「すいません」と謝ろうとして・・・口が固まった。

いや、口だけじゃない。

全身が、固まった。



「あっ・・・あ・・・・・・?」



驚愕のあまり、言葉にならない。

唖然、呆然する僕を尻目にぶつかった相手は平然としている。

そこに感情は一切存在していなかった。

完全に、無。

無感情、無表情。

狼狽している僕になどさほどの興味もないのだろう、ぶつかった人物はすっと何事もなかったかのように僕の横を通り過ぎ、エレベーターに乗り込んだ。



「あ・・・まっ・・・・・・」



その人物を引きとめようとする僕の言葉はこれ以上ないほどに震えている。

だって・・・そこには・・・目の前には・・・
























僕が、いたのだから。







制止しようとする僕を、もう一人の僕はただ見つめるだけ。

何も喋らない。

一言も言葉を、発しようとはしない。

ただ、その目は・・・なんとなくではあるが僕を憐れんでいるような気がした。

なぜ、お前がそんな目で僕を見つめる?



「・・・屋上に行け」



僕じゃない僕は、ただその一言を言い残して、エレベーターの扉は閉まった。

しばらくの間、僕はその場から一歩も動けなかった。



「なんで・・・?」



茫然自失で立ち尽くす僕を、エレベーターに乗ろうとしていた若い女看護師が声を掛けてくれたおかげで、ようやく僕は少し・・・ほんの少しだけ正気を取り戻した。

・・・あれは、夢じゃなかったよな?

幻なんかじゃなかったよな?

そう思ってしまえる位に、さっきの出来事はあまりにウソのような遭遇だった。

だが・・・あれを白昼夢として片付けることは、今の僕には無理だ。

・・・すでに僕はもう、華煉の屋敷でありえない事態を目の当たりにしているのだから。

顔色が良くないと心配してくれる若い女看護師に力無く「大丈夫」と告げ、ふらつく足取りで涼子の病室へと向かう。

三階の、一番端っこの病室。

そこが、涼子の部屋。

涼子に会うには僕の精神状態はあまりにも不安定だが、一刻も早く涼子に、生きている涼子に会いたい僕は目の前にある病室の扉を開けた。



室内には、誰もいなかった。

・・・やはりあれは夢だったのか?

涼子の死に対して、現実逃避した僕の幻想だったのか?

もう、何がなんだか・・・わからなくなってきた。



「恭也くん?」



だから、僕の背後からなつかしくも聞き覚えのある声を聞いた瞬間、僕の魂は震えた。

この声を、聞き間違えることは絶対にない。



「・・・涼子」



振り向いた先には、最愛の恋人。

長い黒髪と病的に白い肌は相変わらずだ。



「・・・なんで寝巻き姿でここに?その格好でここまで来たの?」



「え?・・・・・・あっ」



涼子に指摘されて今更ながらにパジャマ姿だと気付く。

無我夢中ですっかり忘れてた。



「ぷっ・・・あはははは!」



あまりにも間抜けな僕の様子に、涼子は我慢できずに爆笑。

その笑顔は活力に満ちた笑顔だった。

だから僕は気恥ずかしい反面、嬉しかった。

涼子が笑ってくれている。

ただそれだけで僕は道化になれる。



「あー・・・可笑しかった。珍しいよね、こんなにおマヌケな恭也くんは。なにか慌てるような事でもあったの?」



「・・・いや、まあ、その、急に涼子の顔が見たくなってな」



半ば誤魔化すように、だけど今の素直な気持ちを言葉にした。

普段の僕なら滅多に口にしないセリフだけど、この時ばかりは気持ちが抑えきれなかったんだ。



「えっと・・・やっぱり何かあったの恭也くん?普段なら言わないような事を口走ってるよ」



そんな僕の素直な気持ちの吐露を、涼子は軽口で茶化すが・・・その頬は見事に真っ赤。

どうやら僕のくさいセリフに照れたのを誤魔化そうとしたようだが、それじゃあバレバレだぞ涼子。

どんだけピュアなんだ?

今時の小学生でも、もうちょっとうまく隠せるぞ。

まあ・・・そこが涼子の魅力というか、面白いところなんだが。



「相変わらずか」



涼子に聞こえない音量で、僕はぼそりと呟いた。

そう、これが僕の知る普段の・・・いつもの涼子。

変わらない、生きてた時とまったく同じ。

当然だ、彼女はまだ自分の死を知らない

この時は、まだ病気と闘う気力に満ち満ちている。

ならば何故、前は諦めた?

しかも唐突に。

・・・わからない。

今回はその原因を調べ、突き止めるか?

だがもし調べてもそれを回避する術がなかったら?

彼女は・・・涼子はまた、死ぬのか?

僕の知らない間に一人で苦しんで、独りで死ぬ?

・・・いやだ。

だめだ。

そんな未来、僕は認めない。

そんな経験をまた涼子に体験させることを、僕は許さない。

たとえそれが神様が定めた宿命でも、僕は、僕だけはそれを認めないし、許さない。

なら、僕はこれからどうするべきなのだろう?

会いたくないと拒絶されたあの時以降も、僕は涼子の傍らにいるべきだったのか?

いや・・・それはただの自己満足に終わりそうな結果だ。

僕は涼子の最期を見届けにこの時に戻ったわけじゃない。

生きた涼子と共に生きる為、生き続ける為に僕は戻った。

ならその為にも、やはり涼子が生きる理由を止めた原因を調べるしかない。

チラッと病室の壁に掛けられたカレンダーを見る。

・・・西暦は僕の知っている数字の一つ前。

そして七月、か。

おそらく今は、涼子が死んだあの日から一年前なのだろう。

そして、投薬を止めたあの日の半年前。

つまりタイムリミットはあと半年・・・いや念のため短く見積もっておよそ五ヶ月と仮定しておくべきか。

年内には決着をつけなければ、涼子はまた死ぬ。



「そんな結末は一度だけでいい」



あんな結末が二度も三度もあってたまるか!



「なにが一度でいいの?」



小首を傾げて僕を見つめる涼子がやけに愛おしく感じて、有無を言わさぬ勢いで涼子を抱きしめた。

そんな僕の突然の抱擁に、最初は体が強張った涼子だけど突き飛ばすこともなく黙って抱きしめ返してくれた。

それだけで僕は泣きたくなった。

それだけでも、僕はこの時間に戻ってきた意味があった。

この温もりを、温かさを、僕は絶対に忘れない。






「あの二人はいつもラブラブね」

「あー、暑い暑い。暑くて熱いわ。きっとこれは季節だけの問題じゃないわね」

「あの二人が地球の全体温度を上昇させてるのね、わかるわー」

「どんだけ壮大なスケールですか、それ。それよりお三方、覗き見してないで仕事して下さいよ」

「そういうアンタもさっさと仕事しなさいよ」

「・・・あの二人だけの世界に足を踏み入れろと?そんな無粋な真似はできませんよ」

「ああ、涼子ちゃんの薬を持ってきたの?・・・確かに、今それを持って現れたらあの彼氏君に睨まれるでしょうね」

「まあ予備の薬なので急いで渡す必要はないからいいんですけど」

「なら私達がそれ渡しておくから行っていいわよ」

「・・・覗き見続行するんですか?」

「たまにはこうやって他人の甘酸っぱい恋模様でも見てないと心が荒むのよ」

「こういう職種はとくにストレスが溜まりますから、娯楽に飢えてるのはわからなくもないんですが・・・あえて言わせてもらっていいですか?」

「駄目よ、それを言っては・・・!」

「いや、その先を言わないで!」

「私たちを現実世界に引き戻さないで!」

「・・・他人の恋模様より、自分達の恋模様を彩りましょうよ」

「「「それができたら苦労せんわ!!!」」」

「・・・・・・なんかすいません」












病室の外がやけに喧しい。

おそらくいつもの看護師三人衆が覗き見でもしているんだろうな。

そして数少ない男看護師がそれを嗜めているのは予想に難くない。

あの三人の女看護師と、ツッコミ役の男看護師は良くも悪くもこの病院の名物だからな。

あの人達の奇行は長年見てきたからもう慣れた。

さて、名残惜しいがそろそろ離れるとしよう。

本心ではこのままずっと涼子をハグしていたいのだが・・・とりあえず気にかかる事があるのでそれを片付けてからこの続きをしよう。

そう思って涼子を抱きしめる力を弱めたのだが・・・・・・涼子は一向に離れる気配がない。

むしろ抱きしめる力が強まってないか、これ?



「涼子?」



「・・・・・・」



呼びかけるが、応答はなし。

だが微力ではあるが、涼子の抱きしめる力がたしかに増した。

・・・この反応から察するに聞こえていないってわけではないようだが。

さて、どうしたものやら?

気になる案件は急ぐものでもないが、しかしずっとこのままってわけにもいかないし・・・。



「恭也くん」



「なに?」



ずっとこのまま時が過ぎるかと思った矢先、涼子が僕の名を呼んだ。



「明日も・・・来てくれる?」



上目遣い&潤んだ瞳で僕を見つめる涼子を、僕は・・・・・・軽く頭突きした。



「あれ?」



予測してなかったであろう僕の思わぬ対応に、今度は涼子がマヌケ面をさらした。

ふむ、中々に愉快な表情だ。

爆笑とまではいかないが、失笑を禁じえない。

そんな僕の反応に、涼子がむくれた。



「ねえ、可愛い可愛い恋人が捨て身ともいえる上目遣いをしてお願いしたのにひどくない!?」



「自分で可愛いとか言うなよ。若干、いやかなりヒクわー」



「なっ!!?」



「しかし、確かに捨て身だったな。当たれば一発KOだが、外したら恥辱死できる仕草だからな、アレ。・・・ものの見事に外したが」



「うぬぬぬぬ!」



意味わからん唸り声をあげる涼子に、今の方が可愛いと伝えたい。

まあやぶ蛇になりそうだから口にはしないが。

とりあえず今は・・・徹底的にイジろう。



「あざといわー、涼子さん。いつからそんな世俗にまみれた女になったんだ?あれか?よく女性雑誌とかに載ってる『これで気になるあの人や彼氏もイチコロ!可愛いを極めたモテ仕草特集』の影響か?」



「な、なぜそれを!?」



「うわー、まじかー。そんな愕然とする涼子に僕が愕然とするわー」



「今日の恭也くん、すごく容赦ない!」



・・・なつかしいな、このやり取り。

涼子にとってはそうでもないだろうけど、僕にとっては半年振りだ。

僕は自然に振舞えているだろうか?

不自然さはないだろうか?

それだけが不安だ。



「・・・恭也くん?」



どこかぎこちなく笑う僕を、目敏い涼子がすぐに気付いた。

やはり鋭い。

入院生活が長いせいか、涼子は他人の感情の機微にすごく敏感だ。

自分に対してはとてつもなく鈍感なくせに、だ。

厄介な。

けど、ここは誤魔化させてもらうよ、涼子。

君にはまだ、気付かれたくはないから。

僕の背負った、重荷を。

君はこの重荷の内容を知れば必ず僕と一緒に背負おうとするはず。

いや、これは僕の勝手な思い込みかな?

けれど、その可能性が少なからずある限り、僕はやはり秘密にして隠し続ける。

今回の君を、前回の君と同じ道に歩かせない為にも。



「・・・そんなことをしなくても、涼子は可愛いよ」



「あ、ありがとう、ございます」



「何故に敬語?」



「きゅ、急に恭也くんが真顔でそんなこというからでしょ!この変な空気をどうにかしてよ!」



「僕は思ったことを言っただけなんだが」



「今日の恭也くんはなんか変です!」



「どこが?いつも通りでしょ?」



「いいえ、違います!あえて言うなら・・・いつもはM気質の恭也くんが今日はなんだかドS気質に大変身してます!」



「おい待て待て。僕はいつからM気質だと、誰が、何時、認定した?場合によっては責任者を呼んでもらうぞ」



「私が、出会った瞬間に、認定しました!」



「・・・よし、とりあえずお互いに落ち着いて話し合おうか」



「私は充分、落ち着いてます。冷静沈着、クールビューティです」



「いや意味不明な発言してるから自己申告は無効だ。客観的観点から、涼子は錯乱状態の一歩手前だ」



「何気にヒドイ!?」



こうして無事に?誤魔化した僕は、涼子の病室を後にした。

明日もまた来ると涼子に約束して。







「さて・・・いきますか」



次に向かう先は非常階段。

そこから下に下りずに、僕は上へと向かう。

・・・あの時、去り際に呟いた僕とは違う僕が伝えた言葉。

「屋上にいけ」

あの言葉を信じるなら、屋上には何かが、もしくは誰かがいる・・・・・・と思われる。

あくまで勘だが。

さて、鬼が出るか?蛇が出るか?

そしてたどり着いた屋上。



そこには人がいた。

こんな暑い外に誰が好き好んでいるかと言いたい位に、暑い。

十人中十人が屋内で涼みたいと思うすさまじい陽射しと熱気。

だからこそ、屋上にはそいつしかいなかった。

こんなにも暑いのに、汗を一滴もかいていない薄い茶髪のショートカットの女子高生。

だけど、僕はそいつがただの女子高生ではないことを知っている。

僕を再び生きた涼子に会わせてくれた、魔女。

水無月 華煉。



「どう、亡くなった彼女との感動の対面は果たせた?」



「・・・おかげさまで、と言うべきか」



「そのわりには辛気臭い顔してるね、恭ちゃん」



「まだ涼子の死を回避しきれるとは言えないからな。むしろ、これから始まるんだ」



「そうだね、これから始まるんだもんね。頑張ってね恭ちゃん。すべては恭ちゃん次第。恭ちゃんの選択が、行動が、涼子ちゃんの未来を左右する・・・かもしれないんだから」



「・・・お前も、全てを知っているわけじゃないんだな?」



「残念ながらね。未来は一つじゃない。その時その時の選択、行動で容易に未来は移ろい、変化しちゃうの。・・・ある程度の大筋は、決まっているんだけどね」



「だが、だからこそ望んだ未来に書き換える事も可能なんだな」



「そうだよ。その隙間を縫うように突いたのがあたしの、あたしだけの秘術。意外にあたし、すごい魔女なんだよ」



「ああ、それはこの身をもって体験済みだ。お前は・・・華煉は唯一無二の、最高の魔女だ」



「ふふっ、お褒めに与り恐悦至極・・・なんてね。でも、以前にも伝えたけどあたしはこれ以上の手助けは出来ないからね」



「ああ、制約の一つだろ。覚えてるよ。だから、お前の力はアテにはしないさ」



「なら結構。じゃあ頑張って涼子ちゃんを救ってあげてね。それは恭ちゃんしかできない事だから」



「言われるまでもない。涼子を死の宿命から必ず救う。他の誰でもない、この僕が」



「あんま気負いすぎないようにね。それじゃあまた会うその時まで」



軽い足取りで去っていく華煉の背に、僕は聞こえるかどうかの声量で呟いた。



「僕は例え絶望しても、諦めない。必ず、涼子を救ってみせる」



聞こえなかったのだろうか、華煉は立ち止まりもせずに屋上から去る。

・・・聞こえていようが、いまいが、どちらでもいい。

今のは、僕自身に言い聞かせる意味合いもあったのだから。

さて、まずは・・・この寝巻き状態をどうにかしてから行動だな。

・・・・・・この格好で家に帰るのがちょっと、いやかなり鬱だが。





















「せいぜい気が済むまで足掻いてね、恭ちゃん。すべてが徒労に終わっても、人は諦めない限り前に進める。・・・けどそれが何回も続いたら?今回の恭ちゃんは何回で心が壊れるかな?楽しみだなー、ねえ、あなたは何回くらいで壊れると思う?」



「・・・それを俺に聞くか?」



「うん。ちなみにあたしの予想だと・・・・・・二十回目くらいかな?今回の恭ちゃんは何か長続きしそうなんだよねー」



「・・・短くても長くても、この時の螺旋に足を踏み入れた瞬間こそが最低の選択で、最悪の行動だ。それ以上でもそれ以下でもない」



「くすくすっ、貴方らしいわね。さすがは・・・」



「お喋りはもういいだろ?俺はもう行くぞ」



「長年の付き合いなのにツレないなー」



「・・・俺個人の願いとしては、この長い付き合いを終わらせたい。今すぐにでもな」



「それは貴方だけの一存じゃあ叶えられないね。良くも悪くも、恭ちゃんにその選択は委ねられてるんだから」



「ちっ」



「苛立つ気持ちもわかるけど、貴方が受け持つ仕事はちゃんとやってよ?あれは重要なことなんだから」



「・・・・・・俺は、いつになったら死神役を降りれるんだ?」



「さっきも言ったよね?すべては恭ちゃん次第だよ」



「・・・悪魔め」



「あははは、あたしは性悪悪魔なんかじゃないよ。あたしは魔女。親切で不親切な、慈愛にみちて自愛する残酷な、魔女だよ。あはははははははははははははははははははっははははははははははははははははははははははは」











































































































というわけで巡り廻る・流転はここまでです。

本当は続編書くつもりはなかった故の短編だったんですけど・・・まあ幸いと言うべきか、ブックマーク登録してくれた方がいたんで(一人だけですけど)ちょっと頑張ってみました。

しかし作者自身の自己満足、自己完結したこの作品に登録した貴方には感謝を。

読んでくれたかはわかりませんが、楽しんでいただければ嬉しいです。

ちなみにまだ続きます。

全四部予定(汗)

やるからには結末までちゃんと書きます!

・・・ちなみにハッピーエンドかバッドエンドかはまだ決まってません。

現時点ではまだ迷ってます。

まあ・・・続きはいつになるかも未定なんですけどね(爆)

ではまた会う日まで。


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