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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


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第93射:処罰保留

処罰保留



Side:タダノリ・タナカ



犯人というか黒幕はあっさり見つかった。

良くある話だ。腹心である宰相の独断専行。

まあ、地球よりマシなのは、私欲ではなく、国の為に動いたことか。

いや、まあ地球でもいるにはいるがな。それが正しいと思い込んでるやつ。

まあ、この手はやりやすい。なにせ自分は間違っていないから、堂々と暴れるからな。

それとは対照的に間違っていると分かっていても動く奴が本当に手ごわい。

証拠などは徹底的に隠して、自分の立場や周りを考慮して動くからな。


分類的には宰相は手ごわい方だったのだが……本人がわざわざ潰しに来てくれて状況は一変した。

銃器という戦力を見極められなかったのが原因だろうがな。

おかげで、俺たちは今後の安全をある程度確保できたわけだ。

そして、宰相の処罰だが……。


「フォアマン。お前には今後の責任を取る意味でも、後進を育て、今後監視の元に動くことを命じる」

「はっ」


結局、ルーメル王の下した処罰は、現状維持というやつになった。

まあ、お姫さんやルクセン君たちは命の危険にさらされたのだから、首でも切ってほしいとは思っていただろうが、政治的な判断というやつだ。

地下牢でも話したが、ここで宰相を切れば、何かしら混乱。最悪は内乱まで発展しかねない。

ここはこれで押さえるしかないのだ。

幸いなのは、宰相は本当に個人で止めを刺すつもりだったのか、ほかにいるはずの部下には特に何も連絡をしてなかったことだな。

下手をすれば、一気に謀反というのもありえたわけだ。

だが、それをしなかったということは、国に対して不満があるわけではなく、本当に魔王軍が攻め寄せてくることを心配しての、先制攻撃がしたかったというのが本当だということがわかる。



「とはいえ、フォアマン宰相の部下が勝手に俺たちを攻撃することもあるだろうから、警戒だけは常に怠るなよ」

「「「はい」」」


部屋に戻った俺たちは、再び今後のことについて話し合う前に、今までのことをまとめていた。


「でもさ、結局のところ。僕たちって魔王や魔族を倒すというか、殺すために呼ばれたのは変わりないんだよねー。やる気にならないなー」

「向こうが攻めていれば別なのですが」

「全然動いていない相手を攻めるのもなー」


と、こんな感じで、3人は正直やる気をなくしている。

まあ、勇者として呼ばれて、困っている人を助ける。いや、世界を救えといわれていたのが、結局、侵略戦争の先方になれ。

しかも、その成果に対する報酬は、貴族の位とわずかな領地、バカげているよなー。ああ、それか当てのない地球への帰還約束ときたもんだ。

これでやる気になれるやつがいたら、相当損得勘定が出来ないただのバカ野郎ということになる。

いや、バカじゃないな。危険人物だ。人を殺せと言われたら何も考えずに殺すってことだからな。

ん? それって傭兵か? いやー、傭兵はちゃんとそれに見合う報酬があってこそ動くんだ。割に合わなすぎる。


「まあまあ、これでアキラさんたちが魔王城に切り込むなんてことはほぼないんですからよかったですよー」


そう言って、みんなのお茶を用意するのは、メイド冒険者のヨフィアだ。

結城君やルクセン君、大和君が好きな彼女にとっては戦いがなくてうれし限りだよな。


「問題は、宰相が係わっていた、手を結んでいた魔族の関係ですな」

「そこから、恨みを買えばどうなるかわかりません」


そういうのは、リカルドとキシュアだ。


「そうだな。問題はリカルドやキシュアが言うところだな。どこまで魔族の情報網が広いか、そして仲間意識があるかだな。まあ、普通はスパイ、密偵の1人や2人がばれて処刑されたからといって、国が動くわけもないんだけどな」


どこの国だって、他の国の動向を窺うために情報を集めるのは当たり前だからな。

地球だって日常茶飯事だ。そしてばれたら始末される。

そういう人材は基本的に使い捨ての、大量投入が当たり前だからな。

俺たち末端の兵士と一緒さ。

だが、今回はちょっと話が違ってくるんだよなぁ……。

それは、リカルドたちもわかっているようで。


「普通でしたら、タナカ殿のいうとおりでしょうが、今回は状況が違いますからな」

「はい。魔王を倒すための勇者を召喚した。この事実を知った魔族がどう行動を起こすか想像がつきません」

「傍から見れば、侵略準備をしていますって話だからな」


勇者というのは、地球的に見れば、大量破壊兵器の一種だ。

そんなものを配備したのだから、他の国が警戒するのは当然、これが目の敵にされていると自覚している魔族の国、魔王ならこの状況をどう見るか?

そりゃー、当然、魔王を魔族の国を攻めようと準備をしているように見えるに決まっている。

これを知って魔族の国がどう動くかさっぱりわからん。

血気盛んなら、先制攻撃で潰して来ようとするだろう。向こうも自国の安全保障がかかっているからな。

というか、いままでこちらから仕掛けられた実績もあるからな……。

まあ、どこまで侵攻できたかは不明だが、警戒するには値するよな。


「さて、この程度のことを想像できない王や宰相じゃないだろうから、どんな答えを出すかな?」

「ひとまずは、宰相さんが繋がっていた魔族とやらの情報を聞き出すんじゃないですか?」

「そうですわね。そこが一番の情報源ですわね」

「面倒なことにはならないといいけどなー」


結城君の言う通り、今情報を一番持っているのは、宰相だ。

あいつが、どれだけ正直に話すかで今度の流れが変わってくる。

裏切るなら、今度こそあいつの最後になるか、俺たちが全滅するかになるだろう。


「というかさ、ドトゥスはどうなったんだろう? あれから見てないよね?」

「そういえば、地下牢から一緒に連れていかれていたけど、どこに行ったんだろうな?」

「普通に他の牢屋ではないですか? ドトゥスに指示を出していた宰相は捕まりましたし、話を聞くのは別にドトゥスでなくてもいいでしょう。まあ、事実確認ぐらいはするでしょうが」

「大和君の言う通りだろうな。しかし、あからさまに処罰はできない可能性が高いな」

「なんで? ジョシーって女をけしかけて僕たちを殺しかけたのに?」

「そうなると、上の宰相も処罰しないといけないだろう?」

「?」


俺が返した言葉に首を傾げるルクセン君。

あー、話が難しかったか、さてどう説明したものかと思っていると、俺の代わりに大和君が口を開く。


「そうですね……ドトゥスが宰相に指示を受けたといえば、宰相も処罰をしなくてはいけません。これはわかりますか?」

「うん。それはわかる。でも、それは黙っておけばいいんじゃない?」

「そうもいきませんわ。ドトゥスを襲撃事件の犯人として処罰した場合、宰相を何かあった時に処罰することができなくなりますわ。私たちは真実を知っているから納得できますが、傍から見れば終わった事件の責任をまた負わせているわけですから」

「「「あー、なるほど」」」


なぜか、大和君の説明にルクセン君だけでなく、リカルドたちも納得する。

お前ら……と思いつつも、兵士が政治に口を出すべきではないし、この反応は当然か?

ヨフィアは、まあ、情報を聞いたクォレンが判断することか。

ともかく、ちゃんと説明してくれた大和君にお礼を言おう。


「……まあ、いいか。大和君丁寧な説明ありがとう。わかりやすかった」

「いえ。これぐらいはわかりますわ」


うん。本当にこういう知識というか人の動きの話は大和君は得意だよな。

で、今更、それが理解できなかった、ルクセン君を除く大人の脳みそを鍛える暇はない。

まあ、バカだからこそ、俺たちのことを信用しているというところもあるだろう。

バカで騙される可能性もあるのは今は考慮しない。

特にヨフィアは結城君がいる限りは裏切らないだろうしな。


「まあ、大和君が言ったようにドトゥスの処罰をせずに、宰相を最終的に退任もしくは、首を斬るための罪状として保留する予定だろうな」

『その通りです』


俺がそういうと、部屋の外、ドアの向こうから返事がある。

この声は、と思い、普通にドアに近寄り開けるとそこにはお姫さんとカチュアが立っていた。


「流石ですね。説明のために訪れたのですが、その答えにたどり着いているとは。とりあえず中に入れていただいても?」

「どうぞ」


特に拒む理由もないので、お姫さんとカチュアを部屋に招き入れる。


「ねえ。お姫様。ここに来たってことは、大体情報を聞き出したの?」

「はい。ヒカル様。宰相から粗方話は聞き出しましたので、こちらにご報告へやってきました。そのついでというのは何ですが、宰相の処罰の経緯やドトゥスの話もするつもりだったのですが、そちらの説明は必要ないようですね。ナデシコ様やタナカ殿の言う通り、処罰するのは色々とまずいので保留ということになりました」


ま、調査中ということにしておけば事件は終わっていないってことになるからな。

あの宰相をいつか切るつもりなら、この失点をドトゥスで清算するのはよろしくない。

次の尻尾はきっとつかめないだろうからな。


「宰相と伯爵の処罰の話はいいとして、情報はどんなことが出たんですか?」

「今後、私たちが何か動くような話はありましたか?」


問題はそこだ。

俺たちの今後の方針は決まったのか?

それとも無期限待機となるのか?

まあ、情報がないならないで、こっちで情報を集めるだけの話ではあるんだが。

宰相側からの情報提供があるならあるで、それはそれでありがたい。


「はい。宰相の情報が確かであれば、魔族がよく訪れる村があるそうです。そちらで物資の交換、主に食料や家畜を仕入れているとの話です。そこで、勇者様たちを襲った魔族と知り合ったと」

「食料の仕入れって、普通のことだよね。それに今まで気が付かなかったってこと?」

「恥ずかしながらそうです。とはいえ、この国に存在している全ての村の事情を把握はできません」


そうだろうな。

日本だって各県の住人を全部政府が把握できているわけじゃない。

出生届のない人、戸籍のない人や、密入国している人も世の中ごまんといるからな。


「で、どうするんだ? そこに訪れている魔族を捕縛でもして処刑するのか?」

「……そんなことはできません。そんなことをすれば、本当に開戦してしまいます」

「だろうな。それをわかっているからこそ、宰相も今まで手出しをしなかった」


宰相が俺たちを使って魔族を倒そうとしてのは、昔に行った征伐の報復を恐れてのためだ。

なのに、魔族を刺激するようなことはしないだろう。


「宰相は本来、魔族の動向を窺うために、勇者様たちを襲った者と情報のやり取りをしていたそうです。ですが……」

「そんな時、お姫さんが勇者召喚を成功させて、兆しが見えてしまった」

「はい。ですが、勇者様たちは魔王討伐を拒否された」

「だから、その魔族を俺たちの危機感をたきつける役とすることにした。ついでに、戦力を測り、よしんば死んでも次を呼び出せばいいと思ったわけだ。そして、それもはずれて、今回の強行に走ったと」

「そのようです」


その野望は俺たちの出現によって防がれたわけだ。

いや、防がれたというか国土防衛戦略が崩壊したともいうべきか。

ちっ、それを考えると、今後は責任を取れという方向性に変わってくるかもな。

とんだ言いがかりではあるが、勇者が非協力的で防衛戦略が崩れたとの言うのは事実だ。

自業自得の話だとしてもだ。

となると、早急に動かないと非難の的だな。


「で、今度はその村に言って宰相の話が本当かどうかを、本当ならどこまで魔族が動いているのかを調査するってことでいいか?」

「はい。そうなります」


事態が事態だ。

俺たちは休むことなく、次なる戦場へと赴くのであった。

いや、戦場とは限らないけどな。

とりあえず、使える人材はこうして常に前線に回されることになるんだよな。







大人って汚い!! っていうあれ。

ジュ〇ーが怒ってブラ〇トさんが殴られるね。

ネタがわかる人は、まあガンダム好きやろなー。


そして、物語は魔族と接触を目指すことに。

あの未来はやはり避けられないのか?



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[一言] 「殴りたければ俺を殴れ!」 (ZZは大破…Zか百式で殴るか?)
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