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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


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第86射:未来予知についての話

未来予知についての話



Side:ヒカリ・アールス・ルクセン



「ユーリア、何度言えばわかる。この世界の問題は……」

「失礼します」

「ユーリア!!」


あーあー、お姫様怒っちゃって出て行っちゃった。


「なあ、光。あれってパターンだよな?」

「だねー。信じてもらえないから、勝手にうごくってやつ」


適当な空想物語だと思っていたけど、案外リアルな話かもしれない。

誰も信じてくれないから、自分で行動する。

まあ、迷惑被った僕たちもいるんだけど、未来予知の物語を知っている身としては、なんというか微妙な気持ちだ。


とは言え、このままだと僕たちは魔物の大群と戦うわけになるんだから、命がけだよねー。

正直、そんな目にあいたくないから、帰してほしいってのも本音だけど、お姫様を助けてもいいかなーとも思うのも本音なんだよね。

なんだかんだ言って、頼られて呼ばれたのは事実だから、助けられるかもしれない相手を放って帰るのは罪悪感あるんだよねー。

まあ、これも日本に生まれたからかな?

困っている人は助けなさい。ってやつかな?

とは言え、お父さんもお母さんも命を捨てて人助けをしろとは言わないだろうけどね。

この気持ちもきっと田中さんに鍛えられて、自分が強くなったと思うから言えることなんだけど、最初の頃なら無理無理って断っているだろうし、人間って掌直ぐに返すからあれだなーと自分で思ってしまう。


「魔物の大軍と戦うかはまだ分かりませんが、あれでお姫様が命を落とすのは避けたいですわね」

「だな。俺たちの帰る手段を握っている相手でもある」

「あ、いえ、そう言うつもりは……」


撫子は純粋に、お互い国の為を思って動いているのに、死ぬなんて結末はアレだからって言ったつもりなんだろうけど、田中さんは帰るために必要だから死なせるわけにはいかないっていう話なんだよなー。

ドライというか、傭兵らしいというか、田中さんらしいって言えばいいのかな?

まあ、助けることには賛成だからいいか。

そう思っていると、王様が怒って立った状態から席に座り直した。


「……勇者殿たち、あのような姿を見せて申し訳ない」

「いえ、お気になさらず。どちらの気持ちも分かりますから」

「ナデシコ殿。心遣い感謝する。だが、あの態度はな……」


確かに、一国のお姫様としてはどうかと思うけどねー。

未来の破滅が分かっているなら、どうしてもって思うよねー。


「まあ、お姫さんの未来予知を知っているなら、娘の気持ちも分からんでもないだろう?」

「タナカ殿たちもやはり聞いていたか。そうでもなければ、傍から見ればわがまま娘に付き合おうとは思わんだろうな。しかし、あの夢物語を信じたのか? 何か予言でもして見せたか?」

「あー、いえ。そんな物語を知っていまして……」


晃が言いにくそうに答える。

まあ、どういう話だよ?って言われそうだよね。

で、それを後押しするように、田中さんが口を開く。


「まあ、そういう物語に付け加えて、あんな馬鹿な話をする理由もないだろう? ほかにもっともらしいことも言えたはずだ。友人が魔族に殺されたとかな」

「なるほどな。タナカ殿の言う通りだ。信じさせたいのであればそれらしいことを言った方がよい。だから逆に信じるに値するか」

「別に騙されて笑われても、俺たちは世間知らずで通るからな」

「確かにな」


うわー、そういうことまで考えてたのか。相変わらず凄いな。

でも、王様と同じように超納得できる理由だ。


「で、お姫さんの未来予知は実際どんなもんなんだ?」

「そうだな。当たったり外れたりだな。半々といったところか。本人は回避できたと言っているがな」

「なるほどなー。予知回避はできるわけだ。助かったな。まあ、だからこそだろうが」

「予知回避? 助かったというのは?」

「まあ、文字通りだな。予測といったほうがわかりやすいか。例えば、そのテーブルに置いてある押収品を貸してもらっていいか?」

「構わない」


そういうと田中さんは杖のようなものを選んでテーブルの上に立てる。


「さあ、王様も他の皆もこの杖は俺が手を放したら、どちら側に倒れると思う?」

「ふむ。これは確かに予測だな。どちらに倒れるか。まあ、私はタナカ殿の正面としておこう」


ああ、なるほど。そういうことか、どこに杖が倒れるか予想する。これが予測ってことだね。

僕たちも納得してどこに倒れるかを言って、それを聞いた田中さんが最後に手を放して、杖を倒すと、杖はコロンと正面に倒れる。


「予測が当たったのは王様だったな。しかし、この予測を回避したい場合は……」

「なるほど。何らかの手を意図的に加えて、結果を変えるというわけか」

「そう言うこと。まあ、未来予知の力を持っているお姫さんしか、結末は知らないから、結果が変わったかは分からないがな」

「話は分かるが、助かったというのはどういうことだ?」

「予知回避ができないタイプもあるんだよ。こういう能力には」

「なんと」


ああ、そんなのあったね。

どんなにあがいても行動の結果、見た未来になるとかいう不可避な話。

それが不幸な結末なら救いも何もない。


「そっちの能力だと、未来はほぼ変えられないから絶望する者も多い。まあ、最後まであきらめない奴も存在するけどな」

「その場合だと不味いと思ったわけか」

「そうだ。どうあがいてもその状況に追い込まれるってことが確定しているからな。お姫様の予知が確定の場合、俺たちが大軍と向かいあうことは絶対だ。そうなると、その準備をした方がいいだろう? まあ、最悪なのは誰かが死んでいるシーンを見ることだが、それはないし、元からお姫様の未来予知は回避可能の予知だ」

「しかし、なおの事それを信じるわけにはいかない。私は王だ。そのような荒唐無稽な話を信じるわけにはいかない。必ず予知が当たるならともかく。いや、当たるなら尚の事、表に出すわけにはいかないか」

「だな。いいことだけなら喜ぶべき予知だろうが、悪い予知は不可避という意味でもあるから、予知をするお姫さんのせいと言われることもあるだろうな」


あー、あるよね。

そう言うパターン。お前が見るからって話。

あれ? でも、夢見たものが現実になる話ってのもあったような?

まあ、そうじゃないって話だしいいか。

しかし、未来予知があるってことは、夢見たものを現実にするスキルっていうのもありそうだね。

……その時僕たちはどうするべきなんだろう?

世の中の為に……、いや、そういうことは考えるのはよそう。


「とは言え、その魔物の群れと戦うことになる原因を取り除かないと、あのお姫さんは俺たちを返してくれそうにないな」

「……そこは何としても説得するので待ってほしい」

「いや、気持ちはありがたいが、今までのことを考えると反発するだろう。それなら、俺たちが協力して、その状況にならないと安心させた方がいいだろうな。せかしたり、拘束したところで、研究が捗るわけでもないだろう? なあ、マノジル殿」

「……うむ。それどころか、強制された姫様はやる気をなくすかと」


まあ、そうだよね。

無理やりやらせて成果が上がるようなことは珍しいよね。

やる気がないんだからさ。


「それは私も分かっている。しかし、タナカ殿。貴殿は最初から勇者殿、いや、子供たちの安全の為にその体を張って来た。それなのに、戦いに出ることをよしとするのか?」

「難しいところだが、俺たちが逃げたり戦わなければ、お姫さんはそのために行動をなにか起こすだろう。それでお姫さんに何かあっても問題で、最悪なのはお姫さんが俺たちをなんとか策を弄して戦いに巻き込もうとすることだ。俺たちが準備不足、あるいは、また誰かを暗殺するような真似にでるかもしれないからな。それを避けるために一緒の方がいい」


そんなことはない。とは言えないのがつらいね。

あのお姫様は実際僕たちを呼び出すために召喚をしたんだからね。

下手に放置しておくのは問題にみえる。


「……私としてはユーリアの監視も兼ねられて、ありがたい話だが、それで良いのか?」

「良いも悪いもないってところだな。俺たちは俺たちの安全のために動くって話だ。と言った方が気楽だろうし、善意でと言われるより信用できるだろう?」

「まあな」


そうか。ここでお姫様を助けたいって言うのは変だよね。

というか、お姫様に味方するって王様に宣言するようなものだし、それで魔物の大群が訪れるなんて僕たちが言って回る可能性だってあるんだ。

そうなると、国としては大打撃だよね。

だからこそ、僕たちは僕たちで動く理由がいるってことか。


「で、お姫さんの未来予知のことを知っているのは一体どれだけいる? そこが問題だ。お姫様を担ぎ上げて、何かする輩が出る可能性もある」

「私もそれを警戒して、誰にも言っておらん。カチュアぐらいのものだろう。そもそも言っても誰も信じてもらえんだろうが、だが予知があたるとなれば、それを理由に担ぎ上げようとするだろうな。今回みたいに」


あー、そうか。

よくよく考えれば、お姫様がドトゥス伯爵に協力してもらったのって、伯爵にもちゃんとご褒美があったからだよね。

別にお姫様がだけが悪いという話じゃない、ドトゥス伯爵に何か狙いがあったはずだね。


「……そういえば、本当にドトゥス伯爵の暴走の件については何も?」

「ふむ。本当に知らん。が、今回の一連の流れはユーリアが作ったとはいえ、色々なことが絡みすぎというのはある。勇者召喚に始まり、勇者殿たちを魔族が襲い、魔族と貴族の繋がりが分かった。個人的には、ユーリアが勇者殿たちを召喚したから始まったと思うのだがな……。動きが速い、早すぎると感じる。勇者と呼ばれる者はそれなりにいるからな。まあ、異世界から来た者たちではなく、現地の勇者だな。ステータスでは勇者と表記されないが、それなりに功を上げたものたちだ」


確かにね。

田中さんが襲われたのは、まあ、お姫様とぶつかったからだろうけど、まだこっちにきて3か月ぐらいだ。

その短期間に、わざわざ僕たちを狙った魔族が動くっていうのは、なかなか動きが速いよね。

あと、驚きなのは、勇者って呼ばれる人はほかにもいるんだ。

まあ、僕たちみたいなのが勇者って呼ばれるんだから、ローエルさんやオーヴィク、ラーリィだって勇者だよね。

僕たちより普通に強いんだから。


「そうだな。俺たちを警戒するぐらいなら、もっと警戒するべき相手が他にいるよな。そうなると、何かルーメル内部で色々あるんじゃないか? ここまでピンポイントにルーメル国内が乱れるのはそれぐらいしか理由がないんだろう? まあ、リテアもガルツもロシュールも問題が無いとは言えないが」


まあ、ガルツとロシュールは戦争中だし、リテアの方は大森林の方から魔物が出てきているしねー。確かに、問題がないとは言えない。

そう言われて、王様が考え込む様子を見せて口を開く。


「……考えたくはないが、兄のことかもしれんな」

「兄というと、王様のか?」

「そうだ。私には兄がいた。まあ、領土拡張が第一でな。ルーメルの威光を輝かせるのが目的でな。どうも、他の国と軋轢が生じていた。大国だけではなく、周りの小国にも対してだからな」

「新参国だからか?」

「それだけではないだろうが、それも原因の1つだろうな。そして、大森林の奥への魔王征伐を行い帰らぬ人となった」


そっか、王様にはお兄さんがいたんだ。

それで、魔王討伐に行って戻ってこなかった。

なら、お姫様が必死になるのは当然じゃないかな?

そう思っていると、田中さんが口を開く。


「その関係で、未だにその兄を支持する者が残っている可能性があると?」

「まあな。だが、私を失脚させるために、ユーリアはともかく、魔族と手を組むのはな……」

「全部が全部繋がっているわけでもないだろうが、魔族と手を組むのはある意味理解できるがな」

「どういうことだ?」

「これで、魔族が勇者を襲えば、確実に魔王討伐が始まる。それは兄の望みだろう?」


あー、そうか。

別に王様をどうこうではなくて、魔王を倒したいって人はきっかけを作るためにってことか。

でも、それで魔族と手を組むのはなんか本末転倒な気がするけどなー。


「……なるほどな。兄の魔王討伐に執着しているか……。確かに、あの討伐に加わっていたものは多い。あながち、あり得ない話ではないな。私たちを炊きつけるために、宿敵を利用すると考えると納得はいく」


そう言う考え方もあるかー。

うーん。なんかこの話し合いは妙なことになって来たなー。

僕は、お姫様の未来予知はハズレてないかもしれないと思い始めたね。







未来予知の物語って面倒だよねー。

まあ、今回は不可避の未来ではないから、やりようはあるのかも?

あれ、SFとファンタジーがまじりあい、無敵に見える?


現場の本人たちは大変だろうけどね。



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