第84射:しらんふり
しらんふり
Side:アキラ・ユウキ
ちゅんちゅん……。
そんな鳥の声が聞こえて目が覚める。
「……今思ったけど、こっちの世界にもスズメっているんだな」
今更そんなことを考えながら、ベッドから身を起こす。
「あー……。なんか腰がいたい。いいベッドで寝たからかな?」
昨日はお城に泊まって、かなりいい部屋に泊まったんだよな。
城下のホテルもそれなりにいいところだったけど、流石にお城にはかなわない。
無駄に広いところが俺には合わないけど……。
俺は唯一、男の勇者ということで、個室を与えられたのだ。
別に田中さんたちと一緒の部屋で雑魚寝でもよかったのだが、立場上やめてくれと言われたのだ。
まあ、今回は事情が事情なので、勇者を雑に扱うわけにはいかないからなー。
とはいえ、流石に昨日の襲撃があったので、隣の部屋に皆いるし、田中さんたちも俺と同じような部屋が与えられているのが幸いかな。
田中さんは最初の時なんか、物置に簡易なベッド置いただけの酷い所だったし。
「と、そんなことはいいか。起きて、みんなの様子を見ないとな」
寝ぼけた頭を振って、ベッドから降りようとすると……。
ぷにっ。
何か柔らかい物が手に触れた。
ぞわっと鳥肌が立って、反対側へと即座に飛び出る。
昨日の今日でまた敵か!?
そう思った俺は直ぐに剣を構える。
田中さんから言われてたおかげで、直ぐに武器を持てる位置に置いているのは助かったと思うが、相手の正体が分からない以上、油断はできない。
いつの間にベッドに入り込まれた? なんで何もしてこない? 一旦逃げるべきか? 背中を見せた瞬間やられる?
そんな考えがぐるぐる頭の中を巡るっていると、ベッドの中に行った正体不明の物体が掛け布団を押し上げて動く。
「んー……。あれ? アキラさーん。どこですかー?」
凄く聞き覚えのある声を聞いて脱力しながら……構えていた剣を下ろす。
「その声は、ヨフィアさんですか?」
「そーですよー。で、アキラさんはどこでねているんですかー? 見当たらないですよー?」
「いや、起きてますから」
「あららー。そうなんですかー」
そんな話をしてようやく、ヨフィアさんがベッドから姿を……。
「って、何で裸なんですか!?」
そこには生まれたままのヨフィアさんがチョコンとベッドに座っていた。
やっぱりというか、スタイルいいわ……特におっぱいが……、といかんいかん!!
俺は直ぐに目をそらす。
「えー? 私は寝るときは基本的に裸ですよー? そういえば、アキラさんは肌着きてますねー。下にはなんか妙なズボンはいてますしー」
「ズボンってこれは下着で……」
「下着?」
「「?」」
2人で首を傾げる。
あ、ちょっとまて、そう言えば、下着って昔はなかったっけ?
ローマ時代にはあったとか言う話はあったけど、それ以降はまた無くなって、下着がでてくるのは、かなり先のはずだ。
ブラジャーとか、女の物下着とかは特にそこまで歴史は古くないはずだ。
まあ、サラシとかいうのはあったけど、アレを下着というのは違うだろう。
とまあ、そんなことを思い出したので、それを説明するために、撫子と光を呼ぶことになった。
無論、呼んで、ヨフィアさんの姿を見た後……。
「アキラさん見損ないました。病み上がりの女性に無理やりなんて」
「いや、撫子。それはないでしょ。とはいえ、裸にして放置とかないよねー」
そう俺が非難されたのは、言うまでもない。
「なるほどー。こうして、胸を固定というか、保護するんですね。こりゃいいですねー。小さいこと以外」
「「ちっ」」
ヨフィアさんの言葉で、撫子と光が舌を打ちをする。
光はともかく、撫子もそれなりに気にしてたのか。
「そこの女心の分からない晃さん。私の下着を貸して小さいといわれて、不快な気持ちにならないほど、菩薩のような心の持ち主ではありませんわ」
「そして、僕が舌打ちしたのはさも当然と思っただろう? あとで校舎裏にこいや」
「すいませんでした」
素直に頭を下げて謝っておく。
こういうことは抵抗しないのが長生きのコツだ。
「晃さんの失礼はいいとして、なぜヨフィアさんはこの部屋に?」
「だね。一緒に寝たよね?」
ほっ、話がそれた。
しかし、やっぱり撫子たちとヨフィアさんは寝ていたみたいだけど、なんでこっちに?
「あー、ほら。アキラさんだけ1人って危険じゃないですか。タナカさんとリカルド様とかは心配するだけ無駄ですし」
「それで、晃さんの部屋にきたと?」
「ええ。こうして肌で温めていたんですよー。途中で抱きしめてくれたりしまして、いやー嬉しかったですねー」
ヨフィアさんの爆弾発言で、俺にきつい視線が集まる。
「寝てたんでさっぱりですよ」
「この男。寝てたから知らないとかいいだしましたわね」
「晃って、女の子を食い物にして、知らんぷりするんだー」
「いやいやいや」
「しくしく、アキラさんはあの夜のことを覚えていないんですねー」
くわー!? 女って奴は!!
絶対遊んでるよ!? でも口答えを許さないとか!?
誰か、誰か!?
そう思っていると、ドアから別の人がはいってきた。
「騒がしいぞ、何かあったのか?」
「どうされましたか?」
入ってきたのは田中さんとリカルドさんだった。
そして当然、全裸のヨフィアさんに視線がいき、こちらをみて、撫子たちを見る。
「あー、まあ、避妊はしろよ? あと、仲間に刺されるなよ?」
「まあ、男ですからな」
「違います!! 違いますから!!」
俺は必死に否定する。
ここでこの2人を味方に付けないと、俺のこれからの旅路は辛いモノになる。
なので、真剣に説明を……。
「と、からかうのはここまでにしておくか。ヨフィアもあんまり焦るなって言ってるだろうが」
する前に、田中さんがすたすたとヨフィアさんの横にいって頭をぽかっと殴る。
「えー? 昨日は私をその身で庇ってくれたんですよ? これって嫁になれってことですよね?」
「……リカルド。1つ聞くが、そんな婚前の風習があるのか? 押し倒したら、OKとか?」
「いや、私は聞いたことがありませんな」
「なら安心だな。というか、無理にこんなこと続けると逆に嫌われるからな?」
「え? そうなんですか!? 嫌いになりますか!?」
「あ、いえ……」
そう聞かれると、答えにくい。
嫌いとか言ったらヨフィアさん泣きそうだし……。
「お前は直球だな。まあ、結城君はまだ年下なんだ。恥ずかしがっている所もあるから、暖かく見守ってやれ」
「あー、そういうことですか。仕方がありません。今日の夜は手取り足取り、お姉さんが手ほどきしてあげましょう」
「あははは……」
俺はなんて言えばいいのか?
何が正解なんだ?
「この非常時に……」
「ま、晃も男の子ってわけか。今度から注意しないとなー」
この撫子と光の言葉は辛辣だし……。
「2人とも、そこまでにしてやれ、男女の付き合いにただの友人が口を挟む権利はないぞ? まあ、結城君を取られたくないというのなら話は別だが」
「……確かに、そう言われるとあれですわね。しかし、風紀が乱れるのは……」
「なんか、気を使いそうだよねー」
あー、それは分かる。
友だちに彼女ができたら、遊びに誘っていいのか悩むよな。
というか、やっぱりあまり撫子と光は俺のことを恋愛感情として好きではないように見えるよな。
田中さんの言葉にも特に反応しないし。
いや、安心したはずなんだけど、これはこれで興味ないって言われているみたいで辛いかな?
まあ、友だちであることには変わりないんだし、いいのか?
「さて、起きたついでだ、そこの痴女はさっさと服を着ろ。食堂に行って飯だ。その後は昨日のドトゥスがどうなったかを聞こう。結局昨日は、何も報告がなかったからな」
「ぶー。痴女じゃないですよ。というか、タナカさんも、リカルド様も私の肌を見ないでくださいなー。これはアキラさんだけの特権ですよー」
「なら尚の事さっさと服を着ろ」
そう言われて、服を着始めるヨフィアさん。
そこはいいとして、そういえば確かに昨日、ジョシーを呼び出したと思われるドトゥス伯爵の話は聞かなかったな?
何も手掛かりをつかめていないのだろうか?
そんなことを思いつつ、ヨフィアさんが着替えた後、食堂へ移動していると……。
「はなせっ!! 私は悪くない!! 誤解だ!! 陰謀だ!!」
なんか兵士が集まって騒がしい場面に出くわした。
何だろうと思っていると、別の通路からユーリアお姫様が出て来て……。
「ドトゥス!!」
なんか物凄い怒っている感じの声で、その男の名前を呼んだ。
ああ、あの小太りの男がドトゥス伯爵か。
捕まって連行されているんだなと、俺はようやく状況を理解した。
そして、そのドトゥスはお姫様を見つけた途端……。
「姫様!! この者どもを止めてくださいませ!! 私をあらぬ罪で屋敷まで押し寄せ、捕らえたのです!!」
あの女、ジョシーに家紋の入ったナイフ渡して、城内手引きまでしておいて白々しい……。
それは、お姫様も同じように思ったのか……。
「何をいまさら。証拠は挙がっているのです。あのジョシーという女を召喚したことも、まとめて私たちを葬ろうとしたことも!! あの女があなたの家紋のナイフを持っていたのですよ!!」
「ジョシー? はてなんのことですかな? 家紋が入ったナイフなど沢山ありますからな。だれか、勝手に持ち出したのでしょう」
ドトゥス伯爵はそうぬけぬけという。
明らかに知っている様子なのに、追い詰められない。
「屋敷の中に召喚術式があったのも確認しています」
「勝手に誰か作ったのでしょう」
「あなたが教えたからでしょう。あれは勝手に使ってよいモノではありませんよ。だからこそあんな女が……」
「女と言われても知りませんな。しかも、召喚術式といっても私が動かせるわけもありませんしな。姫様のように腕のよい魔術師というわけでもありませんし」
「魔術師を集めていたという話を聞いていますが?」
「それは、国の戦力を上げるためでございます。なにせ魔族と手を組んでいた愚か者がいたではありませんか」
「……では、本当にあの女の召喚に関与していないと? でも、召喚術式を教えたことは否定しませんでしたね」
「……まさか、実現できるとは思っていませんでしたな」
「「……」」
話は平行線だ。
伯爵の方はジョシーのことを認めれば、自分が処罰されることは確実だし、なんとしても回避したいだろうな。
まあ、あとは王様が判断することだよな。と思っていると……。
「そうか。お前さんがジョシーを呼んだわけじゃないんだな」
田中さんがそう言って、ドトゥス伯爵の前に出ていく。
「お前は、無礼なレベル1の平民か。私や姫様の前に立つなど恐れ多いぞ」
「無礼なのはそうだな。で、ジョシーを呼んだわけじゃないんだな?」
「しつこい。知らぬ」
「そうか」
ドトゥス伯爵は相変わらず知らないと言うと、田中さんは頷いて、即座に銃を取り出してドトゥスに向ける。
「き、貴様何をっ!?」
「ん? 何をって、ただおもちゃを取り出しただけだぞ? なんだと思うんだこれを?」
「そ、それは……」
「まさか、これが何か知ってるのか? 今来たばかりだよな?」
うわー、田中さん、伯爵が知らないって言ったのをいいことに銃で遊んでいる。
そして、伯爵のあの反応は銃を知っている。クロ確定だ。
ジョシーを呼んだのは伯爵で間違いない。
「知らないよな? だから、教えてやろう」
田中さんはそう言って、銃の引き金に指をかけて……。
「や、やめっ」
パンッ。
引き金を引き、伯爵は力なく倒れそうになり、取り押さえていた兵士たちが慌てて伯爵を支える。
「ちょっ、田中さんまずくない!?」
「話を聞かずに殺してしまうのは……」
流石に光と撫子が慌てて非難するが……。
「世の中には、空砲ってのがあってな。音と光だけのものがな。お姫さん。それは気絶しているだけだ。あとは任せるぞ」
「……なるほど。ありがとうございます。では、連れて行きなさい!!」
ということで、ドトゥス伯爵はこうして自爆をしてしまうのであった。
「さ、朝飯だ」
「そういえば、そうでしたね」
こんな事態が起こっても、朝ご飯を食べるのをやめない田中さんでした。
しらないなら、わからないよね?
という、鉄板のネタ。
わかりやすい白状のシーンであった。




