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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


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第82射:被害の把握

第82射:被害の把握



Side:ナデシコ・ヤマト



全く、とんでもないことになりました。

ただお姫様に話を聞きに来たつもりが、銃で撃たれることになるなんて。

しかも、考え無しの突撃で。


「……あれは、別に晃さんが好きだとか、そういうのではないはずですが」


あの時はどうも、頭に血が上ってしまいました。

ジョシーという、人を簡単に殺せる相手に怒りを覚えたんです。

なんでそんなに……と、思ったのです多分。


「いや、そんなに気にしてないから。というか、撫子が出なかったら、僕が向かってたし」

「だな。俺も二人が撃たれたら怒るぞ? というか、ジョシーってやつのセリフは明らかに挑発してるものだったからな」

「だねー。カチュアさんが撃たれた時に目を付けられてたって感じ。その時に撫子も敵認定してたでしょう」

「まあ、そうですね」


人をいきなり撃つとかやはり信じられない人種でした。


「まあまあ、私たちは無事だったんだし、それでいいでしょう。今後は同じ過ちは繰り返さないってことで」


そういうのは、同じく撃たれたヨフィアさん。

元気に話しているところを見るとちゃんと治療できているようです。


「とはいえ、動けなかった私たちも情けない限りだが」

「ですね。あの女の雰囲気にのまれていました」


リカルドさんとキシュアさんはそう言って、申し訳なさそうにしています。

ですが、あの時の対策は二人のようにおとなしくして時間を稼ぐべきでした。

ドアを塞ぐという作業も遅れましたし、色々反省するべき点は多いです。


「リカルドさんたちが無事でよかったよ。これでリカルドさんたちも撃たれてたら、誰か治療が間に合わずに死んでたかもしれないし」

「だな。別にリカルドさんたちは臆病とかそういうのじゃないですよ」

「ですわね。相手がおかしすぎます。しかし、あのジョシーという人を呼んだ相手はわかるのでしょうか?」


あれから、私たちは部屋を移されて待機しています。

そして、お姫様、カチュアさん、そしてあのジョシーと知り合いと思われ、とどめを刺した田中さんは事情を説明、およびジョシーの身体を調べるために王様と謁見するためにいません。


「でもさ、僕たちは部屋でドタバタしているうちに、お城の中もひどいことになっているよね」

「ああ。ジョシーってやつ遠慮せずに撃ちまくってたみたいだな」


2人の言う通り、部屋を移動するとき、私たちがいた区画はひどいモノでした。

爆風で傷ついていたり、弾痕があったり、血の跡があったり、最悪は亡くなった兵士を運んでいる姿を見たことでした。

あのジョシーという女が少しの間暴れただけで、多くの死者がでました。

改めて銃の恐ろしさを知り、何より、ためらいなく人を殺せる人がいる事が一番恐ろしいと実感しました。


「……今よりも強くならないといけません」


私がそういうと、他の皆も頷きます。

色々魔物の戦いや、冒険者ギルドでの治療、オーガテンペストという圧倒的な暴力により死んだ冒険者たちなどを見て、多少はマシになったかと思っていましたが、銃の前には何も役に立ちませんでした。

それと同時に、いかに地球の技術が凄いということを実感したのです。

銃だけではなく、それを扱う人もです。

あのジョシーという人はあれでしたが、それに対抗した田中はすごかったです。

銃口を向けられてもなお冷静に対処して、最後には倒し……、いえ殺して見せました。

あそこまでの相手は殺すしかないという判断はよくわかりました。

いかに、私たちが甘いことを考えていたのかもです。

剣や槍が相手ならという話ではありません。

命を奪える武器をこちらに向けている時点で、基本的に殺されても仕方がないと、ようやくわかりました。

剣や槍では私たちにとって今まで、命の危機になりえなかった。私たちの常識では、剣や槍は時代遅れのもの。

命を奪えるという意識が無かったのです。

ですが、銃を向けられた時に、命を奪われるかもしれないと、初めて恐怖しました。

それを助長するように、あのジョシーは次々と私の周りの人を撃っていき、私はあまりの理不尽に怒ることしかできませんでした。


「とは言え、銃を相手にしてどう対策すればいいのかなんてわかんないけどね」

「まあ、射線上に入らないってのが大事だろうけど」

「弾をよけるなんて無理ですからね。とりあえず、田中さんが戻ってきたら、教えてもらいましょう」


弾丸は見てよけるなんてのは不可能ですから、立ち回りを覚えるしかないです。

そう考えていると、不意に晃さんの行動を思い出します。


「そういえば、晃さんは動けていましたよね」

「へ? いや、俺は撃たれたぞ?」


本人は覚えていないのか、不思議そうにしていますが、確かに銃を目の前に適切に動いていました。


「あっ。思い出した。撫子の言う通りじゃん。ほら、ヨフィアさんを助けたじゃん」

「「「あ」」」


他の皆さんも今思い出したようです。

まあ、あの時はカチュアさんが撃たれてヨフィアさんが撃たれて、怒涛の状態でしたからね。


「そうだ。アキラさんが助けてくれたんですよね!! ありがとうございますー」


ヨフィアさんはそう言って晃さんに飛びつきます。


「いや、あの時のヨフィアさん撃たれたのに立ってましたし、本当に死ぬまで倒れない気がしたんで、迷惑かとは思ったんですが、押し倒しました」


確かに、カチュアさんがほぼ死んだような状態で、私以上に怒っていたヨフィアさんは、撃たれたのにも拘わらず、耐えて、ジョシーに進んでいました。

物凄い執念です。撃たれたからわかりますが、あれは立てる怪我ではありません。

力がスーッと抜けていくような感覚に陥ります。

恐らく血が滴っているからそう感じるのでしょうが、痛みと力が抜ける感覚で倒れるしかないのです。

とは言え、そのすごさを見せたからといって、あのジョシーが手加減をするわけもないですから、晃さんの判断は正しいと私は思います。

それはヨフィアさんも同じらしく、晃さんの言葉に首を横に振って……。


「いえー。あの時は頭に血が上っていました。アキラさんの助けが無ければ死んでましたねー。だから助かりました。これぞ、私の認めた男って感じですね。いや、頼りになります」

「それはよかったですけど。あんな状況は基本的に勘弁ですよ。次は助けられるかわかりません。というか、その後はあっさり撃たれましたし」

「あれは仕方がないです。ドアを封鎖しにかかった時のは仕方がありません。まさか、タナカ殿の攻撃をかいくぐってくるとは誰も思っていませんでしたから。というか私やリカルドが真っ先に動くべきでした」

「キシュアの言う通りです。アキラ殿に落ち度はなにもありません。あるとすれば、動けなかった私たちですな」


まあ、キシュアさん、リカルドさんが動いても結果は変わらない気がします。

あの女には私たち全員では勝てないような気がしましたから。


「しかし、あの女はどこから来たのでしょうな」

「ですね。銃を持っていたことを考えるとおそらくは、アキラ殿たちと同じ世界の人でしょうが、姫様は私たちと一緒にいましたし、いったいどこで召喚されたのでしょうか?」

「そこはいま、タナカさんたちが調べているんじゃ? あのクソ女の死体を調べるって言ってましたし」

「「「……」」」


その3人の疑問に私たちは口を開けませんでした。

おそらく、3人の言うようにあのジョシーという女性は地球から来たのは間違いありません。

田中さんを知り合いのように話していましたから。

ですが、問題はあのジョシーがこのお城で殺戮の限りを尽くしたというところです。

下手をすれば、私たちも同郷の者として処罰されるかもしれません。

処罰されなくても、その関係で、迫害されるかもしれない。

おそらく、晃さんも光さんもそれを想像して、口を閉じているのでしょう。

下手をすれば、ここから逃げることも考えないといけないかもしれません。

そんなことを考えていると、不意にドアが開きます。

私たちはとっさに身構えて、誰が入ってくるのかを確認していると……。


「いい反応だ。だが、過剰反応すぎるな。何もない相手だとかえって警戒させるから気を付けろ」

「田中さん」


晃さんの言う通り、入ってきたのは田中さんでした。

どうやら、王様の謁見は終わったようです。


「謁見はどうでしたか? 何かわかりましたか?」

「ま、謁見というより、死体検分だったけどな」


そう言いながら、田中さんはソファーに座ります。


「そういえば、姫様やカチュア殿、マノジル殿は?」

「ああ、あの3人は重要参考人ってやつだな」

「じゅうようさんこうにん? 重要参考人!? え!? お姫様たちが犯人ってこと?」


光さんの言葉に部屋の全員が驚きの顔になります。

だってあのお姫様の驚きようや、カチュアさんが撃たれた時の悲しみ様は本物でした。

あの様子で、じつは裏で繋がっていたなどというのは、なかなか信じられないものがあります。


「ああ、いや、犯人という話じゃない。ほら、召喚が関わっていただろう? この国にで召喚技術を扱えるのは、お姫さんに、マノジル爺さんだけだ。だから、文字通りの意味で重要参考人ってわけだ」

「なるほど」


確かに、召喚技術を扱えるのはその2人ぐらいでしょう。

他に沢山いるのであれば、既に多くの人が呼び出されているでしょうし、帰る方法も模索されているはずですからね。


「で、何かわかったの?」

「まあ、面白いことになっているな。ほら、ドトゥス伯爵が魔術師を集めているって件が有っただろう?」

「はい。確かそんな話がありましたね」

「どうやら、あのジョシーを呼び出したのはそのドトゥス伯爵のようなんだ。ジョシーの持っていた短剣がドトゥス伯爵の物でな。まあ、状況的に考えて、お姫さんに黙って勝手に動いた感じだな。ほら、ジョシーの奴は仕事を受けたって言ってただろう?」

「つまり、あのジョシーという女性が私たちを殺しにきたのは、ドトゥス伯爵の依頼ということですか?」

「さあな。その真意を調べるためにも、今ドトゥス伯爵の所へ慌てて、兵が向かっている所だ。まあ、ジョシーの奴が普通に仕事って言ってたしな。それで確定だろう」


……ドトゥス伯爵ですか。

顔を合わせたことはないですが、一体なんであんな危険人物を送り込んできたのでしょうか?

いや、殺すというのはわかりますが、私たちだけではなく、お姫様も殺すつもりの様に見えました。

そんなことを考えていると、不意に光さんが質問をします。


「ドトゥスって人があのジョシーっていうのを呼んだのは分かったけど、その人と、田中さんなんか知り合いみたいな感じじゃなかった?」


そうでした。

あのジョシーという人は田中さんのことをダストと呼んでいました。

どういう知り合いだったんでしょうか?


「ん? ああ、知り合いだぞ。元々同じ傭兵団にいた。でも、死んだと思っていたんだけどな。こっちに呼ばれてたとはな。というか、時間もバラバラに呼ばれるみたいだな。面倒な」

「いやいや、あっさり流すところじゃないですよ!? 時間もバラバラに呼ばれるって言うのはあれですけど、知り合いどころか、同じ傭兵団ってことは仲間だったんじゃないですか?」


晃さんの言う通り、あっさり流すことでじゃないです。

田中さんの話が本当なら、味方を、仲間を殺したってことに……。

そう思っていると、田中さんは気にした様子もなく。


「あー、そこを気にしているのか。ま、仕事仲間ってだけで、敵対するなら殺す。それが傭兵のルールだしな。とはいえ、無理に殺し合う必要がなければ戦いは避けるけどな。弾の無駄だし」


と、普通に答えを返しますが、その何も感情がないような返事に私は、改めて田中さん、傭兵というモノの凄さを実感したのでした。





侵入されたジョシーに対して被った人的被害は甚大。

これが銃と、剣と魔法の差である。


そして、ジョシーもさらなる新型兵器ドローンによって倒れるから、武器や知識の更新ってひつようやね。

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