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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


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第77射:森の賢者

森の賢者



Side:タダノリ・タナカ



「迂闊に離れるなよ。絡まれるのも面倒だからな」


俺はそう言って、スラムの裏路地を進んでいる。


「はい」

「わかりました」

「でもさー、ひどい匂いだよ」


結城君たちは今のところ平気なようだな。

まあ、臭い以外な。

スラムの裏路地に衛生観念なんてないに等しいからな。


「しかし、まだなのか?」

「あー、教えられた場所はもうちょっとですねー」


一番後ろで襲撃に備えているヨフィアはそう返事をする。

最悪だよな、この道。狭すぎて、挟撃されればまともに戦うのは厳しい。

ここで襲われればそりゃやられるわ。

そして、人が潜伏するにはもってこいだな。

ここで冒険者ギルドと闇ギルドがぶつかったんなら、確かに被害は大きくなるわ。

そんな妙な納得をしながら進んでいくと、ある扉の前でストップがかかる。


「ここですよー」

「こりゃ、なかなか厳しいな」


入り組みすぎて、ここがどこだかわからん。

結城君たちだけで来ていれば迷子確実だ。土地勘のあるヨフィアを連れてきて正解だったな。

俺は、普通に道を聞きながら帰るがな。


「で、普通にドアを叩くものか? 何か合言葉でもあるのか? それとも勝手に入っていいのか?」


そういえば、どう入ればいいのは聞いてなかった。

こういう情報屋はアポが無ければ基本会ってくれない。

自分の命の危険があるからな。まず、普通は酒場とかで待ち合わせて、ただの飲み友達の様に話すのが一般的なんだが。

こんなところに行けば自分の居場所をばらすようなもんだからな。

と、思っていたら意外なことにドアが開いて……。


「いや、お前さんたちなら、私から迎え入れるよ」


そう言って出てきたのは、妙齢の女性だった。


「おひさしぶりですー。フクロウお姉さま」

「はっ、お前がさまだって? ゾッとするね。メイド暮らしがよっぽど気に入ったみたいだね」

「そりゃーもう。ほら、私のいい人もできましたし」

「ただ殺すだけのお前がねー」


そうフクロウという女性はヨフィアの態度に呆れながら、俺と結城君に視線を向ける。


「……この男じゃないね。化け物だ。となるとこっちの小僧か?」

「小僧じゃないですよー。フクロウお姉さまなら、この人たちが勇者様ってわかるはずですよー」

「えーい。その間延びした喋りかたと、様と呼ぶんじゃない。この血まみれ小娘が」

「おいゴラ。フクロウババア。その名前で呼ぶんじゃねえよ」


地雷の名前か知らんが、こっちがヨフィアの素か。

今までとのギャップがありすぎて、結城君たちが目を点にしている。


「おうおう。その調子だ。で、そこの小僧。いや、勇者アキラ殿。こんな殺人鬼の小娘がいいかい?」

「へ? いや、ヨフィアさんはそんな好き好んで人を殺すような人じゃないですよ。俺たちがこうして生きてますし、今までお世話になってますから信じられます」

「……迷いなく言ったな。こいつは生粋のバカか能天気かと疑いたくなるな」


ま、そういう世界に生きてきたわけじゃないからな。

だからこそ、救われるモノもあるという話だ。


「ふふーん。どっかのフクロウババアと違ってピュアなんですよ。心が洗われるんですよー」

「……気持ち悪い。まあ、ヨフィアがただの馬鹿にほれ込んだりはしないだろうから、そこが勇者殿たちの美点だと思っておくことにしよう。それとも、そっちの化け物殿のおかげかな?」

「さあな。俺は化け物でもないんでもない。ただの勇者の付き人だがな」

「はっ。お前さんが、そっちの近衛隊長を含めて近衛隊を単独でぶっとばしたんだろう? それを化け物と言わずになんと言うんだ?」

「俺が普通の人なら、近衛隊が運動不足だったんだろう」

「言うねぇ。本人がそこにいるっているのに」

「いえ、確かに私たちは運動不足でした」

「しっかりしつけている所が恐ろしいね」

「で、そろそろ中に入れてくれるのか、まだまだ立ち話をするのか教えてくれ」


いい加減、情報収集、見極めに付き合うのが面倒になって来たからな。

これ以上長話になるなら、脅すか、帰るかだな。時間を稼がれているともとれるからな。


「そう睨むんじゃないよ。……いいだろう。中に入りな」


俺の脅しが聞いたのか、素直に家の中へと招いてくれるが、家の中は必要最低限の家具が置かれているだけで、人が使っている様子はなかった。


「あれー? フクロウさんってここで生活しているの?」

「そんなわけないよ。ヒカル殿。ここは拠点の1つさ」

「拠点の一つといいますと、やはりいろいろ狙われるのですか?」

「ああ、流石才女と言われるナデシコ殿だね。話が早い」

「というか、俺たちの名前しっかり把握してるんですね」

「これぐらいできないと、情報屋はやれないね」

「金はかなり持っているのに、このクソババアは守銭奴なんですよー」

「お金があれば大抵のことは何とかなるからね。そこの小娘は報酬がでても、直ぐに湯水のごとく使うからね。真似るんじゃないよ? そしてこいつは体を売ることになるから、アキラ殿にはお勧めしないよ」

「ごらぁ!! 私はまだ新品ですからー!! 誤解を招くようなことは言わないでくださいー!! この中古品が!!」

「いや、安心した。素はいつものお前だね」

「はっ!? アキラさんたち違うんですよ? 私の素はこっちですからー」


と、ヨフィアが手玉に取られている珍しい光景をみているうちにお茶が差し出される。


「さて、お前さんたちがここに来たってことは情報が欲しいわけだね? ただヨフィアの付き添いで挨拶にきたわけじゃないだろう?」

「それはお前さんが既に知っているだろうに。わざわざ出迎えてくれて、知りませんでしたはないぞ」


俺がそう返すと、フクロウはこっちを見て笑う。


「このぐらいは直ぐにわかるかい?」

「いや、これが分からなかったら、情報屋は名乗れんだろう」

「だね。ま、そっちが聞きたいことは分かっている。ルーメル内の勇者殿たちに敵対する勢力のことだね」

「そうだな。それがわかればやりやすい。ああ、それよりも、帰る情報があるならそっちがいいがな」

「残念ながら、魔術に関することはさっぱりだね。特に勇者召喚なんてね」


ま、わかりきった答えが返ってくる。

帰る方法がこんな簡単にわかるなら、あるいは存在しているなら、扱いにくい俺だけでもさっさと送り返すだろうからな。

本当にルーメルの連中が帰還手段を知らないことは間違いないようだ。


「で、敵対勢力の話だが、今のところはいない」

「いない?」

「この前の闇ギルドの事件で王家に反発的な貴族連中はそろってしょっぴかれた。その中に魔族と契約していたものもいた。だから処罰はかなり重くなった。これが他国に知られ、勇者殿たちに出ていかれればこの国は終わりだからね」

「闇ギルドの方は? 俺たちに恨みを持っているとかは?」

「あんた個人の暗殺失敗というのはあるが、ルーメルの闇ギルドを潰したのは、あくまでも冒険者ギルドだからね。恨みはそっちだし、お前さんは勇者の付き人でもある。わざわざ地雷を踏むような真似はしないさ。もっとも、襲ったところで、お前さんに返り討ちだろうが」


大体、クォレンの言うことと同じか。

情報が一致するってことは、かなり信憑性はあるか? それともグルになって俺たちを嵌めようとしているかだが、俺たちを騙すメリットはあるにはあるが、個人的なレベルだし、まずありえないか。


「ま、大体はこんな感じだね。ああ、一つ気になることがあって、ドゥトス伯爵のことさ。お姫様を使って色々動いてたことがばれて、処罰をされたんだけれど、表向きはお姫様に指示をだされたことにされていて、軽いモノになり、難を逃れたんだが、そのドゥトスが妙な動きを見せているらしい」

「妙な動き?」

「なにやら、魔術師を沢山招き入れているとか。まあ、本人は魔族に対しての戦力を整えていると説明しているんだがね。お前さんの暗殺依頼を出したのもあいつだから、何か逆恨みでも起こすんじゃないかと思っている連中は多い」

「多いってことは、動きがばれているのか、駄目だなそいつ」

「ああ、駄目だ。もともとわかりやすいタイプだからな。お姫様もそれをわかっていて勇者召喚に手を出したようだから、本人としては、ドゥトス伯爵の思惑は見抜いたうえで、それでも何か狙っていたことがあるんじゃないか? ま、それもお前さんにぶっ壊されたわけだが」


話を聞けば聞くほど、あのお姫様の性格がわからなくなってくるな。

まあ、下々の者と接したことがなかったから、俺に対してあんな態度を取ったでいいのか?

だがなー。そこのリカルドはアホだったし、どうもなー。

ああ、ある意味物凄い偽装工作だな。どう見ても知恵者には見えんわ。

これで本当の思惑があったんなら大した猫かぶりだな。


「どんな思惑があろうが、俺たちにとっては迷惑な話でしかないのは事実だ」

「その通りだね。異世界から、しかもお前さん以外はただ才能だけがある素人同然だ。それに魔王を倒せというのは、ちょっとないね」

「だが、それを理解していて、結城君たちを呼んだっていうのなら、一体ほかにどんな狙いがあったのか、気になるところだな。今更、魔王を刺激するようなことは却って混乱を呼ぶだけなのは、本当に聡明なら分かっているはずだ」

「だね。お姫様は何が目的で勇者殿を呼び出したのか、気になるところだ」


そう言って、俺たちは一度お茶を飲む。

ほっ一息という感じだ。


「で、この情報を聞いて、お前さんたちはどうするつもりだい?」

「さあな。俺たちの目的は最初から一貫して、故郷に帰ることだからな。襲われないのなら、特に動く理由もないが……」

「お姫様と話すのが、帰るための一番の近道かもしれないからね」


そう。このルーメルで一番召喚に詳しいのは、お姫さんとマノジルだ。

しかしながら、マノジルは文献として知っていただけで、実行したのはお姫さんなので、あと聞くべきはお姫さんだけだ。


「……なかなか難しい問題だな」

「そうでもないだろう? 今現在のルーメルは、勇者殿たちに出ていかれれば破滅だ。聡明なお姫様がそれを分かっていないはずがない。だから、先日あった時も特に手を出さずに帰ったんじゃないか?」

「だといいがな。とはいえ、手ごろな情報源はそこしかないか……。どうする。大和君たち?」

「私たちですか?」

「ああ。一応帰るって目的はあるが、どれが最短かは分からない。めぼしい情報源は、残念ながら、お姫さんだけだ。俺は直接会っていないから、判断できるとしたら、大和君たちだ」


お姫さんを信じられるかどうか。

俺がそう聞いていることが分かったのか、真剣な顔つきになって……。


「私は、会ってみるべきかと」

「僕も同じかな。あの時のお姫様に別に嫌な感じはしなかったよ」

「俺はあまり、イメージ良くないけど、マノジルさんや、リカルドさん、キシュアさん、ヨフィアさんが一緒ならいいかな」

「私も嘘をついているように見えませんでしたな」

「ですね。私も同じくです。まあ、同席させてもらえるかは微妙ですが」

「まあ、信じてもいいのではないでしょうか? ギルド長やフクロウババアも同じことを言っていますし、あんなことがあったんですから、お姫様との会談に他の監視も入るでしょう」


全会一致でお姫さんに会うことが決定。


「ということで、会うことになったぞ」

「お前さんはどこか他人事だね」

「別に、どっちも話はわかるからな。で、情報料はいくらだ?」

「それこそ別にだよ。そっちの知らない情報はなかったみたいだからね。たく、本当にお前さんは異世界からきたのかい?」

「それは間違いないな」

「となると、そっちの世界は相当なんだね。こっちの生まれでよかったよ」

「さて、住めば都っていうからな。まあ、それはいいとして、こっちとしては裏が取れて助かったのは事実だ。代わりに、あっちの世界のお菓子でも置いて行くから食ってくれ」


そう言って、俺は板チョコを20枚ほどテーブルに置く。


「ああー!? 私にもください!! というか、フクロウババアが食うわけないんで、もらいますね!!」

「こら、誰が食べないと言った!! もらうに決まっているだろう!!」


と、醜い争いが始まり、当然というか、フクロウが勝利し、結城君に泣きつくヨフィアが見られたのは面白かった。








そしてお城へ向かうことに。

そこに一体どんな話が待っているのか?


ついでにフクロウとヨフィアは知り合いでした。

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