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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


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第76射:懐かしのバイト?

懐かしのバイト?



Side:ナデシコ・ヤマト



「がははは!!」

「おう。こっちにエールを一杯追加!!」

「はい。ただいま」


そう言って私は慣れた感じで、厨房でエールを注いで、テーブルへ持っていきます。


「エール一杯ですね」

「おう。ありがとうな。姉ちゃん」

「いえ。どうぞごゆっくり」


私がそう言って他の注文をこなそうとすると、どこからともなく、手が伸びてきて……。


「イテェ!?」

「ここは、そういう店じゃねえ」


店長が素早く出て来て、セクハラを止めてくれます。

以前は私自身で止めていたのですが……。

前に比べてレベルが上がっていて、店が壊れたら困るからと店長が対処することになりました。

流石にそんなことはしませんと言いたいのですが、森を一面焼き払ったことがあるので、何とも言えませんでした。

田中さんも否定しなかった辺り、そこら辺の信用は無いようです。

威力の調整は今度から頑張らないと……。

そう思っていながら仕事をこなしていると、厨房の中で皿洗いをしている光さんと晃さんの雑談が聞こえてきます。


「というか、何で僕たち働いているんだっけ?」

「んー? そりゃ店長が、手伝ってくれって言ったからだろう? 夜の食事は無料で」

「あー、そうだった。なんか普通に働いてるから、ギルドで仕事を受けていたっけ?って思ってたよ」


私もそんな錯覚を受けましたわ。

まあ、人が足りていないって話ですから、別に手伝うのは吝かではないんですが……。

なんというか、目的がズレてしまって妙な気分です。

田中さんが代わりに噂の情報収集をしてくれているので、いいといえばいいのですが、それで4人はテーブルについてのんびりしているのが、恨めしい気がします。

まあ、ヨフィアさんはともかく、リカルドさんとキシュアさんに、ウェイター、ウェイトレスの役がこなせるとは思えないんですが……。


「姉ちゃん。注文、オークのステーキ3つ!!」

「はい。かしこまりました。6番テーブルオークのステーキを3つ」

「おう」


ということで、私たちは懐かしき?冒険者仕事に勤しみ、閉店を迎えるのでした。



「すまなかったな」

「いいよー。困ったときはお互い様だし、ご飯タダだし」

「んー。うめぇ。やっぱ店長の美味いですねー」

「でも、なんでほかにお手伝いがいないんですか?」


閉店したあと、後片付けをあらかたして、ご飯をごちそうになっていました。

しかし、不思議な話です。このお店は冒険者にとっては安全な稼ぎ場所のはずですが、今日は雇われの冒険者がいなかったのです。


「あー、ナデシコちゃん。それはね、ほら、闇ギルドのことがあったじゃない。それで冒険者と縁が深いここが襲われるんじゃってことで、新人がこないのよ。はい。お水」


そう言って私の方へお水をくれるのは店長さんの奥さんです。

色々教えてくれて気遣ってくれる素敵な女性です。


「どうも。でも、あの事件がそこまで尾を引いているんですか」

「まあな。熟練の冒険者もスラムの裏路地でやられたみたいだからな」

「あ、その話は聞いた。やっぱりそれなりの冒険者がやられたんだ」

「ああ、この店にも来ていたやつだ。しかし、迂闊ではある。こんな時期に情報が欲しいとはいえスラムの裏路地に行ったんだからな。狙ってくれと言っているようなものだ。場所が悪いし、大人数で来られればどうしようもない。ほら、追加だ」


店長もできたての料理を持ってきて、そう説明してくれます。

その料理に即座に手を伸ばし、食べた田中さんが口を開きます。


「流石、店長。美味いね。で、その話はいいが、ほかに何か面白そうな話はあるか?」

「面白そうな話ね……。それなら、勇者であるお前さんたちだったら、ユーリア姫が治安維持に出回っている話は?」

「ああ、会ったみたいだぞ、ルクセン君たちがな。しかし、俺たちの正体をやっぱり知っていたか」

「まあな。ルーメル王国では布告があったからな。勇者召喚に成功ってな。それで、妙な連中が俺のところにしかもクォレンから頼まれてきた。これでわからない方がおかしい」

「そうだな」

「それに、アキラたちはともかく、タナカまで新人としてだ。なんの間違いかと思ったぞ」

「だよな。俺はどう見ても冒険者になるのは年を取りすぎだよな?」

「逆だ。お前のどこが新人だ。どこかの凄腕冒険者が入り込んできやがったと思ったわ」


店長は田中さんのすごさを初対面で見抜いていたのですね。

あ、いえ。私たちが勇者であることを見抜いていたのですね。


「と、そこはいい。ユーリア姫のことを知っているなら。特に言うことはないな」

「そうか。ほかに何か面白い話があればと思ったんだが……」

「あとは、勇者殿たちの目的にはそぐわないからな」

「そぐわないっていうと、ほかに話があるの? 店長、教えてくれない?」


光さんがそう言って、そぐわない噂話をしてくれるように頼みます。

意外と大事な話があるかもしれませんので、聞き逃さないようにしないと。


「本当に、そぐわない話だぞ? 盗賊の拠点が見つかったぐらいだな」

「とうぞくの拠点?」

「そう。盗賊の拠点だ。ため込んでいる物があるのか、それともすっからかんなのかで、悩んでいる冒険者が多いな」

「なんで、退治に行かないんですか?」

「まだ、噂レベルだしな。それで騎士団は動かないし、今は騎士団を動かすための貴族も闇ギルドの関係で騒がしいからな」

「「「あー」」」


そういえば、闇ギルドのおかげで、いえ、自業自得ですね。闇ギルドを利用して処罰されているんですから。


「とは言え、冒険者が見つけたといわれている盗賊団のお金は冒険者が倒せばそのまま冒険者の物になるが、1パーティーだと盗賊が大人数の場合厳しい。だが、複数パーティーだと分け前が減る。騎士団に丸まる渡すのは今は惜しい。そういう話だな」

「本当に、関係ないね」


本当に関係ありませんわね。


「しかし、どこのパーティーが見つけたんだ?」

「いや、そこまでは聞いていないな。迂闊にそこまで喋ると獲物を横取りされるからな」

「じゃあ、そもそもその噂があること自体おかしくないか?」

「まあ、噂だしな。冒険者たちが話しているのを聞いたってレベルだから、勘違いってこともある」

「それと罠か」

「だな。こうしてバカな冒険者をおびき寄せて食い物にする。それが冒険者に恨みを持つ者のやり方だな」

「ぶっそうな話だねー」

「お金に困っている冒険者は飛びつきそうな話ですわね。田中さん。やはりこの噂は噂だけのようですが?」

「ん? ああ、そうだな」


なぜか、田中さんの反応は悪い。


「田中さん。何か先ほどの噂で気になることでも?」

「いや、時期が時期だけに、闇ギルドが仕掛けた罠かもなってな」

「「「……」」」


あまりに的確な指摘にみんな黙ってしまいます。


「ま、俺たちにとってはどうでもいい話か。とりあえず、明日は情報屋の方に行くか」


そんな私たちを無視して、田中さんは普通に話を続けます。

確かに、私たちにとってはどうでもいい話ですが、流石に無視をするのは……。


「まて、その話、可能性はある。俺からクォレンの方へ伝えていいか?」

「ん? 構わないぞ。とは言え信憑性は低いがな。あ、それと何か情報がでたならこっちに寄越せって伝えてくれ」

「わかった。で、タナカたちは明日情報屋か。どの情報屋だ?」

「フクロウって名前だな」

「ああ、あいつか。あいつなら間違いないだろう」


どうやら、店長も知っている情報屋のようです。

ヨフィアさんも知っていましたし、かなり名の通った情報屋さんなのでしょう。


「しかし、闇ギルドのこともあるから、タナカはともかく、お前たちは気をつけろよ」

「「「はい」」」


店長の気遣いにはちゃんと頷いておく。


「おい。俺はいいのかよ」

「お前さんを殺せるのはそれこそ勇者でも無理だろう? 暗殺と戦いは全く別物だからな」

「暗殺じゃなくて、俺もどちらかというと戦いなんだがな」


こちらの世界の戦い方と、地球の戦い方はかみ合うことはないでしょね。


「で、なんで俺たちが闇ギルドに襲われる話になるんだ? 闇ギルドの壊滅に関わってはいないぞ?」

「それを俺に聞くか? お前の暗殺依頼も出てたんだろう?」

「「「え?」」」


初耳です。

一体なにが?


「おい」

「ん? その様子だとアキラたちは知らないようだな。すまんな。口が滑った」

「ちょっとまって、店長詳しく聞かせて、田中さんが襲われたってどういうこと?」

「ええ。詳しく聞かせてくださいませ」

「なにがあったんですか? さっき、お姫様と俺たちが会ったときのことですか?」


流石に聞き逃すことのできない話だったので、厳しく店長と田中さんを見つめて問いただす。

その私たちの姿を見て、観念してくれたのか田中さんが口を開いてくれました。


「はぁー。まあ、仕方がないか。大した話じゃないからな。しかも最近の話でもない。ほれ、結城君たちが、ルーメルで冒険者ギルドの依頼を受けていたころの話だ……」


どうやらドゥトス伯爵という貴族が私たちを使う上で、田中さんが邪魔だと判断して、闇ギルドに依頼を出して殺そうとしたのらしいですが、逆に田中さんに返り討ちにあったそうです。

だから、闇ギルドとして、任務の失敗ということで次の刺客を送り込んでくるのでは?

と、店長は心配しているわけです。


「あー、そんな昔かー。ってそこまで昔でもないけど」

「だけど、それぐらい前ならその前に何か刺客でも送ってきそうだけどな」

「確かに、しかも依頼された闇ギルドは壊滅しているから、心配ないのでは?」

「まあ、その可能性もあるがな。だが、末端の俺が知っていることだ。貴族周りはもちろん知っているだろう。そうなると、別の街の闇ギルドにも噂は届いているだろうな。そして今回のルーメルの闇ギルドの壊滅。メンツのためにやっても何もおかしくはない」


……なるほど。そういうことですか。


「今更な話だしな。闇ギルドの連中は俺にとってもいい情報源だ。来るなら大歓迎ってところだから、気にするな。そして、この件を利用して、ルーメルの連中との交渉材料にもできるからな」

「うわー。相変わらずだけど、田中さんってそういうところすごいよね」

「とは言え、それは関係者である私たちも狙われる可能性があるのでは?」

「だよなー。暗殺で人質ってよくあるよな?」


晃さんが同意してくれたように、こういう手が出せない相手の場合人質をとるのが頭のよいやり方のように見えますが……。


「まあ、可能性はないとも言いきれないが、それをやれば。なぁ?」

「勇者を手にかけた闇ギルドという汚名が付くな。もうまともに活動できないだろうな。ただの貴族程度、というのはあれだが、世界を救う勇者に手を出すんだ。国々はその存在を認めないだろうな。徹底的に潰される。そうしないと国民にそっぽむかれるからな。特にいまのルーメルならなおのことだ。」


確かに、勇者である私たちに手を出すのは禁じ手に近いですわね。

そして、今のルーメルは私たちに魔族を差し向けるということをしていますし、致命的な失態になるでしょう。


「まあ、私やリカルドさんを人質にっていうのはあるかもしれないですがー。アキラさんやヒカルさん、ナデシコさんならともかく、タナカさんは助けにきてくれますかね?」

「ないな。そのまま死ね」

「ですよねー」


ヨフィアさんを無慈悲に斬り捨てると言い切る田中さん。

当然の反応ではありますが、ヨフィアさんとはこの世界に来てからそれなりに付き合いがあるので、何とも言えない気持ちになっていると……。


「それに、俺が助けなくても、そこの3人が助けにいくさ。それまで生きていればいい」

「あのですねー。アキラさんたちが助けに来てくれるのはよくわかっていますけど、そこは3人が危険な目に合わないように手助けをするとか……」

「あほ、そこを心配するなら、お前が捕まるな。というか、俺はお前を見捨てる発言を堂々としているんだから、まずお前等を人質にって考えることはねえよ」


正論ですわね。

正論過ぎて何も言えません。


「とまあ、闇ギルドの関連は心配しなくていい。来るなら喜べって感じだな。ともかく、明日はそのフクロウってやつに会いに行く。それでいいな?」


田中さんの言葉に全員が頷いて、そのあと、店長の料理を存分に楽しんで、宿に戻るのでした。




物語は始まりへと戻る。

まあ、そんな感じの流れ?


そして、闇ギルドがタナカを襲ったことをようやく知るアキラたち。

これを知るってことは最初の頃よりはマシになった証なのかな?




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