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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


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第55射:森の中の戦い

森の中の戦い



Side:タダノリ・タナカ



予定通りとはいえ、厄介なことになったな。

俺はそう苦々しく思いながら、この探索のリーダーであるギルドの指導員の話を聞く。


「これから、我々は森の中を探索し、今回の街道沿いに魔物が出てくる理由を突き止めようと思っている。だが、今回の調査はあくまでも可能性が高いというだけであって、必ず理由、原因がわかるものではない。なので、諸君たちには、期限を決めて探索してもらいたい。森の中ではオーガも群れでいようが、動きを阻害される。なので、個別にパーティー単位で探索をしてもらおうと思っている。期限は3日だ」


言っていることはわかる。

理には適ってはいる。

だが、戦闘経験の少ないルクセン君たちが森の探索をするのは正直気が重い。

というか、森で一泊なんかしたこともないだろう。

とはいえ、先ほどの戦闘力を見せつけてできません、辞退しますは色々反感を買うだろうからな。

頭の痛いことだ。

まあ、いつかは経験しないといけないことではあるので、その時が来たと思うしかないか。

そんな俺の心配とは裏腹に……。


「ここで、原因を見つけて対処すれば安全になるね」

「そうですわね。オーヴィクさんたちやほかの人たちが見つけるかもしれませんが、私たちが怠けていいことにはなりませんわね」

「まあ、頑張ろう」

「その意気です。勇者殿たち」

「はい。その気持ちが大事です」

「森は視界が悪いですから、気を付けてくださいねー」


と、うちのパーティーはやる気満々だ。

委縮しているよりはいいんだろうが。


「ラーリィたちは一番危険そうなところに行ったけど大丈夫かなー?」

「仕方ありませんわ。冒険者の中でも実力者ですし、私たちじゃ務まりませんもの」

「まあ、そうだよな。オーヴィクたちの方が安定だ」


幸いなのは、調べる地点は外れと思われる地域の探索だ。

危険そうなところはオーヴィクたちやほかの熟練パーティーが行ってる。

こちらが遠距離からの攻撃が主体とちゃんと配慮してくれたのは助かった。

近接じゃ今一つ心配だからな。


「とりあえず、俺たちは指示通り、この方向から、ロシュール方面へ探索、調査をする。結城君たちはもちろん、リカルドたちも気を抜くな。魔物はオーガだけとも限らないからな。ガルツ地方で出くわした、スパイダーみたいなのもいるかもしれないからな?」


俺がそういうと、神妙に頷くメンバー。

あとは、大丈夫と信じるしかないか。

これ以上言うのはただ口やかましいだけだからな。

あとは、森の中を警戒しながら進むことになった。

まあ、最悪は銃を使って抜ければいいだけだから、問題はないんだけどな。



しかし、予定通りというか、危険地帯から外されたのが幸いしたのか、俺たちが探索するルートには敵が全然でてこない。

魔物一匹遭遇しないのだ。


「おかしいですね。なんで何も遭遇しないんでしょうか?」

「さあな。街道沿いに餌を取りに行って、こっちは空っぽなのかもな」

「あー、山からクマとかサルが下りてきたみたいな話かー」

「わかりやすい話ですが、当事者たちにとってはゾッとする話ですわね」


人里に下りてきた可愛い動物ならまだ微笑ましいが、それがこの世界じゃ、人食い怪物だからな。

ああ、クマは大差ないか。

そんな感じで、雑談をするほど気が緩んできたというか、何もなくその日は日が暮れてしまったので、そのまま野宿という形になり、幸い夜も襲撃がなく、平和に朝を迎えられた。


「さて、トラブルもなく進んできたし、予想より?半日分の時間は進んでいると思うので、戻ろうかと思うが、みんなどう思う?」


普通であれば多少の魔物の遭遇などで足止めを食らうかと思っていたが、それもなく難なく進んできたので、予定より進みが早いのだ。


「これ以上進んで魔物に会ったりすればそれこそ合流時間に間に合わないですよね」

「あー、そっか。これ以上進む意味はないよねー」

「ですわね。タナカさんの意見に賛成ですわ」


ということで、俺たちは報告に戻ることにする。

別にさぼっていたわけでもないので、結城君たちも戻ることに特に意見はないようだ。


で、足早に戻ってきてみれば……。


ズシーン!! ドゴーン!!


そんな音が森の中に鳴り響いていた。


「な、なに!? どうしたの!?」

「みんな、どこにいるんだ!!」

「オーヴィクさんたちは!?」


突然の事態に結城君たちも驚いているが、わざわざ騒ぐ理由もないので……。


「静かにしろ。こっちが見つかるし、周りの状況がわからん、誰か戦っているなら何か音がするから、黙れ」


俺がそういうと、即座に黙る3人。

そして、耳を澄ませていると、わずかだが、鉄の音とか、魔術の爆音みたいな音が混じっていることに気が付く。


「だれか交戦してるな。援護できるかもしれん。行くぞ」


そう言って、俺たちはその音源へと近づくのだが、そこには懐かしい戦場が広がっていた。


「ちょっ!? ラー……」

「黙ってろ」

「んん!! んー!!」

「状況把握が大事だ。そうしないとラーリィもクコも死なせる羽目になる。落ち着け」

「……」


目の前に広がるのは、冒険者だったであろう肉塊と血まみれで倒れ伏しているラーリィやクコの姿があった。

まあ、ほかの肉塊に比べれば、原形はとどめているので、生きてるかもしれないぐらいだが。

それを見た仲の良かったルクセン君は飛び出しかけたわけだ。


「見たところ、何やら普通のオーガと違うのがいるな。それとオーガの団体様も複数。オーヴィクとサーディアが何とか交戦中ってところか。ほかに目に見えて戦っているのはいないな」

「ど、どうするんですか。タナカさん!?」

「オーヴィクさんたちも長くは持ちそうにはありませんわよ?」

「というか、早く助けないと、ラーリィたちが死んじゃうよ……」


大和君の言う通り、どう見ても長く持ちそうにない。

戦っているのは2人だけで、ほかは死体か死にかけ。

動くなら今すぐだが……。


「リカルド。戦力的にどう思う?」

「……非常に厳しいでしょう。オーヴィクたちがあの状態。我らが加わっても倒せるかどうか……」

「私は撤退を推します。オーヴィクたちほどなら逃げてもおかしくないのに踏みとどまっています。何か逃げられないことがあるのだと思います。私たちもそれに巻き込まれれば逃げることができなくなります。態勢を整えるべきです」

「おそらくー。オーガの上位種ですね。妙な力でもあるんでしょう。私も逃げるに一票です。オーヴィクさんたちには悪いですけど、勝てない戦いはするべきじゃありませーん」


と、大人たちは非常に合理的な考えである。

俺もこちら側に賛成だな。

だが、ルクセン君はそうもいかず……。


「いやだよ!! ラーリィ!! 今助けるからね!!」


そう言って、飛び出してしまう。

ま、こうなるよな。


「ちょっ!? 光!!」

「待ちなさい!!」


飛び出したルクセン君を追いかけようとする二人。

ミイラ取りがミイラになるパターンだよな。

若いねー。


「待て二人とも。じっとしてろ」

「「え?」」


振り向いた二人を間を抜けるように俺は進んで、すぐに膝を落として対物ライフルを構えて……

撃つ。撃つ。撃つ。撃つ。


ズドン!! ズドン!! ズドン!! ズドン!!


「うひゃ!?」


走り出していたルクセン君もこの銃撃音に足が止まる。

いいね。これで狙いがつけやすくなった。

まあ、元々的はでかいからな。

あとは、この銃撃が効いてくれることを祈ろう。

効かないとなるとRPGとかさらに面倒な武器だからなー。

とりあえず、視界に映るオーガの頭部は一通り四散させたが、生えてきて復活とかないよな?

そう思いつつ、一応動かないので、そのままゆっくりオーヴィクたちに近寄る。


「すまない。危険だと思って手助けをさせてもらった。勿論こっちが勝手にやったことだ、魔物の素材はそちらでもっていってかまわない」

「ちょ!? どうやってあの障害物が多い森で的確に狙撃できるの!?」

「……相変わらず、物凄いですわね」

「ありえねー……」


ルクセン君たちも正気に戻ったのかどうか知らないが、ついてきて、言葉を発しているが、そんなことより、オーヴィクたちのことだ。


「あ、タナカ……さん?」

「た、す、かった」


そう言って、二人は倒れてしまう。

よく見れば、オーヴィクもサーディアも片腕があらぬ方向に曲がっている。

一撃を受けてよく動いてこれたな。

それに、倒れているラーリィやクコにいたっては、片腕や片足がなかった。

斬られたとかそういうわけじゃなく、引き千切られたような感じだな。


「あ、う……」

「……うぐぐ」


それに追撃か不意打ちでももらったのか。

顔が半分陥没している。よく生きてるもんだ。


「俺の銃撃をほめてくれるのはいいが、ラーリィとクコは早く治療しないと死ぬぞ?」

「はっ!? ラーリィ!!」

「クコさん、今助けます!!」

「俺も!!」

「とは言え、オーヴィクたちも重症だからな。結城君はオーヴィクたちの方に行け」

「あ、はい!!」


そして、ルクセン君たちは治療に当たるが、まああれだけの重症だ。

そして四肢切断?もあるから、回復魔術がうまく効かないようだ。


「な、なんで、なんで回復しないの!? 治ってよ!! ラーリィが死んじゃう!!」

「……もう、クコさんたちに体力が残っていないのですか? そんなことって……」


いつか来るかと思っていたが、知り合いの死がルクセン君たちにとって初めての死の経験か。

可哀想だとは思うが、どうにもならんし、せめてルクセン君たちがこれから心折れず、前に進んでくれることを祈るしかないな。

俺がそう思うほど、ラーリィたちの反応も薄くなっていく。

おそらく、ルクセン君たちを見て安心したのだろう。

ろうそくの火が消えるように、ってやつだ。


「嫌だよ。ラーリィ!! 治ってよ!!」

「クコさん!! 目を、意識をしっかり!!」


人は死ぬ。ただそれだけの話だ。

それをいつだって見送るしかできないよな。

そんな風に、俺は見ているだけだったが……。


「ああっ!! あああーーー!!」

「ちょ!? 光さん!?」


切れたのか。壊れたのかしらないが、ルクセン君が声にならないような叫び声を上げ始めた。

危険だな。気絶でもさせるかと思っていたら……。


「僕だって勇者なんだから!! これぐらいのチートいいじゃないか!! エクストラヒーーーール!!」


今までにないほど真剣な顔つきでそう叫び、辺り一帯を包み込むような回復魔術が発動する。


「う、うそ!? ラーリィさんの腕が、って、クコさんの足も、顔も……」

「おいおい!? 何が起こってるんだ、オーヴィクとサーディアさんのケガも勝手に……」


おいおい。どういうご都合主義だ。

いや、ある意味、エクストラヒールの習得を狙っていた俺にとってはありがたい話か。

おかげで、ルクセン君がエクストラヒール、しかも複数人の治療ができるのを習得したわけだ。

声をかけて褒めようかと、ルクセン君を見ると……。


「うぐぐぐ……こふっ……」


血を吐いて倒れた。


「ひ、光!?」

「光さん!?」


今度はルクセン君の治療になったのだが、幸い軽傷だったようで、特に問題はなかった。

キシュアやヨフィア曰く、過剰な魔術を行使すると体に負担がくるから、それが原因ではということで、その日はその場で野宿することとなった。


ま、うまくはいかないよな。




そして、どこかで見たことのある会話へ。

必勝ダンジョンの第75堀のところ。

しかし、今のままでは矛盾する点が存在する。

いったいどうなるのか?



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