第492射:合流するまでに色々やる
合流するまでに色々やる
Side:ヒカリ・アールス・ルクセン
『ということで、ジョシーが戻ってくるんだが、俺たちもそれに合流して、戻ることにする』
田中さんから連絡がきて、ジョシーさんが田中さんから建前上、ウエストスターズに向かうための許可を貰いに戻るついでに、色々仕掛けるみたい。
「うん。わかったよ。僕たちはどうしたらいいかな?」
『ジョシーがこっちに戻ってくるまでヅアナオで情報を集めつつ、西側の軍の横暴とかを記録してくれ』
「先ほど言っていた、好戦派を押さえるためですね?」
『そういうことだ。証拠に関しては写真や動画撮ってくれ。まあ、相手に見せるかは考えるが、あと証人も確保してくれ。それで後日ジョシーが連れてきた将軍に証人を会わせて訴える』
確かに映像とかを見せられないなら、証人を使うしかないよね~。
でも、その手は無実だとか言われるとあれだけど。
そう言うのは田中さんやジョシーさんがどうにかするだろうしね~。
「任せてそういうのは激写しておくよ」
「はい。証人の確保も行います」
『あと、兵士にルクセン君たちが絡まれたとかはむしろチャンスだと思ってくれ。なんか証拠品でもわたしてな』
「証拠品?」
『そうだな。例えば地球産の物資をわざと奪われるとかな』
「なるほど。それであれば、後で言い逃れは出来ませんね。このヅアナオで持っている人はそういませんから」
そういないどころか、こっちじゃ一品ものだよね。
わざと獲らせるっていうのも手か。
『まあ、怪我などはしないようにな。ゼランは上手くフォローを頼む』
「任せておきな。その手の荒事はよくあることだからね」
うん、ゼランは確かにそういうのは強い。
今まで商人としてやってきただけのことはある。
「それで、田中さんはその間どうするのでしょうか?」
『俺も別で動く。まあ、そっちも把握していると思うが、裏のスラムを仕切っているところと協力をお願いする』
「あ、なるほど」
確かに裏の偉そうな人と話をしていたね。
そっちの方からも情報集めるっていうのは僕たちはとは違う方向だからいいよね。
そう納得していると、ゼランさんが口を開く。
「それなら、私たちの人気はあった方がいいかい?」
「「『人気?』」」
その言葉の意味がわからず、私は当然、撫子も田中さんも疑問の声を上げる。
「そう、人気だ。私たちがヅアナオでそれなりの評判あれば色々やりやすくないかい?」
『あ~、そっちの意味か。判断に迷うな。下手をするとノスアムから来たことがばれて兵士たちに何かをさせる可能性もゼロじゃない』
だよね~。
何せ戦車で文字通りひき潰したんだし、恨みを買っているのは間違いないと思う。
それで人気になるって、なんというか自殺志願者な気分。
「そこらへんは慣れているさ。そっちも裏とかかわりがあるんだろう? そっちと繋ぎを作ってもいいんだよ?」
『そういうことか。表と裏、どっちからも情報を集めてみるっていうのは手だな。向こうの連中も軍に町を荒らされるのは不本意だろうしな。穏便に済む方法があるなら食いつくか。それにゼランたちのフォローもいけるか』
「自衛はできるけどね。手札が多いことには問題がないだろう?」
『確かに。あのおっさんと連絡を取ってみるか』
「お願いできるかい? 取引の物資に関しては用意するって感じでそっちでまとめてくれ」
『わかった。どうせ俺が出すつもりだしな。とはいえ、その場合こっちの素性をばらすことになるが?』
「当然さ。そこで売られるなら、それまでって話だろう?」
うわぁ、ゼランもこういう所は大胆だよね~。
商売人って感じだ。
『確かにな。それはそれでこれからの判断基準にはなるか』
「とはいえ、私としてはあの会話を聞いた限りじゃ、手を貸してくれる可能性は高いと思うね」
『それはわかるが、絶対じゃない。何事も、な』
「わかっているさ。そっちがしくじってもこっちの交渉でどうにかしてみるよ。何せ元々、こっち側とは販路はあるんだ。それでいけるだろうさ」
ああ、元々、西側の国とはゼランさんは船を使って交易していたんだっけ?
それなら、その頃の名前は使えるのかな?
とはいえ、ヅアナオが酷いことにならないようにするための手段だし、こういうことなら手伝うのは別にいい。
まあ、軍人さんが僕たちを恨みで殺しに来る可能性はあるけど、それはノスアムの時からずーっと付きまとうやつだしね。
それが分からないような……訓練はしていないよ。
あはは……、田中さんとのアレはね……。
「光さん、光さん?」
「あ、何?」
「いえ、遠くを見て意識が遠くなっていたようなので」
「あ~、うん。間違いない」
それで、ゼランさんの話はどうなっているんだっけ?
『話は分かった。まずは裏の連中とは俺が話を付けてくる。それまではゼランたちは表向きの相手をしててくれ。今日の夜にでも連絡を入れる』
「わかったよ。まずは商業ギルドあたりから、声をかけていこうか」
『それでいい。情報の出所に関しては、ジョシーと一緒にいる将軍の後押しがあるとでも言っていい』
「正文でもあればよかったんだけどね」
『いや、一応停戦書類があるだろう? それを持っていれば、嘘をついていないと判断される』
「ああ、なるほど。そんな重要書類を持っていることが証明ってことか」
『そういうことだ』
なるほどね。
確かに東側連合と西魔連合の一時停戦の書類を持っているってそれだけ重要なポジションってことだし、言っていることを疑うわけがないか。
いや、嘘であってもヅアナオを守るためにやっているんだし、協力はしてくれそうだよね。
『まあ、先ほども言ったが、何事も絶対じゃない。油断だけはするなよ。じゃ、俺は早速動く』
こうして連絡が終わって、ゼランさんは僕たちを連れてさっそく商業ギルドへと向かう。
宿の外にでたけど、今のところは普通の町といえるかな?
軍人さんがまばらに見えるけど、今のところは落ち着いている感じだ。
「今のところはそこまで荒れていない様子ですわね」
撫子も同じように感じたようでそう口にする。
「そうだね。だから今のうちに手を打つ方が大事さ。荒れてしまったあとじゃ、止めるのは難しいからね。一度できたのにっていう馬鹿がでてくるのさ」
「あ~、そういうのあるよね」
日本でもあったあった。
一度甘い対処をしたことで付けあがる人がトラブルを起こすって。
「ありますわね。そういうことが起こらないように事前に手を打つことが大事ですわね。ですが、そういうのはこの町の領主とかも聞いているのでは? 荒らされて困るのはこの町を運営している領主なのですし」
あ、そういえばノスアムと同じようにジェヤナのような領主がいるはずだ。
いや、違うか。
あんな小さい領主がいるわけない。
まあ、管理する人がいて、そこが対応するっていうのは当然だって話だよね?
「それはそうだね。一応そういうやり取りはされているはずさ。とはいえ、どちらの力が強いかってなると、沢山の兵を連れている側だ。しかもトップはいない。勝手になにかやっても押さえられないってわけさ。というか、少しの被害で済むなら大人しくっていうのもあるだろうし、何よりここの領主の性格は知らないからね」
「確かに、ここを治める方がどういう方かで変わってきますわね」
あ~、よくある悪徳領主とか?
高い税金で住人を搾り取っているとか?
でも、そういう感じはしないんだけどな~。
「そこら辺の情報も集めるのさ。商業ギルドなら付き合いがあるからね」
なるほど。
確かに何をするにも知り合いの所の方が動きやすいよね。
いきなり領主の所に直談判とか、田中さんやジョシーが銃撃しながらしか思いつかない。
うん、実際にノスアムでやっていたしね。
とりあえず、穏便に済むことを願いながら商業ギルドへ入っていくのだった。




