第484射:大きくなっていく経緯
大きくなっていく経緯
Side:アキラ・ユウキ
「なんか話を聞く限り、好戦的な国なんだねぇ」
「ですね。立て続けに戦うというのは私たちの国からすれば考えられません」
そんな感想を言うのは、ノールタルさんとレーイアさん。
まあ、軍とか国を良く知らないならそういう感想になるだろうけど……。
「これは不思議だべ。姉さんたちはわからないだろうが、これはおかしいべよ。アキラはわかっただべか?」
「ええ。ゴードルさんもおかしいと思いましたか?」
どうやら、俺の違和感は正しいようで、ゴードルさんがここまでの話で首を傾げている。
「え? 何かおかしい話があったかい?」
「ウエストスターズが侵略を繰り返しているだけですよね? いえ、降りかかる火の粉を払っているという感じでしょうか?」
まあ、レーイアさんの言う通り、ウエストスターズ的には内乱を治めたところに色々近隣諸国が手を伸ばしてくるから守っているだけとも見れるけど、大事なことは……。
「敵を追い返すというなら話は分かります。ですけど、今回は敵を倒しているというか、支配下に置いているってところですよね?」
「んだ。タナカはどう思うだべか?」
そこでゴードルさんは同じように話を聞いているであろう、田中さんにそう問いかけると。
『同意見だな。他国の制圧というか、安定とかなんざ、一年二年で終わるわけがない。予定されていたことってやつだな』
「よてい? つまり、あらかじめこの流れを決めていたってことかい?」
ノールタルさんがそう聞くと、田中さんはすぐに返事を返す。
『そうだ。どういう取引でウエストスターズの傘下に入ることを承諾したかは知らないが、簡単にできることじゃないのはそっちもわかるだろう?』
「そうだねぇ。簡単に国を明け渡すようなことをするとは思えないよ」
「そうですね。私たちのラストだってずっと抵抗していましたし」
「普通はそんなこと認めるわけがないだべよ。国が飲み込まれるんだべだから。不安が大きいはずだべ」
だよな~。
元魔王領の住民だったノールタルさんたちは簡単に他国に従属するわけがない。
そのあとの扱いなんて悲惨だと思うのが当然だし。
従属というか、飲み込まれる約束をしているってこと自体驚きなんだけど。
そんなことを話しているうちに、ジョシーさんが俺たちの疑問点に関して質問をする。
『小国を切り取っていったというのは分かりましたが、その期間が短すぎませんか? もっと統治などがあれば一息置くと思うのですが?』
当然の話だよな。
急激な拡張なんて民主の反発を招きそうだけど……。
『それに関しては私たちにもよくわかっていませんが、別に不思議というわけでもないのです』
『不思議ではないというと、大きな領土拡張というのがですか?』
『はい。まあ、別に大国が落ちたわけでもないのです。小国が複数ではありますが落ちただけです。そういう所は、意外と上が入れ替わることに関しては、民衆はそこまで否はないのです。どれだけ生活を脅かされるかという話になりますので』
『ああ、なるほど。為政者が変わるだけで、民衆の生活に手を出さなければさほど問題はないと?』
『その通りです。もちろん、籠城戦などで民衆に被害がでることや、略奪で被害が出ることは珍しいことではありませんが、そういう手合いをすると統治に苦労するには目に見えているので、手を出さずにやるという方法もままあります』
なるほど、統治を優先するっていうこともあるのか。
でも、そう簡単に国が変わるって……。
『ああ、そういうことか』
その説明に田中さんは納得したような声を上げる。
『田中さん、どういうことかわかるのですか?』
同じように話を聞いていた撫子が質問をする。
俺と同じく不思議に思ったのだろう。
『ん~。大和君たちは理解しがたいかもしれないが、他国っていうと外国なのだろうが、基本的に日本以外の外国っていうのは地続きなんだ』
「『『はぁ……』』」
その言葉にピンとこない俺たち。
それがわかっているのか説明を続ける田中さん。
『別に話す言葉も、文化もさほど違いないところで、国境を勝手に決めて国を決めているわけだ。特に西洋の土地はな。つまり、別にどこに国が支配しようが、民衆にとっては自分に被害がない限り、そこまで執着はないってわけだ』
「……そういうものなんですか?」
『うーん。僕はよくわからないや』
その説明に、俺も光もやっぱり納得は一定なんだけど、意外なことに撫子は……。
『なるほど。言いたいことがわかってきました』
『え? 撫子さっきのわかったの?』
『ええ、まあ、どこまで正しいかはわかりませんが、戦国時代とかを参考にするとよいかもしれません。織田と武田の領で何が違うかという話です。どちらも日本にあるのですが、お互いが敵同士で戦っています。そのどちらが勝とうが負けようが民衆には無理な税などを徴収されない限りは反発することはないですよね?』
『「あ~」』
そう説明されると言いたいことがわかってきた。
なるほど、外国とかいうけど、言葉通じて陸続きだし、簡単にいけるのに外国だと言われてもピンとこないのはわかるな。
日本で言えば他県は外国だって言うようなもんだし。
『ま、そういうことだ。それに地球ほど国家が認められているわけでもない。小国なんて下手をしなくても日本の都道府県よりも小さいな国も多々あるしな。そんな国の勃興は大国から見れば小競り合いにしかみえないだろう?』
「確かに、規模なんてたかが知れていますよね」
都道府県レベルの国の争いに大国が慌てるわけがないと言われると納得しかない。
もちろん、地球の場合は日本があるんだから、国家間のやり取りが滞る可能性があるから口を出してくる可能性はあるかもしれないが、こっちはそこまで流通とかに他国が関わっていることは少ない。
自国で完結しているのが基本だ。
そうでもないと、他国に飲み込まれる原因になるわけだ。
そんなことを話していると、ジョシーさんたちは話を進めていく。
『つまり、そういう方法で敵国を治めていったわけですね』
『その通りです。とはいえ、地方領主の力がそこまで削げないので反乱されるとそのまま押し込まれる可能性もあるのですが、それを上手くやっているようですな』
『それを押さえるのが、その魔族というものですか?』
『そうですね。それを押さえるほどには力があるという話は聞いています。だからこそ戦争推進派を押さえられなかったのですが』
『なるほど。しかし、その話は小国をまとめてるまでの話ですよね? それがいかにして大国をまとめる盟主となったのでしょうか?』
確かに、今までの話は小国だからよかった話だ。
大国をまとめるリーダーになれる要素はないはず。
『そこに関しても、ウエストスターズが上手くやったとしか言いようがないのですが、元々、ウエストスターズの国は内陸部に存在している土地なのです。つまり西側の国々の中でも中央部となります。つまり、そこで勢力は拡大しにくいのです。なぜかというと……』
『中央の土地は大国からしても国境の境であり、小国を置いて緩衝地帯ともしているのです』
えーと、ちょっと難しくなってきた。
小国が緩衝地帯っていうと?
そんな風に首をひねっていると……。
『なるほど。中央の土地は大国としても取りたいのですが、他の大国が複数絡んでくる可能性があるので手を出しづらいということですね。なので小国が存在していた』
『ええ、小国に手を出せば他の大国からは中央の占拠に乗り出したとも思われる。そういう意味で、大きな勢力は台頭しなかった』
ジョシーさんの言葉で納得がいった。
小国だったのにはそれ相応の理由があったわけだ。
大国の緩衝地帯というのは文字通りだったわけか。
小国だからこそ認められていたと。
『しかし、なおさら不思議ですね。その話を聞けば、ウエストスターズが大きくなれるはずがない。大国からの介入があるはずですが?』
だよな。
大きくなれば問題があるから小国だったのに、勝手にウエストスターズが小国を下して纏まろうとするなら、大国が邪魔をするはず。
『先ほども言いましたが、おそらく上手くやったのです。私が聞いた時に中央をまとめるウエストスターズを認めるという話でした』
『はぁ? 話が飛びすぎでは?』
うん、俺もジョシーさんと同じ意見だ。
何がどうしてまとまったんだと。
『その気持ちはわかります。なので私たちが知りうる限りの状況は説明いたしましょう』
ということで、大国が纏まった時の話に移るのであった。




