第483射:西の盟主の成り立ち
西の盟主の成り立ち
Side:タダノリ・タナカ
『……それで、作られたというのは?』
ジョシーの奴いきなりそこを突っ込むか?
いや、フィエオン王国の名前が出てきた時点で追及する必要はあるか。
既に撃破されていることも含めて。
とはいえ、下手をするとここで戦闘になりかねないが……。
『別に隠すことではありませんからお教えいたしましょう。とはいえ、作り方を全部知っているわけではないのですがね。よろしいですか?』
偉そうな爺さんが周りに目配せをする。
一応同意を取ったということにしたいのだろう。
情報漏洩もいいところだしな。
まあ、既に実戦で戦っているんだし、隠すことはそうそうないというのもわかるが、内容を話すのはな。
『構いません。どうせ触りぐらいしか知らないのですから』
『ですな。実戦で撃退されているのは明白。このまま蹴散らしてもらった方が、こちらとしても主戦派を叩く理由は増えるのはありがたい』
なるほど、その魔族っていうのが主戦派にとっての切り札の一つなんだろう。
それが攻めあぐねているどころか、簡単にやられたとなると、これ以上戦争するのは無理だと主張するにはよい素材というわけだ。
『では、改めて、魔族と私たちは呼んでいますが、その説明ですな。先ほども断りましたが詳しい内容は知りません。ですが元フィエオン王国で作られたというのがその魔族です』
『意図的に作ったのですね?』
『おそらくは……。とはいえ、あの異形の姿を確認したのであれば常軌を逸しているというのはお分かりになるかと思います』
『それはそうですね』
『なので、私たちは作られたものとして判断しています』
まあ、あれだけグロテスクにしているんだ。
まともな頭の構造じゃ作ろうとも思わないだろう。
頭のネジが何本か飛んでいるに違いない。
『判断ですか。作られるところは見ていないのですね?』
『はい。その通りです。一応機密ですからね。一部の者たちで隠蔽しているのでしょう。他国に作られ方が知られるのは避けたいでしょうしな。今のように』
『それは当然ですね』
兵器開発において秘匿は当たり前のことだしな。
『それで、元フィエオン王国で内乱が起こり、結果ウエストスターズという国が生まれたわけです』
『一気に話が飛びましたが、内乱が起こったということは元フィエオン王国の貴族などがウエストスターズのトップに?』
『いえ、それが内乱を起こしたのは第二王子だったようで。今はその方がウエストスターズの帝王となります』
だったようで?
確信はないのか?
内乱時の話だからタブーにでもなっているのか?
『つまり、その方が西側をまとめたということでしょうか?』
『その通りです。現在西の連合は帝王の元にまとまっているのです』
『その話がこちらに届いていないのはなぜでしょうか?』
そこが不思議だよな。
内乱があってフィエオン王国が滅んだという噂話程度は来ているのに、その後のウエストスターズ建国の話は来ていない。
しかも、その後西側をまとめるという大事をやっているのに、その話もない。
どれだけ労力と混乱があったはずなのにだ。
その時点での情報が流れてきてもおかしくはないはずだが……。
いや、距離が離れている分情報が届くのが遅れているか?
それにしてもな……。
『それに関しては私たちはよくわかりませんな。ウエストスターズが出来た時は此方ではそれなりに話に上がりましたからな』
『小国での出来事がですか?』
そこもおかしな点だフィエオン王国は西側でも別に取り立てて大きい国ではない。
大国が警戒するというか、情報を集める要素が存在しているのか?
『その時はそうでしたな。ですが、なぜか情報が入ってきましたな。とはいえ、内乱をすぐに終わらせたというのは評価しておりました』
『ですな。私も同じです。何せ内乱を一か月で収束させたのですから、他国も介入する暇がなかったと』
『普通なら、領土をかすめ取られるぐらいはするのですが、それすらもなかった』
何かしら事前に準備していたってことだろうな。
そうでもしないとおっさんたちの言う通り、内乱なんて他国の介入を招くばかりだ。
……あえて情報を流していたってところか?
『ふむ。フィエオン王国からウエストスターズ帝国になった流れは分かりましたが、それがどうして西側の盟主というか、統括する側になったのですか?』
そこが大事だよな。
何でウエストスターズのもと西側が纏まっているのか。
別の国でもよかったはずだ。
というか、なんで大きなトラブルもなくまとまっているのかが俺にとっても不思議でたまらない。
各国のトップたちが大人しくウエストスターズの下につくか?
普通ならそこでというか、元々そういう覇権争いで戦争が激化するはずだが……。
そんなことを考えているとおっさんたちがうんうんと頷きながら。
『もちろん、最初は盟主もなにもなかったですな。気が付けばというのはおかしな話しですが、それに近い』
『気が付けば勢力が大きくなっていたと?』
『そうです。まあ、経過は聞いておりました。先ほどお話しましたが、内乱が起こった際、介入する間もなくと言いましたが、つまりは介入はしようとはしていたのです』
なるほど。
時間が足らなかっただけで、準備はしていたってわけか。
それは当然だよな。
弱っている国から奪うのはどこでも良くやっていることだ。
それをこの西側の連中がやらないわけがない。
『ですが、内乱は僅か一か月で終わり、介入のために動いていた国々はウエストスターズに侵攻した結果になりました』
『ああ、そういうことですか。ウエストスターズが攻められたのであって、フィエオン王国はもうなくなっていたと』
『その通りです。ですが、その後が違った。確かに内乱を素早く収めましたが、土地は取られるだろうと周りは思っていたのです』
確かに、それは普通に考える。
何せ戦力なんてバラバラだろうしな。
敵の侵攻を止める手段である国の中枢は麻痺していると言っていいだろう。
『ですが、ウエストスターズはあらかじめ予想していたのか、国内を瞬く間にまとめ、侵攻してきた敵を蹴散らし、逆侵攻したのですよ』
『へぇ』
話の流れからそういうことなんだろうというのは分かっていたが、聞かされるとジョシーのような感想が漏れるだろうな。
なにせ、こっちの世界は本当に技術がしょぼい。
そんな中どうやればこんな的確に動けるのか不思議でたまらない。
事前に打ち合わせをしていたにしろ、それでもトラブルは起こるものだしな。
『まあ、ここまでなら内乱も含めて計画していたと言われれば納得できないことはありません。こういうことが起こらないわけではありませんからね』
『なにせ小国のことですから』
確かに、このころのウエストスターズはフィエオン王国の名残だから小国だ。
領土は狭い。
そして攻め込んできた連中も同じような規模と考えると、先ほど話した対応は出来なくもないだろう。
『しかし、不思議なのがここからなのです。このウエストスターズの動きを見て周りの小国が警戒し、同盟を組み、同じように侵攻をするのですが、これも打ち破られます』
『よくある話に聞こえるのですが? 放置しておけば滅ぶのでしょう?』
『それはその通りです。ですが、ここまで上手く行けばさらに上が動きます。こういう小国は大国と繋がりを持っています。そして、その上は大きな国が足元で出来るのを認めはしません』
そりゃな、小国だからこそ支配できるが、大きくなると大国の言うことを聞かなくなると思って当然だな。
『普通ならほどほどで手打ちになるのですが、ウエストスターズはそれでとどまりませんでした。まあ、それがあったっからこそ、この西側の盟主として動くことになるのは当然なのですが……』
そこで言葉を切ったお偉いさんだが、別のおっさんが口を開く。
『この状況になるまで1年経っていないのです。その動きの速さに西側の諸国の目を集めたのです』
たった一年。
支配した地域をまとめる時間もなく?
つまり、元々相応の戦力があったということか?
こうして深くウエストスターズの成り立ちについて聞いていくことになるのだった。




