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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


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第475射:本の捜索

本の捜索



Side:タダノリ・タナカ



結城君の言葉で新しい発見があったのはいいが、改めてその手の情報を集めようとすると問題があるのに気が付いた。

俺たちが居ない西側侵攻予定を知るものというと、ジョシーと一緒に同行している連中ぐらいだろう。

俺がヅアナオの隣に展開している軍の野営地に行っても情報を得られる可能性は低い。

まあ、無い可能性はゼロではないが、その前にジョシーから情報を引き出してもらう方がよいということになって、俺は本探しに切り替えることにしたのだが、その本屋で大和君たちと合流をすることになる。


「ねえ、田中さん椅子出して。疲れるんだ」


俺を見てルクセン君の最初の発言がこれだ。

まあ、いつもの通りで何よりというべきか、呆れるべきか悩んだが、別に騒いでも仕方がない。

俺は素直に椅子を俺を含めて4人分だして前に置く。


「それで、ここの店長は?」

「いま、裏で注文の本を探して貰っているところさ」

「なるほど」


本屋の中を見ると確かに表に出ている蔵書は多くない。

家の中にちゃんと在庫を保管しているんだろう。

地球みたいに印刷技術が発達しているわけでもないし、一冊一冊手書きだからこっちは。

作るところを想像するだけでぞっとする。

どれもこれも、現代なら博物館行きになりそうだな。

と、そこはいいとして。


「本を読んでいるのはなんでだ?」

「一応、確認ってやつさ。他になにか情報があるかもしれないからね」

「ああ、そういうことか」


確かに、俺たちが確認したのはノスアムにあった本だけだ。

他に情報源があるなら確認しておいて損はないが……。


「この手の手書きの本を簡単に触っていいのか? 弁償とか言い出したら面倒だぞ?」


そう、この手の本は本当に貴重品だ。

雑に扱うと怒るのは当然。

わざわざトラブルの種を作る理由もないだろうと俺は思うのだが……。


「いえ、それはゼランさんが金貨の袋を差し出して、許可を得ましたよ」

「うんうん、アレが札束で殴りつけるってやつだよね~」

「ああ、そういうことか。保証金を見せたわけだな」

「そういうこと。この手の本を触らせたくない理由は、破損汚れはもちろんだが、その際にお金が取れないことだ。この手の商売は壊されても払えない輩が多いし、手間もかかるからね」


確かにな。

貧乏人に金を出せと言っても取れないし、元を取り戻すにしても警察、こっちで言うと衛兵とかに訴え出て、領主の判決を待つとかしないといけないんだろう。

それで取り戻せるかもわからない。

それなら、触らせないっていうのが一番だ。

それを解決するのが御金があると見せることってわけだ。


「それに、特に関係ないと思っても買うつもりだしね」

「ん? なんでだ? カモフラージュか?」

「それもあるね。それに今のところはノスアムのジェヤナ嬢の仕入れ係にミスリードしているから、私たちも買うと思わせておく必要もあるのさ」

「ああ、そういったことか。確かに常にノスアムのお嬢ちゃんの名前で買い続けるのも無理があるしな。本を集めている商会ということにするわけか」

「そうそう。一々領主の紹介とか頼みじゃないと買えないって面倒だからね。そこらへんを改善できれば独自で情報を集められる。もう、秘宝を探しているって方向でもいいんじゃないかってね」

「なるほどな」


宝探しの商人一派。

別に珍しいことじゃない。

何せ現代の地球でもその手の冒険家は沢山いる。

スポンサーを募って今見ぬ遺跡などを探している人たちは大勢いる。

まあ、金銀財宝を狙っているっていう、トレジャーハンターはそう多くはないが。


「話はわかった。それで本を調べているってことか」

「そうそう。でも、そんなに面白い本はないけどね~」

「そんな簡単に新しい情報が見つかるわけありませんわ」


そうだな、大和君の言う通り、銃関連の情報が見つかるわけがない。

というか、見つかったらかなりの軍事大国が存在しているってことになるから、俺としては助かる。

俺だけが使っているから特別に見えるだろうが、この手の兵器は数を揃えて戦うのが基本だ。

現代戦において英雄なんていないんだよ。

泥臭く、卑怯もクソもない戦い方をする必要がある。


「どうしたの? なんか面白い本あった?」

「ん? いや、この本の集め方ならジョシーにも頼んでおくかと思ってな」

「ジョシーさんに本をですか?」

「ああ、向こうがどういう意図かわからないから、何とも言えないが、こちらと和解したいと思うなら西側の文化を知りたいと言えば本ぐらいくれるだろうし、紹介ぐらいはしてくれるだろう」

「お~確かに、それはありえるね~。まあ、向こうが偏ったものを持ってくることもあるだろうけど」

「そういうのは当然だな」


こっちを丸め込めるとは思わないだろうが、西側にとって有利な情報を押してくるっていうのは普通にある。

自分たちの非を認めるような情報を出す国家とか俺は基本見たことがない。

そんなことをすれば、被害が大きくなるのはもちろん、国の顔に泥を塗るということになる。

だからこそ、戦争で勝った負けたってことになるんだが。

と、そんなことを話しているうちに、カウンターの奥からばあさんがやってくる。


「ん? 新しい客かい? 勝手に本に触るんじゃないよ」

「ああ、そっちの男性は私たちの身内さ。それで、本は?」

「そうかい。ならよかった。そこのあんちゃん。本を持つのを手伝っておくれ」


道理で手ぶらなわけだ。

まあ、本は重いから仕方ないか。

俺は本の調べものはルクセン君たちに任せてばあさんについて店の奥へと入っていく、整理整頓というか、店舗と生活空間はしっかり分けているようで、ごっちゃとしている風には感じない。

高級な本を扱っているからだろう。

そして、在庫を置いている部屋に通されるとそこにはしっかりと本棚が置いてありびっしりと本が詰まっているのが確認できる。


「ほれ、あの本の山さ」


そう示された先には確かに20冊以上の本が積み重ねられている。

地球の本ならもっと薄いんだろうが、手書きで装丁をしているからその厚さは物凄い。

流石にこれを雑に持っていくのは気が引けるので。


「ばあさん。アイテムバッグに入れて行っていいか?」

「ほう、商人ならそれぐらいは持っているかい。構わないよ」


許可を貰えたのでアイテムバッグに本を突っ込んでから、店先に戻ってくる。


「おかえり~。って本はどこ?」

「ああ、ここだ」


俺は本を取り出してカウンターに置く。


「さ、確認しておくれ」


ばあさんも商品の確認をしてくれといって、ゼランが代表して本を確認していく。

その間に俺もばあさんと話をしてみる。


「そういえば、本を色々集めているって話はしたんだよな?」

「ああ、ちゃんと金を払ってくれるなら沢山買ってくれて構わないよ」


商魂たくましいことだ。

とはいえ、俺にとっては都合がいい。


「それなら、これと言ってジャンルを指定するわけじゃないが、商人として価値がある本とか、売れそうな本とかばあさんはわかるかい? あと、宝の隠し場所が書いてあるとか」

「ああ、商人らしい選び方だね。とはいえ、最後の話はやめときな。損をして死ぬだけさ。ちょっと待ってな」


そう言ってばあさんはまた奥に引っ込んでいく。

やはり、その手の高値で売れそうな本は奥にしまっているわけだ。

そんなことを考えていると。


「やっぱり宝の本みたいなのはあるんだね~」

「まあ、物語ってだけで大抵はそう言うのは嘘だけどね。とはいえ、浪漫があるんだろうさ」

「やはりそういうものですか」


宝の本、つまり宝の地図に対してのルクセン君たちの反応は淡白だ。

宝物が見つかると思ってはいないようだ。

とまあ、そんな感じで、俺たちは本を仕入れてまた分かれて行動することになる。


さてさて、俺はゼランにさっきのことを連絡するかね。



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私感で余談で佞談 新しい図書館は知らないが、古い図書館では閲覧室の角に水道があるところもある。 近代に印刷機が普及するまでは、写本は資産目録に載る位高価で革で装丁するのも普通で、それで食ってく装幀職…
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