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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


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第470射:聞いてはいけないことがある

聞いてはいけないことがある



Side:ナデシコ・ヤマト



「うへ~、聞いているだけだったけど疲れた~」

「否定したいですが、そこは同意です」

「あはは、2人ともそれなりに戦えるんだからあの程度はこなせると思っていたんだけどね~。タナカ殿からも鍛えられているだろう?」


私と光さんの疲弊を見たゼランさんはそう聞いてくるのですが……。


「田中さんは命がかかっているからね~。体を動かしていれば何とかなるんだけど、今のは会話でしょ?」

「しかも金銭が絡む話ですからね。私たちも冒険者として交渉はしたことがありますが、商人としての知識はほぼないに等しいですから、下手に口も挟めなくて緊張いたしました」

「なるほど。確かに分野が違うか。さて、一応ギルド長から言われた物資は用意しているが、すぐに渡すと怪しまれるし、先ほど手に入れた情報を宿屋でまとめようか」

「そうだね」

「そうですわね」


ということで、商業ギルドで教えてもらった宿屋へ向かい、部屋を取るとそこで話し合いを始めます。


「普通の宿だね」

「まあ、普通ですわね」


この世界基準のベッドが4つ置いてあって、テーブルと机があるだけの本当に簡素な部屋です。

というか、ちゃんとシーツは綺麗なのでマシな分類ですね。

下手をすると、シーツはもちろんベッドのクッションすらないこともありますから。

硬い床で寝ることも多々あります。


「ま、一応商人が取る宿だからな。それで、これからの話だが一旦休憩を取ったあと物資を商業ギルドに運び込んでから、本屋に行ってジョン・スミスの情報を集める」

「あ~、そういえばそれが目的だったよね~。なんか交渉がすごすぎて忘れてた」

「気持ちはわかりますが、それだけではありませんわ。基本的にはゼランさんが情報を集めていますが西側勢力の情報もですわ。というか、今までの話でゼランさんはどう思いましたか?」


私は情報をまとめる一環として、ゼランさんの話を聞いてみます。


「そうだね。まあ、別に普通の戦争とあまり変わりはないかな」

「え? 戦争ってこんなものなの?」


以外と思える回答をするゼランさんに光さんが首をかしげます。

ここまで大規模な戦争がほかの戦争と変わらないと言われると私もその気持ちはわかります。


「規模は大きいけどね。情報は制限されているもんさ。勝っている負けているなんてのは、国が亡びるまではわからないって感じだね。とはいえ商業ギルドぐらいの組織になると、連絡を取り合って戦況ぐらいはわかるだろうけど、今は別に東側が奥まで侵攻しているわけでもないし、西側の連中が戻ってきたにしてもとどまっているから判断は付かないだろう。勝手に負けたというのはそれこそ処罰の対象だしね」


ああ、確かに。

こういう戦況報道は建前がくるのでした。

そうでもしないと国民の不安が募り、統治が上手くいかなくなるから。

戦争を続けたいのに続けられなくなる。

まあ、負けてしまっては続ける意味がないといいますが、負けるというのはすべてを奪われるということですから、特に戦争を主導しているメンバーは確実に何らかの不利益をこうむりますから、なんとしても勝っていると喧伝する必要があるわけです。

こうして、国民が情勢を知るころにはどうにもならない状況まで追い込まれているというわけですわね。

おっと、どこかの世界の戦争の話ではなく、いまはゼランさんのお話ですわね。


「確かに、西側で僕たちが勝手に西側の連中が負けたっていうのはよくないよね~」

「よくないといいますか。ゼランさんの仰る通り軍に捕らえられて処罰されかねませんわね」

「そうだ、だから迂闊なことは言えないってわけだ。商業ギルドとしてもな」

「でもさ、実際西側の軍は田中さん……じゃなくてジョシーの戦力に散々やられてこのヅアナオに戻ってきたんでしょ? そこで察する人もいるんじゃない? 兵士だってかなり損害受けたんだし」


そういわれると確かにその通りではあります。

西側の軍はこのヅアナオを通り過ぎて、ノスアムの西砦に攻め込んでいるのです。

その結果、待ち構えていたジョシーさんに敗れ、こちらまで後退することになったはずですが……。


「そこはどうとでも言えるしね。倒しはしたけど、被害が大きかったから戻って休息とか。ジョシー殿が話し合いを求めているから、それをそのままでもいい。向こうとしては別に負けていないからね。話し合いを蹴っていると噂を広められる方が不利に働くことがある」


確かに、話し合いを求めているのに拒否をしてしまえば、度量のない人だと思われるかもしれません。


「ま、実際のところジョシー殿にコテンパンにやられているんだから、戦うのは無理ってことで、案とか出した妥協案がこのヅアナオでの待機だ」

「そういえばそうだった」

「ということで、下手なことは言わない方が良いってことだ。さて、それで商業ギルドで軍というか西側連合、私たちは西魔連合の目的を聞き出して。町では本屋の情報がいいだろうね。下手に軍の動きとか目的を聞いて回るとスパイって目を付けられる可能性があるからね」

「なるほど。少しでも聞いて回るのも危険だと」

「危険だね。負けたってのは西側の軍にとっては知られたくないことだ。口封じに来るだろう。下手に負けたことが広まれば、それこそ軍の立場はもちろん、ヅアナオの人たちも敵軍が攻めてくるって恐怖に襲われるからね。荒れる可能性がある」


そうでした、ジョシーさんのおっしゃる通り、西側の軍は下手に撤退すればあの将軍や一族の首が飛ぶ可能性があるのでした。

そして、従軍している人たちも任務を果たせなかったとして処罰を受ける貴族たちもいるでしょう。

それを避けるために、多少の犠牲は容認すると私も思います。

私たちが納得したのを見て頷き。


「じゃ、敗走はもちろん、基本的に軍に関しては話さないということで。これから馬車から荷下ろしをする振りをして小麦粉とかを搬入するから、2人はどうする?」

「どうするって? 一緒に手伝うんじゃないの?」

「いや、小麦粉系はかさ張るからアイテムバッグに入れているだろ? そこは男衆に手伝ってもらうさ。そうでもないと出番がないからね」

「つまり私たちは暇だと?」

「そうなるね。とはいえ、2人とも若いし美人だ。下手に町を出歩くのはお勧めしない。いや、物理的には問題ないのは知っているけどね。トラブルは避けるべきだって話だ」

「それはそうだよね~」


流石に光さんも先ほどの話を聞いて町を出歩きたいとは思わないようです。


「ついてきてもいいけど、そっちはそっちで暇だからね。あれだ、アキラを通じでタナカ殿の動きとか把握してみるのはどうだい?」

「田中さんの動きですか。そういえば聞いていませんでしたね」

「こっちはずっとギルド長と話していたからね~」

「良ければタナカ殿の動きをあとで教えてもらえると助かる。あの人は暴れるからねぇ」


その言葉を残念ながら私たちは否定できません。

本当にこういう初めての場所では、かなり強烈なことをすることが多いですから。

ということで、ゼランさんが出て行ったあとは、晃さんに連絡を取ることにしたのですが……。


『えーと、田中さんのことだろう』

「話は聞いてたよね?」

『ああ』

「それで田中さんは今どちらに?」

『それが、スラム街のトップらしき人の家に行っている』

「うーん、それ本屋を探すのと何が関係あるの?」


私が言う前に光さんすぐに突っ込んでくれました。


『軍の動きを知りたいみたいだ。スラムの連中はそこらへん敏感みたいだし』

「確かに裏でこそこそしている人たちは、軍人とはまともに戦えませんからね。軍の動きは知りたいでしょうし、独自で調べているというわけですね」

『多分な。田中さんがどこまで聞き出せるかはわかってない。今屋敷に入っていったばかりだし』

「暴れないといいね~」


本当に。


『まあ、経過は報告するから、待っててくれ』

「わかりましたわ。まずい状況になりましたら、私たちに連絡をお願いいたします」

「田中さん必要とあればスラムごと吹き飛ばしそう出しね~」


光の仰る通り、それぐらいはしても不思議ではないと思いますわ。


『ということで、2人はゼランさんと一緒に本屋探しをしてくれ』

「「了解」」


私たちの目的は定まったので、残った時間でジョン・スミスの本を読みなおし特徴などがないか調べることに力を入れることになるのでした。



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