第467射:話し合いは平等に
話し合いは平等に
Side:タダノリ・タナカ
「さて、武器を構えている連中もいるようだが? 話し合いはしたくないのか?」
俺がぶっ飛ばした男は伸びているとして、他に囲んでいた連中はナイフを取り出している。
いやー、露骨だった。
ヅアナオの町に入っておっさんと別れたあと、どうしたもんかと思っていたが、俺を町に来た田舎者かと思ったのか、今伸びている馬鹿が誘ってきたわけだ。
俺としても、町の裏の連中の情報には興味があったし、話に乗ったわけだ。
いや、向こうとしては身ぐるみ剥ぐか、殺そうと思っていただろうがな。
だからこそ、俺としては非常にやりやすいわけだ。
何せ遠慮なんざいらないからな。
「て、てめぇ!」
「この人数相手に勝てると思っているのか!」
いや~、明らかな馬鹿な返しで助かる。
「何言ってるんだ。勝てるから言っているに決まっているだろう」
負けると思うならさっさと撤退しているし、元からついて行っていない。
こいつら全員軍人でもないチンピラがいいところだ。
とはいえ、下手に動かすと面倒にはなりかねないから……。
「がげっ!」
相手の問答に付き合っている理由もないのでさっさと片付けることにする。
総勢8名。
狭い部屋にこんなにいたらお互いが邪魔でしかないだろう。
なのでまずは横にいる馬鹿のみぞおちを殴りつけてから襟首を持った後、他の馬鹿に投げつける。
この時点で2名脱落。
「うおっ」
「お、おい!」
「うぎゃ!」
巻き込まれて慌てている間にもう一人を殴りつけて同じように放る。
プラス2名脱落で残りは4名。
その次は流石に警戒しているが、次は投擲に切り替える。
武器は山ほど転がっているからな。
コップもガラスコップとか言う割れやすいモノではなく木のコップで重量もそれなりにある。
つまり威力は申し分なく、投げられたコップに頭部をぶつけられて一人倒れ、残り3名。
「うぁ……」
この惨事を目の当たりにしたおバカどもはうめき声を出して動けずにいる。
本当に戦闘慣れしていないな。
そんなことを考えながら、俺はさらに固まっている1人に肉薄してみぞおちに膝を叩き込み、崩れ落ちる。
残り2名だが、そこでようやく俺に焦点を合わせてナイフを構えて攻撃態勢を整えようとするが……。
遅い。
即座に足元に転がっている椅子を片手で持ってぶん殴る。
ナイフは確かに凶器だが、射程が本当に短い。
いや、それが利点でもあるんだが、こうして少し大きめの武器を持てばそれだけで無意味に近い。
実際殴られて倒れているからな。
そして最後の一人はようやく俺にナイフを突き出してきたが、それもへっぴり腰。
躱すまでもなく、リーチのある椅子をそのまま振り回し、ナイフを持つ手を殴りつけて叩き落す。
いや、落とすなよ。
そう思いつつ、落ちたナイフを手に取り、首に近づけて……。
「さて、首をぱっくりとやった方がいいか?」
「ひっ」
相手は手が痛いことに集中していて、ナイフを近づけられてようやく悲鳴を上げる始末。
そして、最初に人砲弾で巻き込んで倒れていた2人がようやくふらふらになりながらも立ち上がってきた。
復帰遅いな。
「一応全員ころしていないが、さっきの対応を考えると、抵抗しそうだし、半分いや1人を残して始末したほうがいいか?」
「や、やめろ!」
俺の言葉にナイフを突きつけられているやつが叫ぶが、俺にとってはどっちでもいいので、とりあえず首筋に少しナイフを突き立てる。
「ぎゃぁぁぁ!」
情けない叫び声が聞こえる。
そして、残りのメンバーも何とか立ち上がるが戦意は消えていて青い顔をしている。
「暴れるな。深く刺さって本当に死ぬぞ」
「あ、あ……」
そこでようやく大人しくなる馬鹿。
さて、ようやく話し合いってところかね。
「じゃ、お話しようか。俺に襲い掛かろうとしたわけだが。金が目的ってことでいいのか?」
「ち、ちがっ」
「違う? ならなんでだ? 特に何も持っていないが?」
とりあえず差しているナイフをぐりぐりとして、傷口を広げてみる。
「いぎゃっ! そ、そうだ。か、金が目的だ。お、お前の身ぐるみはがして……う、売ろうと思ってた」
「まあ、そんなところだろうな。というか、やっぱりここにも奴隷売買はあるか」
パッと見て、普通にみすぼらしい俺が金を持っていると思わないだろうし、そうなると俺を売るぐらいしかないだろうな。
「お前たちは普段そんなことで金を稼いでいるわけか?」
「い、いや、さ、最近、人が増えてきて、仕事を、探しに、来た……」
「ああ、最近の情勢でそういうことを始めたと。お前ら、あんまり荒事慣れてないだろう?」
「そ、そりゃ、まあ。盗みぐらいはしていたが……」
「俺たちのチームはそれでもやれてたんだよ」
素直に落ち込むな。
バカか。
「はぁ、まあお前らがこれから生きるか死ぬかは知らないが、俺に殺されたくなければ情報を吐け」
「わ、わかった。わかったから、ナイフを抜いてくれ」
「いやだね。逆にもっと刺してやろう」
ということで、さくっと押し込む。
「ぎゃぁぁぁ!」
「叫ぶな。こっちを殺そうとしたんだからこれぐらい受け入れろ。それともサクッと殺してほしいか?」
「あ、ぐっ……」
何とか叫び声を押さえる馬鹿。
周りの連中もこいつを見捨てることは出来ず、動こうとはしない。
とはいえ、ナイフを握ったままというやつだ。
本当に馬鹿だよな。
「お前ら、こいつが生きるか死ぬかはお前らの動き次第だ。手にナイフを持ったまま俺が警戒を解くと思うか?」
「お、お前ら、ナ、ナイフを降ろせ」
「馬鹿か、ナイフはあっちの隅に投げろ。手に持ったままなんざ許すか」
「こ、いつの言う通りにしろ」
そういうと、立っている連中は大人しく隅にナイフを投げて無手になる。
おいおい、せめてこっちに投げる素振りぐらい見せてもいいだろうに。
本当に素人かこいつら。
まあ、無駄に死人が出ないことはいいことか?
「さて、俺の安全が多少確保されたことで聞きたいが、俺を売ろうとした奴隷店はどこかってこと、そしてお前らのいる場所を取り仕切っているやつは誰だってことだな」
「な、なにが目的……」
「その質問に答える必要性はない。お前みたいな連中に襲われたって文句を言いに行くわけじゃないから気にするな」
下手に俺の行動目的を伝えると妨害など色々手を打ってきそうだしな。
今はこんな連中の手を借りる必要性は感じていない。
「わ、わかった。それなら……」
ということで、奴隷商の場所と、このスラムを取り仕切っているやつの名前と場所を聞きだした俺は馬鹿たちを放って出ていく。
馬鹿たちは俺を追いかける気力はなく、ナイフが突き刺さったやつの治療を始めていた。
とりあえず、ポーションを渡してかけてやれとは言っておいたし、次はないとも言っておいた。
あの性格なら仕返しは無いと思っていいだろう。
まあ、次は無いといったから、仕返しに来たなら次は文字通り骸になってもらうだけだが。
『えーっと、田中さん。本屋さんを探すんじゃなかったんですか?』
『そうだよ。監視していたらなんだか戦闘になっていたんだけど、どういうことだい?』
おっと、そういえば結城君たちに連絡をするのを忘れていたな。
「別に驚くことじゃない。柄の悪い連中に絡まれたからしつけと、情報収集を兼ねていただけだ。本屋の方はようやくトラブルが終わったから探す予定だが、ゼランたちの方はどうなっている? あっちが本屋に動くならこっちは情報収集に集中した方がいいと思うが?」
『あーそうだべな。どっちも同じところを調べる必要性はないだべな』
『確かにそうですね。本屋の情報はゼランさんたちが聞きだしていますし、田中さんは町の情報を集めてもらった方がいいかもしれません』
「だろう? じゃ、俺はちょっと調べてみる。本の方も他の所で見つかる可能性があるから、情報は随時くれ」
ということで、俺はとりあえずスラムをまとめるやつの所へを足を進めるのであった。




