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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


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第459射:問題がありそうで実は問題はなかった?

問題がありそうで実は問題はなかった?



Side:タダノリ・タナカ



面倒な話が一息ついた。

まあ、結局東側がどういう結論をするかによって話が変わるからな。

いま詰めても仕方がないという話だ。

とはいえ、先ほどのノスアム側の心配もわかる。

下手するとノスアムはひどい目に合うからな。

前からわかってはいたことだが、今回の東側の迷走っぷりに、ノスアムとして今すぐにでも放棄されかねないと思ったんだろう。

放棄されれば、後は独力でという話になる。

さあ、西側と対等に話し合えるかというと、実に微妙だ。

話し合いが通じるなら最初から戦いにもなっていなかっただろうし、そもそも西側としてもジョシーから聞く限りは、前線の兵士たちはよくわかっていないという感じだ。

なのに、大軍を動かすという意味不明っぷり。

マジでどうなっているんだこの戦争?っていうのが俺の率直な意見だな。


と、色々考えたが、そういうのも含めて俺たちはノスアムを早々に放棄することはない。

なにせ……。


「じゃあ、改めて、俺たちが探していたモノに近い情報が見つかった件に関してだ。そこはお嬢ちゃんたちも協力してくれるとありがたい」

「はい。それは喜んで協力させていただきます。確かジョン・スミスという方の著書をお探しで」

「まあ、露骨な偽名だがな。それで、その話の続きで本に関してはお嬢ちゃんたちは詳しくないと聞いていたが?」

「その通りです。本に関しては先代、お父様が趣味で集めていたもので私たちはそこまで詳しくないのです」


まあ、趣味で買い入れていたものに対して、知っていることなんて多くはないだろう。

とはいえ、詳しくはないにしても定期的に仕入れているのであれば、売ってくれる先があるということだ。


「それで、結城君たちから聞いたかもしれないが、その仕入先はわかるか?」

「仕入れ先のお話は聞きました。調べさせましたところ、本屋というわけではなく行商人に指定して仕入れていたとのことです」

「その行商人は今町に?」

「幸い滞在しているようで、探しているところです」

「いるのか」


こういうのはいないのが普通かと思っていたが、運がよかったんだろうな。


「え? 僕が言うのもなんだけど、戦争があったんだけど。あと、なんか敵側の方から商人はもちろん人の出入りもしてなかったって聞くけど?」


ルクセン君の言う通り、ここ数か月、他の町からの出入りはなかったはずだ。

向こうが戦力を集めると同時に物資を止めて、こちらを干上がらせるためだったと思われる。


「はい。それは間違いありません。ただ単に、近隣の村の方に行っており、ノスアムでの戦いが終わってから戻ってきたということで、行商人はノスアムで戦争が起こっていたことすら知りませんでした。何せ半日の戦いでしたから」


なるほど。

短時間で戦闘を終えたおかげでどこかに行く暇もなかったわけだ。


「それにその行商人はユーリア様たちから提供されている物資がとてつもないモノだと言っておりまして、販売されている物を可能な限り購入しているようなので、当分は滞在していると。まあ、ほかの町に行っても追い散らされそうだというのもありますが」

「あー、ヅアナオとか露骨に人の出入り制限していたもんね~。その商人さんの判断は正しいよ」

「それに私たちの物資の価値を認めているとなると見る目がありますわね」


ルクセン君、大和君の言う通り、その行商人は見る目があり、生き残る判断ができるように思える。

まあ、実際見てみないことにはわからないが、この町にいるのはありがたい。


「じゃあ、俺たちが会いに行けば話が出来ると思っていいか?」

「はい。向こうも喜ぶかと。とはいえ、まだ見つかってはいませんのでお時間はいただきますが」

「そこはなるべく早く頼む。町を出て行っているなら、追いかけても話を聞いておきたい」


ここで情報を失うのは避けたい。

それだけの価値のあるモノだ。


「わかりました。見つけ次第連絡を差し上げます」

「頼む。あとは、砦の状態だが……」

「特に問題はないよ~。平穏」

「はい。砦の警備に関しても問題なく運用できていますわ」

「あと、足りない物資の補給要請がありますよ」

「物資が足りない?」


最後に結城君の言葉に首をかしげる。

十分、砦を運用できる物資はおいてきたはずだが?

そう思っていると、お嬢ちゃんが話に加わり。


「ああ、それが先ほどの行商人の話に戻りまして、町や砦で販売されている物資が人気で民たちがもっと欲しいと」

「そっちか」


ノスアムを占領してからしばらくは懐柔の目的もあって配給という形を取っていたが、最近では砦の建設に手伝ってくれた報酬としてもばらまいていた。

こっちの金なんてそんなに持っていないからな。

物資でやるしかないわけだ。

それが上手く行き過ぎたということか。


「しかし、あまりこっちに資金が集まりすぎてもノスアムのお金が無くなるだろう。それはどうする?」

「え? そんなことってあるの?」


ルクセン君は不思議そうに首をかしげているが、不思議なことではない。

何せ、このノスアムの人口は5千にも満たない。

5千人の経済活動なんざ、たかが知れ居ているというわけだ。

せめて数万人がいればな……。

と、そこはいいがルクセン君にはなんて伝えるべきか。


「普通ならお金が枯渇することはありえませんが、ノスアムは他の町からの流通が止まっていますし、収入源がありません。つまり、ノスアムのお金は今あるだけとなりますわ。だから、私たちに支払ってばかりだといずれ無くなるということですわね。何せ私たちはそこまでノスアムにお金を落としていませんから」

「あー、そういわれるとお金使ってないよね?」

「いや、そりゃ、俺たちがお金を使うことなんてそうそうないしな。精々砦の建設の特に人を雇っているぐらいだし。正直田中さんの言うことはどうなのジェヤナ?」


幸い大和君や結城君が説明してくれて、納得したルクセン君はともかく、実情はどうなっているのかというと……。


「実の所そこまで問題にはなっていないかと。何せノスアムの統治にも資金を提供してくださっていますし」

「いえ、それはノスアムの治安安定を図るために必要なものですから当然です」

「うむ。姫様の言う通り当然じゃのう。ノスアムを干上がらせてしまえば、ここでワシらが活動できなくなるからのう」

「ああ、それでお金が回っているのか?」


確かにノスアムの町を運営するにはお金はかかる。

だが、最近はノスアムの経済活動は他の町とのやり取りが封鎖されて縮小する一方だから厳しいモノかと思っていたが……。


「元々ノスアムは国境近くの辺境でしたから。しかも東側が攻めてくる心配もなく、あるとすれば魔物の脅威なので商人からは人気が無いのです」

「なので、ノスアムは基本的に村とこの町での経済循環となっています。むしろ、他の町と大きなやり取りがあればもっと大きくなっていますな」


と、叔父がジェヤナに続いて答える。

そう言うことか。

俺が大げさに心配したように、この町の規模も予想以上に狭かったわけだ。

いや、失礼な言い方だな。

何とかなっているならよいってことか。


「むしろ、今回の戦いで好景気になっているといいましょうか」

「はい。ご領主様の仰る通りで、町の兵士に被害は出ましたが、その後の町の再建、砦の建設、そして撃退した西側連合の兵士たちの処分での財貨の回収で、驚くほどの貯蓄となっています」


あー、そういえば、戦線を突破した後、敗走した連中の物資とかは俺たちが回収してノスアムでの活動費に充てたな。

その分潤っているってわけか。

とはいえ、それって完全にルーメルに依存しているな。

ジェヤナたちが撤退するかもと心配する理由もわかる。

これ、下手にノスアムから俺たちが撤退すると、お金的な意味でもノスアムが傾く心配があるわけか。

そんなことを考えていると……。


「失礼いたします。お探しになっていた行商人を発見いたしました。町の宿にいるようですがどういたしますか?」


おっと意外と早く見つかったようだ。

さて、今は本の情報を集める方が先だな。

ということで俺たちは早速行商人を呼び出すのであった。



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