表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

457/524

第454射:物語に違和感

物語に違和感



Side:アキラ・ユウキ



ぺら、ぺら……。


そんな紙をめくる音が室内に響く。

今更そんな音が気になって顔を上げてあたりを見る。

ここは書庫だ。

具体的にいうと、ノスアムに存在している冒険者ギルドの書庫だ。

ルーメルにいた時も冒険者ギルドでは同じような書庫があった。

つまり、海を隔てても、作りに関しては似たり寄ったりになるんだなーと感心する。


「どうかいたしましたか?」


俺が顔を上げてあたりを見回していることに気が付いたシシルさんがそう聞いてくる。

一緒にここの冒険者ギルドの調査をしてくれる人だ。

あとギネルさんは書庫の奥に行って冒険者ギルドが行っていた仕事に関することを調べているようだ。

と、そこはいいとして質問に対して答えないとな。


「いえ、海の向こう側にあった冒険者ギルドにも同じように書庫があったなーと」

「ふむ。置いてある本も?」

「いえ、全部が全部同じというわけではないですが、魔物とか地域の情報という点では同じですね」

「確かに、それが冒険者ギルドには一番の情報でしょう」


シシルさんは俺の話に納得したのか、そのまま調べものを再開する。

俺はそれを確認しながら、改めて書庫を見る。

確かに、似たり寄ったりとは言ったけど、それは偶然なのか?

何か違和感がある気がするけど、その答えを俺はもっていない。

そんなものと言われてしまえばそれだけだが、似すぎている気がする。

とりあえず、記録として室内の写真をそれなりに撮って、本も見たものは映像記録としても残している。

今感じてる違和感はみんなで判断しよう。


俺はそう結論付けて、別の本へと手を伸ばす。

それは、魔物の分布とかではなく、何かの物語だ。


「珍しいな。冒険者ギルドに読み物タイプなんて」


全くないわけじゃないけど、それでもというやつだ。

あくまでも冒険者ギルドは魔物退治をするための基本的な情報が多い。

物語を置くメリットがないわけだ。

それでも置いてあるというのは、この土地に根差したものか、余程誰かが調べていたか。

とりあえず内容を確認してみる。

どこにでもある、というと違うかもしれないけど、よくある冒険譚だ。


「……とんでもない物が呼び出されたか」


ある遺跡から武器が見つかって、それを使って成り上がるという話だ。

その武器は燃える槍といわれ、そこから吹き上がる炎を受けて敵が倒れて……ん?

なんだろう、凄く変な文章を呼んだ気がする。


俺は目を揉んだあと、もう一度文章を読んでみるが、同じように「燃える槍」と「炎を受けて」とある。

普通に考えれば、いた、俺の知る限りのファンタジーよりで考えるのであれば、文字通り炎がふきだして、火炎放射のように出て敵を燃やしたはずなんだけど……。


「と、とりあえず、どういう風に倒されたのか記述がないか調べてみよう」


俺は嫌な予感を感じつつも、見てないこと、調べもしてないことにおびえるのは違うと思い、ページをめくっていく。

しかしながら、読者を焦らしているのか、敵を倒したとしか表記はない。

何か見落としているのかと思ってページを戻ってみてもはっきりした表記はないので、仕方なく読み進めると、強大な敵を倒すときの描写にようやく……。


『苦戦をしたが、当ててしまえば他の敵対してきたものたちと同じように、圧倒的な火炎により敵の胸には穴が開いていた。そこから……』


穴と来た。

他の敵と同じようにとも。

つまり偶然穴が開いたというわけではない。


「……これは、見つけ……」


そう呟いて咄嗟に口を押える。

シシルさんにギネルさんに聞かれても特に問題はない。

俺たちが探し物をしているのは知っているからだ。

とはいえ、確定してもいないことで叫ぶ理由はない。

落ち着け~と一旦目を瞑ってから改めて文章を読む。

変わっていないことを確認して、俺が都合の良い読み間違えをしていたという可能性はなくなった。

あとは、これがどこの物語なのかということだ。

位置が判明出来なければ、只の妄想話……いや、これを書いたのは誰かっていうのも気になるところだよな?

ということで、俺はひとまず著者の名前があるであろう場所を探してみる。


「大体は、扉とか一番後ろだよな」


内容に関しては大体読んでは見たが、どこかというのは何もなかった。

土地や町の名前は見覚えはない。

これに関しては昔に存在した名前かもしれないけど、今は調べようがない。

なので、これは記録して後で調べるとして、著者の名前は……。


「えーと、ジョン・スミス……」


微妙だ。

これが地球なら確実に偽名といえるが、こっちの世界では真面目にこの名前だったかもと思う。

いや、ここはつまりシシルさんやギネルさんに聞いてみるべきか。

この世界の名前として珍しいのかと。


「あの、シシルさん。いいですか?」


とりあえず近くで調べものをしているシシルさんに声をかける。

先ほど俺に気を使ってくれたばかりで呼び戻すような感じで申し訳ないのだがと思っていると、シシルさんは特に気にした様子もなくこちらにやってくる。


「どうしましたか?」

「気になる本がありまして、内容は銃を示唆しているもので、場所に関してはあとでジェヤナたちに聞いてみようかと思っています。それで聞きたいのは、名前のことなんですが」

「名前、ですか?」

「はい、著者、この本を書いた人の名前ですね。シシルさんやギネルさんは俺たちとは違って、西側にはいませんでしたが東側にいたのですから、多少は分かるのではと」

「なるほど。見せていただいてもよろしいでしょうか?」

「はい。こちらです」


俺は本を渡して確認してもらう。

ジョン・スミスというのは有名人なのか、ありふれた名前なのか……。

しばらく、本をめくるシシルさんの表情を確認するが、そこは冒険者ギルドで色々な仕事をしているせいかなにも読み取れない。


「ふむ」


そう言ってシシルさんは本を閉じる。


「どうでしたか?」


俺は、シシルさんが口を開くよりも先に聞く。


「そうですね。銃というモノを知った今では、この内容は確かに銃であると認識できます。そして、ジョン・スミスという著者に関してですが、私はしりません。この物語に関しても初めて目にします。おそらく、西側で書かれたもので東側には流れてこなかったものでしょう」

「そうですか……」


まあ、すぐに答えが返ってくるとは思っていなかったけど、先は長そうだ。

とはいえ、ヒントが一つ出てきたのはいいことかな。


「とりあえず、光と撫子に話してみます。同じタイプの著者があったらまとめていただけますか?」

「分かりました。そこはお任せください」


そうシシルさんに冒険者ギルドでの捜索は任せて、俺は光と撫子の元に本を持っていくことにする。


「確か、今は2人ともジェヤナのいる領主館で調べものだったよな」


俺は2人の予定を思い出しつつ、連絡を取る。


『ほーい、どうした晃~』

『何か面白いモノでも見つかりましたか?』


2人ともすぐに反応してくれる。

向こうから紙をめくる音が聞こえてくるので、俺の話を聞きながら本を調べているんだろうなーと思って苦笑いをしながら……。


「撫子、当たり。それっぽい本を見つけた」


俺がそう答えると、向こう側から「ガタッ」と椅子の音が聞こえる。

これは立ち上がったなと思っていると。


『マジ?』

『本当ですか?』

「絶対とは言い切れないけど、真面目に怪しい物は見つけた。でも、そこらへんはノスアムの人たちには秘密だろう。とりあえず落ち着いてくれ」

『あ、そうか』

『……失礼しました。とはいえ、データはちゃんと取っていますか?』

「そこはやってる。田中さんにも送信しているから無くなることはない。とはいえ、会って話した方がいいと思っているからそっちに向かっている。今、領主館の書庫だよな?」

『うん。待ってるよ』

『はい。お待ちしています』


ということで、俺は足早に領主館へと戻っていくのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ