第450射:ノスアムへの説明と対策
ノスアムへの説明と対策
Side:ヒカリ・アールス・ルクセン
「なるほど、無事に撃退できたようで何よりです」
僕たちの報告を聞いたジェヤナは笑顔を見せる。
嘘ってわけでもないけど、本当のことを言っているわけでもない。
そこが心苦しいけど、ノスアム全体を守るためにはしかたがないことなんだよね~。
「しかし、撃退となると、また攻めてくるということでしょうか?」
ジェヤナの叔父さんが痛い事実をついてくる。
「まあ、その可能性はあるだべだが、こっちも黙って攻められるわけじゃないだべよ。それに今回撃退されたってことで、向こうは大慌てだべさ」
「確かに、数倍の軍勢を率いて敗北したなど、上にとっては予想外の出来事でしょうな。トップを挿げ替えるレベルの話ですな」
「だべ、そうなると入れ替えで時間もかかるべ。再侵攻するにしても随分時間は稼げるだよ」
ゴードルのおっちゃんがちゃんと説明をしてノスアムのみんなはホッとする。
ま、僕たちが言うよりも、体の大きい強そうなおっちゃんが言う方が説得力あるよね。
「それで、ユーリア姫様とマノジル様、そしてタナカ様は今回の戦果を説明に本部へと向かったわけですね」
「そうだべ。あとは、戦力の捻出とかだべな」
「戦力の?」
「んだ。確かに大軍を追い返したりはしただべが、さっきみんなが心配したように次があるかもしれないだべ。でも、その次を無くすためには、攻めても無駄だって思わせるっていう方法もあるべよ。わかりやすいのは今言った戦力の増強だべな。ちょっと増やしたぐらいじゃどうにもならないってわかれば簡単に手を出してこないべ」
「なるほど。単純でわかりやすいですね」
「敵も数を増やすならこっちもってことだべな」
こんな感じで、ジェヤナたちは素直に納得している。
嘘をついていることについては罪悪感がないでもないけど、下手をするとノスアムにも危険が迫るからな~。
当初言っていた味方も怪しいって話がここで現実になっているからなー。
しかも一番いやな時に。
まあ、田中さんも一番いやな時に動くのが理想っていうのは納得なんだけど。
やられるかもって思うと嫌だよね。
「それで、私たちはこれからどうしたらよいのでしょうか?」
「ノスアムのみんなには噂が広まるのを阻止してほしいだべよ」
「噂ですか? 戦力を集めるのではなく?」
さっきの話からだとちょっと不思議だよね。
「戦力を集めるとノスアムの畑仕事や町の就業に問題が出るべ。まあ、働くところがない人たちは砦の維持のために働く場所は用意するだべが、兵隊になるっていうのは訓練期間もあるし、こっちで徴兵するよりもノスアムの方で雇った方がいいだべよ」
「そういうものなのですか?」
「こっちの武器は特殊なのはわかっていると思うべ。それを教練するとなるとすごく時間がかかるべ。そしておらたちは移動する可能性もある。ノスアムの戦力にはなりにくいべ。一応砦の使い方とかは教えるから、ノスアムがその時に十全に使えるようにしておくほうがいいべよ」
「それだと、ノスアムの大砦を譲るようなお話ですが?」
そう聞こえるよね~。
僕も最初話を聞いたときは、わざわざ作った砦を渡すようなものじゃんって思ったけど。
「使えない砦になる方が問題だべ。それでノスアムがおらたちがいない間に落ちたとか馬鹿らしいだべさ。敵は味方にもいるかもしれないだべ」
「それはどういう?」
「さっきの噂にもどるだべだが、強固な砦と兵力がある場合の攻め手ってどうするのが一番だと思うだべか?」
「えーっと、今の話の流れだと、噂を利用して分断を図るでしょうか?」
「うん。あたりだべ。敵も味方も今回のことでおらたちルーメルの力を把握したべよ。真っ向勝負からは被害が大きくなるべ。なら搦め手ってわけだべ」
「だから、噂話に注意をということですね?」
うん、真っ向から戦車を打ち破るとか、歩兵には絶対無理って僕でも言える。
ならどうするかっていうと、戦車に乗る人員をどうにかする。
具体的には乗る前にやっちゃうとか。
でも、戦車に乗る人っていないんだよねー。
田中さんとかジョシーが直接操作しているから、中に人なんていなくても動く。
というか、それこそ罠ってやつ。
だからこちらを行動不能にする噂っていうと、ノスアムに敵とか東側連合を受けれようとする流れかな?
僕たちはノスアムの人たちを傷つけようとは思わないし、出て行けと言われれば出ていくしかない。
その後のことに対してフォローはしにくいってこと。
「んだ。おそらくだべだが、西側、あるいは東側の軍を迎え入れようっていう類は注意だべ。おいらたちは倒せない。だから……」
「追い出すというわけですね」
「そんだ。具体的には迎え入れたらもっといい暮らしができるとかだべかな?」
「え? それは……あり得るのですか?」
「さあ、そこはわからんだべ。とはいえ、そう言うんだから露骨に裏切ればノスアムはもちろん、おらたちの怒りも買うだべだからなー。一応建前上の約束は守ると思うだべな。別に好き好んでおらたちと敵対したいわけでもないだべ」
「確かに、倒せるのならさっさと戦力をということですからね。……分かりました。噂については情報を集めさせます。報告は誰に?」
そんな感じで、有事の際の対応が決められていく。
その中で連絡先に僕たちが含まれているのはあれだなーって思う。
まあ、メンバーの中じゃ一応中核なのかな?
で、ようやく話が終わって、一息ついていると。
「そういえば、ジェヤナ。聞きたいことがあるのですがよろしいでしょうか?」
不意に撫子が質問をしてきた。
何かわからないことでもあったっけ?と首を傾げているうちにジェヤナが答えつつ頷く。
「はい。構いませんよ。ナデシコ様何をお聞きになりたいのでしょうか?」
「特に急ぐ話ではありませんが、私たちが探している物は御存じですわよね?」
「色々な情報を求めているとか。そのために海を渡られたと」
あ、そっちの話をするんだ。
僕たちがこっちの大陸に来たのは、一応地球に戻る手段を探すためだ。
ルーメルがある大陸に関しては、ルーメルとかリテアとかが国を挙げて探しているらしいから、それなら魔人がやってくる脅威をどうにかしようってことになったんだよね。
もちろん、ゼランさんが偶然来てくれたからだけど。
「その通りです。戦争に巻き込まれたのは不幸なことですが、こうしてジェヤナさんやノスアムの皆さんと会えたことは幸運だと思います」
「それは、私たちもです。ナデシコ様たちが理性的であったおかげで、こうして私たちは生きておりますから」
そう笑顔で答えてくれるんだけど、僕たちが攻め落としたからなーと微妙な気持ちになる。
とはいえ、僕たちが居なかったら、他の軍が攻めて文字通り滅ぼされて略奪されていた可能性も十分にあるんだよねか~。
「幸い、大砦の作業も落ち着きを見せていますので、私たちは西側のことも含めて、色々調べものをしてみたいと思うのですがいかがでしょうか?」
「ああ、なるほど。あれだけの攻勢を退けたのですから、当分は戦争面でも落ち着くでしょう。その間に調べものを、というわけですね?」
「はい。もちろん、大砦などの指揮業務は行いつついたしますので、そこはご安心ください」
え、探し物をしながら、ノスアム防衛の仕事もするわけ?
撫子の発言に僕がびっくりしていると、撫子がこちらを向いて。
「協力して、頑張りましょう。光さん、晃さん」
「「は、はい」」
サボれるとは思っていなかったけど、その笑顔は怖いって……。




