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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


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第448射:どう報告しようか?

どう報告しようか?



Side:アキラ・ユウキ



なんか、田中さんたちは東側にどう連絡するかで難しい顔をしている。

俺や光、撫子はそういう席にはいなくて、モニターの監視をしながらその会議の会話を聞いている。


「あー、あの会議に行かなくてよかったよ。僕、まともな意見を言えるとは思えないし」

「……それもどうかとは思いますが、どれも一理ありますからね」


光の言葉に、撫子が難しい顔で答える。

まあ、そうなんだよな。

田中さんの火の玉ストレートは敵味方の動きを見るには一番だし、ユーリアの意見は下手に急所を突かれたくないとか、協力者たちに迷惑をかけたくはないというのもわかる。

ゼランさんやシシルさんギネルさんの商売や冒険者ギルドとしての立場が無くなるのもこれから動きで問題にはなる。


「どちらかというと、意見としては保守というか引き延ばしが多いのかな?」

「ま、そりゃそうでしょ。敵をいきなり増やすような真似はしたくないさ」

「ですわね。いきなり味方が敵になるなんてのは、避けたいものですわ。田中さんは相変わらずの度胸ですわね」


光と撫子もユーリアの意見に賛成のようだ。

それはそか、下手をすると孤立しかねないし、知り合いの国も危険にさらされる。

確かにその通りなんだが、正直な話、田中さんならそれこそ利用できると考えられるだろうな。


「どうしたの晃?」

「晃さんは田中さんに賛成というわけですか?」


俺が同意せずに考え事をしていると質問をぶつけられる。


「あー、いや賛成ってわけじゃないけど、田中さんは敵が増えてもそれはそれでって感じかなーって」

「まあ、田中さんならそうだよねー」

「それはそうですわ。田中さんがその程度でどうにかなるわけもありませんし。あ、そういうことですか」

「「ん?」」


なぜか今の話で、撫子が納得して逆に俺と光が首を傾げてしまう。


「何かわかったの?」

「ええ。私たちはどうにもならないというのは言いました。それなら、私たちに協力している国がとは言いました」

「いったな」

「ですが、それが本当にできるのでしょうかという話です」

「できるか? えーと、攻めるとか?」

「それは無理ですわね。東側連合のトップは元々周りを全て敵に回していたところで、西側が攻めてきて何とか停戦しているのです。その状態で私たちの協力国に兵を向けるような真似をすれば……」

「あー、そりゃ、トップの国、えーとノウゼンだっけ? そこが攻められる羽目になるよな」

「元々、不満もあったみたいだし……ん? これってノウゼンが立てた作戦ってこと? 自国が攻められないように?」

「「……」」


光のいきなり的を得た回答に俺たちは何も言えなくなる。

とはいえ、沈黙していても何も始まらないので俺は何とか口を開き……。


「そ、そういう話は、なんか前しなかったか?」

「そ、そうでしたか?」

「最初から妙な連合だって話はあったよね~。西側が攻めてきたからまとまったって話だし」

『そうだな』


いきなり田中さんからの無線が入る。

こっちの話が聞こえていた。

いや、切ってないから聞こえて何も不思議じゃないけど、びくっと驚いた。


『そしてこっち、東側には不思議なほど魔族っていうあの化け物の話が無い。意図的に封殺しているような。まあ、ルートが海と今陣取っている山脈を抜けるルートしかないなら、情報封鎖なんて簡単だろう。とはいえ、そんなことをして西側にメリットがあるのかって話にもなるがな』

『……確かに不自然ではありましたが、こうして言葉にされると本当にあえて作ったような状況ですね』


ユーリアも田中さんの言葉に納得している。


『しかし、タナカ殿の言う通り、ノウゼンの思惑だったとしても、それなら西側のメリットがない。ノウゼンのために西側が混乱をして攻め寄せたというのは流石にできすぎですな』


うん、マノジルさんの言うように流石にそれはない。

出来すぎだ。

そんなに上手く世間を操作できるなら戦争になる前にちゃんと話し合いで決着がついていると思う。


『私も偶然だと思うね。そうでもなければ私たちが逃げ出すこともなかっただろうし、こんな被害を出して他国に恨みを買うとなると本当にノウゼンだっけ? そこは滅亡待ったなしだ。それにそこまで伝手があるならこんな状況になっていないよ。元から軍事力もあったってことになるしね』


ゼランさんも偶然に一票。

確かに言っていることは間違いない。

西側と手を組んでいるというか、西側をまとめて東側に送るほどの権力の持ち主なら、それだけで東側の国々を制圧できているはずだ。

喧嘩というか、武力行使に出やすいこの世界で周りの様子を伺うような真似をするかって。

まあ、何を言っても想像でしかないのは間違いなんだけど。

ああ、だから……。


「そういうよくわからない背景を暴くためにジョシーさんは話し合いに行ったというわけですわね?」

『そうそう。窓口もほぼない戦争なんて完全な殲滅戦だ。どれだけ戦力がいるか……どこかで手打ちにしたいとしてもできない。だから……』

「田中さんは戦争自体が目的じゃないかって推測になるわけか~」


確かに正式な窓口がないってことは逆に交渉するつもりがないってことだしな。

だから戦争自体が目的って言われると分かると言えばわかるんだけど……。


『しかし、タナカ殿。戦争自体が目的というのは何か結果を求めてじゃろう? 何を狙っておると思っているのじゃ?』


マノジルさんがそう質問をする。

そしてそれは話を聞いていた全員の疑問だろう。

戦争自体が目的といっても、その先になにか狙いがあるからやるのであって、戦争は手段でしかないって田中さんが行ってたもんな。

まあ、分からないって回答が当然だとは思うけど……。


『そりゃ、悩むまでもない。各国の力を削ぎ落すためだろう』


あっさりとそう回答をする田中さん。

皆一瞬無言になる。

だけど、ゼランさんが真っ先に我に返ったようで。


『そんなことをしてなんの得があるっていうんだい?』

『そりゃ、この戦争画策した連中にとっては、参加した国が国力を落とすんだから嬉しいだろう?』


その質問も実に分かりやすく端的に答えてくれた。

確かにそうだよな。

戦争自体が目的ってことは、消費っていうと胸糞悪いけど、人の命や物資を使うことってことだ。

それから得られる結果は、戦争に費やしたことで国の力が落ちるってことだ。


『そこで東側で怪しいのが連合のトップとされているノウゼン王国。そして西側と国境が面している表向きまとめ役であるフィアルア王国だな。ここがどっちもこちらを裏切っておかしくはない。一番割を食っている状態だからな』

「ふぃあるあ? そんなのあったっけ?」

「ありましたわよ。主戦場となっている西側との国境を領土に持っている国ですわ。一国ではむりですから連合を受けれてはいますが、他国の軍隊が長期間滞在するのですから嫌でも負担はありますわね。そして形だけのまとめ役と。やっても何も不思議ではありませんわね」


言われてみると、やっても不思議じゃないと素直に納得できる。

ノウゼンは今まで各国から攻められかねない状況から、西側からの侵略に対抗するために立ち上がれと言われ、フィアルア王国は主戦場にされていること。

どっちも周りの国が力を落とせば嬉しい限りだろう。


『とはいえ、不思議ではある。フィアルアはともかく、ノウゼンの戦力は中央にいて減らしていない。今までの状況から、少しでも戦力を減らされそうなもんだが……』

『そこは交渉ではないでしょうか? ここで露骨にノウゼンの戦力が目減りすればノウゼンに恨みを持っている国が潰しにかかるでしょう。そうなっては東側は崩れ、防衛戦が出来なくなります』


ユーリアの言うことも正しいとは思う。

けど、これは東側だけの事情だ。


『西側もフィエオンが魔族の発祥とはいえ、そこを中心にまとまっているというわけでもないからのう。そっちの事情も調べて判断する必要があるか……』


マノジルさんの言う通りで、東側は多少なりとも勢力や力関係が分かるが、西側はさっぱりだ。

今のままでは何も答えは出ない。


「田中さん。俺も一旦ジョシーさんが情報を持って帰るまでは下手につつくのは止めませんか? 前後が敵になるだけじゃなくて、各国が大混乱になれば全て敵ですよ?」

『それは勘弁願いたいな。そうか、大混乱になればそれがあるか……』


田中さんは珍しく俺の指摘で気が付いたようで。


『よし俺も様子見に一票だな』


ということで、ノスアムや東側に報告する内容が決まったのだった。



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