表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

438/523

第435射:敵を追い返す作戦

敵を追い返す作戦



Side:タダノリ・タナカ



『で、撤退させるっていうのは分かった。具体的には? 戦車で突っ込んで全員ひき殺すってわけじゃないんだろう?』


俺は会議が終わって、ジョシーに連絡を取っていた。

だが、こいつも一応俺たちの会議は聞いていたはずだが……。


「聞いてなかったのか?」

『あん? 素人意見をそのまま採用するかよ。戦車を突撃させた後、歩兵を前進させて追い散らすとか、馬鹿か』

「聞いていたみたいだな。ま、現実的じゃないよな」


上の会議は、何ともふわっとした感じでまとまった。

戦車で敵の前衛を削ったあとに、砦の歩兵が進めばなんとかなるだろうっていうレベル。

うわーとは思うが、お姫さんにしろお嬢ちゃんにしろ、戦争なんてやったことがない連中だ。

マノジルとかおっさんとかもいたが、大規模な戦いというのはそうそう経験のあるものじゃない。


『だよな。数の差がありすぎて、ほかの戦線は普通に戦いだすだろうな。そうなれば犠牲が出る。こっちとしては兵隊は減らしたくない』

「問題というか、こっちとしては本隊というか頭が戦ってもだめだと思わせないといけないってところだ。いくら前線の兵士を蹴散らしたところで、指揮官が行けると思ったら撤退にはらない」


これが戦争の面倒な点だ。

確かに戦車のただの突撃を止められるわけはないが、数の差は圧倒的だ。

3万に対し戦車は僅か20両もあるかどうかだ。

それだけで、指揮官は一部は負けるだろうが、大勢は勝てると判断する。


『ま、普通はそうだな。しかも砲撃するわけでもないし、突撃して轢くだけだろう? ミンチを多少生産したからって距離を取るぐらいしかないわな。下手すると散開して攻撃されかねないな』

「可能性はあるな。というか、むしろ多少知恵があればその程度はするだろう。そうでもないと本当に無能だしな」


纏まっていたらやられると分かれば散開するっていうのは、当然の戦法だ。

とはいえ、どうやって連携を取るかなんて言うのはわからないが。

こっちに無線機なんていう遠隔で連絡を取るための、携帯機があるとは確認できていない。

歩兵なんて特にだ。

冒険者ギルドの拠点は遠隔で連絡を取り合うことは出来るがな。


『じゃ、歩兵は砦に籠って、戦車でひき殺すか? それなら砦に取りつく連中は外周を走るだけでしっかり蹴散らせるし、被害はでないだろ? それで敵の本体をある程度ひき殺せば進むのも厳しいって思うんじゃないか?』


ジョシーの提案を少し考えてみる。


俺たちとしては、今後ノスアムを拠点に東側連合を引き込んで西側での勢力に圧力をかけたい。

なので、ジョシーが引き連れている先遣隊である1万の兵士をここで無為に殺されるわけにはいかない。

なぜなら、兵の数がノスアムの民衆にとっての安心に繋がるからだ。

俺たちの現代兵器があれば敵の数なんて意味はないが、不安になるのを止められたりはしない。

後ろから撃たれれば俺たちだって苦戦するどころか、味方を撃つことになるからな。

その場合は非常に面倒だという話だ。


だから、そうならないように、こちらに被害は最小で、敵を倒す必要がある。

今回はノスアムに侵攻している3万に対してこちらは1万。

砦に入れるやつは無理に入ってはいるが全員収容は無理。

つまり、下手に戦うと野戦で3対1での勢力比で戦わなくてはいけないってことだ。

そうなればこちらは被害が出るのは避けられない。

なので、そこをどうするかって話になるわけだ。

ジョシーの言うように、砦に入って籠る連中を作って、残りをどこかに隠し、戦車で敵をひき殺すというのは……たぶん行けるな。


「調整はいるが、おおむねジョシーの作戦でいこう」

『おお、珍しいね~。てっきり否定されるかと思っていたが』

「使えると思った。それだけだ。別にお前を全て否定しているわけじゃない」


戦闘に関しては、必要最低限は信頼している。


『で、修正っていうのは?』

「砦の護衛の戦車は4台。1台じゃ流石に間に合わんだろうし、矢を打ち込まれる距離の奴も排除したい」

『ああ、確かにその通りだね』


砦に取りつくっていうのは兵が登ってくるということと同時に敵の矢も飛んでくるってわけだ。

そうなれば絶対に兵への被害は避けられない。

なので、その射撃位置を攻撃する戦車が必要となるわけだ。

そして数が4台なのは、壁下と射撃位置の周回速度を半分になるってこと。


「それで敵をくぎ付けにした後、正門から堂々と、後方の本陣へ少数というか戦車隊だけで横一列に5台での平行突撃を行う」

『横に並んでねぇ。まあ戦車が5台もあれば多少は迫力あるか?』


どうやら本陣の攻撃にはちょっと疑問なようだ。

とはいえジョシーの疑問もわかる。

なぜなら戦車と言っても正面から見えるサイズはそこまで大きい物ではない。

せいぜい成人男性が横に並んで無理を言って4人分ぐらいだ。

意外と横には小さいのだ。

理由は戦車の被弾面を小さくするため。

大きければ大きいほど狙われやすくなるから当然の話だ。

つまり5台を横位一列に並べたからと言っても20人が横に並んだ程度でしかない。

3万人が全員横一列になるわけでもないが、一部隊が200人ほどの横一列になったとしても戦車が突撃しても10分の1しか攻撃できないわけだ。

無論後方に控えもいるから多少は増えるが、それでも全体的な数からみると微々たるものだ。


だが、狙いはそこではない。


「迫力があるかどうかを判断するのは、本陣の連中だ。敵の本陣まで堂々と戦車を進めて、悠々と警告をして戻っていく予定だ。普通、突破されるとは思わないだろう?」


そう、わざわざ攻撃を仕掛けさせ、それを正面から打ち破り、敵指揮官にこちらの強さを教えるというわけだ。


『ぶっ、はははは……! なるほど、確かにこっちを落とせると思っているなら衝撃は十分だね。たかが5台で本陣まで攻め込まれて、悠々と引き返されれば勝ち目があるかどうかなんてわかるってことか』

「帰らない場合はさらに5台を別で追撃させる感じだな。全部本陣は狙わない。まあ、こっちが攻撃できないと思われると突撃しかねないから多少は本陣に乗り込む必要はあるとは思うが、そこは様子を見ていこう」


堂々と正面の兵力を文字通り踏み越えてやってきた戦車を見た指揮官はどう思うかって話だ。


『はあ笑った。でも、そこまでやると兵が四散しないか?』

「可能性はゼロじゃないが、下がる、あるいは故郷に戻るなら追わないっていえば、逃げる方向はある程度制御できると思っている」

『あー、逃げる猶予はやるってことか。そうなるとわざわざ敵の領内で逃げ散る必要はないな。普通に地元に逃げるか』


敵が逃げ散ってしまうのは、もうここにいては無駄に殺されると思い必死に逃げるからだ。

故郷に帰るなら追わないというのなら、逃げる方向も選ぶだろう。


「逆にこっちに踏み込むなら容赦なく潰すっていって追加の戦車を用意していけると思っている」

『防げない攻撃だもんな。速度も馬より早い。まあ、それが分かれば敵指揮官も引くか』

「だといいがな。結局のところ敵が四散しかねないっていうのは変わらない。最初に堂々と宣言もするが、それを聞いてこっちを舐めるって可能性もあるしな」

『戦力が少ないのに帰れってのはそうだよなー。馬鹿にしてると思うわな。向こう側としては逃げるわけにはいかない。どうしても一回はぶつかる必要はあるか。ま、私としては戦場に立てば命令を遂行するだけだが』


ジョシーの言うことは事実だ。

幾ら作戦を重ねても、結局のところ下にいる連中は命令を遂行するだけ。

とはいえ、指揮官が上の意図が分かっていると、多少はましだが。


「一応、撤退条件も決めておくぞ」

『おう』


そして話を進めていく。

勝つための条件もあれば、負けた時の条件もあるわけだ。

こっちは無いほうがいいのだが、それでも考えないわけにはいかない。

さて、これを決めてあとは敵が砦に到着する時を待つばかりだな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ