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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


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第422射:砦を作る理由とメリット

砦を作る理由とメリット



Side:ナデシコ・ヤマト



なんと田中さんたちが戻ってきたのです。

長い監視の日々からようやく解放されるのかと思っていたのですが……。


「いや、引き続き監視は続行で、ノスアムの強化を話し合いに来た」


どうやら、会議ではノスアムをどうするかいまだに決まらずグダグダやっていたので、とりあえず田中さんが独自に拠点を作ってみようということになったそうです。

普通なら、出来るわけがないという所ですが、田中さんは兵器や食料品や日用品までの物質を生み出すことができるので、そこを上手く使えば拠点を作れるのではと田中さんも長引く会議の中で思いついたようです。


「今まで拠点を作る必要性は感じなかったからな。いや、拠点を作る必要はあったが、町中で泊まるとかそういうのだったからな。敵を迎撃するような軍事施設をっていうのはなかった」

「あー、それはそうですよね。俺たちって基本移動するんですから」

「うん。そういわれるとそうだよね。僕たちは帰る方法を探すんだから、籠るような拠点はいらなかったんだよね」


晃さんや光さんの言う通り、私たちは帰るためにあちこちを冒険しているのです。

ですから、その地を守るために存在する軍事施設などを自ら作るというのは考えられなかったのです。


「2人の言う通りだ。だが、今回は事情が違う。東側連合の動きを待っていると年単位の時間がかかる。まあ、普通に考えれば拠点を作るとかそれぐらい時間がかかって当然だが、俺の妙な力があれば別だ」


そう、田中さんの力を上手く使えば予定よりも早く拠点を築けるというのは納得できます。


「もちろん、どれだけやれるのか試すっていうのもある。戦闘艦を出すと血を吐いたしな。どのレベルのモノができるのかっていうのはやってみないとわからん」


そういえばそういうことがありました。

フリーゲート艦を出した時、田中さんは光さんと同じように魔力を使いすぎて血を吐いたことがありました。

つまり、田中さんにも限界があるということです。

それを考えずにやって倒れてしまえば意味がないので、ここで何ができるのかを堂々と拠点を作るという名目で実験できるというのも目的に含まれています。

というか、むしろ私たちにとってはそれが大事だと田中さんは言います。


「いざという時は、その場に砦を出して閉じこもれたり、地下道を一瞬で構築して逃げたりもできるってことだからな」

「あー、そりゃ便利だよねー」

「地形を自由にできるってすごいですね」

「いや、それを調べるんだ。もちろん、結城君たちも魔術で何かできるか試してみると良い。ほら、アスタリの時は塹壕というか、溝を掘ったりしただろう? その逆で壁を作ってみるとか」

「そっかー。僕たちも色々実験できるんだ」

「俺たちも色々やっていいってことですか?」

「ああ、今までこっそり練習していた魔術とかそういうのあるだろう? 堂々とやれる」


そういう田中さんですが、私は手を上げて。


「えーっと、敵味方に恐れられるようなことをしてもよいのですか?」


下手をすると味方である東側連合に背中を刺されかねないと警戒していたはずですが……。

そう思っていると、田中さんではなく、ユーリアが口を開きます。


「ナデシコの心配はわかりますが、おそらく大丈夫ですよ」

「それはどういう?」

「その心配はないぞ。何せ成功した暁にはその砦は俺たち、ルーメルのモノだしな。砦を即時展開するような相手を敵に回すか? そして何より、敵になっても俺たちにとっては特に苦労することじゃないってことになるわけだ」

「そうかー、いつでも拠点作れるならそこで兵器とか好き勝手出せるんだもんね」

「現代兵器で砦から撃つって、無敵じゃね?」

「まあ、そこは砦をどう作るかって話だ。俺ががたがたの砦を作るかもしれない。そうなれば防衛はできないだろう」

「「「……」」」


その言葉に、全員が沈黙。

田中さん以上に戦いに便利な砦を作れる人はいないと思うのは全員同意することでしょう。


「その沈黙の意味は何となく分かるが、人は完璧ってわけじゃないからな。ちゃんと話し合って決めるぞ。砦を作ったはいいが、トイレが無かったり風呂が無かったり、あるいは足りなかったりとかよくあるネタだからな」

「え? そういうのあるの?」

「あるある。アスタリでの戦いだって、トイレは指定した場所でってなってトイレが足りていたわけじゃないだろう?」

「ああ、そうでしたね。臨時に簡単に作ったってやつでした。……正直酷かったですね」

「うん、臭かった」

「……ですわね」


あの時は生死がかかっていて、何より私たちにとっては初めてと言える戦争でそういうことを考えている余裕はなかった。

確かに田中さんが居たので、負けるとは思っていなかったですが、それでも目の前で敵が死んでいくこと、圧倒的な兵器を目の前で見て、今言っていることを落ち着いて考えている余裕はありませんでした。


「ま、ああいう都市防衛戦ではそうなるのが当然なんだが、今から作る砦とかは、そういうのを予定して作るんだよ。避難所とかと同じだな。想定を多くして余裕があるようにな。そうでもないと、味方が入りきらず、そして足を引っ張る原因になる。環境の差が大きくて不満が溜まったりな」


なるほど、私たちがそこらへんに不満が出ていないのは、田中さんがそうならないように配慮していてくれたからと、今更気が付きました。

ルーメルに行った時から、車が出せない時にしても私たちのために食料などを出してくれたりはしていました。

勿論最初の訓練の内はこっちの世界に慣れろと言っていましたが、その後は今考えれば甘い対応をしていただいていました。


「もちろん。環境をよくすることで、兵士が力を出しやすくするっていうのもある。劣悪な環境じゃ士気も上がらないからな。これはどこでも同じだ。いや、生活の質が自分たちが実力を上げるってわけじゃないが。生活の水準が高いって意味は結城君たちがよくわかるんじゃないか?」


そう言われて私たちは素直に頷く。

今までこの世界に来て、地球の、日本での環境が少しでもあればと思ったことは何度もある。

あの環境があればもっと生活は楽だっただろうし、他の人も同様に恩恵にあずかれると思いました。


「つまりだ。ここを拠点にすることができれば、俺たちは自由に開発ができるってことになる。それはとってもやりやすいだろう?」

「確かにそうだけどさー。ノスアムはどうするの?」


確かに光さんの言う通り、ノスアムの前にそんな砦を作ってしまえば、環境の違いで色々問題が出てきそうですが……。


「そりゃ、簡単だ。ノスアムもルーメルの管理下だしな。向こうの、というかノスアムの重鎮たちが取り入れたいっていうなら提供するぞ。そうなれば環境も改善されるしな」

「え? 普通に提供するの?」

「そりゃな。こっちへの依存度が上がれば、こっちにとっては裏切る心配がなくなるだろう?」

「「「あー」」」


そう言うことですか。

確かに環境が良くなるのは嬉しいことですし、それが無くなると思えば、迂闊にこちらを裏切ることはないでしょう。

そう言う意味でも提供をするということですね。


「ということで、今回のノスアムの近所というか隣接する形で、拠点を築くというのは私たちにとっては好都合でしかないので、実行をしたいと思います。これからそのままその会議に移りますが、よろしいでしょうか?」


そうユーリアに聞かれて文句を言う人はいなかった。

何せ、これから清潔なベッドはもちろん、お風呂やトイレもできるとなれば断る理由はありませんでしたから。



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