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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


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第418射:目が覚めて夜

目が覚めて夜



Side:アキラ・ユウキ



目を開ければ真っ暗。

なんで、と寝ぼけた頭で考えながら視線を動かすと、デジタル時計が目に入り時刻は深夜の1時。

びっくりな時間に目を覚ましたものだと思っていると、アラームの設定が深夜1時半。

何かあったっけと思い考えて……。


「あー、監視の交代の時間か」


俺は嫌な現実を思い出してげんなりする。

俺がこの時間に起きたのは偶然ではなくて、予定通りとこと。


「……とりあえず、目をしっかり覚まそう」


がっくりしながらも仕事のための準備を始める。

具体的にはベッドから出て、外の空気を浴びることにする。

外は夜もあってかひんやりとしていて、体全身に浴びる風が眠気を飛ばしてくれる。


「星空は綺麗だなー」


俺は真夜中の空を眺めてそう呟く。

そこには満点の星空が広がっている。

異世界の星空ではあるが、そこには純粋な自然の輝きがある。

戦場の中だというのを忘れてしまいそうだ。

何もなければこのまま天体観測でもしてよかったんだろうが、残念ながらここは戦場……とは言いにくいけど、前線基地に近い町。

というか、そもそも望遠鏡とか記録とかどうやっていいのかわからない。

ただ言ってみただけってやつだ。

それだけ、夜は静かで日中の騒がしさ、忙しさからかけ離れているってとだ。


「あ、おはよーございます? いえ、こんばんはでしょうか?」


そんな風にぼーっとしていると、不意に声をかけられ振り返るとそこにはヨフィアさんが立っていた。


「どうなんでしょうね。とりあえず、目が覚めたばかりなのでおはようございます。ヨフィアさんは……確か日中のお仕事でしたよね?」


記憶が確かなら、日中は光や撫子たちがゴードルさん、ノールタル姉さん、セイールさんがローテーションになって、俺が夜番ってはずだったけど……。


「ああ、私はお昼って感じですね。それで夕方からは晩御飯の準備をしてから、その後はお休みですが、アキラさんのこともありますので起きていたんですよ」

「あー、すいません。俺に合わせてくれたんですね」


無理をして起きていたとなると申し訳なくなる。


「いえいえ、好きでやっていることですし、アキラさんにご飯のご用意をしたら寝ますよ~。ささ、こちらに」


どうやらヨフィアさんは俺の夜食のために起きていたようだ。

となると何かを言う前にさっさと食べた方がヨフィアさんが休めるってことだな。


「ありがとうございます」


俺は特に何かを言うわけでもなく素直にお礼を言って食事に移る。

食事用のコンテナに移ると、すぐにヨフィアさんは食事を出してくれる。

びっくりなことに手作りのカレーだ。


「お腹いっぱいって言いたいんですけど、眠たくなりますから少しだけです」

「いえ、十分です。いただきます」


眠たくなってモニター監視とかきつすぎるからな。

冷えたというか、適当なおにぎりとか栄養補給食とか考えてたから十分すぎる。

カラーのいい香りに刺激されてさっそく食べ始める。

いやー、美味しい。

で、食べつつヨフィアさんに質問をしておく。


「俺が寝ていた間はどうでしたか?」

「ヅアナオ監視の件ですか? それともノスアムの町に関してですか? それとも砦? 本部でしょうか?」

「ああ、すみません。えーと、全体的に急ぎで頭に入れておいた方がいいこととかは?」

「あー、そういうのは本部、タナカ様から連絡が来ています」


何もないっていうのを予想していた俺にとっては一番意外なところから情報がでたということに驚いた。


「え? それはどんな?」

「ああ、急を要する話ではありませんよ。ただ単にノスアムからの侵攻軍は町や砦で守りを固めろってことで落ち着いたようです。つまり、これ以上の進軍は控えて陣地構築することに決めたようですね」

「あー、ようやく話がまとまったんですか」


なるほど、確かに重要な話ではあるけれど、今すぐどうこうって話ではない。

まあ、いつ攻撃を、敵地に侵攻しろって言われるかこっちとしては冷や冷やしていたけど。


「そういうことですね。タナカ様、いえ姫様がドローンの情報を開示したおかげですね」

「ドローンの存在を公表したんですか?」

「そのようですよ。それで姫様たちの証言が正しいと納得されたようです。とはいえ、逆に今度はドローンをどのように利用するかってことで話し合いが始まっているようですが」

「ああ、それは、そうでしょうね」


敵地をリスクなく、しかもほぼノータイムの監視できるとかどこの戦線でも欲しいだろう。

だけど、田中さんが東側連合に使わせるとは思えない。

そうなると、あの場で使うのは田中さんってことになる。

つまりドローンの偵察を田中さん一人、あるいはユーリア、マノジルさんが協力してやることになると思うけど、それでも精々2つか3つが限界だろう。

本当に、この仕事ってつらいからな。

最初は自分の知らない視界を見れるから楽しいんだけど、すぐにそんな楽しさなんて吹き飛んで、延々でなく永遠にも感じる映像をずーっと見続ける辛さが出てくる。

さらには眠気とも戦うことになるし、色々な意味で別の才能が必要とされる。


「はぁ、俺はそれをこれからしないといけないんですよね。って、守りを固めろって話に関しては何か指示はないんですか?」

「そこはまだありませんね。町にしろ、砦にしろ、こういう拡張ってしっかり検討してやらないとグダグダになりますし。人が何人収容できるとか、物資の置き場所とか、そういうのもありますからね」

「あー、そうか。万の軍を入れる予定でしたもんね」


そんなことを話しながら俺はカレーを食べ終わり、食器を台所へともっていき、そのまま洗おうとすると、ヨフィアさんがさっとスポンジを取って。


「そこはメイドにお任せください」

「え、ですけど悪いですよ」

「いえいえ。メイドの本分ですから」


まあ確かにメイドさんっていえば家事全般をする人だよな。

そしてここで何を言ってもヨフィアさんはスポンジを手放さないだろう。

武器は向こうがもっているので、これ以上の抵抗は無意味だと判断する。


「わかりました。お願いします。その後は休んでくださいね」

「はいはーい。では行ってらっしゃいませー」

「はい。行ってきます」


洗い物をしているヨフィアさんと別れて俺は昨日辛い思いをして監視コンテナの方に入ると、そこにはノールタルさんとセイールさんがモニター前に座っているのが確認できる。

俺が入って来たのに気が付いたのか、セイールさんがこちらに振り向いて。


「ああ、交代の時間ですか」


そう言って時計を確認している。

うん、交代の時間まであと10分ってところ。


「ええ、交代に来ました。何かありましたか?」


俺はモニターを覗き込みつつそう聞く。

モニターには暗視カメラに切り替えた映像が映されている。

今日は雲が出ていて、夜の明かりはほぼなく通常のカメラだと真っ暗なんだろう。

しかも、こっちの世界では夜は寝るもの。

ロウソクとか松明を点けて夜を明かすのは余程裕福な所だから、町にほとんど灯りが存在しておらず、真っ暗に静まり返っている。


「いやー、ご覧の通り静かなよるだね。町から離れて待機している敵さんの軍も焚火を要所で焚いているだけで、大半は寝ている。……おかげで退屈だけどね」

「そうですね。もうちょっと何か動きがあるかと思っていたんですが、晩御飯の準備をしているときぐらいが、多くの人が動いているって感じでしたよアキラさん」


2人から今までの情報が伝えられる。

まあ、俺を叩き起こしてないんだから、特に何のこともなく過ごしていたんだろうなーとは思っていたが、やっぱり平和なようだ。


「わかりました。あとは引き継ぎますから、休んでください」

「んー。私も限界だから任せるよ。何かあったら連絡入れてくれ」

「はい。気軽に言ってください。すぐに駆け付けます」

「その時はよろしくお願いします」


そう言って、俺は夜中の監視任務に従事するのであった。



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