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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


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第42射:私は女の子

私は女の子



Side:ヒカリ・アールス・ルクセン



「……きて……。おき……さい」


ん? なんか聞こえる。


「起きてください。光、起きてください」


これは、撫子の声?

ああ、僕、寝てたんだっけ?

ようやくそこに気が付いて、目を開けると撫子が僕をゆすっていた。


「おはよー」


体を起こしながらそう言ったけど、なんかすごくだるい。

なんでかな?と思っていると、徹夜してて、朝になってようやく寝たのを思い出した。


「って、ミコットに何かあった!?」

「いえ、まだ寝ているようです。ですが、もう夕方近くですので、晃さんと交代するために申し訳ないですが、起こさせてもらいましたわ」

「え!? もう夕方?」


僕は撫子の言葉に驚いて、窓を開けて外を確認してみると、確かに外は日が傾いて夕焼けに空が染まっていた。


「えーと、朝焼けとかじゃない?」

「それだと私たちは丸一日近く寝ていたことになりますわ。それにそれだけ寝ているなら、田中さんや晃さんが流石に心配して声をかけてくるでしょう」

「そうだね。ま、ボケはいいとして、まずは晃のところに行こう。トイレに行けなくて悶絶してるかもしれないし」

「……流石にそれぐらいは席を外すでしょう」

「ここもボケだよ」


相変わらず、撫子はこういうの苦手だよねー。

そんなことを考えつつ、ミコットが寝ている私たちの部屋に到着すると……。


「ほい、あーん」

「あーん」


……なんか、ふつうにご飯食べさせてる。


「あむ。んぐっ? お兄ちゃん、誰か……ってあれ? 何か見たことある?」

「ん? ああ、光に撫子、起きたのか。あの、お姉ちゃんたちがミコットを助けてくれた人たちだぞ」

「え? あ、思い出した!! ありがとー!! いったー!?」


そう言ってミコットは食事をやめてベッドから降りようとするが、足が折れているので動けば痛いのは当然で、その場にうずくまる。


「いたっ、いたっ、うえーん」

「ちょ、大丈夫ですか!?」

「お、お、落ち着いて」


僕たちは慌ててミコットに近寄って様子を見るが、なぜか晃は慌てておらず平常で……。


「はいはい。骨折してるからな、安静にしてろって。これで何度目だよ」


そんなことを言ってきた。

ああ、何度も同じことをしてるのね。


「ううー」

「とりあえず、今は飯食って寝とけ。それともいらないか?」

「いるいる!! あーん」

「はいはい」


そう言って、晃はミコットへの食事を再開する。


「なんだか、随分仲良しだね」

「ですわね」

「なんか、懐かれた」

「お兄ちゃん。ご飯くれたし、お姉ちゃんもご飯くれたから、好き」

「やすっ!?」

「まあ、命に係わる話ですし、ある意味なっとくですが、安易に人を信じすぎというのは心配ですね」


疑うことを知らない子だ。小さいし、仕方ないか。


「でも、元気そうでよかったよ。熱もすっかり引いたみたいだし」

「そうですわね。あとは、ある程度体力が回復して、回復魔術をかけるだけですわね」

「あ、お兄ちゃんから聞いたよ。黒い髪のお姉ちゃんがお薬をもらってきてくれたって」

「いえ、あれは、田中さんが……」

「まあまあ、撫子。難しいことはいいじゃん。撫子が助けたから、田中さんも薬を出してくれたんだし。というか、田中さんとアロサは?」

「そういえばいませんね。部屋でしょうか?」


流石に寝ていることはないと思うけど、この場にアロサと田中さんがいないのはなんか変だ。

ここにみんないることを期待していたんだけど、そうでもなかった。

キシュアさんにヨフィアさんもいないし、どこに行ってるんだろう?


「え? 田中さんなら、アロサを連れてシボール孤児院に行ってるぞ」

「は? シボール孤児院?」

「それは、アロサ君やミコットさんがいる孤児院ですか?」


子供にろくにご飯をあげないでこんな体にして、虐待している孤児院に何を……。


「ほら、アロサが言ってただろう? 仲間がいるって、ほかにもご飯を待っている子がいるから、届けてくるって言って出て行ったんだ。大丈夫だよ。リカルドさんたちもついていったし、なんか、リテアの偉い人にも話を付けたって言ってた」

「どういうこと?」

「えーと、後半はよくわかりませんでしたが、とりあえず、田中さんとアロサ君は食事を孤児院に届けにいたのですね?」

「そうそう。田中さんがちゃんとみんなに食べさせるって言ってたし、何も問題はないさ。あの人の邪魔なんてできると思えないし」

「まあ、そうだねー」

「……」


田中さんの邪魔をできる人なんているのか疑問だし。

子供たちは無事にご飯を食べられるわけだ。

そんなことを考えていると、なぜか撫子が黙っていることに気が付く。

その表情はどうも、何か考えこんでいる様子だ。


「撫子なにか心配事?」

「あ、いえ。……リカルドさんたちもその孤児院へ向かったということは、やはりリカルドさんたちはリカルドさんたちで何か思うところがあったということなのかと思いまして。私、昨日の夜あんなこと言いましたし」

「ああ……」


そういえば、リカルドさんたちを責めるようなことを言ってたね。

でも、本心から言ったわけじゃないのは、きっとリカルドさんもわかっているし、リカルドさんたちだって、この状況が間違っていると思ったからこそ、動いたんだと思うよ。


「別に気にすることないんじゃないかな? 大人だからこそ、ちゃんとしないとって思ったんだよきっと。撫子が言ったことを気にしたわけじゃないよ」

「だといいのですが……」

「別に気にしなくていいと思うぞ。こうしてミコットが元気なのはどう考えても、撫子のおかげなんだし。なあ、ミコット」

「ん? よくわかんないけど、お姉ちゃん。助けてくれてありがとー」


ミコットがそう笑顔でお礼を言う。

とてもいい笑顔だ。


「うん。僕たちはミコットのために頑張った。それでいいじゃないか」

「撫子は色々考えるけどさ、光の言う通り、大きなことよりも、まずは目の前のことだろう? 子供を救えなくて、何が世界を救うだよ」

「うんうん。晃の言う通りだよ。撫子だって言ってたじゃん。子供も救えない大人が大人らしいことを言うなって。その通りだよ。僕たちは一個一個頑張っていこう」


僕たちがさらにそう言うと、撫子は目から涙を流して……。


「……はい。はい。ありがとう、ございます」


そう俯いてお礼を言った。


「はーい。晃は出て行ってねー。女の子の涙はそうやすやすと見せるもんじゃないんだよ?」

「え? 女の武器は涙って……」

「空気読め」

「はい。失礼します」


僕がそう言ってすごむと、すぐに晃は部屋から出ていく。

まったく、こういうところは男の子だよねー。

気が利かない。

僕の下着にも反応淡泊だったし、もうちょっと、乙女心を知らないとだめだよね。


「あー、お兄ちゃんいっちゃった……。あむ」


そしてミコットはいなくなった晃を残念がりながらも、自分でスプーンを持ってパクパクと食べ始める。

今までのあーんは甘えなのか演技なのか少し難しいところだ。

……女の子は意外と早く大人になるからねー。

晃がロリコンだとは思わないけど、押し切られる可能性もあるから、今後は注意しておこう。

田中さんが言ったように、ハニートラップっていうのもあるしね。

まあ、僕の下着に反応しないから、ミコットは守備範囲外だとは思うけど。

そのまえに、病気体形で、そういう気分にもならないか。

それで興奮するなら晃を少し人の道に戻さないとね。

と、そんな感じで、僕がくだらないことを考えているうちに、撫子は復帰したようで、顔をあげていた。


「ふぅ。光さん、ありがとうございます」

「いいよ。気にしないで、まだ、目が赤いから、外にはでないようにね」

「はい。しかし、晃さんはいいとして、田中さんたちは出て行ってどれだけ経つのでしょうか? 田中さんたちがどうにかなるとは思っていませんが、何かトラブルに巻き込まれて帰る時間が遅くなっているということもあり得ます。私たちが何か困ったときに連絡が取れないのはどうかと……」

「あー、そうか。僕たちの方が困る可能性があるわけかー。まあ、僕たちが寝てからの話だし、まだ一日も経ってないから、今日中に帰ってこなかったら探しに行こう。晃を使って」

「そうですわね」


僕たちがミコットのそばから離れるわけにもいかないからね。

決して、晃が狼さんになるとか思って言ってるわけじゃない。

適材適所というやつだ。僕たちが人に尋ねても女の子だから、あまり真剣に聞いてくれないんだよね。

特に撫子なんてナンパされるからね。ルーメルの城下を歩くときは面倒だったよ。

そんなことを撫子と話していると、食事を終えたミコットがこちらを興味深そうに見ていて……。


「お姉ちゃんたち、私の名前しってるのに、私、お姉ちゃんたちの名前しらない」

「あ、ええ。そういえば、自己紹介していませんでしたね。アロサ君からミコットさんの名前はうかがいました。私の名前は大和撫子と申します。撫子でいいですわ」

「僕はヒカリ・アールス・ルクセンっていうんだ。ヒカリでいいよ」

「え? お姉ちゃんたち、家名があるって、貴族様?」

「え? ああ、違うよー。僕たちの国ではだれでも家名を名乗っていいからね」

「はい。私たちはミコットさんと変わらないんですよ」


いや、撫子はお嬢様のような気もするけど……。

あ、はい。余計なことは言いません。

そんなことをしていると、何か外が騒がしくなってきた。


「なに?」

「何か、表に人が集まっているようですね」

「なになにー?」


私たちの部屋の窓からは前の通りが見えるので、そこからのぞき込んでみると、大聖堂の方向から何か行列が進んできているのが見える。


「なんだろう? まあ、見た感じ偉い人でも移動しているんだけど、何か今日お祭り?」

「さあ、そんなことは聞きませんでしたが? それにオーヴィクさんたちがお祭りでもあるなら何か言うはずでは?」

「そういえばそうだね。じゃ、なんだろう?」

「なんでしょう?」


2人で首をそんな風に首をかしげていると、その行列を一緒に見ていたミコットが反応する。


「あー、あれ、聖女様だー」

「聖女様?」

「聖女というと、リテアのトップの?」

「うん。あの青い髪はルルア様だよー」


そう言われて、行列の中心を見てみると、立派な鎧を着こんだ兵士たちがその人を守るように周りを歩いている。

確かに、偉そうな人だね。

いや、ちょっとまて……。

私はその目に映るものが信じられなかった。


「でかい……」


そう、信じられないほど、胸が大きい。

聖女と呼ばれるだけあって、高そうなローブを着ているのだが、ローブは本来ゆったり着るものなので、体のラインなどわかるわけがない。

だが、あの聖女ルルアは違った。

胸が盛り上がっている。ズドーンと突き出ていて、歩くたびに揺れている。

それでいて、バランスが取れている奇跡の体形。

こ、これが、超美人とかいうやつか!?

それに比べて、僕の胸についているのはなんだ!?

あれがおっぱいだというのなら、僕のはちっぱいどころじゃない……。


「あのー、光さん? どうしかしましたか?」

「ほっといて……。世の中の不公平さをかみしめているんだ」


いや、僕も成長する!! そのはずだ……。


「あー、通り過ぎていっちゃったー。いったい何だったんだろう?」


気が付けば、爆乳聖女はいなくなっていた。

そして……。


「ふう、ナイスすれ違いってな。お、起きてたのか。って、ルクセン君の目が死んでるが、何かあったのか?」

「えーと、なんと申し上げたらよいのか……」

「ほっといて……」


ちっぱいは、ちっぱいは、個性なんだよ。

あまりのショックに田中さんがアロサを連れていないことに気が付くのに遅れてしまったのだが、仕方ないよね。




そしてこっちは、聖女様を遠めだが確認する。

ルルアのその後が知りたい人は必勝ダンジョンにて。


で、田中さんはアロサを置いて戻ってくると。

いったい何があったのか?

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