第413射:ある程度絞れてくる
ある程度絞れてくる
Side:タダノリ・タナカ
『……っていうことで、やっぱり町から来た人はいないって。村からの出入りは多少あるみたいだけど』
「そうか。わかったありがとう。とりあえず引き続きドローンでの監視は続けてくれ」
『うん。わかったよ』
そういって、ルクセン君との連絡が終わる。
俺はタバコをふかしつつ、再びジョシーとの連絡を取る。
『おう、会議の結果はでたかい?』
「いや、そっちはまだ粘っているところだな。そしてルクセン君から連絡がきた」
『ああ、そっちか。で、どうだった?』
「指摘通り、町からやってきた、戻ってきたやつはいない。ちゃん調べて町に出向いている連中がいるのも大和君からも聞いていて、今名簿を作っているところだ」
『優秀だね。しかし名簿を作るほど町に行っている連中がいるのに、この戦争騒動で戻ってこないっていうのはやっぱりおかしすぎるね』
「ああ、おかしい。というかほぼ相手が何かしらを考えているのは間違いない」
このまま進むのはマジでお勧めできない。
やるにしてもこちらの戦力を減らすことなく、俺たちルーメルで吹き飛ばすしかない。
まあ、そんなことをすれば不満が出てくるから実質不可能ではあるが。
『とはいえ、上は動かないと』
「そりゃ確実な情報が出たわけじゃないしな。そっちの捕虜とか兵士は我慢できそうなのか?」
『ああ、こっちは問題ないよ。ダストからもらっている補給品でうまくごまかしているところさ。美味い飯と酒があれば大抵の不満はどうにかなるのさ』
幸い、前線の方はルーメルから出している物資で慰撫は出来ているようだ。
まあ、あれだ。
戦闘らしい戦闘が無いおかげでもあるか。
下手に戦うと理性が吹き飛んでいうこと聞かないっていうのはままあるしな。
何より……。
『こっちの馬鹿共も流石に敵の動きが微妙だってことに気が付いてきているみたいだしね』
「へぇ、時間が出来たおかげか?」
『ああ、捕虜というか下った連中とは普通に話をするからな。そして連中逃げるわけでも無い』
「逃げないのか? 一人二人も?」
『全然。まあ、所属的にノスアム西砦はノスアム所属だからな。応援は出したとはいえ来ないってことは……』
「切り捨てられたと思っているわけか」
『そういうこと。元々、西魔連合はいきなり出来上がってあまり互いの国の信頼関係の構築は上手く行っていないようなんだよな。特に隣国同士は攻めて襲われての関係がほとんどだしな』
「まあ、それはどこの国でも当たり前のことだしな」
地球でも国境問題っていうのはずーっとくすぶっている。
日本が特殊な海洋国家だからあまりないのだが、それでも島や領海の話ではトラブルが当たり前だしな。
という感じで現代の地球でもこれだけ問題になっているのだ。
こっちで問題がないわけがない。
しかもこっちでもびっくりするぐらいのまとまりを見せているんだから、そこらへんが歪だっていうのもわかる。
「というか、砦の連中は所属的にはどこなんだよ? ノスアム西砦はノスアムだろうが、中に詰めていた連中はどこから来ているんだ?」
そこで今気が付いたが、ノスアム西砦の中に詰めていた兵士はどこの所属かというやつだ。
ノスアムの所属なら町が落ちた時点であのお嬢ちゃんからの連絡でさっさと降伏をしていそうなものだが、そうでもなかった。
ジョシーたちが近寄って初めて白旗を振っている。
つまり、ジョシーたちの軍隊が到着するまでは、降伏するつもりはなかったということだ。
『そこはほら、西魔連合らしいぞ』
「あ、それは同じなのか。つまり一応連中は連合の指揮下だったわけだ」
『そうらしいが、結局連絡は付かないというか、私たちの到着が早すぎて、無駄死には避けて降伏したってことらしい。あ、もちろん落ちたっていう早馬は出したらしいぞ』
「情報は伝わっているってところか。そういえば砦の方の人の出入りに関してはどうだ?」
ノスアムの方は無くても砦の方なら物資のやり取りとかそういう人の出入りはあってもおかしくないと思うが……。
『ああ、一応数人はノスアム方面に向かう旅人には注意を促したりはしたそうだぞ。とはいえ、一日で落ちてすぐに解除されてそこからは全然らしい』
ほほう。
いい情報だ。
「つまり、ノスアム西砦までは旅人とかノスアム出身の者が寄っていたということだな?」
『ああ、そうだ。つまり、ここからの連絡を受けた先、あるいは奥の町が情報封鎖をしていると思っていいだろうね』
「町の名前は何だったか?」
俺は記録している地図のデータを呼び出して確認をする。
そこには……。
「『ヅアナオ』」
よくわからん名前だな。
まあ、世界の名付けなんてそんなものか。
「そっちからドローンは飛ばしているのか?」
『いやこっちは少数の管理だ。私しかいないしな。主に周囲警戒で、奥に飛ばしている分はノスアムのヒカリたちに任せているよ』
「そっちか。いや、考えれば当然か」
『あっちはそれなりに人員がいるからね。私はここの馬鹿どもの抑えもあるし、多くは期待するな』
「奇襲されて全滅したら笑ってやる。あ、お前は死なないんだったか?」
『首だけになっても生きるのか、胴体だけでも動くのか、それはそれで楽しみだけどね。まあ、情報の追加頼むぞ』
「わかった。そっちは現状維持を頼む」
ということで、ジョシーとの連絡は終わり、即座にルクセン君に連絡を取る。
『はいは~い』
幸いルクセン君はすぐに連絡を取る。
周りに人がいないか、部屋にいるんだろう。
「田中だ。そっちの方はどうだ? あれから新しい情報は見つかったか?」
『うん。あったよ。今報告しようと思ったところ。で、ノスアムの人の出入りだけど、やっぱり町の方からの出入りは一切なし。村からは通常通り出入りがあるってさ』
「そうか、町に出て行っている人の数は?」
『まだ詳しくはまとめられていないけど、少なくとも150人はいるみたいだよ』
「意外と多いな」
『あー、こっちから出て行っているというか、向こうの町で暮らしている親戚とかも含めているみたい。実際ノスアムに住んでいる人たちは3分の1もいないって』
なるほどな。
親戚だって心配して当然だ。
様子を見にやるぐらいはしてもいいが、それすらもないってことか。
「それで、その連中も含めてノスアムに来ている様子はないか」
『ない。それは間違いないってさ。特に行商とかでとなり町に行っている人がいるところはその人の心配もあるけど、商売にならないって言っているよ』
「その通りだな。物資が補給できなきゃ商売にならない」
『それで、田中さんの方にジェヤナからお願いがあってさ』
「お願い?」
あのお嬢ちゃんに願われるようなことはあるか?
そう首をかしげていると、ルクセン君は説明を続ける。
『うん。まあ、名目上はルーメルの物だけどさ。それを販売してくれないかってさ』
「ああ、そういうことか。それを仕入れて販売すると」
『そうそう。僕たちの炊き出しも落ち着いてきたしさ、それで儲けようと思う人たちも増えてきたみたい』
なるほどな。
物資がない分ルーメルから頼むとは言われていた。
敵国に落ちているから、堂々とやり取りはしずらいからと。
まあ、それはあくまでもノスアムの領主としてで、商人たちは敵国であろうがなかろうが正常な商売ができれば問題ないわけだ。
とはいえ、ここまで封鎖されているとものが動かないから、ほかの町からの仕入れを中心とした商店を持つところはそろそろ干上がるか。
そうなると町の活動は縮小する。
そうなればノスアム自体が干上がる。
「わかった。まずはお姫さんに話を通す。そして人の出入りに関しても伝えるけどいいな?」
『うん。大丈夫お願いするよ』
「あと、ヅアナオの町にドローンを飛ばしているだろう。今の状況はわかるか?」
『いやー、そっちは今晃に任せてるから』
「なら、伝えてくれ。情報封鎖しているのはヅアナオの可能性が高い。町についたら連絡してくれ。ドローンを複数に増やして情報を集めるってな」
『おー、じゃ、そこが待ち構えているってこと?』
「それを調べるためだ。頼む」
『おっけー』
ということでルクセン君との話を終える。
後は、またまたお姫さんに説明をしないとな。
さて、いい加減話が終わっているといいんだが。




