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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


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第402射:すぐに動けるわけではない

すぐに動けるわけではない



Side:ヒカリ・アールス・ルクセン



田中さんやジェヤナの叔父さんが出て行ったあと、僕たちはしばらく待っていただけど戻ってくる様子はなかったので……。


「えーと、時間がかかりそうだね」

「何かあったのかもしれませんわね」

「そうですね。一旦状況を確認しましょう。ヒカリ様たちはタナカ様を、私は叔父様を。時間は……そうですねこちらの砂時計をお持ちください。この砂が落ちきるまで、ということで」

「わかりました」


こうして僕たちは一旦会議を中断して田中さんを探しにいく。

といっても、僕たちの場合は無線とかがあるからすぐ見つかるんだけど。

周りに人がいないことを確認して、イヤホンを付けて田中さんに呼び掛けてみる。


「もしもーし、田中さん今どこ?」 


そう声をかけると、すぐに……。


『どうした、何かあったか?』

「なかなか戻ってこないから探そうって話になってるけど?」

『ん? ああ、時間がそれなりに経ってたか。済まない』

「ジョシーさんとは連絡がついたの?」

『ああ、そっちは問題ない。こっちのことは一旦戻って話をしよう。会議を終わらせないとノスアムの連中も待ちぼうけだからな』


どうやら連絡は済んだみたいでこっちに戻ってくるとは言っているけど、僕としては気になっているのでそのまま話を続ける。


「連絡がついたってことは、まだジョシーさんは砦を攻めてないの?」

『ギリギリって所だな。明日には攻撃をする感じだ』

「あ、到着したんだ」

『みたいだな。やる気満々みたいだぞ。とりあえず降伏勧告はしたが、未だに動きはないらしい』

「え? 兵士の数はそんなにいないんでしょ?」


砦に詰めている数はノスアムよりも少なくて精々1000ほどだったはず。

対して東側連合軍は1万。

10倍は違うから戦力差的には圧倒的だ。

それなのに降伏しないのか~って思っていると、こちらの疑問を察したのか田中さんが説明を始める。


『ルクセン君の言う通り兵士の数は少ないが、降伏したからって安全が保障されるものでもないし、負けるにしても一度勝負してからっていうのもあるかもな』

「そういうものなの?」

『援軍が来る予定もあるかもしれない。さっき空のルートも示唆されたしな』

「え? 空から援軍が来たら不味くない?」


空から敵が沢山来たら、兵士たちは対応できないって思っていたんだけど。


『ああ、そっちは問題ない。さっきの話を聞いて対空砲を回すってジョシーに伝えたからな』

「たいくうほう?」

『具体的に言えば自走高射機関砲だな』

「じそうこうしゃきかんほう?」


僕には呪文の言葉にしか聞こえていなかったんだけど、横で聞いていた晃が。


「文字通りだよ光。対、空への大砲なんだ。しかもコンピューターが自動追尾とかもあるから空の相手はほぼ躱せない」

「へー、そんなのがあるんだ。ミサイルみたいなもの?」

『そうだな。ミサイルより射程が短くて、近距離専用と思えばいい。とはいえ、数キロ範囲だけどな』


うん、無茶苦茶長射程な気がする。

でもミサイルってもっと距離長いはずだし、そんなもんなんだろうって思うことにする。

そんなことを考えていると。


『お、見つけた。なんだ門の前にいたのか』


そう言われてあたりを見回すと田中さんが道の奥から手を振ってきていた。


「あ、田中さん。どこまでいってたの?」


別にフリだしそこまで遠くに行かなくてもいいだろうとは思うけど。


「そりゃ、門の外にいる伝令にだよ。一応東側連合にも伝えないといけないからな。ジョシーだけなら適当に済ませるが」

「……そういえば東側連合の別方面は大丈夫なのでしょうか?」

「さあ、こっちには特に連絡は来ていないな。とはいえ、ドローンからの映像を見る限り無事だ」


あ、そっか。

連絡が無くても映像で状況は逐一確認できるんだった。

どこかが押し込まれてもすぐにわかるから問題はないのかな?


「ま、敵側もまだ正確に把握しているとは思えないけどな。こっちは徹底して情報は封鎖している。逃げている連中も多少はいるが、敵さんはどう把握しているだろうな」

「あー、まあそうだよね」


戦車なんて知らないし、いきなり門が吹き飛んだとか言われても、しかも下っ端ぐらいだし。

そう思っていると……。


「ですが、ノスアムが落ちたのは事実では? そこから失陥と防衛線が崩壊したことが伝わるのでは?」

「そこは間違いないが、その対応が一週間そこらで決まると思うか?」

「え?」

「まず、ノスアムが落ちたのが約10日だ。そこから連絡が行ったとして、ノスアムを従えるクホール王国からさらに西魔連合をまとめているとされるフィエオンに対して連絡がどれぐらいで届くと思う?」

「……確かに、車もないのですからそれ相応に時間がかかるかと」


うん、撫子の言うようにそう簡単に連絡取れる手段はないよねー。

だけどさ……。


「さっき話した空からの連絡は? 伝書鳩でもあれば事足りるでしょ?」


そう、空という連絡手段があるんだ。

それを使えば大幅に時間は短縮できるんじゃないか?


「まあ、そういうのが実用化していて連絡が出来たとしてもだ。そこから各戦線にどういう風に話すかとか、戦力をどう分けるかとか、簡単に決まるわけじゃないんだよ。戦線の移動なら特にな。物資の移動も出てくるし、ちゃんと準備もいる。撤退って本当に大変だからな」

「そういうものなの?」


にげろーっていうだけじゃダメなんだ。


「ただの敗走ならともかく、被害を抑えつつとかだからな。誰から逃げるとか、誰に殿をして貰うとか、まあ色々あるんだよ」

「そういうのって決めているんじゃないの~?」


そう言うのを含めて考えているのが軍隊だよね?


「それを判断するために上層部がいるわけだが、そこに今情報が届いてどうするか考えている最中だろうから、まだ時間はある。相手がどう動くかゆっくり見物させてもらうとしよう」

「そういうもんなんだ」


よくわからないけど、田中さんがそういうならそういうもんなんだろうね。

いやー僕に政治とか戦略とか無理だね。


「さて、これからのことはもっと話したいが、ノスアムのお嬢ちゃんたちが待っているんだろう?」

「あ、そうだった。戻って話を続けるか、終わるか決めないと」

「そうですわね。まずは話を終わらせてから今後の対策を決めないといけませんわ」


ということで、僕たちは田中さんを見つけて戻るけど、まだジェヤナの叔父さんは戻っていないようで。


「申し訳ございません。まだ叔父上は戻っておらず」

「いえ、これから空にも注意が必要という話ですからね。説明が大変なのでしょう」


田中さんは普通にそう言って気にするなという。

こういう気遣いは出来るんだよね~。


「それで、私が連絡に行っている間に何かお話はありましたか?」


そう言って、田中さんはユーリアやマノジル爺ちゃんに視線を向けるけど……。


「いえ、特に進んではいません。空より来るのであれば、どのルートをたどるだろうというぐらいですね」

「うむ。タナカ殿ならどこを通ると考える?」


ユーリアとマノジル爺ちゃんはあの落書き地図を見ながらそういう。

いやー、そんな地図を見ても役には立たんでしょーと思うけど、それを言うわけにもいかないか。


「ユーリア姫、マノジル老とお話をしたのですが、実際ノスアムの上空を何かが横切ったという話は聞かないのです。なので、別のルートという可能性もあるかと」

「なるほど。まあ、確かに空という力が使えるとすれば、あまり露骨に知らせることはしないでしょう」

「それはどうしてでしょうか?」

「まだ、正規に採用しているわけではないのでしょう。あるいは、露出を避けるためですね。どちらにしても公表されれば不都合がありますからね。こうして俺たちが警戒をしているのですから」

「ああ、なるほど」


警戒どころか撃ち落とす手段を既に用意しているんだけどね~。

まあ、僕たちも忘れてたぐらいの空の魔物だし、沢山投入できるならルーメルの方にも沢山敵がきているよねー。

それぐらいは僕でもわかる。

あれだ、まだ空の魔物たちは秘密兵器ってやつなんだよ。

だからまだ味方にも秘密にしているんだよね。


「しかし、そうなるとノスアムが直接攻撃される可能性もあるのでは?」

「その心配はその通りでしょう。今、東側連合はノスアム西砦の攻略に向かっています。それはこのノスアムを占領して物資の供給ができるからです。なので、東側連合の頭を飛び越えてこのノスアムを再占領できれば……」

「はい。補給を断つことができます。そうなれば、軍は機能しないでしょう」


ほー、やっぱりジェヤナはしっかりしてるなー。

あの説明でそこまでわかるなんて。

僕たちの場合、田中さんが無限に食べ物とか出してくれるから大丈夫なんだけど。


「とはいえ、本当にそうなのかというのは分かりません。この地図で別のルートを探しつつ、ノスアム上空も気を付けるぐらいですかね」

「……しかし、本当に空からくるのでしょうか? 一応その体で話を進めてはいますが……」

「あ、ジェヤナ的にはあまり信じられない?」

「はい。どうしても、そんな便利なことがあるならもっと使うだろうと」


ジェヤナは空のルートは否定派かー。

いや、まあ空を飛ぶとか信じられないって気持ちは分からないでもないけど。

現実は非情なんだよね~。


「まあ、それは可能性の一つですから。とりあえず、補給できそうな村の確認もしてみましょう」

「そうですね。そちらは確認して損はないでしょう」


ということで、今度は補給拠点になっているかもしれない村を地図を見て調べるのであった。

えーと、僕たちっているのかなー?



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