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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


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第37射:グランドマスター

7月25日 修正 感性の法則>慣性の法則

面白かったとのことなので、本文の最初にある慣性を感性と読んでみてください。

面白いかも。

グランドマスター



Side:タダノリ・タナカ



なんというか、この世界はやっぱり違う世界なんだなと思った。

地球では絶対あり得ない動きを、目の前の爺さん、グランドマスターは行っていた。


「ほほほ。よいよい。珍しい体術じゃ」

「ちっ!!」


目の前では、大和君が手合わせをしているが、人間の動きではない。

明らかに、慣性の法則、すなわち物理的な動きを無視している反応速度で動いている。

いや、慣性の法則を緩和、あるいは無視できるほどの筋力があれば問題ないのだが、人にできる動きではない。ついでに爺だからな。若さゆえとかいうのは無理だ。

まあ、そういう化け物は地球にもいるにはいるが……。


「うわー。あの動きに良くついて行ってるよね……」

「だな。撫子って結構凄かったんだ」


2人は感心しているが、俺も驚きだ。

大和君がこれほど人外相手にできるとは思えなかった。

しかし、ここまで動けるのなら、何で魔物相手にあそこまでと思ったが、あくまでも試合であり、相手が人だというのが大きいか。

殺し合いに慣れているわけもないからな。


「せいっ!!」

「ほっ!?」


そして、そんなことを考えている内に、大和君が大きく踏み込んで拳を鋭く突き出すと、爺さんの腹部に当たり、後方へと吹き飛ばすが……。


「よう当てた。そして気持ち良い綺麗な拳じゃ。よほど良い師に習ったとみえる」

「褒めていただき光栄ですが、渾身の一撃を当てて、その様子ではがっかりですわ……」

「何、経験と修練の数が違うだけじゃよ。君は若い、いずれ追いつくじゃろう。そして、その間に……」


そう言葉をきって、一気に爺さんの殺気が膨れ上がった。

殺気を感じるなんてのは、ありえないと言っている奴もいるが、俺としてはあると思う。

長い間傭兵をやっていると、そういうのは感じる。

ま、脅しだとは思うが、出しているのが、失神レベルだ。止めないと話を進めるのに支障が出る。


「待て爺さん。それはやりすぎだ」

「ほっ!?」


俺はそう言って、爺さんに近寄り組み敷く。

普通ならこのまま首を掻き切るかへし折るんだが、そういう場面でもない。

貴重なリテアでの協力者でもあるから、殺ったりはしない。


「で、どうする? まだやるなら相手になるが?」


そうなると面倒だが、今手放せば襲い掛かってくる可能性が高い。

ま、だからこそこの状態で聞いたんだがな。

やるというならここで腕や足でも折っておこう。


「……ふむ。やめておこう。老体には辛いからのう」

「そうだな。年寄りは体をいたわった方がいい。適度な運動は必要なのは認めるがな」


俺はそう言って、爺さんを解放すると、すぐに爺さんは飛び起きる。


「ほほほ。いや、私も鈍ったかな? 君のような者もいるとは、いや、加減してくれて助かった。あれは本来そのままヤルものだろう?」


ちっ、やっぱり気が付いていたか。

やっぱりこの爺、化け物の分類だな。

正面からやりあうのは分が悪い。やるなら不意うちかつ一瞬でやらないといけないやつだ。


「まあな」

「うむ。君の動きには彼女と違って迷いがなかった。まっすぐにヤル動きだったからのう」

「で、そろそろ俺としては本題に入りたいんだが……」

「ほほほ。そうじゃな。オーヴィクたちの報告も聞かなくてはいかんからのう」


そういうことで、冒険者ギルド屋敷の真ん中にある訓練場から移動することになるが、その道中で会う冒険者は避けたり、興味深そうにこちらを見て、ギルドの職員は感心したようにうなずいている。

なるほど。だから、わざわざ大和君に喧嘩を吹っかけてきたか。


「これで、君たちが私の部屋に通されても、妙なことを言う連中はおらんじゃろう」

「ん? あー、試練を乗り越えたてきな?」

「いや、乗り越えたのは撫子だからな」

「私と田中さんが腕をみせたのですから、光さんも、晃さんも同じようにみられましたわ」

「多分な。ま、実力が伴わないと、つらい評価になるけどな」


分不相応な仕事を任されることになって死ぬというのはよくある話だ。

そんな話をしているうちに、グランドマスターの執務室に到着した。


「そこのソファーに好きにかけてくれ」


俺たちはそう言われて、ソファーに腰を掛けると、グランドマスターは炎の魔術を使って器用に紅茶を入れる。

あそこまで器用に調節できるってことは、魔術も得意ってことだよな。

あの体術に加えて魔術か。うん、厄介すぎるな。

そう思っていると、いれたての紅茶をふるまってくれる。


「さ、いれたてじゃ。飲んでくれ」


そう言われて、いったん紅茶を飲む。

うん。美味いのが微妙だ。

これじゃ、飲み終わるまで話をできん。


「さて、飲みながらでいいんじゃが、まずは、オーヴィクたちの報告を聞かせてもらおうか?」

「あ、はい。でも、タナカさんたちの前でいいんですか?」

「構わんよ。この者たちが協力してくれるならありがたい話じゃ」

「まあ、そうですね。では……」


ちょ、この爺。俺たちを厄介ごとに巻き込む気か。

まあ、無視すればいいか?

それとも、グランドマスターが直々に報告を受ける話は色々裏があるから、情報としての価値があるのか?

そう思って、オーヴィクの報告とやらを聞いてみることにする。



「……そこで、タナカさんたちと出会ったわけです」


あ、話が終わってしまった。

大体30分ぐらいだったろうか?

まあ、簡単に説明すると、最近魔物が街道に出てくることが多いので、巡回してきてくれという話だったらしい。

そこで、リテア一帯の街道を歩いていて、最後の調査の場所でオーガと出くわして交戦、それからのことは俺たちが知っての通り、介入してここまで来たと。

うん。聞く価値もなかったな。

ただの、治安維持行為だ。


「というか、なんでそんな国の兵士がやるようなことを冒険者がしているんだ?」


なので、思わずそんな疑問を口にしてしまった。


「ほほほ。簡単な話、それで追いついていないのじゃよ。となると、どこかに巣があると思ったのじゃが……。まだ絞れてはおらんな。ほかの報告待ちじゃな」

「つまり、ほかにも依頼を出していて、出現位置を絞ろうって魂胆か」

「うむ。話が早くて助かるのう。被害が多いのは魔物集団がいるということじゃ、つまりはどこかに巣があるとみていい。まあ、それだけで済めばいいが、新しいダンジョンができたとなると、国家の危機でもあるし、新しい財源の発見でもある。そういうわけじゃよ」


なるほど、必死になって探すわけだ。


「しかし、その話を聞くと、政府と、リテア聖国と協力しているような話に聞こえるが?」

「うむ。ダンジョンの管理は冒険者ギルドだけで行えるものではないからのう。そして財源でもあるから、下手に独り占めなどすると、国と対立してしまう。そうなると面倒でしかないからのう。そういうことは避けておる」


納得の話だな。


「それで、協力をして捜索して、ダンジョンから得られる利益を分けようという話か」

「そうじゃよ。まあ、ダンジョンの探索は冒険者ギルドが、ダンジョンの周りの発展は国がという感じじゃな」

「お互い持ちつ持たれつか」

「それが色々な意味でいいんじゃよ。と、オーヴィクたちは苦労じゃったな。仕事は成功。下で報酬を受け取るといい」


グランドマスターがそう言うと、オーヴィク達はそろってお礼をいって、部屋から立ち去る前に……。


「じゃ、下で待ってますんで、話が終わったら一緒に食事でもしましょう」

「おいしーところ知ってるから、ヒカル楽しみにしてて」

「奢ると言ったからな。好きなだけ頼んでくれ」

「オーガの素材だけでも黒字だしね」


そう言って、部屋から出ていく。


「おー、早く話を終わらせて、ご飯にいこう!!」

「リテアの料理って楽しみだな」

「2人とも、食い気よりも、まずはここでの話ですわ」

「ほほほ。若者は沢山食べるのが仕事じゃな。で、君たちが私を訪ねてきた理由を聞くとしようか?」


ようやくというか、スムーズに来たというか、難しい所だが、話ができているのだから、深くは考えないようにしよう。

俺はそう決めて、クォレンから預かった手紙を渡す。


「ほう、ルーメルのクォレンからか。あいつも最近あっとらんのう。さて、ちょっと読ませてもらうぞ」


そう言って、グランドマスターは手紙に目を通し始める。

手紙は3通に分かれていて、まあ、俺たちの事情を話すには多くもなく少なくもなくといったところだ。

まあ、予想通りというか、読み進めていくうちに余裕があったグランドマスターの顔が固まっていく。

そして、手紙をテーブルに置くころには、ほほほと笑っていた爺さんから、難しい顔をした爺さんに代わっていた。


「君たちは苦労をしたようじゃな」

「事情を分かってもらえて何より。ああ、言っておくが……」

「うむ。そこの若者たちが、勇者であることは伏せておく。今、そのことを話してもろくなことにならんのはよくわかる。確かに、君たちは強い、だが、魔王を倒せるほどではない。死地に子供を、ましてやこの世界と関係のない者を送り込むなんぞ、ただの恥でしかない。それがわからんやつが多いからのう……」


クォレンの上司というだけあって、こういう事情はあっさり察してくれるか。


「しかし、君たちはここでどうするんじゃ? 聖女殿と会うのか、修行の場所か?」

「聖女殿ということは、つなぎができるのか? てっきり、魔物退治の経験を積むだけになるかと思っていたが……」

「できる。が、その結果がどうなるかいまいちわからん」

「……どういうことだ?」

「君たちはまだここに来たばかりなのだったな。なら、一度見てみるといい。オーヴィク君たちの食事のついでに、このリテアがどうなっているのかを……な。君ならわかるだろう」

「……」


俺を名指しか。


「そのうえで、どうするかを君たちに任せよう。その時は喜んで聖女ルルアに会わせよう。彼女は間違いなく、気持ちの良い女性じゃからな」


彼女は、な。

ちっ、面倒なのはグランドマスターじゃなくて、この国か。

いったい何がどうなっているっていうんだ?

それも含めて、俺が見て判断しろってことだろうな……。


「わかった。来たばかりだから数日は休むことにする」

「うむ。リテアの観光をしてからでも遅くはないだろう。オーヴィク君たちも一仕事終えたばかりだ。彼らにいろいろ教えてもらうのもいいかもな」

「やったー。リテアの観光だー」

「おー。ガルツの方は特に観光する暇なかったからな」

「仕方ないですわ。ガルツに行ったときはローエルさんが付き添いでしたし、そんなに長くいませんでしたから」


3人は気が付いているのか気が付いていないのかわからないが、リテア観光ができることに不満は感じていないようだ。


「まあ、12日も馬車移動でしたしな。馬も休めなくてはいけませんし、私は宿に残って世話をするとします」

「私は、消費した物資の手配でもしておきましょう」

「じゃ、私は勇者様たちの付き添いでー」

「「いや、ヨフィアは洗濯物」」

「ひどい!?」


こっちの3人もマイペースだが、こいつらは元からこの世界の住人だから問題ないだろう。

俺は、結城君たちについていって、リテア聖都の様子をうかがうことにするか。






グランドマスターは田中認定の化け物クラス。

でも、たたえるお前は何なんだという話だが、そこは長年の傭兵生活ってことで。


そして、グランドマスターが言ったリテアの現状。

なにが一体どうなっているのか?



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[一言] グランドマスター(化け物レベル) 紅茶を飲みながら、スティーブ隊の十字砲火にさらされても、紅茶をこぼさずに飲みきるレベル。
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