第353射:一夜明けて
一夜明けて
Side:ヒカリ・アールス・ルクセン
なんか目に光が当たっているという感覚で意識が覚醒する。
「ふぁ」
そんな間抜けな声を出しながら目を開けると、日差しが差し込んでいるところにちょうど寝ているというのが分かる。
いや、日がそこまで昇ったからということかな?
とりあえず、目が覚めてしまったのでそのまま体を起こし、腕を伸ばし体をほぐす。
「んー! よく寝た?」
なんか不思議な感じだ。
寝た気がするけど、なんかずれている感じ?
とりあえず時計を見るとすでに10時を回っている。
「えーと、なんでこんなに遅く起きているんだろう?」
僕はこっちにきてからかなり朝は早くなった。
そうしないといけないっていう事情もあったけど、癖になっているんだよね。
というか元々学校に行ってたから準備の関係で朝7時ぐらいには起きてたけどね。
そんな感じで検討違いなことを考えていると部屋のドアが開いて……。
「あら、おはようございます」
「ん? おはよー。撫子」
撫子がトレーに食事を載せてやってくる。
その姿を見てあまり状況が把握できない。
すると撫子が。
「光さん。まだ寝ぼけていますか?」
「んー。なんかぼーっとしている」
こんな返答をすると、いつもならしっかりしてくださいとか怒られるはずなんだけど、今日はそんなことはなくて……。
「まあ、仕方ありませんわね。昨日というより今日は5時近くまで起きていましたから」
「5時? ほとんど夜明けじゃん。何してたんだっけ?」
「あら、そこまで忘れているんですか? 昨日の夜はユーリアとハブエクブ王国との話し合いで冒険者ギルドとの連絡とか引き続き監視とかで忙しかったでしょう?」
「ああ!」
そこまで言われてようやく思い出した。
昨日、ついにユーリアたちにハブエクブ王国がどう対応するか決断が下されたんだった。
一応、ユーリア、つまりルーメルと共同戦線をするってことで決着がついたけれど、油断はできないってことで夜通し監視してたんだ。
で、結局最初のうちはいつ戦いになるかとヒヤヒヤしながら話し合いを見守ってて、一応の決着がついたはいいんだけど、冒険者ギルドへの連絡とか、興奮が続いて仮眠が取れないまま5時まで監視をして、そのあとは引き継いで寝ちゃったんだ。
「そうだった。ユーリアたちは無事?」
気が付けばあれから10時間。
もうすぐ夜明けだったとは言え、まだ暗い時間。
何かあってもおかしくない。
「大丈夫ですよ。今は何事もなく平穏です。とはいえ、今日から本格的にどういう風な共同戦線なのかの話し合いになりますが」
「そういえばそんなこと言ってたような……。なんか魔族の恐ろしさを教えるとかなんとか……」
「言っていましたわね。そういう相互理解を深めることもするでしょう」
「魔族の強さねー。どうやって教えるつもりだろう?」
「……」
なぜか撫子は私から目を背ける。
「何か知っているの?」
「いえ、私も馬鹿な考えだとは思いますが、おそらくあのメンバーの中で実力があるのは……」
「ああ……」
そこまで言ってもらえれば僕だってわかる。
ジョシーさんが相手をするってことか。
そりゃ、相手だっていやでも理解できるよね。
というか生きいられるかが心配になってきた。
「そもそも戦い方が違うのに納得するかな?」
「そういう有無を言わせずに納得させるのが得意だと思います」
「すごく納得」
理不尽をたたきつける役としては一番適任かもしれない。
田中さんよりも。
「そういえば田中さんは?」
「田中さんは7時まで監視をして、それから寝ているようです。一応呼びかければ起きるとは思いますが起こす理由もないので」
「確かにそりゃそうだ」
というか、相変わらず謎にタフだよね田中さんって。
いや、おそらく戦場でいつ寝れるかもわからない状況っていうのがあったんだろうけど、あのタフさは凄いと素直に思う。
「とりあえず、朝ごはんはどうですか?」
「あ、うん。食べる」
用意されているのは簡単なパンとスープだ。
正直に言って、粗食だよね。
まあそれも仕方ないか。
そこで僕はあることも思い出した。
「冒険者ギルドの朝食ってお粗末だねー」
そう、ここは冒険者ギルドの来客用の部屋なのだ。
つまりこの朝食は冒険者ギルドが用意してくれたご飯だということになる。
「そもそも寝泊り、食事を用意する宿屋居酒屋ではありませんからね」
「酒場を併設している冒険者ギルドもあったけどね~」
「それは向こうの大陸のことでしょう」
「そういえばそうだった。シャノウはなかったっけ?」
「なかったですね。どっちがいいか悪いかは判断できませんが、こうして客室を用意しているのですから静かなのはいいことですわ」
「確かにそうだね」
冒険者とかが飲みだすと騒ぐしうるさい。
何より防犯って意味ではちょっとあれだし、こっちの方がいいかもしれない。
そんなことを考えながらパンとスープを食べる。
うん、美味しくない。
とりあえず、出されたものは食べないと失礼だし食べてから、アイテムバックから缶詰を取り出す。
いや、日本の缶詰ってホント美味しいよね。
温めるのは魔術でできるしお手軽。
何より地球のモノを取り寄せられる田中さんの力が便利すぎる。
「田中さんが一緒ならもっと新鮮なモノを食べられるんですけどね」
「そこは仕方がないよ。僕たちのアイテムバックは時間止められないし。なんか物凄く高いやつとかは時間が止められて、量も沢山入るらしいけど」
「アイテムボックスと言われる類の力や道具ですね。下手すると国宝級らしいとか」
「そりゃそうでしょう。カバン一つで生ものをずっと運べたり荷物も沢山はいるとか、どこかの未来のロボットポケットだし」
「ですが、その手の道具の交渉をウィードとしているようですよ」
「ウィード? ああ、ミリーさんたちのところか。あそこってホントすごいよね」
「タイキさんでしたか、私たちと同じ日本人がかかわっているようですしそこから何かしら譲歩がもらえるといいんですが」
「ま、ないものは仕方ないよ。これで十分美味しいんだし」
缶詰が不味いってわけじゃないから問題なし。
インスタントごはんもあるから日本人としての食事は保証されている。
便利だよね。恐るべき日本の加工技術。
そう思いつつ色々取り出して食べていると……。
「朝からよくそんなに入りますね」
「昨日は結構働いたからね。というか撫子は食べてるの?」
撫子は僕よりも身長高くでスタイルはいい癖に食べる量は僕よりも少なめなんだよね。
「ちゃんといただいてますよ。少ないと思えば携帯健康食糧いただいてますし、栄養ドリンクも」
「いやー、それって駄目なやつじゃん」
不健康な大人の食生活って感じだ。
「というか、なんでそれでそんなスタイルなんだよ」
「さあ、それは何とも」
撫子は苦笑いする。
まあ、成長に突っ込まれても何とも言えないのはわかる。
とはいえ、私も世の中の理不尽に憤りがあるから言わずにはいられない。
「うん。ごめんただ言いたかっただけ。で、これからどうするんだっけ?」
「とりあえず、ルクエルさんとお昼に会議ですわね」
「そういえばルクエルさんたちは寝てないの?」
「さあ、私たちとは別で動いていますからね。12時に話し合いとなると寝ているからではと予想はできますが……」
「状況把握のために今も動いている可能性もあるか。大人って大変だよね」
「昔は24時間戦えますっていうのが日本でも主流だったらしいですわよ」
「どこのブラックだよ」
「そのブラックが当たり前だったらしいですわ。会社に長く働くことが美徳とされていたようです」
「うへー。そんなの嫌だ」
「ま、代わりにちゃんと給与はよかったらしいですけれど」
「ああ、お金は払っていたんだ。今は全然らしいけど。そう考えると冒険者っていい仕事なのかな?」
「確かに働いた分の報酬は約束されていますからね。失敗すれば命を落とすこともありますが」
うーん、そういわれるとやっぱりリスク高いよね冒険者って。
「そういえば、晃とヨフィアさんは?」
ご飯を食べておちついて気が付いたけど、2人がいない。
安全のために基本的に一緒の部屋にいるはずなんだけど……。
「2人はお城の様子を見に行っていますわ」
「はぁ。たった2人で?」
「大丈夫でしょう。とりあえずですし、飛び込むわけでもありませんわ」
「ユーリアたちと連絡は取れているの?」
「ええ、そちらも問題ありませんわ。オンにしてみたらわかります」
そう言われてテーブルに置いてあるイヤホンを指さす。
ああ、そういえばそっか。
そう思ってイヤホンを付けてオンにしてみると……。
『外からも特に動きはないようですね~』
『ですね。兵士とかは特に集まってないようです。ってドローンでわかるんですけどね』
『そこはそれでいい。現場の空気っていうのは行かないとわからないからな。警備の兵士にも何も伝わっていないようだな』
って、田中さんもう起きているじゃん。
『お姫さんの方も特に動きはないんだな?』
『ええ、健やかな朝でしたわ。あとはお昼過ぎに話し合いがありますので、そちらを聞いていただければと思います。ああ、ドローンの爆弾はまだ待機していただいて大丈夫です』
『まだ動くタイミングじゃないから心配するな。あとは、ゼランたちの方だが……』
『こっちも問題ないよ。それよりまだ寝ていて冒険者ギルドに置いているヒカリとナデシコは大丈夫なのかい?』
と、タイミングよく心配の声が聞こえてきたので。
「今起きたよー」
『あ、光』
『そりゃよかった。じゃ、このまま打ち合わせに入るぞ。行動はそのままにな』
「『『はーい』』」
ありゃうかつに返事したからお仕事の話になっちゃったかな?




