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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


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第352射:選択

選択



Side:タダノリ・タナカ



日が山の陰に隠れてくる。

もう日が落ちる時間か。

俺はそんなことを考えながら、窓からハブエクブ王国の王都の街並みを眺めている。

いや、正確にはスラムの一角だな。

一応3階建ての建物だが、ここが一番高い建物でもないから見えるのはごく一部。

だがそれでも人々は家路を急いでいるように見える。


「ああ、スラムだからこそなおのことか」


日本では夜に出かけても特に珍しいことではないが、海外で夜に外出することは自殺志願者といわれるほどだ。

つまりこの中世の文化レベルで夜に外に出るのは自殺志願者よりもうえというのが思いつかないが、死にたい奴と思われても不思議じゃない。


「ということは、夜に行動を起こす奴は死にたがりだから……喧嘩を売るやつは殺害しても問題ないってことになるのか?」

『『『いやいやいや……』』』


俺のぼそりと呟いた言葉をマイクが拾ったのか、速攻オープンでつながっている結城君たちからツッコミが入る。


「随分余裕だな」

『いや、誰だって死体の山を作るとか言われたら止めますよ』

「別に作るとはいってないんだがな」


死体が増えても問題がないってことで。

まあ、そこれはいいか。


「それで、そっちの方はどうなったんだ?」


確か冒険者ギルドの方に連絡を入れて、爆破に巻き込まれないように、そしてフォローをしてくれるようにってな。


『一応動くとは言ってくれています。今は冒険者ギルドの資料室で色々情報がないか調べつつ、客室を貸してもらって待機しています』

「何もなければ資料読み放題ってところか」

『だねー。とは言っても何を読んでいいのかわからないけどね』

『とりあえず、今は魔物についての本を読んでいます。いえ、これは詳しく言うと冒険者ギルドで受け付けていた討伐のレポートですね』

「それはそれで面白い情報だな。写真に撮っているよな? あとで送ってくれ」

『わかりましたわ』


冒険者ギルドが持っている討伐の資料。

つまり、ここハブエクブ近辺の魔物の生息がわかるわけだ。

ここは押さえておきたい。

手に負えないレベルがいないとも限らないからな。


「しかし、そうやって3人も話しかけてきているが、連絡役がいていいのか?」

『はいー。そこはご心配なく、私が見張っていますので』


と、ヨフィアから返答が来る。


「ヨフィアから見て冒険者ギルドの連中はどうだ?」

『しょーじき、ぬるいですね。ここだけがそうなのかもしれませんが、まあ、私に悟らせないような相手がいても不思議じゃないですけど……どう思います?』

「そこらへんはわからん。俺が実際いったわけでもないからな。とはいえ、シシルとギネルだったか? 連絡役の2人の実力があれだったしな、あまり期待はできない気はする」


一応、この王都を火の海にできる武力を持っている連中相手に対抗できるぐらいの腕ないとな。

いや、まあ隠していて実力者がいるかもというヨフィアの予想は間違ってはいないが。

表に出してくる戦力があれだとな……。


『まあ、そこらへんは同意です。下っ端でもここまで力がありますよ。ってなりますからね。油断を誘っていると思えばありえなくもないですけど』

「油断を誘わないとだめってことだからな。と、気がつけば日が落ちたな。警戒しておけよ。ゼランたちも待機できているか?」


俺がそうゼランたちに問いかけると……。


『ああ、こっちの準備はできているよ。何かあれば部下も動ける』

『タナカ殿、まかせておきな』

『だから、姐さん。おらたちは大人しくするだよ』

『あはは、ゴードルさんと一緒にノールタル姉さんは押さえておきますから』

「ああ、頼む」


ゼランの方は余裕があるな。

まあ、向こうは基本待機だからな。

ノールタルが姉として張り切っていること以外は問題ないだろう。

というか、そろそろこっちの魔族とは姿かたちが違うんだからノールタルたちの行動制限も解除していいのか?

そこらへんはまだ話し合う必要があるか、下手に魔族の手先だといわれると面倒か。

ああ、いっそ今日の話し合いが終われば国から正式な身分証明書でも発行してもらうか?

そういうのはあるだろう、出入りの商人御用達の証明書とかな。

とはいえ、そういうのは今日を乗り切ってからだ。

そう考えていると……。


『こちらクイーン呼び出しがあったから覚悟しておくように』

「了解」


どうやら日が沈むと同時に動き出したな。

これは逃亡防止も兼ねてか?

昼でもよかったものを夜にとなると怪しいか?

とりあえず、ドローンから城を確認する。

周りを固めるような動きは見られない。

普通のように見える。

戦車を駐車している場所にもいつもの人数しか配置されていない。


「外の動きはない。そっちは?」

『特にあわただしさは感じないね。まだ話し合いはする気はあると見た』

「そうか。ま、引き続き頼む。会話はつなげておけよ」

『わかっています。何か行動を起こす際には私から返事があってからにしてください。本当にお願いします』

「わかっているさ。まあ、お姫さんが喋れる状況ならな」


世の中口を封じられれば意味がなくなるからな。

その前に行動を起こす必要はある。


『その時はジョシー、あるいはマノジルから連絡が行きます。それすらないときはもう終わっています』

「心配するなその時は遠慮なく吹き飛ばすから」


護衛対象のいない拠点を放置するなんて馬鹿がすることだ。

不幸が起きて城が無くなるだけの話。

世の中ボタン一つでどうにかなるんだから便利になったよなと思う。

ドローンができてから一人でできる作戦行動も多くなった。

いやー、地球の戦争がこれからどうなるとか考えたくもないな。

ドローンを使っての対人戦が繰り広げられるか?

……上空警戒をどうするかっていうのが問題になってくるな。

いや、ECMで行けるのか?

まてまてドローンに限っての電子戦なんてできない。

俺にはそういった開発能力がないとは言わないが、道具が少なすぎる。

となると強制的に活動停止にもっていく、電磁波を放つ爆弾みたいなものを作ればいいか?

ドローンとなるとそういう電磁波を防ぐような分厚い防護を張り巡らすわけにもいかないからな。

……一応検討しておくか。

そうこう考えているうちに、話し合いが始まる。


『ようこそユーリア姫』

『ごきげんうるわしゅう。ハブエクブ王。今日のお呼び出しは結果が出たという認識でよろしいでしょうか?』


お姫さんは挨拶ついでにつまらないことで呼び出してないよな?とパンチを入れている。


『まあ、そう焦るでない。こういう同盟などの話が数日でまとまるなどありえないだろう?』

『通常であればそうですね。ですが、今は時間が惜しい事態です。あまり良い答えが聞けないのであれば、この王都を離れて直接連合軍の所へ行くこともやぶさかではありません。そのついでにハブエクブ王国では信じてもらえなかったのでと付け加えないといけませんわね』


さらに連続攻撃を入れるお姫さん。

連合軍での評判を落とすぞといわれているのだ。

まあ、こちらの戦力を見て出し惜しみをしていたとなると馬鹿を見るよな。

自由にできる戦力ではないとはいえ、それをみすみす逃がしたとなるとやはり馬鹿としかない。


『それはこちらを脅しているのかね?』

『脅すとはどういう意味でしょうか? 私たちは魔族を倒すという目的のために動いているのです。協力が得られないのであれば協力で来そうなところへ向かうのは当然。そして協力してくれなかった組織のことを味方に伝えるのは当然ではないでしょうか?』

『魔族がそこまで恐ろしいのか? ユーリア姫が連れてきた戦力があれば簡単に倒せるのではないか?』

『簡単に倒せるのならなおのことここでとどまっている理由はございませんわ。前線に向かい魔族を倒すとしましょう』


その後ガタッと音が聞こえたことから席を立ったのだろう。

まあ、相手は本題を話さないしどうしようもないか。

いや、この場合はお姫さんが急ぎすぎか?

周りを囲まれる可能性もあるから悪い判断ではないと思うが……。


『ダスト。周りに動きはないからまて』

「了解」


何がしたいんだ?

相手の行動の意味が分からないと考えていると……。


『待て。そのまま行っても警戒される。こちらで書状を用意する』

『つまり私たちに協力するという決断でしょうか?』

『だから急ぐなと言っている。いくら何でも急ぎとはいえ数日で周りをまとめるのは不可能だし、布告も間に合わない』

『だから時間がいるという認識でよろしいでしょうか?』

『ああ。とはいえ、私たちの軍も同行させてもらう。説明をするにも書状よりも付き添いがいた方が国内移動には便利だ』


なるほど。

まあ、正論だな。

連絡も行っていない軍隊が動いていれば警戒して足止めされるのは当然。

そういう準備も含めるのは当たり前だが……。


『では、なぜわざわざそのような言い回しを? 素直に協力するといっていただければいいのでは?』

『そちらがどう出るのかを見たかった。その力があればこの王都を落とすことも容易かろう?』

『それは否定しませんが敵を増やすつもりはありません。魔族はそれだけ厄介なのです。戦ったことがないからそういうことがいえるのです』

『……それだけユーリア姫が警戒している魔族。連合軍は戦線を維持しているといっているが、それは間違いなのか?』


ああ、なるほど。

自分たちが持っている情報と俺たちの警戒度が乖離しているから困惑があるわけか。


『そういう所も含めて協力をしてくれるのであればお教えいたしましょう』

『うむ。敵意がないのが分かればこちらも安心して協力できる。まあ、こちらが協力するだけでは損だというのもわかるだろう?』

『そういうのはあとあと詰めていきましょう』


こうして、城を吹き飛ばすことなく話は進んでいくのであった。


『ちっ、つまらん』


オマエはそうだよな。




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