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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


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第351射:冒険者ギルドの決断

冒険者ギルドの決断



Side:アキラ・ユウキ



「はい? どういうこと?」

「……何をどうしたらそういうことになるのでしょうか?」


理解できないと言いたげにびっくりした顔をするのは光と撫子。

そして、ヨフィアさんというと……。


「うひゃひゃひゃ! そう来ましたか。ええ、よくよく考えればそれが一番ですねよね!」


と笑いながらテーブルをたたいている。

俺も意図はうっすらとわかるけど、苦笑いしか出こてない。

なにせ……。


「さっき何かあれば手助けをしてくださいって連絡をしたばかりなんだけどなー」


そう、先ほど田中さんからの指示で伝えたのに。

なんでか、お城の壁をすべて破壊する方向に変わったから、注意を促してくれってことになった。

これをどう伝えればいいのか本当によくわからない。


「いや、その前にどうしてその判断になったのか教えてよ!」

「そうですわ。あまりにも酷い交渉になります!」


そう二人は憤慨しているが、前提を考えていないんだよなー。

どう説明したものかと思っていると……。


「2人とも落ち着いてください。ちゃんと言っているでしょう。前提が交渉が決裂して姫様が危険にさらされていると。そんなことをしている連中に対してまだ交渉してあげているんですから、優しいと思いませんか?」


と、ヨフィアさんが笑顔でそう告げると、2人がピタッと止まる。

ついでに俺も言おう。


「光も撫子もこっちが圧倒的有利だからそういう認識になっているんだろうが、別に人を殺すにはナイフ1本、首の骨を折るだけでも十分なのは知っているだろう? 敵地の中でそんな甘いこと言ってられると思うか?」

「あー、そういわれるとそうか」

「申し訳ありません。あれですね、日本の感覚でつい考えてしまいますわ」


田中さんから現実を教えられて多少はましになってきたけど、それでも話し合いをしている相手を銃火器というか爆破で脅すなんてことは普通に考えてもおかしいのはわかる。

とはいえ、向こうは剣を突きつけてきているのだからお互い様ということだ。

どちらが有利かは言うまでもないけど。

もともと、それを理解していながら攻撃してこようとするんだから、自業自得だ。


「お気持ちはよくわかりますけどね。シャノウの領主もそうだったように信じられないっていう連中は多いんですよ。そしてどうしても自分たちの方が上に立つべきだと考える。そのために手段を講じるのはどこでもいっしょです。だからこそ私たちも上に立つために大義名分を得てタナカ様は動くわけですね。むしろ手を出してくれた方が、こちらとしては相手の上に確実に立てるので便利ですよねー」

「でも、爆破ってなると冒険者ギルドにどう説明したものか……」


それで問題は最初に戻る。


「うーん。ルクエルさんは何とかやってみるって言ってたよね?」

「ですわね。難しい顔をしながらも動いてみるとは言っていました……。伝えるのは難しいですが言わないなんてことはできないでしょう」


撫子の言う通り無視することはできない。

トラブルの際には冒険者ギルドの人たちが吹き飛ぶことになるからな……。


「では、さっそく連絡役に頑張ってもらいましょう。どうせ聞き耳を立てているでしょうし。シシルさんギネルさん」


と、ヨフィアさんが言うとドアの扉が開き2人が立っている。


「聞き耳というのは大げさです。ドアの前に立っているのが分かっていてこんな大きな声で話されたら誰でもわかります」

「ええ。とはいえ、言っていることはあまりわからなかったのですが、お城を爆破など冗談にしか聞こえません」


2人はどう反応したものかという感じで答える。

一緒に冒険者ギルドを出てきて宿に泊まっているというかその準備をしているところだったんだけど、この様子を見ると……。


「まあ、詳しい話の前にもう準備はいいんですか?」

「はい。宿の契約はとりました。まさかここまでいい宿に泊まっているとは思いませんでしたが」

「いいですね。私たちも久々にこういう宿に泊まれますから、しかも経費で。荷物に関しては交代でギルドの宿舎に取りに行く予定です」

「じゃ、都合いいじゃん。今から予定変更をルクエルさんに伝える必要があってさ、一緒に行こう」

「かしこまりました。もう準備は出来ています」

「宿の内装は確認していますので荷物を取りに行くことを話にきたんです」


ああ、なるほど。

それでドアの前にいたのか。


「では、さっそく向かいましょう。あまり時間もありませんし」


撫子の言う通り、あまり時間があるとは言えない。

トラブルがいつ起こるかなんて予想できないからな。

まあ、一応話し合いを夜にするとは言っているから夜までは動かないと思いたい。

ということで、シシルさんやギネルさんたちと平静を保って話してはいるけど、思った以上に心は焦っている。

いつ城が大爆発するか予想できないから。

田中さんのことだからもう準備は終わっているだろうし。


そんな嫌な想像をしながら駆け足で冒険者ギルドに戻ると受付さんに話を通さず上のギルド長執務室へと向かいドアをノックせずに入り込む。


「おや、何事かと思えば君たちですか。あわただしい様子を見るに何かあったのですか?」


と、俺たちの失礼な入室に対して文句を言うこともなく対応してくれる。


「連絡もなく飛び込んできて申し訳なく思いますが、急ぎの内容がありましたのでお話させていただければと」

「ああ、構いませんよ。とりあえず立っていては落ち着いて話はできないでしょう。ソファーへ」


そう言われてソファーに座って田中さんから言われたことを伝える。

・本日夜お城でユーリアたちが話し合いの続きを始める。

・不測の事態の時には城を爆破するという動きをする。

・潜入している冒険者などがいれば退避させるか、ユーリアたちの側にいる方が安全。


とりあえず、そう簡潔に伝える。

下手に話すとぼろが出かねないから。

それで話を聞いたルクエルさんは……。


「急な話とは思いますが、世の中そのようなものでしょう。わかりました、部下に連絡をします。しかし、今日動く可能性があるか……」


そう言ってルクエルさんは顎に手を当てている。


「何か気になることでもあるのでしょうか?」


撫子がそう質問する。


「思いのほか動きが早いと思いましてな。あの王家はそこまで一枚岩ではない。君たち、いやルーメルの戦力を素直に受け入れるようなことはないと思っていたのですが、とりあえず敵に回すのはまずいと判断したか?」

「この話し合いで結論がでるとお考えで?」

「方針はある程度決まったかと。なにせルーメルのお姫様を呼んで話し合いです。それで何も決まらないという報告だけは相手を馬鹿にしているのと変わらない。それは君たち相手には悪手だというのは分かっているはず。だから一応今決まっていることを報告するでしょう。まあ、最終的にどうなるかはわからなないですが、手のひらを返すとは思いたくないですが」


なるほど、今のところ決定していることを伝えるってことか。

それでまずはユーリアたちを安心させるのが目的。

それからどう動くかは俺たちの動きも含めて考えるか。

とはいえ、それは後の話今は……。


「そこは話し合いが上手くいったあとに注意してもらうとして、今大事なのは交渉が決裂したときの被害を抑えることです。いえ、協力者の被害を抑えることですね」


俺は改めて言い直す。

ここでユーリアたちに喧嘩を売るような相手に優しくするつもりはない。

だからこそ、協力者である冒険者たちの安全は確保したい。


「その通りですね。上手くいった後のことは今考えるべきではない。大事なのはこちらに被害が無いように動かなくてはいけないと」

「はい。こちらとしては、ある方法で城の壁を根こそぎ吹き飛ばすような計画を立てています。そうすればユーリア姫たちに手出しをしようとは思わないでしょう」

「確かに、そのような事態になれば暗殺どころではないですからね。その際に巻き込まれないようにという話ですか」

「はい。急ぎ連絡を。こちらの不備でそちらと不仲になることは避けたい」

「至急伝えましょう。とはいえ、配置を勝手に移動することができないのが城勤めというものです。まあ、こっそり逃げておくようにもでも。しかし、それでは手伝いになりませんね。救助の準備をしておきますか」

「救助ですか?」

「ええ。爆破が起きた際、助けにいくのです。ああ、これはそちらの支援というより、冒険者ギルドの都合です。ハブエクブに恩を売れますからね」

「「「ああ」」」


確かに田中さんに城壁だけを吹き飛ばされたとしても、被害は出るだろう。

それに素早く手助けに入ればそれだけ恩は売れるか。


「あとは、君たちはどうするつもりですか? 一応立場上冒険者ということになっています。このままここに待機しておいた方がいいのでは?」

「お、いいの?」

「構いませんよ。むしろ城に行ったときに敵と判断されて攻撃されるかもしれないので是非ともいてほしいのです」

「あー、納得。僕はいいけど、みんなはどう?」


そう光が聞いてくるけど、どう考えてもここで待機しておく方がいい。

なので全員頷く。


「よかった。ではシシル、ギネル部屋の準備を」

「「はい」」


ということでさっそく部屋の準備をしてくれる。


「あれだよね。シシルさんが言ってた寮?」

「いや、来客用の部屋ですよ。まあ、普通は宿に泊まってもらうんですが緊急事態の時には寝泊まりしてもらうことはあるのでそういう場所があるのです。職員の部屋とは別にね」


そういうのがあるのか。

まあ、あっても不思議じゃないけど。


「そこを使ってもいいんですか?」

「ええ。それに色々聞きたいこともありますからね。夜は長いですから」


ああ、なるほど。

俺たちから色々聞きたいこともあるってことか。

変なことを喋らないようにしておかないと。


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