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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


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第348射:結局対岸の火事状態

結局対岸の火事状態



Side:タダノリ・タナカ



『つまり、周りは基本的にバカだらけってことか』

「そうだな」


俺は夜明けのコーヒーを楽しみながら、昨日の夜に聞きまわった結果をジョシーに伝えていた。

結局、この国に緊張感がないのは、実感がないからという一言に尽きた。

情報伝達が遅いということがここまで影響するとは思わなかった。

地球の紛争地帯では、すぐに避難民の大軍ができるんだけどな。

いや、違うか。

あっちも自国が巻き込まれない限り他国に移動しようなんてやつはそうそういない。

やはり対岸の火事という認識が近いんだろう。


『一般人ならともかく、裏家業の連中までそれだと程度が知れるね』

「そこは情報伝達の速度と制度の問題なんだろう。話を聞けば一応連合と魔族は拮抗しているって話は出ているからな。それが事実であれば慌てて移動する必要もなければ、殺気立つ必要もない。なにせ後方のこの国が危険にさらされるなんてのはないからな」

『……私たちが気にしすぎたって結論か』

「だな。俺たちも戦争に浸りすぎたってことだろう。どれだけ避難民が出てもそれでも地元に残っているやつは少なからずいるからな」


そう、凄惨な現代の戦場でも国を脱出せずにいつか平和が戻ると信じてじっと耐えている人々も確かにいる。

賢い選択とは思えないが、それだけ思いがあるという意味でもある。


「裏家業の連中だって同じだな。地球と違って基本的に一国で完結しているところが多いからな。そういう連中が連合の動きまで事細かに知っているわけもないだろう。噂程度には聞いているかもしれないが、それだけで今の拠点を捨てるのはきついしな」

『言われてみると確かにそうだな。ま、それだけ魔族って連中は足止めを食らっているんだろうな』

「だな。人数が足らないのか様子を見ているのかわからないけどな。何か作戦があるのかどうかも後方じゃなにも情報が集まらん」


結局、魔族と連合の戦争については、互角としか話がこない。

まあ、逃げてきている人々もいないからしっかり押さえられていると考えていいんだろうが、よくわからん。


『結局、ハブエクブ王国の出方次第って所か』

「国が動けばある程度話は早いだろうな。とはいえ、どうしても利益を狙うだろうからな」

『その分時間はかかるか』

「安売りされても俺たちが困るだけだからな。何より、ハブエクブの戦果にはならない。面白くはないだろうさ」

『普通、自国の戦力減らさず敵を減らせるなら喜ぶべきことだろうに』

「そこは勘違いだ。その常識が通用するのは現代の地球だ。こっちの常識は一番槍、戦果を挙げることが名を上げることでいいことだからな」

『あー、自分たちの力を示すってやつか?』

「そうそう。俺たちとしては死活問題なんだけどな」


こちらの中世レベルの軍事力の示し方は、現代地球と比べれば笑うしかないものだ。

基本が歩兵で戦うものだから仕方がないと言えばそうだが、見せるだけである程度対策は立てられてしまうから、それも問題なんだよなー。

とはいえ、歩兵の練度や装備はそう簡単に揃えられるものじゃないっていうのがこの世界の根底にあるものだからな。

地球で兵器の性能を知らしめるなんて自国の弱点をさらすのと同じことだ。

そんな馬鹿なことはしないし、一発一発だけでとんでもない金額が吹き飛ぶのだから、戦わなくて済むならそれに越したことはないし、被害が出ても補填をしなくてはいけないし国内の反発も押さえないといけない。

面倒極まりないわけだ。

一応同盟国として軍を派遣しただけに済ませたいというのが理想な形だろう。


それに比べてこの世界は情報統制がいきわたっているのか、それとも好戦的なのかはわからないが、大本営発表で国民は喜ぶんだから攻めるだけ支持を得られる。

……なんて単純な。

いや、軍部とか政治家連中も被害は少ない方がいいだろうが、国益というかメンツを重視するんだろうな。


『別に任されても問題ないだろう? 敵を吹き飛ばせばいいだけだ』

「簡単に言うけどな。下手をすると後ろから撃たれるんだよ」

『あー、そっか。連合とはいえ一時的か』

「人が協力して手を取り合うことはあるが、その後の展開も考えるモノだからな。勝ちが見えてきたらその後を考え始めて動くのは目に見えている。こっちは人数がどうしても少ないからな」

『殺すのは簡単だが、殺すのは問題ってことか』

「際限がなくなる可能性があるからな。味方していた連合が最悪敵に回る可能性もある。そんなことになればわざわざこのハブエクブ王国に交渉に来た意味がない」


魔族を倒して終わりじゃなくなる。

まあ、戦争の連鎖っていうのはそういうもんだけどな。

敵が倒れれば、次は内部に仮想敵を求める。

人っていうのはそういうもんだ。


『なあ、今思ったんだが、別に連合と足並みそろえる必要はないんじゃないか? 適当に私やダストが敵地に乗り込んで爆弾でも仕掛けて吹き飛ばせば終わりじゃないか? あとは勝手に連合が押し返してくれるだろう?』

「お前は最初の前提を崩すなよ。俺たちは元の世界に帰るため必要な情報を集めるために、この大陸に来たんだよ。その協力を得るためには、ある程度こちらの実力を知ってもらわないと面倒極まりない」


残念ながら、この世界の連中は俺たちの武装を見ても国力や実力を推し量ることができない。

だから戦果を見せつける必要がある。

まあ、魔族がいたってのはこっちにとっては好都合だったわけだ。

そこを利用しようというのだから、こちらの活躍の場は必要。


『そんなこと言ってたな。いや、面倒なことが必要だな』

「仕事は面倒なもんだ。だが、合法的に暴れる場所があるんだ。お前にとっては好都合だろう?」

『それはね。とはいえ、相手が鉄の棒を振り回すだけのアホだろう?』

「いやいや、化け物が相手なのを忘れたか? 三流映画に出てきそうな怪物がそろい踏み。こういう場合、好戦的なやつは真っ先に死ぬっていうのがお約束だな」

『はっ。誰が死ぬって。私ももう死んでいるのにさ』


……こいつこんなブラックジョークが言えたんだな。


「お前が戦線から離脱されると面倒だから、きっちり連携はしてもらう。単独行動なんざ最後の最後だ」

『ま、当然だね。私だって自殺がしたいわけじゃない。と、そういえばそっちはヒカリたちの話は聞いているか?』

「ん? そりゃ聞いているぞ」


ただいま結城君たちは冒険者ギルドで契約中だ。

これで冒険者ギルドの支援が受けられることになる。

いや、国よりも先にギルドと協力体制になれたのは喜ぶべきことだな。


『連絡役のお嬢ちゃんたちとやり合うようだよ。気にならないのかい?』

「あまり気にならないな」


只今結城君たちはヨフィアの提案で、連絡員としてこちらに出向させらたシシルとギネルという女性職員の実力を見ることになっている。

露骨な美人なんで男連中には注意が必要だとはおもうが、別に情報を聞かれたところでこいつらには対応不可能。

暗殺ぐらいだが、結城君たちしか被害がいかないしな。

本人たちにはいい勉強ってところだろう。


『冷たいねー。教え子なんだろう?』

「教えたっていっても即興だしな。経験が不足しているし、負けるにしても得るモノはあるだろうさ」

『ははっ。負けるって? ヒカリたちが? ヨフィアもいるんだよ? 何か制限でもしているのかい?』

「いや、特にそういうのはしていない。何より今回は舐められることはするなって言ってあるからな」


今回このハブエクブ王国に来るにあたって、ルーメルとして堂々としろって言ってある。

喧嘩を売られたら全力で迎撃しろってな。

強さを見せた方が相手の物分かりもいいというのは、シャノウで嫌というほど知った。

暴力が正義とまでは言わないが、頼りになるものを見せるには暴力が一番わかりやすいからな。

それは、ジョシーもわかったようで。


『ああ、そういうことか。だから気にならないのか』

「というか、そっちはドローンで状況を確認しているんじゃないのか?」


俺は音声だけだが、ドローンはちゃんと張り付けているので見ようと思えば見れるはずだ。

それをジョシーがしないわけがない。

偵察活動は大事だからな。


『もちろんしているさ。っと、残念。ヒカリが一撃でシシルってやつを吹き飛ばして、ナデシコがギネルってやつを地面にたたきつけて終わりだな』


もう終わったのか。

もうちょっと苦戦とかしてほしかったんだが……。


「一撃とは聞いたが、接戦の上での一撃が決まった……」

『わけないね。開始の合図と同時に吹き飛んでいったよ。いやー、勇者ってすごいね。人じゃねえ。でも、私たちに勝てないとかおかしくないか?』

「戦闘勘がないからな。どこからくるとかならどうにでもなるだろう?」

『いやー、反応できるのにも限界はあるけどねぇ。でも、意外と反応できるからゾンビとしてレベルが上がっているのかね?』

「……それは否定できないから、爺さんと相談だな」

『いやー、それはそれでいいね。私もアメコミヒーローの仲間入りってことだろう?』

「お前がヒーローとか世も末だよ」

『何言ってるんだい。悪役ヒーローなんて世の中ごまんといるさ』


……いるのはわかるが、政府が悪役をヒーローと断固認めない気持ちは嫌というほどわかってしまった。



自分たちが被害にあうまで実感がわかないというのはどこも一緒なのかもしれません。

……正直時期が時期なので不快かと思うなど感想が来た場合はこの話は封印になるかもしれません。

ご了承ください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 時期が時期とはいえ仕方ないんじゃないかなー。それいっちゃうと地震や津波もどうなの問題も。 特に気にしなくても、と言いつつ気になっちゃうでしょうし。
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