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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


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第345射:冒険者ギルドの反応

冒険者ギルドの反応



Side:アキラ・ユウキ



『何か冒険者ギルドで面白い情報はでたか?』

「いえ、昨日の演習を一緒に見ていたそうなので、これからですね」

『ああ、そういえばそんな話をしてたな。なるほど、これからそっちも楽しいことになるか』

「楽しいことって……」


田中さんが笑っている姿が想像できる。


「ねえ、それはいいとしてユーリアたちはどうなの? ドローンからは特に動きはないようだけど?」

『ん? まだお姫さんたちは動きは無いな。あっちも昨日の件での会議が続くだろうな。今日の内に動き出すかは微妙だ』

「え? なんで昨日話し合ったんじゃないの?」

『国の決め事だからな。半日で決定できるものでもないな。その間に詳しい情報収集をしておこう。下手をすればお姫さんたちを抑えにかかったり、最前線に送り込まれるようなことになりかねないからな』

「……わかりましたわ。何かあれば連絡をお願いいたします」

『ああ、そっちは任せとけ』


そんな感じで朝の連絡は終わり俺たちは早速冒険者ギルドに向かうことにする。


「そういえば、ギルドでの対応ってどうするの? 何か脅しでもかける?」

「そうだなー。別に普通で良いと思うぞ。敵に回るかもしれないとか思われると攻撃してくるかもしれないし」

「ですわね。無用に刺激するようなことは控えた方がいいでしょう」

「それがいいですねー。まずは相手の出方を見ましょう。どちらにしろ昨日の結果で私たちと敵対するのは死を意味するっていうのは分かったでしょうし。そこら辺を踏まえてどうするか楽しみですね」


ヨフィアさんは楽しそうに笑っている。

あれだな。こっちが圧倒的に有利だからか。

まあ、あれを見たあとでこちらに敵意を見せるのは馬鹿だというのは分かる。

でも、怖いからこそなんとかしようとするのは防衛本能みたいなものだしな。

油断は本当にしないように注意しよう。

そんな話をしているうちに俺たちは冒険者ギルドに到着する。

早朝だからか、仕事を取りに来た冒険者たちであふれている。


「……特に変わりは無いね」

「昨日のこと知らないのか?」

「いえ、知っていても冒険者たちにとってはあまり関係のないことなのでは?」

「ナデシコ様の言う通りですね。軍の動きなんて知っても何もできないですから。ああ、戦争に巻き込まれないようにするぐらいは行動をするでしょうけど」


確かに、ヨフィアさんの言う通り冒険者が昨日の演習を知ったところで何かできることはない。

精々自分と周囲の安全を守るために行動するだけだしな。


「だけど、今の状況を見るにやっぱり戦争の気配ってここにはないよね」

「そうだな。戦争が近いともっとピリピリしてるもんな。でもここって元々後方の国だろ?」

「そのはずです。後方の国が前線になるのは正直問題かと」

「ですねー。とはいえ、噂の一つもまだ聞けてないのが不思議ですけど。タナカ様もそこは不思議に思っていたようですし」


そういえば、そんなこと言ってたな。

思った以上に魔族との戦争についての情報が少ないって。

だからこそ、このハウエクブ王国の動きが鈍いって理由にもなるんだけどな。

ま、それも含めて今日冒険者ギルドの方から情報を聞ければいいんだけど。


「とりあえず、受付行く? あれで?」


光が指さす先には、行列ができている受付が見える。

屈強の冒険者たちが依頼の紙をもって苛立っているのが分かる。

仕事って基本奪い合いだからな。

あの握っている依頼書を早く受付して仕事に行きたいっていうのがひしひしと伝わってくる。

そうしないと、明日の飯も食べられないからな。

あの中に俺たち見てくれが若くてメイド連れが紛れ込むと怒りを買うのは目に見えている。

田中さんでもいればあの強面の冒険者たちも素直に引くんだけどな。

いつかそういう貫禄がつけば……いいのか? いや、駄目な気がするな。

って、そこはいいとして、何か返事をしないとな。


「あそこに並ぶとトラブルになりそうだよな……」

「そう、ですわね。もう少し時間を空けますか?」

「それがいいかもしれないですね。私たちも少し急ぎすぎた感じですし」


全員の意見が一致したので、いったん出直そうかと思っていると……。


「あ、ヒカリ様!」

「あ、受付のお姉さん」


そんな声をかけられて振り返ると、そこには受付のカウンターの端から対応してくれたお姉さんが顔を出していた。

どうやら、裏方に回っているようで受付の仕事は滞っている様子はない。

冒険者たちはこちらに視線を向けてくるも、仕事には関係ないので口を出してくるものはいない。

いや、話しかけているのが光だからか。

これが男の俺だったら恨みの視線とかむけられそうだな。

……今後はこういう女性相手の相手は女性である光か撫子に頼むのがトラブルが少なくていいかもな。


「ギルド長から、来訪された際には案内するようにと言われております。こちらにどうぞ」


どうやら、ギルド長は俺たちが来ることを予想して案内を頼んでいたようだ。

まあ、昨日の演習を見れば当然か。

俺たちがあの人たちと関係者だとシャノウさんから伝えられているんだから下手なことはできない。

なるべくご機嫌を取ろうとするはずだよな。

そしてギルド長の執務室に到着すると、そこには当たり前のように書類が積まれた机にルクエルギルド長が座っていた。


「おお、いらっしゃい。朝早いんだね」

「どうもー。そりゃ、返事を聞きたいからね」


光は普通に返事を返す。

まあ、別に喧嘩をしに来たわけじゃないしこれぐらいでいいんだろう。


「あったかいお茶を用意している。まずは座ってくれ」


そう促されて俺たちはソファーに座る。

昨日と同じように、お姉さんがお茶を煎れ始める。


「さて、昨日の話の前に、資料室でなにか気になる情報はあったかい?」

「まだ初日だしそこまでかな? まあ大事な資料は仕舞ってるんでしょ?」

「そりゃ、大事な資料はそれだけで価値があるからな」

「あとでその大事な資料見せてくれたりしない?」

「それは難しいな」


光の無理な提案を苦笑いしながら返すが……。


「まあ、これからの話次第かな? 君たちに実力行使をされれば私たちではどうしようもないからな」


そう言って肩を竦めるルクエルギルド長。

なるほど、ギルド長たちはアレを見て戦うだけ無理だと理解しているようだ。

でもそれならその言い方は変な気がする。

全面的に協力するってことの方がいいはずだけど。

と、思っていると……。


「なるほど。力づくになれば、そちらの情報は渡さないということでよろしいでしょうか?」


ヨフィアさんがいつも以上に笑顔でそう言った。


「そうだ。私たちにとって君たちと交渉できるものは情報ぐらいしかない。武器も防具も、そしてお金も、君たちにとっては後でどうにでもなるものだろうからね」


なるほど、そういうことか。

確かに俺たちにとって武器も防具も、現代兵器の前には伝説の剣だろうがおもちゃも同然だしな。

ああ、どこかの宝石みたいに変な効果があるから気を付けたいけど、それでも現代兵器のほうがよほど強力だ。

そしてそれを使えばお金なんて言うのは簡単に手に入るだろう。

まあ、俺たちはそんなことしないけど。

だけど、それはこのルクエルさんにはわからない。

だから安全保障のために唯一取引できる情報を使って俺たちと交渉しているわけか。


「よくお分かりで。いえ、あれを目の前にしてそれが分からなければ協力する価値もないでしょう。いいでしょう。我が主たちとの交渉を認めましょう」

「お眼鏡に叶って光栄だ。では、お茶を飲みながらゆっくり話をするとしよう」


お姉さんは俺たちの話を聞いても特に驚きもせずにお茶を俺たちに配ってくれる。

飲んでみると、どうやら緑茶のようだ。

こっちの世界のもあるんだなー。


「美味しい。この苦味がいいよねー」

「ええ。懐かしいです」

「気に入っていただけて何よりだ。それで、情報のやり取りを始める前に契約書を書いてもらっていいだろうか?」

「契約書ですか?」

「ああ。情報を聞いたあとで私たちを始末する。というのはありえない話ではない。そしてそれを止める手立てもないのだが、せめて安心のために契約書を書いてもらえればと思っている。どうだろうか?」


なるほど。

こっちが反古にしてルクエルさんたちを害すれば、その情報が周囲に回ってほかの冒険者ギルドが敵になるってわけか。

まあ、そんなことをすればだけど。

俺たちは顔を見合わせて頷く。

特に断る理由もない。

というか、冒険者ギルドから情報が回るっておそらく連合の方にいられなくなる。

その場合俺たちは魔族側か第三の勢力としてやらないといけない。

そういうのは田中さんだって勘弁だろうし……。


「別にいいよ。内容はどうするの?」

「そうだね。君たちの気持ち一つというのは分かるが、明確に記載はしておいた方がいいだろう。まずはどういう契約内容かだが、こちらを害さないし、こちらもそちらを害さない。これは物理的なことや精神的なものも含まれる。精神的なことに関しては何が問題かわかり辛いので、お互い伝えて注意をするということを必ずしてお互いに誓約書を取り合う。それをそうだな3度行えば契約破棄と取られても仕方がないとしよう」

「確かに精神的なことは分かり辛いですし、寛容にしなければすぐに契約破棄になりそうですわね。ですが、何もしらない冒険者がちょっかいを出してくることも含まれるとそちらにとって不利であり、関係ないとすれば有利となりますがそちらはどうお考えでしょうか?」


撫子も鋭くなったよな。

この契約書が冒険者ギルド全体なのか、ただルクエルさん一人だけになるのかで意味合いも変わってくる。

冒険者を秘密裏に動かせば責任は取らなくていいって意味にとられるしな。


「契約の範囲に関しては基本的に私個人だ。なにせ契約内容を知らないただの冒険者に守れというのも無理な話だ。だが、君たちの懸念もわかるが前提としてパワーバランスがそちらに傾いている。冒険者たちを使ってちょっかいをだすようなことはしないさ。下手をすればこっちが終わるんだ。そういう意味で信じてほしい。言い聞かせもする」


あー、そうか。

元々力関係はこっちの方が上なんだから、ちょっかいを出して怒らせるようなことは極力しないか。


「ふむ。とりあえず一度内容を書き出してくれませんか? そちらを持ち帰って検討したいと思います」

「そうだな。ここで話し合うよりまずはこちらの希望を書いて、そちらの希望とすり合わせるのがいいだろう」


ヨフィアさんの提案で冒険者ギルドとの契約内容を持ち帰ることになったが、もちろんこれを検討するのは、田中さんやユーリアだったりする。



先週はお休みして申し訳ない。

どうぞお楽しみください。

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