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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


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第325射:神頼みも直感も予知も同じもの

神頼みも直感も予知も同じもの



Side:ナデシコ・ヤマト



「ここのボタンを押すと……」

「ふんふん。なるほどな。しかし、この液晶モニターがリモコンになるとか便利になったなー」


そんな話を光さんとしながらドローンの動かし方を学んでいるのはジョシー。

私たちを撃って死んだ相手です。

今はアンデッド、ゾンビとして私たちに協力をしてくれていますが……。


なんであんなに普通に話せるのか、理由は聞かせてもらいましたが、私はまだ心の整理がつきません。

光さんはもともと撃たれていないのでそういう感情は少ないようですが、どうしても私はという感じです。


と、いけない。

彼女は今の所私たちに敵対するような行動や言動は取っていません。

仕事だったからという、昔の私だと受け入れられないことを言っていましたが、私も勇者として冒険者として命を奪ってきたのですからその言葉にある程度の理解もあります。

何より、彼女の力が今の私たちに必要なのは明白。

ユーリアの見た魔族の襲撃を防ぐために絶対に必要なことです。

そう思って私は改めてシャノウの港周辺のドローンモニターを確認します。

今の所、何も問題のない穏やかな海です。

漁に出ている船もとくに魔物に襲われることもなく、仕事にいそしんでいる。


「特に問題はないだべな」

「ゴードルさん、はい。今の所穏やかです」


私が監視しているとゴードルさんが不意に話しかけてくる。


「そうだべなー。しかし、船に乗っていた時も見ただべだが海っていうのは広いだべなー」

「え? あ、はい。そうですね」


確かにモニターに映る一部には海だけを映しているモノがあり、海と空しかない世界が広がっている。

私も最初は感動していましたが、今はもう慣れたもので監視の方に力を入れています。

しかし、それはゴードルさんも同じはずですが……。


「何か気になることでも?」

「んだ。ユーリア姫の予知に関して少しまとめておきたいと思ったんだべ」

「纏めるですか?」

「ああ、敵が海からくる意味は分からないとタナカ殿はいっただべだが、ここにはもう一人いるだべだから、ちょっと聞いてみようと思っているだ」

「もう一人……。彼女ですか」

「んだ。でも、ナデシコはちょっと苦手そうだからなー」


なるほど、気を使ってくれているのでしょう。

嫌であれば同席する必要はないと。

とはいえ、そんな自分の好き嫌いで周りの人の命を左右するわけにはいきません。

私が一人でできることなんて限られています。


「いえ、ちゃんと話して対策を立てることが最優先です。私もその中でジョシーさんと和解できるかもしれないですから」

「そうか。ま、無理はしなように」

「はい。気遣いありがとうございます」


するとすぐにゴードルさんが一度話をしたいとみんなに声をかけ、そのまますぐに会議になりました。


「で、いったいどうしたんだいゴードル?」

「いや、もう一度ユーリア姫に話を聞いておいた方がいいと思って」

「私ですか?」

「ん? そのお姫さんが何か知ってるのかい? 私は何も聞いてなかったけどな」


そう言ってジョシーさんが首をかしげます。

そういえば、ジョシーさんはユーリアの予知に関しては何も知りません。

ただ、敵が来たら困るということでこの場を任されただけです。


「えーと、ねえゴードルのおっちゃん。田中さんに許可もらってないけどいいの?」

「実はちゃんと許可をもらっていただべだよ。タイミングは任せると。あとは、ユーリア姫とジョシーが信じるかどうかだべな」

「私は構いません。信じなければただの与太話でしかありませんから」

「信じるって言っても話を聞かない限りは何とも言えないね」

「カチュアさん、この話をするのはいいのでしょうか?」


私はユーリアの側付きメイドであるカチュアさんに確認を取ってみますが……。


「姫様がいいというなら構いません。結局のところ信じている人はあまりいませんので、ジョシー様にどういう理由で動いているのかを説明することは必要ですから、いい機会かと」

「ですねー。ま、そこのクソ女がやりたくない~っていうならそのまま放置で」

「あはは、ほんとお前はいい根性しているな。ダストが信用しているだけあるわ」

「うげっ、なんでそこで笑うんですかね?」

「好き嫌いがはっきりしているからさ。まあ、弱点もばれやすいから気を付けな。ヨフィアはわざとやっている節はあるが」

「ふん」


あー、確かにヨフィアさんはわざとそういう態度をとっている感じはしますね。

元々凄腕の冒険者だったようですし、相手を挑発して意識させることを狙っているのでしょう。

その分私たちに手を出しにくくなるとか、そういうのを狙って。


「それで、私に話しておきたい内容っていうのは?」

「はい。まずは簡単に私のスキルをお伝えします。スキルというのは御存じで?」

「あー、確かダストからは本人の技能がステータスってやつに表記されているんだろう? ほら、私のだ」


そう言ってジョシーさんはステータス画面をこちらに見せてきます。


「あ、ジョシーだめだよ。個人情報なんだからうかつに見せると、弱点バレるんだから」

「気にすんな。ヒカリ。見せることでできることもあるんだよ」

「どういうこと?」

「ほら、私はレベル1?で種族はゾンビってなってるだろう? つまりこの弱点を狙ってくる馬鹿がいるわけだ。それを逆手に取るわけさ」

「あえて、囮にするわけですか?」

「ナデシコの言う通りだ。あと、私はこのステータスっていうのは信用していない。私が身に着けている技能の10分の1も表示されていないしね」

「「「え!?」」」


その衝撃の事実に驚愕している私たちをみて逆に不思議そうにしているジョシーさんは……。


「ん? プログラミングとか習得言語とか小火器、重火器、乗り物とか全然載ってないんだぞ。そっちは載ってるのか?」

「あ、そういうのは確かに載ってないなー」

「でも、異世界言語とか日本語とかは……」

「ありますが、確かにジョシーさんの言われる通り、全部を網羅しているとはいいがたいですわね」


今更気がつきましたが、私は日本にいたころはそれなりの習い事をしていました。

その表記が一切ないのは不思議です。


「だろ? このステータスってシステムを作ったやつの怠慢か。それとも私たちのような異世界の人に対応していないのかはわからないけど、ガバガバだよな。ダストの奴も笑いながら信用できないっていってたよ。私も同感だね。ステータスはあくまでも参考程度にしておきな。で、そのスキルになにかあるんだね?」

「はい。私のスキルには予知というものがあるのです」

「ははぁーん?」


ユーリアの告白を聞いてものすごく胡散臭そうな顔になります。

気持ちは分からなくもありません。


「そういう反応も承知しております。ですが、今まで予知できたことはあることを置いてすべて現実になりました」

「それを証明する方法は?」

「一応私、カチュアが姫様の予知が現実になるのを見ております。こちらの勇者様たち3人を連れてくるというのも姫様が見たものです」

「はい。お恥ずかしながら国を助けるために勇者様が必要と感じ無理をして呼び出しました」

「……なるほど。というしかないね。私はその予知を見たことはないから判断はできない。でも、私がここに呼ばれている理由はその予知が関係しているってことでいいのかい?」

「はい」


流石、田中さんと一緒の職場にいたというだけあって、話の理解力が高いです。

普通信じないような話な気がしますが……。


「なんだい。意外そうな顔をしているね? 私が信じないと笑うとでも思ったかい?」

「うん。だって、ジョシーってそういうの信じなさそうだし」

「あはは。ヒカリ。そんなことを言ったら、私たち傭兵は全員直感で動けなくなるよ」

「ああー。そういうのと一緒って考えてるんだ」

「たまーに、そういうやつはいるからね。戦場に長くいるのに無傷とか、生きているとか、そういうジンクスはあるもんさ。懐に聖書や十字架入れてるやつとか普通にいるしね」

「え? それはそれで違うんじゃないですか?」

「神頼みも、予知も、直感も、私からすれば変わらないさ。多分ダストの奴もそうだろうさ。状況から考えて、バウシャイって港がやられたのに、シャノウが襲われないっていうのは楽観的だ。警戒する理由も納得できる。しかも相手は変な魔族ときたもんだ。こっちの想像なんて超えてくるのは当然だろう」


ジョシーさんの言う通りではあります。

バウシャイが襲われたのならシャノウが襲われても別に不思議ではありません。


「そこにユーリアお姫さんの予知も重なるなら、二重の意味で怪しいね」

「そういうことか。あ、でこれからその予知を詳しく聞くんだっけ?」

「んだ。予知の状況を改めて整理してみたいだ。ジョシーの言うように状況的にもシャノウを襲っても何も不思議はないだべ。いまはいつっていうのは分からないし、理由もわかっていないだべ。少しでも情報があればと思ってもう一度詳しく話を聞いておくべきだと思っただよ」

「なるほどねぇ。私もそれには賛成だよ。バウシャイのことも含めてというか、今までの経緯を改めて聞かせてもらえるかい。あとこの大陸の地図も見せてくれ」

「えーっと、それは田中さんに確認を……」


と、晃さんが答えに窮していると……。


『構わない。ジョシーの意見も聞きたいからな。ちゃんと話をまとめて俺に説明してくれると頭を使わずに済む』

「こっちはこっちでまとめておくから、ダストの方はさっさと魔族の破片でも見つけてくることだね。とりあえず、ダストとの話を聞く限り大陸戦争って感じだしね」

『間違いなく大陸戦争だな。まあ、規模はでかいが火力は足りないけどな』

「まあね。とはいえ、相手の数が多いと厄介だ。ちゃんと事前情報収集はしておくべきだね」


そう話を進めるジョシーさんは淡々とやるべきことを確認して行動に移しています。

私が目指すべきところの一つなのかもしれません。


「さ、シャノウのお偉いが私たちに接触するまでしっかり情報整理するよ」


こうして私たちは改めて情報の整理を始めるのでした。




結局の所信じられるかどうかって話になってきますからね。


それが神なのか、予知というスキルなのか、長年の勘なのか。

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