第318射:さてこれからどうするのか?
さてこれからどうするのか?
Side:タダノリ・タナカ
ビリビリ……。
遠方外周に待機しているドローンにすら爆発の衝撃が来ている音が聞こえてくる。
いやー、確実に仕留めるためにTNT換算で約50トンの爆薬を仕掛けた。
もちろん中心地に25トン。周囲に25トンを均等に配置。
別名地雷ともいう、クレイモアタイプだから爆風プラス中の鉄球が襲い掛かっていることだろう。
あ、ちゃんと魔族が真ん中に来たところでボタンをおした。
随分ゆくっりした進攻だったんで通り過ぎる心配もなかった。
「「「……」」」
ちなみに、モニター越しで監視をしていた結城君たちや魔王に聖女たちも全員が絶句している。
まあ、こんな大規模な爆発は早々みられないだろうからな。
戦略級とまではいわないが、一帯を丸ごと吹き飛ばすには十分だ。
いやー、正直に言ってあれだけ火薬を仕掛けたのは久々だから。
気分爽快といったらみんな気を悪くするだろうな。
とはいえ、あれで魔族もゾンビ共も粉みじんで、グロい状態にはならないだろう。
いや、ミンチを見て吐くか?
まあ、そこは慣れていくしかない。
現代兵器による人体破壊は思いもよらない状態になるからなー。
今回に限ってはミンチを通り越して、土と混ざってよくわからない状態になると思うがな。
と、そういう感想はいいとして、ちゃんとトドメも撒いていかないといけない。
俺はドローンを複数上空へと移動して、次はナパームを投下していく。
もちろん周囲を囲んでからというのを忘れてはいない。
そして煙から次はごうごうと炎が上がる。
燃料となる特殊可燃物がなくなるまで超高温で燃やし続ける。
残るのは焼け焦げた炭ぐらいのもんだ。
「た、田中さん!?」
この追撃は意外だったのか、大和君が驚いて声をかけてくる。
「このまま放置はよろしくないからな。正に煙に巻かれて逃げられたら目も当てられないからしっかり焼却処分をする。死体を大量放置とか疫病の原因だしな」
「あー、うん。確かにそうだよね」
「まあ、そうだよな。確かユーリアもそんなこと言ってたよな。死体は放置しているとゾンビになるから焼却するって」
「はい。そう申しました。ですが、ここまで簡単にできるとは思いませんでしたわ。マノジルはどう思うかしら?」
「私も姫様と同意ですな。遠方にいてここまで火力を発揮してなお、敵を処分するほどの追撃をできる武器があるなど驚きですな」
俺からすれば、遠距離で攻撃ができた時点で追撃もあって当然だと思うんだが。
ここら辺は常識の違いって所か。
「しかし、タナカ殿。これだと敵が生き残る可能性は少なすぎるだべ」
「そこは仕方がない。もとから生き残ればって予定だからな。手加減している暇もない。後方を突かれる可能性もあるからな」
「あー、そういえばそういうあったけど、そっちはどうなんだい?」
「後方の方は静かなものだな。結局今の所騒ぎもない。お姫さんの予知は今の所って具合だな」
「別に当たらないのならそれに越したことはありません」
お姫さんの方は別に予知が外れようと気にはしてないようだな。
まあこだわっているのはこだわっているので問題だからこれでいいか。
「あのー、これで魔族とゾンビたちを退治したとは思うんですが、撃破を確認した後どう交渉を行っていくつもりなのでしょうか?」
「そうですね。そこはうかがっておきたいです。私たちの口添えは必要でしょうか?」
そう言ってくるのは聖女さんと女王さんだ。
確かに今後の対応を考えないといけないよな。
「とりあえず、ギナスの方には連絡が行くし、冒険者ギルドのシャノンだったか? そっちには連絡が行くからこちらが依頼したことは分かっているはずだ。問題は領主の方だが、そっちは偵察隊が全滅しているからな」
仲良く森で大多数と、森の外周に待機していた連中は魔族の強襲を受けて全滅。
連絡するメンバーがいないから領主の方へは連絡が届かないのがネックではあるが……。
「そちらは冒険者ギルド、スラムの方からのメンバーから連絡がいくからいいでしょう。問題は私たちがどうやって片付けたかですわね。正直に力のことを話すつもりはないのでしょう?」
「それは当然。まあ、結城君たちが出張って大規模な魔術をつかったことにすればいい」
いやー、勇者ってこういうときは便利だ。
全て勇者のおかげっていえば問題なくまとまるからな。
「あとは、元々ゼランの方が他国からの使者って話は通しているんだろう?」
「まあね。今の所、話を聞くだけですぐに返答はしないけどね。普通に聞けば与太話だからね。今の情勢を考えると見知らぬ他国の使者との話の前に……」
「普通は防衛を固めますわね。与太話に時間を割く可能性は低いですわね」
「しかし、一応ゼラン殿は私たちの立場を伝えてはいるのでしょう?」
「それでも一国の女王や聖女、王女がそろい踏みで一領主が対応していいのかって問題もある。敵か味方かもわからない。何も領主はしないで上にお伺いを立てる方がベターではあるな」
よくある、しばらくお待ちくださいってことだ。
対応にしてもゼランを通してしかしてないしな。
これでお姫さんや女王さん、聖女さんがここの領主と顔を合わせていれば話は違っているだろうが、接触すら避けているからな。
呼び出されない限りはノータッチがいいだろうな。
「下手にこちらから接触を求めると足元を見られる可能性がありますからね」
「……面倒ですね。でも国というのはそういう物ですか。私たちが使えるかもどうかもわからないのに時間をかけるのは無駄ですからね。まあ、後方を脅かされる可能性も考慮しないといけないのですから、そこまで待たされるとも思えませんが」
「女王さんと聖女さんの言う通りだ。すでに領主の方はゼランの話を受けてお国のトップとかに伺いを立てているころだろう。そして魔族の襲撃を防いだ実績も加われば普通に話はできるな。その時は口添えをお願いしよう。一旅人と一国どころか複数国家の重要人物となるとレベル自体が違うからな」
「あー、それで僕たちが無理やり戦力にされるのを防ぐってこと?」
「それもある」
俺たちだけではどうしても、偶然ゼランの仲間になってその1としか見受けられないからな。
だが、ここでルーメルのユーリア姫さん、ラスト王国元魔王のリリアーナ女王さん、そして連合軍をまとめ上げたエルジュ聖女が交渉役として出れば、自由戦力として組み込まれることはないだろう。
何せ、下手な対応を取れば俺たちどころかロガリ大陸を敵に回すことになる。
逆を言えばうまく付き合えば魔族を倒すための力を得られるわけだ。
まあ、そこはロガリ大陸に話して戦力抽出とかを決めてもらわないといけないが、別大陸という新たなる市場ができるわけだからノーといえば馬鹿の極み決定だからありえない。
問題は敵の魔族という化け物たちがどれだけ強いかってことだな。
枯れない相手に喧嘩を売るなんてのは誰もしたくない。
その実力を測るための先兵でもあるのが俺たちであるわけだが。
とはいえ、俺たちだって帰る方法を探すためにこっちの大陸に来ているのが本当の目的だしな。
世の中持ちつ持たれつだ。
勝手に動くと潰されるので建前は必要なわけだ。
「しかし、結局のところ私たちはこのシャノウを離れることになるのですよね? そうなるとユーリアが言った予知が現実を増しませんか?」
「どうだろうな。お姫さんが見たのはただ港の方から強襲されたって話だけだ。俺がこれから敵の残骸を確認に行くからその間にっていうのも考えられる」
「え? それってまずくない?」
「だよな。ユーリアが予知した状況が出来上がっている気がするんですけど? 何か対策あるんですか?」
「そこはなー。あるにはある。だが面倒でもある」
そう、今回の問題において対策がないこともない。
なので、とりあえず案を全部書き出してみることにする。
第一案:魔族の残骸回収を別の誰かに任せる
第二案:魔族を倒せそうな戦力をルーメルから引っ張ってくる
第三案:フリーゲートの艦砲射撃を準備してキルゾーンに誘い込んでぶっ潰す。シャノウの被害は考えない
第四案:第一案、第二案、第三案を混ぜる方向
とまあざっと考えてみたのだが……。
「「「第三案はなしで」」」
速攻で艦砲射撃による殲滅作戦を拒否されてしまった。
当然ではある。キルゾーンを指定して艦砲射撃やドローンで攻撃をしたとしても確実に仕留められるわけでもない。
むしろ障害物が多い港では仕留められない可能性の方が多い。
ついでに、港は完全にぶっ壊すことになるので、その後の領主やこの国の連中の評価は下がるだろう。
「そうなると第一案が一番可能性が高そうですけど、それって私たちですか?」
そういうのはヨフィアだ。
まあ、こういう確認をさせるなら実戦経験が多いヨフィアだろうな。
とはいえ……。
「魔族が生きていた時に対処できるか?」
「何を言ってるんですか。無理に決まってるじゃないですか」
「だべな。ヨフィアは弱くはないだども、おらでもきつい相手だべ。対処は難しいだべよ」
「だろうねー」
相手が死にかけっていう可能性を考慮しないのは評価できるな。
とはいえ、やっぱりこの状況だと対処できるメンバーが向かうのが当たり前だというのは共通の認識だな。
こうなると、あと残されるのは……。
「田中さんそうなると第二案となると魔族を倒せるので確認作業もできるのでは?」
「そうなるな」
「ですが、そんな人がルーメルにいるのでしょうか?」
そう、ルーメルに魔族を倒せるような人材がいるのかという話になる。
「正直言うと今はいない。だが、今回の件で補充方法を思いついた」
あいつから戦力の供給を受けるのもありだが、あれを受け入れると滅茶苦茶になるのは目に見えているし、こちらの手持ちを使うに限る。
何せ、これからゲートの方も大量に回してもらうことになるしな。
戦力供給はあくまでもルーメルや連合軍からってことにしないとウィードとしても色々問題だろう。
と、そこはいいとして俺の言葉はみんなわかってないようで、ルーメルのメンツ以外首をかしげている。
「補充方法を思いついたってどういうことだい?」
「そのままさ、相手のやり方を真似させてもらう」
「まさかっ!?」
聖女さんが真っ先に俺の言葉気がついたようだ。
あれか、人を癒すすべを知っているからこそ、真っ先に思いついたってことかな?
「その通り。あいつは実績があるし、ゾンビとして使ってもこっちとしては心も痛まないしありがたい限りだ」
「え、それって……」
俺の言葉が理解できたのか大和君の顔も険しくなってくる。
仕方のないことだ。何せ撃たれたんだからな。
「その通り。俺と同じぐらいで戦力として数えていいとなると、ジョシーしかいない。まあいうことを聞くかどうかは分からないがな」
分の悪い賭けのようにも聞こえるが、今後シャノウの被害を最小限に抑えたいのなら使える戦力は使わないと意味がない。
何より、ジョシーがこちらに加わった場合はこちらにとっては美味しい限りだからな。
性格に難はあるが契約に持ち込めば何も問題はない。
反対したいだろうが、現実は時間がない。
既にユーリアとマノジルにジョシーの遺体は凍結処理してあるのは聞いているし、使用許可も取ってもらっている。
好き嫌いというわがままを通して被害を拡大するか、可能性を一度試してみるか。
勇者様たちはどうするんだろうな。
敵が使うモノを自分たちが使って何が悪い。
鹵獲兵器は調べて利用するのが常だし。
使える物は何でも使うのが正しい戦争とはいえないけど、プライドとかじゃか駄目な時もある。




