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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


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第315射:現実的な手段を選ぶこと

現実的な手段を選ぶこと



Side:アキラ・ユウキ



「……ということで、今俺たちは魔族を止めるために動いているんだ」

「そういうことでしたか」

「その映像見せてもらっても?」

「あ、はい。いいですよ。でも意外と……」


こんな感じで俺は今エルジュとリリアーナ女王に対して今までのいきさつを説明している。

この2人は聖女様に女王様なだけあって理解力はかなりある。

俺の下手な説明をちゃんと理解してくれている。

とはいえ、グロい映像に耐性があるとは思えないので、映像を見せるのをためらっていると……。


「あはは、お気遣いありがとうござます。でも、私は平気ですよ。これでも聖女ですからケガ人の治療とかでひどい姿はこれでも見慣れているんです」

「私も、あの戦争で色々みてきましたので。そこはお気になさらず」


あちゃー、2人に気を使われた。

とはいっても、医者だからといって女王だからといって人が食べられているシーンが大丈夫なわけない。

さて、どうやって回避したものか……。


「本人たちが見たいって言ってるんだ。別に遠慮することはない」


田中さんがそう言ってきて、映像を点けてしまいます。

そして、前面のモニターには生きたまま人が食べられているシーンが繰り広げられている。

懇願するのを無視して遊び半分でやっているのが分かる。

最初は人が無残に殺されていくのを見て吐き気ばかりだったけど、今はこの行為を面白半分にやっている魔族に対して怒りが沸き上がっている。

それは光や撫子も同じなようで、険しい表情でモニターを見つめている。

人ってなれるもんなんだなーっていうのがよくわかる。

そして、その映像を見てリリアーナ女王とエルジュは……。


「……これがこの大陸の敵ですか。いささか不思議ですね。いえ、やっていること自体は無法というか戦勝した軍の在り方には似ているのですが」

「リリアーナ様。たとえ軍でも人を食べたりはしません。……まあ、遊びで殺すことはするでしょうけど。ですが、とりあえずこの軍の規律は最低レベルです。お姉さまがいれば即刻首を切り落とされるでしょう」


普通に敵の行動を考察している。

というか、やっぱりこの世界だと勝った軍は何をやっても許されるって感じのようだ。

そもそもそれが従軍してくれた兵士の報酬になるのだそうだ。

そういうのは地球でもよくあったそうで、日本の有名な戦国時代でも当たり前だった。

それを統制して管理したのが織田信長だったっていう話。

つまり、有名な武田信玄とか有名な武将も村や町を破壊して人を狩ってとかしていたわけだ。

現実って非情だよなー。

と、そこはいいとして、魔族の話だ。


「なるほど。女王さんに聖女さんが見てもやっぱりこの連中は不可解か」

「はい。この状況を見るとバウシャイを襲った意味がよく分かりません。喧伝するわけでもなく、こうして自分たちで捕虜を使いつぶしているんですから。捕虜というのは戦利品です。そしてタナカ殿の話を聞けば彼らは材料にもなる。それを無駄にするのは普通にありえないでしょう」

「私も同じ意見です。軍を動かすのは明確な目的がありますが、この軍にはどうもそういうのが見られません」


リリアーナ女王やエルジュから見てもこの魔族が率いるゾンビ軍団は意味が分からないみたいだ。

まあ、確かに連合軍の後ろを突いたにしては誰がやったかわからないし、ゾンビを集めて戦力を強化しようというなら、わざわざ後ろに来る必要性があるのかというのもある。

まあ、油断している町を襲った方が綺麗な死体が手に入るっていうのはわかるけど、輸送に時間が掛かるよな。

こんな風に山を越えていかないといけないんだから、効率的には思えない。

それは、光もそう思っていたようで……。


「だよねー。今更だけど、なんで陸路なんだろう? 輸送するなら船にでも乗った方が安全だよね?」

「確かに光さんの言う通りですわね。リリアーナ女王やエルジュの言うように軍の行動としても陸路で鹵獲したモノを運ぶなんて非効率すぎますわ。タナカさんはどう思いますか?」


撫子がそう聞くと全員の視線が田中さんに集まる。

みんなこと戦いに関しての意見は田中さん以上に参考になることはないと思っている。


「そうだな。理由なんて色々つけられるが、俺としても不自然に思えるな。船を使えばっていうルクセン君の話はとても合理的だ。確かに海には魔物がいて寄り付きづらいというはあるかもしれないが、別に大海原へと繰り出すわけでもないからな。横に陸地を見ながら船で近場の港まで移動するっていうのもありだからな」


確かに田中さんの言う通り、大海原に乗り出すなら危険かもしれないけど、輸送とかで陸地を見つつ移動するなら何も問題はないはずだ。


「まあ、船が操作できないとかいうならありそうだが、じゃあ、なんで少数で後方であるバウシャイを取りに行ったのかっていう疑問も残る」

「それに、町の人をゾンビ化して引き連れていることもです。輸送手段が使えなくなった時点で、作戦は失敗と考えるべきでしょう。また、ほかの船を待つならその町を占拠していればいいのです。動いてわざわざ最前線がある場所へ移動するというのは……」

「意味が分からないね」

「だな。とりあえず俺は最前線の後ろを脅かすために動いていると判断したが、それなら山を越えるんじゃなくて手あたり次第村や町を襲った方がいい。が、こうやって敵が存在している以上何かしらの理由がある。理由を考えるのは相手を倒したあとで残っていたら本人たちから聞けばいい」


田中さんはバッサリと考察は、敵を倒した後ですればいいと言い切る。

まあ、確かにそうなんだけどね。

いまここで俺たちがいくら考えてもそれが正しいか確かめる手段はない。


「案外、理由がないとかもあるかもな」

「え? それは流石に、軍を動かすんですよ?」

「別に最初は軍を動かしていたわけじゃない。バウシャイを襲ったのは少数の魔族だ。その魔族がバウシャイを落としてゾンビを作ったから軍になったが、最初はただの少人数の一チームだからな。何かの実験ついでがうまくいったって感じなんだろうな。元々少人数で敵地奥深くっていうのは、後方かく乱が関の山だ」


確かに言われてみるとそうだ。

魔族は確かに強いとはいえ、10名前後程度じゃ軍隊を相手にできるとは思えないし、運よく戦力を集められても、すぐに鎮圧されるとおもう。


「偶然うまくいったらとりあえず連れて戻っているってこと?」

「その可能性もあるってことだ。だから、敵さんは進軍ルートがおかしいし、手に入れた成果にかんして特に執着もない。女王さんが言っていた目的がはっきりしないっていうのはそういう所かもな」

「なるほど。そういわれると納得できます。すでに目的は達していて今はおまけみたいなものですか。しかし、その後がお粗末ですね。目的を達成した時点で戻るだけでしょう」

「女王さん。あくまでも今の話は予想だ。ほかに何か企んでいる可能性もある。だからつり出して殲滅するってわけだ。野放しするのはちょっと微妙だからな」


田中さんの言う通り、あの数のゾンビとそれを率いる魔族を放置するのはよくない。

だからこそ、シャノウから偵察を出してもらって、引き釣り出すよう動いている。


「話はわかりました。タナカさんの言うように、このモニターに映っている軍をここで殲滅するのはいいことだと思いますが、このシャノウの戦力でできるのですか? 私たちの船を接舷して兵士を降ろすんですか?」

「いや、そういうことはしない。聖女さんや女王さんには説明してなかったが、キルゾーンを設定してそこで確実に叩く予定だ」

「「きるぞーん?」」


2人とも首をかしげている。

キルゾーンなんて言い方は分からないよな。

ということで、俺が代わりに説明をする。


「ドローンを使って一定地域に踏み込んだところを一斉に狙うわけですね」

「はー。ドローンを使うとそういうこともできるんですねー。ああ、なんかお兄様が好きそうな作戦ですね……」

「こっちの戦力を減らすこともなく、お姫さんの予知にも対策した今の所できる最大限のことだな」

「予知ですか。タナカさんたちがいないときに海から……」

「とはいえ、このタイミングで来るかはわかっていないんですが」

「いきなり奇襲を受けるよりはましだよユーリアナイス」

「そうですわね。心構えをしておくだけでもいいことですわ」

「でも、敵が来るルートがわからないんだよなー」


俺がそういうと、田中さんはこちらを見て苦笑いをする。


「正直にいうと、魔族が単独あるいは、少数で侵入してくるなら止めようがない。あいつらの身体能力が高いのは知っているだろう? 海側に回り込んでぴょんと壁を乗り越えてくることだってあるからな」

「そういわれるとそうだよねー。じゃ、衛兵さんに見回り強化してもらう?」

「光さん、衛兵さんが見つけたとしても無駄死にするだけでは?」

「そもそも、なんて理由で見回り強化してもらうんだ?」

「あー。予知しましたなんて言っても駄目だよね」

「下手をすると敵をつながっていると思われますから、やめた方がいいです。私の立場でもなかなか信じてもらえないのですから、私のことを知らないこの町で言えば混乱を助長するだけです」


ユーリアからそういわれると何も言えないよな。

というか、予知で見たとか頭を疑われるだけだ。


「そこは発想の転換だな。この際、シャノウ内部に敵が入るのは許容して、要所を守ることに徹した方がいい。魔族の力を考えると対抗できるのは俺たちだけと考えていいだろう。俺たちが全部が全部守れるわけもないから、守る場所を決めておいてそこを守る」

「確かにそれが現実的だね。魔族の連中は並の人たちじゃ止められないのはノルマンディーの時にわかっているから、攻められたら困るところを重点的に守るっていうのは賛成かな」


と、ノールタル姉さんがいう。

俺も同じかな。

非情かと思うけど、この場合要所を落とされた場合の方が被害が広がるのは目に見えている。

だから、そこを守るのは当たり前か。


「というか、田中さん。それ分かってたなら先に言ってよ」

「ですわね」

「ははっ。聞けばなんでも答えが返ってくると思うなってやつだな。まずは自分で考えることが大事だ。自分にできることと、できないことをはっきり分けることを覚えるんだな」


そっか、田中さんは俺たちにそういうことを考えて作戦を考えろって教えていたわけか。



全てを守れるわけがない。

だから守るものを選ぶ必要がある。

ただそれだけの話だが、それでも全部というのは捨てきれないよね。


現実でも同じことがよくある。

欲しい物を全部買えるわけがないから、本当に必要なものを買うのと一緒だね。




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― 新着の感想 ―
[一言] 最近ちょっと誤字が多いです。調子が悪い・時間が取れないなら、偶にはお休みして健康第一にしてください。読んでて不安になります。
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