表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

313/524

第310射:敵を確認

敵を確認



Side:タダノリ・タナカ



ちょうどギナスに今までの動向を伝え終わったところで、結城君から魔族の痕跡を見つけたといわれて戻ってくると、前面のモニターにはゾンビをむさぼっている異形の存在がいた。


「あ、田中さん戻ってきたんですね」

「ああ。しかし、戻って来てひどい絵面だな」

「なにがひどい絵面だよ。そこまで平静に言ってられるのが異常だよ」


そう返してくるのはノールタルなのだが、そういえば……。


「結城君がいるってことは、大和君にルクセン君も戻ってきてるんだろう? どこに行っているんだ?」

「えーと、今の映像を見てグロッキーです」

「まだちょっと早かったようだね」

「なるほどそういうことか」


納得の理由だ。

兵士ですらなれないものを見れば体調を壊すし、吐いたりもどしたりなんてもはよくある。

いままで慣れたとは思っていたが、人が食われる姿を見るのは始めてだから精神的に来たんだろう。

食人なんてなれるものでもないからな。


「で、詳しい状況を教えてくれるか?」

「はい。それがですね……」


結城君の説明で、ドローンは山脈を超えた向こうにいるのだということが分かり、山肌が消えて森へ入ろうとするところでアンデッドを発見したところ、今の怪物が現れてアンデッドを食べ始めたようだ。


「つまり、あれが痕跡を処理してきたわけだ。好き嫌いはないようで成長しそうだな」

「だね。服も丸ごと食ってやがるね」


後ろからそんな声が聞こえて振り返るとゼランが苦虫をかみつぶしたような顔でモニターを見つめている。


「よう。そっちも呼び戻されたってところか」

「ああ、そうだよ。魔族の痕跡を見つけたって言われて、話し合いを切り上げて戻ってきたらこれだ。不機嫌にもなるさ」

「それもそうだ」


この映像を嬉々として見ているやつがいればちょっと精神的にまずいのは間違いない。

と、そういう感想はいいとして。


「で、敵の本隊はどこにいるか確認できたか?」

「いや、そこまでは発見できてないよ。こいつを見失う方がまずいとおもってこっちに張り付いている」

「そうか。ま、それが正解だろうな」


迂闊にほかの敵を探そうとして、今のこいつを見失っちゃ意味がないからな。

そうなると、俺は早速画面に意識を集中して、ドローンをもう一体出してそのまま操作を始める。


「俺は俺で追うから、ノールタルとセイールはそのままそいつを監視。結城君とゼランはこっちの捜索を手伝ってくれ」

「わかりました」

「了解」


俺はドローンをあの死体食いからさらに奥に進めていく。

森の中奥深くに入ってしまうので、確かに探すのは骨が折れそうだな。

とはいえ、外にやりようもない。

あとは、ゼランが持ってきた情報を聞きつつ地道にやるしかない。


「で、ゼラン。そっちの方は何かいい情報はあったか?」

「残念ながらだね。とはいえ、ゼロでもないよ。女王様たちが使っていいといわれた物資に領主様が興味を示しているから、その経由で情報が手に入りそうだよ」

「信じてもらえるか微妙なところだな」

「一応、私の言葉もあるし、商人仲間の援護もあるから信じてもらえるとは思うけどね」

「だといいな。女王がお供もそこまで連れずにやってくる時点で舐められそうなもんだが」

「それは……ないとは言えないね。そうなるとまずいね」

「まずいな。女王を下に見るような言動をとれば、ラスト王国に宣戦布告するも同然だ。ま、どこまで本格的な戦争になるかはわからんけどな。そもそもラスト王国から兵士を連れてくる術が……あるな」


ゲートをこっそり設置してたからな。

いきなりシャノウはラスト王国とロガリ大陸連合に制圧されるわけだ。


「まちな。そんな最悪の話をするんじゃないよ。そうならないようにするべきじゃないか?」

「その通りだな。こんな魔族に攻められている状態で後ろにも敵を作るなんてすればこの大陸の連合はあっという間に瓦解だろうさ」

「というか、田中さんが参戦した時点でこの大陸の国と魔族が終わりそうですけどね」

「アキラ。冗談でもいうんじゃないよ。タナカならやりかねない」

「わかってるじゃないか。面倒だと思えば全部吹き飛ばせば解決するからな」


敵と真っ向から遣り合うなんてのはアホのやることだ。

纏めて簡単に処理できる方法があるならそれをやるべきだろうし、切羽詰まっているなら手段を選んでいる理由もない。

帰還の情報が手に入るのが遅れるかもしれん、喪失するかもしれないが、それでも命よりは軽い。

だから、俺は遠慮なくやるときはやる。


「えーと、田中さん?」

「面倒だと思えばといっただろう? 今は普通にやるさ。ま、ゼランの方も進展があってなによりだ。俺たちを戦力にしたいとか言い出さないといいけどな」

「そこは悩むところだね。戦力になれば確実に情報は得られると思うけど、そこはどうなんだい?」

「好き勝手に使われるのはどうもな。最後には厄介払いがこの手の話にはよくある」

「だねぇ」

「あー、勇者とか強い力はっていうやつですよね」


流石にこの手合いの話も分かってきた結城君がうんざりにそう呟く。

勇者として便利屋扱いされてきたからな。いや、そこまでもないか?

とはいえ、勇者だからと戦わされたのは事実だから間違ってもいないか。


「しかし、いつまでたっても森だねぇ。どこにゾンビの群れがいるのもわかりゃしないねぇ」

「でも、さっきのゾンビを処理している魔族がいたんですから、そこまで遠いとも思えないんですけど……」

「確かにな。遠方まで処理をしに来たというのは意味がわからないからな。あれが最後尾だとして、魔族だけならともかく、人が歩いて行軍範囲なんてたかがしれている……」


つまり、いい加減集団を見つけてもいいはずだが……。

そう思って一度その場にとどまってぐるっと回転をしてみると。


「あそこか」

「え?」

「見つけたのかい」

「ああ。あそこを見てみろ」


俺はちょっと森が開けている所に画面をアップしてみると、そこにはゾンビの集団と魔族と思しき異形の存在が数人立っているのを見つけた。

どうやら、何か話しているようだが……。


「これ以上は近づくのは無理だな」

「もっと近づけるだろう?」

「これ以上はあいつらに気がつかれる可能性がある。俺の勘だが、ばれたら今後偵察が難しくなるからな」


空を飛んできた奴もいるんだから気がついてもおかしくはない。

ばれたりしたら今後偵察がさらに難しくなるから、うかつなことはできないな。

ゼランもそれは分かっているようで特にこれ以上言うことはない。


「でも、田中さんこれからどうするんですか? このまま監視ですか?」

「そうだな。監視は続けるがもう一台出すから、結城君は新しく出したドローンの操作を頼まれてくれるか?」

「はい。いいですよ」


俺はそういうと、即座に操作パッドとドローンを出して結城君に任せる。

俺はそのまま敵の偵察だ。


「それで、このドローンはどうするんですか?」

「敵の進行方向に進んでくれ、どこに出るのか確認したい。元々シャノウに襲撃をかけられる可能性を警戒していたからな」

「ああ、なるほどね。アキラはこのまま進んでどこに出るのかを確認するわけだ。でも、敵が進行方向を変える可能性もないかい?」

「その時は修正するだけだ。今のところ山脈を越えるルートがシャノウとはかなり離れているからな。襲ってくる確率はないだろうが、このままどこに向かうのかっているのは気にはなるからそっちの確認も必要だ」


シャノウに来なくても、別の所に襲撃をかける可能性もある。

その場合もちゃんと把握しておかないといけないなぜなら……。


「森ばっかりですね。山脈の先って結構森が広いですね。こんな感じでいいんですか?」

「それでいい。これで目の前が町だったとか最悪でしかないからな」


敵に襲撃される村や町が別にあるってことはそれだけ敵の戦力が増加する可能性があるってことだ。

そんな連中の相手をするのは面倒だ。

強くなった敵とわざわざ戦う必要性がないからな。

やれるときにやるってやつだ。


「確かにそうですね。でも、ここってどこらへんでしょうか? ゼランさんわかりますか?」


この大陸に住んでいるゼランなら何かわかるかと思ってというわけだが……。


「残念ながら、私には海の知識はあっても陸の方はさっぱりでね。まあ、夜になれば星を見て自分たちの位置は分かるんだけど、その先に何があるのかはわからないんだよ。まっさらの海図みたいなもんさ」


海を行く船乗りたちに陸地のことを聞いても仕方ないか。

いや、出てきてもおかしくはないだろうが、ゼランがそうでもなかったってわけだな。

あとは、知り合いに聞くしかないな。

今の所ギナスにこの証拠映像を持って行った方がいいだろうな。

結城君たちはお世話になっている冒険者ギルドは正直今はあてにできない。


「ゼラン。そっちの方は地図とか手に入りそうなのか?」

「正規の地図については今度領主様と顔を合わせてからだね。でも、商人経由の地図なら明日にでも手に入るよ。それなりにお金はかかるけどね」

「そうか、ならそれを手に入れておいてくれ。この集団がどこに向かうのかを確認したいからな」

「わかったよ。まかせときな。しかし、こっちは相変わらず森が続くねー。タナカ殿、そっちはどうだい?」

「こっちも動きがないとおもっていたが、どうやら動き出すみたいだ」

「「え」」


驚いてこちらを見る結城君とゼランだが、俺が何かを答える前に……。


「私が監視していた死体食いが合流したんだよ」


ノールタルがちょっと顔色が悪い状態で答える。


「ノールタル姉さん顔色悪くないですか?」

「悪いだろうってのは分かるよ。何せあんなものを見続けたんだからね。悪くなっている自信はある」


そりゃそうだろう。

人が食われるところを見せつけられて正気にいられるかって感じになる。


「それで、死体食いの帰還を確認したようで、動き始めたな。さあ、お前たちの狙いは何だ? それとも俺たちの存在に気がついて適当な場所に向かっているのか?」


俺はモニターを見つめながらそう呟く。

とりあえず今のままでは情報が足りない。

何かわかることがあればいいだが。



ようやく敵の将軍を発見。

彼らの狙いは何だったのか、そしてこの敵はどこに行くつもりなのか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ