表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

312/522

第309射:山脈を超えて

山脈を超えて



Side:アキラ・ユウキ



「おー、お帰り。アキラ」

「あ、ノールタル姉さん。ただいま」


冒険者ギルドの仕事を終えてゼランさんの所有する倉庫兼家に戻ってくると、ノールタル姉さんとセイールが出迎えの言葉をくれた。


「2人ともやっほー。あれ? ゴードルのおっちゃんにリリアーナ女王は?」

「そういえば姿を見ませんね。何かあったのですか?」

「ああ、別に大したことじゃない。忙しくなっているから、妹のリリアーナは執務で大忙し。ゴードルの奴はそのまま仕事のお手伝いってことだ」

「意外なようでゴードルさんはちゃんと勉強できますよね」


何気に失礼なことをいう撫子。

まあ、俺もそうは思ったけどな。

だけど、気持ちは分かる。

あれだけパワータイプなのにしっかり計算とか軍部のトップとしての指揮能力もあるんだよな。

俺も色々相談に乗ってもらえるし、まあ当然と言えば当然の立場に見合った能力なんだよな。


「2人は合流が遅れるってことですね」

「うん。そうだね。まあ、何かあればすぐにこちらに来るって言っているから心配はないよ」

「国家のトップとその重鎮が私たちの要請ですぐ来るというのはどうなんでしょう?」

「あはは。おかしいよねー。で、ノールタル姉さんたちがいるのは分かったけど、ゼランさんと田中さんは?」

「ゼランさんはいつものように知り合いの商人と、シャノウの領主へお話を聞きに行っているところです」

「タナカ殿は今ギナスのところだよ」

「ギナス? ああ、確かスラムの偉い人だっけ? あれ、なんで?」


田中さんがギナスさん所に?

俺も光と同じように首をかしげていると、ノールタル姉さんが説明をしてくれる。


「ほら、バウシャイを襲った連中が移動しているかもしれないって話があるだろう? 防衛とか対策のために行っているみたいだよ」

「ギナスさんにですか?」

「ま、あれだろうね。アキラもわかっていると思うけど、この町は平和だ。いきなり敵が来るかもって言って避難はもちろんできないし、大規模な軍も用意できないからね。冒険者の動員も同じさ。だから、まずはタナカ殿が言葉で動かせそうな人に会いに行ったってことだね」


そうか、俺たちじゃ冒険者ギルドのシャノンさんを動かすのは難しい。

まだ新人の冒険者って立場だしな。

ゼランさんの方も、商人や領主を動かすのは難しいよな。

そうなると暴力団……じゃなくて、マフィアのボス……に近いのかな?

スラムの主であるギナスさんに話を通す方が動く可能性はあるのかな?


「可能性はどの程度あるのでしょうか? 私はギナスさんと会ったことはございませんが、田中さんが要請して動くようなものでしょうか?」

「いえ、それは分かりませんが、話す意味はあると思っているかと」


セイールさんがちょっと困った感じでそう答える。

まあ、スラムの主が快く協力してくれるとは思わないしなー。


「それで、ノールタル姉さんが代わりにドローンみてるってわけか」

「そうだよ。必要なこととはいえ、つらいねー……」


そう返事をするノールタル姉さんの瞳から光が消えている。

確かにドローンの画面を見続けるのって本当につらいからな。


「それで、あれから何か見つかりましたか? 空を飛んで追いかけているからそこまで発見に時間はかからないって言ってましたけど……」

「いえ、まだ見つかってしません。タナカ殿が調べていればもっと早く見つかったかもしれませんが……」


あ、そうか。

俺たちやセイ―ルさんの操作と索敵能力とは田中さんは段違いだもんな。

倍以上に差が出る気がする。


「では、少しでもお手伝いしますわ。モニターに画面を映してくださいますか?」

「わかったよ。何かおかしいところがあれば教えてくれ」


ノールタル姉さんはそういうとすぐに大型モニターにドローンの映像を共有してくれる。

こういうのがしっかり扱えているからすごいよな。

ソフトの使い方って余程なれないとよくわからないしな。

いや、これだけは覚えろって田中さんに散々言われてるからまあできて当然なのかな?


「というか森越えてない?」


光の言葉でモニターを見ていると確かにすでに森は越えて山頂付近を飛んでいる。


「だね。ついさっきほどだけど森を抜けて山頂付近だね。でもここまで開けているのに……」

「何も見つからないんです」


確かに、パッと見る限りただの岩肌がでているだけだ。

人が集団で歩いているならすぐにわかる。


「道ってあっているんですか?」

「いや、それもよくわからないけど、森を進んで山を抜けるとなるとこの山を越えることになるからね。とりあえずこっちにまで飛んできたってわけさ」

「ここなら何かしら痕跡が見つかるとかと思いまして」

「なるほど」


確かに、森の中で証拠を見つけるよりも見つけやすい場所で探す方がいいのは当然だよな。

でも、それが見つからないとなると……。


「もう山脈向こうに行っている可能性はないですか?」

「んー、アンデッドになった町の人たちがそこまで動きがいいとは思わないが、何も出てこないし向こうをみるしかないねー。でも、少し前に村の人たちの残骸は見つけたんだよね。それが一切見当たらないから……」

「山脈を越えたっていうのはおかしいとは思うんです」


そういうことか。

確かに、田中さんが見つけてくれた痕跡を考えると、地肌がむき出しになっているところで町の人たちの足跡が見当たらないのはおかしいことだよな。

つまり山脈は超えていないってことか?


「では、山脈向こうをみて足跡がなければ戻って足跡をさがせばいいのでは? 空にいますし、自分の位置を見失うことはないですわ」

「そうだねー。じゃ、そうしよう。ノールタル姉さんお願い」

「わかったよ」


ということで、ノールタル姉さんが操るドローンは山脈を越えて反対側へと抜けるとそこには……。


「うーん、何か見えるか?」

「いんや、変わらない気がする。はずれかなー」

「一瞬の判断ではだめですわ。ある程度しっかり確認いたしましょう」


確かに撫子の言う通りだ。

一瞬ですべてが見渡せるわけでもないんだから、しっかり索敵をしよう。

何せ見過ごしてたら、シャノウが襲撃を受けるかもしれないんだから。


「とりあえず、山頂に沿って移動するよ。怪しいところがあったら言ってくれ」


ノールタル姉さんはそういうとゆっくりドローンを動かし始めてゆっくりと風景が流れている。

初めての映像なら感動ができたんだろうけど、今となってはあまり変わり映えしない風景に眠気が来る。

あれだ。飛行機に乗ってはじめは雲の上が楽しいけど、ずっと雲海が広がっていて飽きてしまうってやつだ。

そんな境地であたりを見回していると……。


「ん? ちょっと止まってください」

「わかったよ」

「何か見つけたの? どこどこ?」

「えーと、ほらなんていうんだっけ、11時方向」


そう、時計の針を方角に当てはめていうんだった。

場所は山頂から地肌が出ている場所が少なく、草原があり森もほかの場所よりも近くにある。

その森の境に何か見える気が……。


「ノールタルさん。もうちょっと近づいてもらえますか?」

「ああ」


撫子の指示でその場所に近づくにつれ、俺が何に気が付いたのかが分かった。

それは……。


「えーと……生きてるのかな?」

「いえ、あれは死んでいます」

「やっぱり?」


人の死体が転がっていた。

森の中へ入ろうとして力尽きた感じだ。

なぜ人の死体と判断できたかというと……。


「体が半分しかありませんからね。下半身はどこに」


そう撫子が言うように下半身が存在していない男だったのだ。

だからこそ、俺は遠方でそれを見て人と判断できなかった。

だって下半身がない人体を人と認識できなかったから。

撫子が言うように本当に下半身はどこだろうと少し目を凝らしていると。


「うひゃ!?」


光がいきなり悲鳴を上げた。

それもそのはず、上半身だけになった死体が動き始めたからだ。

俺は何となくそんな気がしていたから、何とかなったが……。


「……」

「なんか僕よりもひどいことになってない? おーい。撫子、生きてる?」


撫子はあまりのショッキング映像だったのか気絶している。

こりゃ、ゾンビ映画とかだめだな。

とはいえ、これで下半身がないことにも納得ができた。


「これはどこかで食べられたとかしたんだろうね。それでこいつは一人でここまで這いずってきたってとこかな?」

「そうだと思います。血痕も下半身も近くにないですからね。どこか違う場所で無くしたとみるべきです。とはいえ……」

「ここでアンデッドを見つけられたのは追ってきたことが間違っていなかったということですね」


セイールの言う通り、田中さんが追っていたことが間違ってなかったという証拠だ。


「証拠が見つかったのはいいけどさ。これってやっぱりバウシャイの人たちは全員アンデッドになったってことなのかな?」

「何人か人質になっている。っていうのを考えたいけど、あの化け物がかかわっているとなるとね……」


ノールタル姉さんは明言はしないが生存の望みは限りなく低いだろうと言ってくる。

俺も同じ意見だな。

何より、こんな険しい道を普通の人が踏破できるわけない。

だが、それだと……。


「ですけど、あまりにも脱落が少ないと思いませんか? ここでアンデッドが一人だけとか。ほかにも持って脱落してもおかしくないと思うんですけど」

「確かにそうだね。ほかにもっとアンデッドがいてもおかしくないんだけど、それは見つかっていない。今まで見つかったのはタナカ殿が最初に見つけた靴とか、多少の人の手足ぐらいだ」

「ちょっとまってください。森の中から誰かが出てきます。ノールタルさんもうちょと離れてください」

「あいよ」


セイールの言葉に反射的にノールタル姉さんがその場から離れると、上半身だけの男がいきなり腕をつかまれて持ち上げられる。

その持ち上げた相手は……。


「……何というか、もう露骨な人を混ぜたような……」

「だな。物凄い」


どこのバイオミュータントだよって感じだ。

何せ人の腕が四本、足が3本。

全部人のものでだ。

キメラというか、どこかのバイオなハザードな姿だ。

そういえばノルマンディーで襲ってきたやつも同じがある。

そしてさらにショックなのは、その化け物はアンデッドを持ち上げると、そのまま口に運んでぼりぼり食べ始めたのだ。


「口は普通に人なんだね。うぷっ」

「無理するんじゃないよ。しかし、嫌な絵だね」


本当にどこかのゾンビ映画のようだ。

とりあえず田中さんに連絡をしないと……。



ついにバウシャイを襲った敵を補足したかもしれない?

とりあえず、ようやく見つけた敵は明らかにバイオな敵のようだ。

感染に注意しないといけないかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 補足  付け足して不足を補うこと 捕捉  捉えること
[一言] 継ぎ接ぎの、キメラと言うより、フランケンシュタインの怪物? 足3本で、どうやって歩いているやら。 生まれつきの奇形なら、育つ間に動かし方を覚えるのだろうが、いきなりは無理でしょ。 腕が多い…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ