第303射:もう一つの情報源
もう一つの情報源
Side:アキラ・ユウキ
「「「……」」」
俺たちはなぜか気持ちのいい朝日が差す中、沈んだ表情だ。
それもそのはず、昨日聞かされた話が本当なら……。
「魔族を作っているということだよね? 人の死体を使って」
そう光がポツリという。
それが俺たちが落ち込んでいる原因だ。
でも、いつまでもこのままってわけにもいかないよな。
「映画とかではよくある話だよな」
とりあえず冗談交じりにそう言ってみる。
何か反応してくれるといいんだけど……。
「実際にやれると笑い話にもなりませんわ」
撫子の返しにその通りだとしか言えない。
いや、真面目に返事をされると俺が不謹慎じゃないか。
と、思ってると光が口を開く。
「ま、笑い話にもならないなら、ちゃんと解決した方がいいよね。リアルバイオとか嫌だし」
「そうだな」
光の言う通り、リアルバイオハ○ードの世界なんて嫌だ。
しかもこの世界魔物もいて魔術とかもあるから、きっとゲームのバイオよりも厄介なBOWがいるに決まっている。
というか、異世界でまさか、人体実験でモンスターを作っているとか……。
いや、まあキメラとか合成怪獣みたいな魔物の記録はあるから不思議でもないのか?
「よし、このまま落ち込んでいても、光の言う通り、バイオハザードになりかねない。気を取り直して前向きに考えていこう」
「そう、ですわね。このまま落ち込んでいても何も変わりませんから」
一番深刻そうな顔をしていた撫子もなんとか表情を取り戻した感じだ。
「それで、フィエオンって所が原因って田中さんは見ているよな」
「ま、この状況だとそれしかないよね」
「はい。あの地図が正確だとすれば、どこからかやってきたのではなく、フィエオンという所で発生。つまりは作られたとみていいでしょう」
「つまり、フィエオンに行けば何かわかるかもしれない」
「それはそうだけど、一応敵地のど真ん中というか、本拠地の可能性もあるよねー。僕たちじゃ荷が重くない?」
光の言う通り、フィエオンにはヒントがあるだろうけど、戦争が起こっている国境を抜けて敵地のど真ん中に乗り込むとか……。
「意外と、乗り込んだことはありますわね」
「「え?」」
何をいっているのか理解できなくて2人して?を浮かべていると、撫子は苦笑いしながら……。
「私たちは魔族の本拠地、ラスト王国に乗りこんだのは覚えていますか?」
「「あ」」
そういえば、乗り込んだ。
でも……。
「あの時は、ゴードルのおっちゃんがいたし、ノールタル姉ちゃんやセイールとかもいたし。リリアーナ女王からも応援頼まれたよね?」
「だな。あの時は敵の本拠地に仲間がいたし、何にも伝手がないフィエオンとは違うよな」
そう、あの時は魔族の本拠地ラスト王国には俺たちの仲間がいたから情報が十分に集まった。
でも今回はそういうことは一切ない。
「その通りではありますが、それは動き続けての結果ですわ。私たちはこの大陸でまともな活動をしてはいません」
「そういわれるとそうだよね」
「でも、どう動くんだ? 伝手もないけど?」
「伝手は作る物でしょう。田中さんみたいに」
「えー。田中さんみたいにっていうと、血みどろ?」
うん。光の言う通り田中さんの伝手の作り方は完全に血に濡れている気がするんだよな。
「別に田中さんと同じ真似をするわけではありませんわ。ほら、この大陸にも魔物はいるみたいですし、きっとあの組織が存在するはずですわ。まあ、名前は違うかもしれませんけど」
「あ!」
「なるほど」
ということで俺たちはまず、ゼランさんに会ってその組織が存在するかの確認を取る。
「ん? ああ、そりゃもちろん存在するさ。名前もおんなじだ。そういえばそっちの方は情報集めてなかったな。向こうは向こうで独自の情報網があるだろうし、そっちは任せたよ」
なんと、名前も変わらずその組織が存在することが分かった俺たちは、田中さんに許可をもらいに話に行くと……。
「ああ、あそこか。俺も俺で今は忙しいからな。そっちは任せる。ま、一応注意しとけ。仕事を受けるのはひとまず町中のモノだけにしとけ。町の外に出るような依頼は情報を集めてからだ。何せノールタルやヨフィアたちもまだ戻ってないからな」
と注意は受けたけど、あっさり向かっていいと許可をもらえた。
確かにみんなが揃ってない状況で、外に出るとかはしないけどさ。
「でも、こっちにもあるもんだね」
「それだけ。魔物の被害や、雑務を行う公共の人たちがいないということですわね」
「それは喜んでいいのか微妙なところだよな」
その組織が存在するということは国の組織に頼らず、何とかしていこうという意思がある。
つまり、国は頼らないという意味でもある。
撫子が言うようにそれだけ被害があり、国では手が回らないということだ。
そして、そんな話をしていると目的の建物にたどり着く。
「おー。意外と大きいね。シャノウの町が大きいからかな?」
「それだけ仕事が多いということでしょう」
「小さいよりはいいだろうし、さっそく入るか」
俺はたちは「冒険者ギルド」へと足を踏み入れる。
そう、俺たちが向かった先はこの大陸にある冒険者ギルドだ。
撫子が言ったように、この大陸でも魔物はいて、その被害に対して国も対応していないことはないだろうが、それでも足りないということで冒険者が活躍しているそうだ。
もちろん、冒険をして宝物を発見するというのもあるが、今ではもっぱら魔物退治をメインに人々を助けるための職業として認識されている。
と、ゼランさんから聞いた内容は、ロガリ大陸。ああ、ルーメルがある大陸はついこの間名前が付いたそうだ。
ロシュール、ガルツ、そしてリテアの名前とってロガリ大陸。
ルーメルにラストの名前が入ってないことに驚いたけど、あの戦いはあの3国が手を組んでたからうまくいったことだし、俺としては別にどうでもいい。
そんなことより……。
チリンチリン……。
ドアを開けて入るとそこにはロガリ大陸でよく見た冒険者ギルドの受付カウンターがあった。
「どこも構造って変わらないんだねー」
「突き詰めていけばこれが最適なんだろうな。ほら、役場とかもこんなもんだし」
「確かにそういわれるとそうですわね。接客をするとなるとこれに行く着くのかもしれませんわね」
そんな風にシャノウの冒険者ギルドを見ているが、お昼なおかげで冒険者はほとんどおらず、併設している食堂で昼から飲んでいる冒険者がいるぐらいだ。
「で、誰に話聞いてみる? 冒険者の人はいないし、受付の人?」
「それしかないだろう」
「私たちはこちらでは無名ですし、それが一番ですわね」
意見が一致したので、受付のカウンターへと向かうと……。
「はい。シャノウ冒険者ギルドへようこそ。ご依頼ですね」
とさわやかな笑顔で受けつけのお姉さんが出迎えてくれた。
「あー、うん。そうだよね。僕たちってどう見ても冒険者に見えないし……」
「武器とかはアイテム袋に入れてるからな」
無用なトラブルは避けるため、武器の類は持たずに来ているから冒険者ではなく依頼人に見られてしまったのだろう。
というか、俺たち日本人って童顔らしいから……。
「お父さんかお母さんのお使いかな?」
普通に子ども扱いである。
ま、そこまで見られているのは……。
「違うよ! 僕は大人だからね!」
一番ちっさい光だ。
俺から見てもパッと見ても中学生ぐらいにしか見えないからな。
「あら、ごめんなさい。で、どんな依頼かしら?」
受付の大人のお姉さんは特に動じることなく、質問をしてくる。
接客に慣れた感じだよな。
でも、俺たちは冒険者に……。
「はい。ちょっとどういう依頼をしていいのかわからずご相談に乗っていただいていいですか?」
「「え?」」
俺たちが意見を言う前に撫子なぜか依頼をしたいという感じで話を始めている。
「ちょっと撫子?」
「俺たちは……」
「はい。それはわかっていますわ。でもお金を払って情報が得られるのでしたらそっちを先にしてもいいのではないかと思いまして」
「ああ。そっか。それいいね」
「だな。有名な冒険者とかから話を聞くにも有力な人を紹介してもらった方がいいよな」
妙案だと思う。
伝手で探すより「依頼」して頼んだ方がいい。
まずはそれで情報を集めればいい。
「相談? 一体どのような相談を?」
「私たちは冒険者になりたいと思っておりまして、信用の置ける冒険者の方に一度ご指導いただければと思っているのです」
「はぁ、冒険者に皆様が……」
不思議そうな感じで俺たちを見る受付のお姉さん。
「まあ、無理であれば諦めますし、一度そのお話を聞いてみたいのです。この依頼はいくらぐらいかかるのでしょうか?」
「ふむ、そういうことですか。希望は分かりましたが、そういう指導に適した冒険者の方は軒並み高ランクで、出払っているんですよね」
まあ、確かに。
そういう有能なら普通に冒険していることが多いよな。
俺たちもずっと依頼受けて訓練してたし。
「別に現役である必要もないでしょう。仕事も落ち着いたし、私が相手をしてあげるわ」
そんな声がして階段の方向をみると、パリッとしたシャツと綺麗なスカートをはいたできる女性が下りてきていた。
「ギルドマスター。いいのですか?」
へぇ、あの人がギルドマスターか、アスタリのソアラさんみたいに何かすごいことを成し遂げてギルドマスターの立場になっているのかな?
「構わないわ。まあ、次の仕事が入れば終わりだし、依頼料もお嬢ちゃんたちが今持っている分だけでいいわよ」
「ギルドマスターそれでは依頼料金が釣り合いませんが……」
「いいのよ。ちょっと私もいつもと違って、実技をいれるから時間はかからないわ。これに耐えられるなら見どころはあるし、ダメならそこで終わり。どう?」
「それはギルドの評判を落としそうなのですが。こんな年端もいかない子供たちに……」
あー、やっぱり光だけじゃなく俺たちも子ども扱いか。
いや、若く見られるっていいとかいうけど、学生にとっては大人にみられる方がいいよなー。
「命を救えるならそれに越したことはないでしょう。無視に死者を出すのは避けないといけないのよ」
「……わかりました。では、念のために回復術師を用意しますので少しお待ちください」
「頼むわ」
ということで、なんか気が付けばギルドマスターと俺たちは模擬戦をすることになってしまった。
田中さん辺りが大笑いしそうだな。
こっちにもあったね!
万国共通のお店。
それは「万屋、冒険者ギルド!」こういう小説には定番だよね!




