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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


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302/524

第300射:本当の意味で無人の町

本当の意味で無人の町



Side:タダノリ・タナカ



「……というわけで、遺跡の情報を聞いてたんだ」

「なるほどな。それでギルドの資料室にいるってことか」


昨日、のんびりしていたはずのルクセン君たちがいきなりギルドの資料室に戻って調べものをしてくるといったので事情を聞いてみれば納得だった。

向こうで、遺跡を調査もしてみようって話が出たもんな。

こっちでも知らべても何もおかしくない。

何か残っている可能性は大いにある。


「ですが、田中さん。私たちはいつまでこちらにいていいのでしょうか?」

「船とか、シャノウの情報収集って放っておいていいのかな?」

「そっちは大丈夫だ。何かあれば連絡するようにいっているしな」


さらに定時連絡をちゃんと受けているので、何かあれば最長1時間で状況が伝わるようになっている。

ゼランには無線機も渡しているから直接俺たちと連絡が可能だ。

しかし、無線機が船で一週間以上もはなれた場所まで電波が届くとかおかしいから、きっと魔力とか言うのを代用しているんだろうな。

ま、船が動いていたことを考えれば携帯一つ、無線機一つが動いても何も不思議じゃない。


「でも、田中さんがその様子だと、シャノウの方はまだ動きがないんですね?」

「ああ。反応はない。というか今はゼランたちが持って行った交易品を使って情報を集めている最中だからな。そっちが一回終わってから、詳しく話を聞こうと思っている」


偉い人物との交渉もあるだろうから、そう簡単に情報集めが進むとは思えないな。


「じゃ、当分はこっちにいるの?」

「どうだろうな。何かあれば行く。何よりゲートで繋いだからな。ある意味陸続きだ。いつでも行ける」


そう、既にゲートであの大陸との行き来は簡単にできるようになっている。

だから、移動に時間はかからないわけだ。

いやー、魔術って意味が分からん。

まあ、最新兵器が妙に便利なっているのと変わらないか。


「それで、大和君たちは遺跡の調査をしてみたいと思っているわけだ」

「はい。時間があるのであれば、そういう所を調べてみるのもいいかと思いまして」

「いや、残念だがそれは無理だな。いつ呼び出しがかかるかわからないからな。遺跡にしても移動だけでも半日はかかるだろうし、遺跡での調べものを考えると一日で終わる物でもないだろう」


隠すことなく、事実を伝える。

そんな時間はないと。

まあ、向こうの大陸を見捨てるならそれでいいが、そんな判断を下すなら最初から手助けをするなんて言わないだろう。

そして、それは結城君たちもわかっていたようで……。


「やっぱりだめですよね。でも、これから俺たちはどうしたらいいんですか? フクロウさんが言ってたアンデッドを作ってたって話は何か進展は?」

「そっちを裏付けるものもないな。もう一度バウシャイに行ければまだわかるかもしれないが、ドローンで偵察している限りは……今のところ何もないな」


俺は周りに人がいないことを確認してタブレットから映像を確認してみたが相変わらず、無人の町が存在するだけだ。


「本当になにもないよねー」

「ですわね。無人の町が映るだけです」

「そういえば田中さん。食料とかは残っているんですか?」

「食料か。そういうのは確認してなかったな。パッと見てそういうのを持ち出しているようには見えなかったから残っているとは思うが」


俺はそう言いつつ、一機のドローンを操作してバウシャイの町中に入ってみる。


「うぇ。入っちゃっていいの?」

「別にいいさ。ほかに監視のドローンもいるな。このドローンが操作ミス以外で墜落するならそれはそれで見ものだ。あ、追跡する奴も一機付けとくか」


万が一何かがあったときも後ろの後続のドローンがその何かを捕らえるだろう。

ゴーストハンディングみたいになってきたな。

と、そんなあほな考えをしつつもドローンを操作していく。

町は相変わらず無人で静かなものだ。


「本当に静かですね。でも、田中さん。この町って誰もいなくなってから結構時間は経っているんですよね?」

「ああ、そのはずだ。ほら、ここは大通りなんだが、それに面しているお店だと思うが……」


モニターに映るのは戸を閉めて商品を置くのであろう木の台には何も乗っておらず、白く埃がかぶっている状態だ。

しかもこれが一つというわけではない。

どの家屋も同じなんだよな。


「うわぁ。ほんとだ。これだけ埃が残るって人がいなくなって随分経ってるんだね」

「……田中さん。先ほど晃さんが言った食料ですけど、どこかで確認できますか?」

「さて、食料な。ここまで放置されていると動物に……」


そこまで自分で言ってこのバウシャイがやはりおかしいことに気が付く。


「田中さん。どうしたんですか? 何か見つけましたか?」

「いや、大和君の言葉でこの町のおかしいところに気が付いた。動物の気配すらない」

「え? 動物?」

「そうだ。人がいなくなれば、こういう餌が沢山ある場所には動物が集まらないのはおかしい」

「いや、夜に来てるとかはないんですか?」

「来ているなら、もっと町はあれているさ。何より、俺たちがあの町に訪れた時に野生動物と会ってもおかしくないし、何よりネズミ一匹、カラス一匹すらみない。おかしい。大和君はそれを確かめたかったんだな?」


俺がそう言って大和君を見ると軽くうなずいて口を開く。


「はい。こう言っては何ですが、この世界は日本とは比べるべくもなく衛生面が劣悪です。このルーメルでさえ、路地どころか表通りでもネズミを見るほどですし、カラスなんて当たり前に飛んで何かの死肉をつついています。なのに、バウシャイの町ではただの一度も、小動物の姿すら見ていません」

「あ、そういえばそうだ。なんでだろう?」

「さあ? なんか動物除けとか? いや、自分で言っててありえないとは思うけどさ」


そこまで便利な動物除けあれば是非とも教わりたいね。

動物経由からの病気を完全に防げそうだ。

食料を食い漁るネズミや鳥は傭兵にとって一番頭の痛い問題だからな。

と、そんなことを考えつつ俺は酒場と思しく店にドローンと飛ばして、裏手に回りゴミを確認してみるが、そこには打ち捨てられた生ごみらしきものがあるだけだ。

既に朽ち果てている。


「随分置きっぱなしのように見えますわね。それに動物があさった様子もないですわ」

「だねー。こういう生ごみってすぐにネズミとかが漁ってあたりに散らばっているもんねー」

「というか、綺麗さっぱり持っていくから逆に何も残らないよな」


結城君の言う通り、この朽ち果てた何かが残っていること自体がおかしい。

本当に動物すらいないのではないかと思わせる状況だ。


「ちょっとこのドローンであたりに動物がいないか確認する」


俺は即座にドローンの高度を上げて町を上空から見下ろす。

ここまでくれば何か動物でもいればすぐにわかりそうなものだが……。


「流石にこれおかしくない? だって港にも鳥とかいないよ」

「あ、本当だ。こういう港って魚狙った鳥とかいるよな」

「いますわね。ちゃんとシャノウの港では鳥が飛んでいましたし」


このあたりに動物がいないという仮定を確定させることが発見された。

そうだ、ここは港だ。

なのに魚を狙っている海カモメやカラスなども一切見当たらない。


「いや、まて。海の方は人がいなくなれば魚が捕れなくなるから餌がなくなるわけだ。鳥は生きていけるところに移動するからな。町の中みたいにゴミがそのまま転がってでもない限り、動物は来てたということになる」

「確かにその通りですわ。では見てみましょう」


大和君の言う通りだ。

結果をさっさと調べればいい。

停泊している船の近くに行けば嫌でも魚の骨が散乱している場面がみられるだろう。


「うげっ」

「これはなんというかひどいですね」


ルクセン君と結城君は画面に映る腐った魚を見て顔をしかめていた。

まさに腐っているだ。骨が明らかに見えている。白骨化直前ってやつだな。

つまり、これは動物が魚に食らいついたのではなく放置された末にこんな綺麗な形で魚が残っているということになる。


「この状況を見る限り、何かしら動物すらも近寄らない何かがあったというべきでしょう」

「だな。でも、その答えははっきりしない。なにかゼランの方が情報を得ていればな……」


と、俺がそういうと即座にタブレットにゼランから電話がかかってくる。


「どうした?」

『面白い話が手に入ったんだよ。一度、こっちに戻ってこないかい? 敵の動向についてだ』


おお、タイミングがいいというか、ここでずっとドローンの画面を眺めているよりましな話だ。

それはルクセン君たちも同じだったようで、一緒に席を立ちあがって……。


「一体どんな話があつまったのかなー?」

「敵の正体がせめてわかればいいけどな」

「ええ。これ以上悩んでも答えがでてくるわけでもありませんわ。ゼランさんの話。私たちもついていきます」


そう言って俺と一緒にシャノウに戻るということになったが……。

別行動をしているメンバーに声をかけるのと、ギルド長のクォレンや情報屋のフクロウに挨拶はルクセン君たちで俺は調べてほしいことをたのんでから、シャノウへと戻ることになった。



「意外と早かったね? てっきり2、3日かかると思っていたけど」

「大したことのない話ならそうするが、今回は敵の情報だし素早く動くさ」


何より、全員にタブレットを預けているのですぐに連絡が取れる。

だから声をかけるのも一瞬とは言わないが、それでもわざわざ本人を探して声をかけるよりも早く取れたのでこっちに来たのは連絡を受けて僅か3時間後だ。


「お姫様たちがいないようだけど?」

「そっちは国元に報告があるからな。あとで追いかけるって言ってる」


エルジュ、ユーリア、リリアーナはたった数日でちょっとわずかな時間に戻ってきたとはいえ、一か月近くも地元を放置していたんだ。

嫌になるほどの書類に囲まれていることだろう。


「あー、確かにそういうのは必要か。で、全員そろってはいないが私が集めた情報を聞くかい?」

「それは当然だ。今後の行動方針を決めるためにも、敵の正体や、味方の強さなどは知りたい」


というかこの情報がないと一切動けないから。

敵を知り己を知れば百戦して危うからずという。


情報はそれだけ大事なんだ。



死体どころか動物すら見当たらない。

遺体はどこに行ったのだろうか?


そしてもたらされる情報。

これには何かヒントが巡っているのか?

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 一応、魚類も脊椎動物に分類されるのですが?
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