表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

300/524

第298射:あくまで憶測

あくまで憶測


Side:タダノリ・タナカ



「……間違いだといいんだけどね。これは、大量にアンデッドを作る方法に似ているよ」


その答えを聞いて、俺としてはマジかと思った。

そしてなるほどとも思った。

これで人っ子一人いない理由が分かったからだ。


「ど、ど、どういうこと! なにそのアンデッドを作るって!」


内心理解はしているだろうルクセン君は否定してもらいたいのか、それとも事実をはっきりと告げて欲しいがためか、そう答えを言うようにフクロウに促す。

その内心はフクロウにもわかったようだが、少し目を伏せて考えたあと先ほどの驚きの様子はなくなりいつもの顔で……。


「文字通りさ。アンデッドを生産するためには、生き物が多くいるところがいいだろう?」

「「「……」」」


その返答にヨフィアも含めて絶句するが、そこはさすが戦いに慣れたヨフィアがすぐに再起動をして……。


「ババア。それはありえない。アンデッドっていうのは死体ができてしばらくたたないと魔力が凝固して魔石が発生しない。魔石がないとアンデッドは存在できない。あの時のバウシャイには死臭なんてしなかった。ねえ、タナカさん」

「まあ、腐敗臭はしなかったな。死のにおいは濃厚だったが」


ゾンビがいるなら腐った臭いがするだろうが、それはなかったとはっきり言える。

まあ、今もいったが、完全に死臭はしたけどな。

とはいえ、俺はゾンビの発生理由は知らないのでこの話についていけない。

どこかのゲームみたいにウィルスがばらまかれているならともかく、そういう伝染病でもないのなら、ちょっと知識がいる。


「クォレン、ヨフィアがいうことはほんとか?」


なのでここはこういう魔物の討伐を受けることが多い冒険者ギルドの長に聞くのが正しいだろう。

餅は餅屋ってことだな。


「ああ。そうでなければ死体になった人は全部ゾンビになってしまうからな」

「なるほど、確かにそういわれるとそうですわね」

「でも、ヨフィアさんがいう体内に魔石ができるってどういうこと?」

「ヒカリ、魔物と動物の違いは知っているな?」

「あ、うん。知っているよ。クォレンさん。体内魔石があるかないかでしょう? でも、人って魔石なんてないよね? それができるってどういうこと?」


ああ、それは俺も知ってる。

魔石が体内にあるからこそ、尋常でない力を発揮して妙な力とかを使う奇想天外な生物ができるってわけだ。

まあ、慣れてしまえば魔物も動物の一種としか言えないがな。

それがなぜ、死後魔石が出来るのかって所が問題だな。


「それはですねー。生き物が死ぬと生前持っていた魔力ってどうなると思います?」

「えーと、話から察するにその残った魔力が魔石になるってこと?」

「はい。その通りです。でも、それも確実じゃないんですよ。ゾンビになりやすい人は元々魔力が高いとか魔力が高い地域にいないと魔力が凝固することはないんですよ。だから、そこのババアが言ったように町中の人が死んだとしてもゾンビになるなんてありえないんです」


なるほど、ヨフィアが真っ先に否定したのはそれが理由か。

確かにヨフィアの言っていることは通りだ。

なにせ、そうじゃないと、だれかれ構わずゾンビになってしまうってことだからな。

死体になったら即ゾンビ。

そんな馬鹿みたいなルールであれば人が沢山生きて死んでいく村や町はすでにゾンビであふれかえっているだろう。


「で、フクロウはヨフィアの言うことをどう回避していると思うんだ?」


そんなヨフィアやクォレンが知っているような魔物が生まれる常識というやつをフクロウが知らないわけはないだろう。


「だからこその、アンデッドを大量に生産する方法だよ。クォレンが知らないっていうのは違うと思うけどねぇ」

「はぁ? 大量にアンデッドを生産するなんてのは、聞いたことないぞ。そんな厄介な……」


と言いかけてクォレンが固まる。

何か思い出したな。


「……まさか、大氾濫の時のことを言っているのか?」

「そうだよ。まあ、事例が少ないから思い出さなくても仕方ないけどね」

「「「大氾濫?」」」


その答えに首をかしげるルクセン君たち勇者組と魔族組。

俺は幸い覚えている。

とはいえ、それは……。


「魔物が大量発生する災害のことだな。それが町の住人が残らずゾンビになるってことと何が関係あるんだ?」

「……直接的には関係ない。だが、その大氾濫の中で発生する魔物が関係している」

「クォレン、タナカ殿に対して遠回しな言い方をしても無駄さ。最短がいいだろう?」

「ああ。別にそういうのは時間のある時の小話に取っておいてくれ」


酒でも飲みながらなら聞けるが、今はそういうのはいい。


「すまん。あまり、口にするのも嫌な魔物でな。まぁ、行ったところで出てくるわけでもないか……。その魔物はリッチだ」

「りっち? お金持ち?」

「いや、光。お前は知ってるだろう。あれでしょう? ゾンビの魔法使いってやつ」


俺はリッチを知らなかったが、結城君は知っていたようでわかりやすくリッチの特徴を教えてくれた。

なるほど。ゾンビの魔法使いか。


「えーと、申し訳ございません。そのゾンビ魔法使いが大量のアンデットを作るというわけなのですか?」


大和君が話の核心を質問する。

確かに、リッチがいたからといってゾンビが大量発生するという話にはならない。

だが、こんなところでリッチの名前を出す理由はない。

つまり、そのリッチがゾンビを生み出している原因と聞こえる。


「ああ、その通りだ。リッチというのは元々高位な、高レベルな魔法使いや僧侶が死んでゾンビ化したものだ。そして、リッチになると自身の配下としてどんな死体であれ魔物化して使役することができる」

「どういう方法かはわかっていないけど、死体をそのまま戦力にできるっていうのが厄介でね。リッチが発生した大氾濫は規模が違うって言われているのさ」

「確かに。死体を戦力として使えるなら便利なものはないな」


何せ殺せば殺すほど部下が増えていくわけだ。

殺さない理由がない。


「ああ。その通りだ。しかし弱点として、元々ゾンビなどに適正がない遺体を使うもんだから、思考などができるのはほとんどいない。ただ数に任せて押し寄せるだけだ。とはいえ生前の技能はちょっとは使えるから厄介ではある」

「厄介すぎるだろう。それって人がゾンビになるとある程度武器を使えるってことだろう?」

「あはは。タナカ殿。それは冒険者のゾンビぐらいだよ。町の住民がゾンビになったところで精々ナイフがいいところだね」

「それでも十分脅威だと思うのですが……。でも、そんな魔物がいるんですね」


そう大和君が納得していると、ヨフィアが口を開く。


「待ってください。リッチのことは私も知っていますが、それは戦闘の果てに殺した遺体をリッチがゾンビ化して使役するんですよ? あのバウシャイの町は戦った痕跡なんてゼランさんが言った衛兵との戦いぐらいでした」

「そういえばそうだったな。そこが謎だな。死体にならないと使役ができないなら、バウシャイでは大規模な戦いがあったはずだ。だが、ヨフィアの言うようにそんな戦いがあった痕跡はなかった」

「だから謎なのさ。でもいい線は行ってると思うよ。そうでもしないと遺体が一つ残らず……じゃなかったな。そういえば、教会の死体安置所では腐りきった死体があったぞ」

「ああ、ありました! ほら、これでリッチじゃないってわかりますよね。それにお墓から出てきた形跡もありませんでしたし、そこはどう説明するんですか?」


俺の指摘に乗っかってきたヨフィアがここぞとばかりに畳みかける。

別にフクロウの予想が外れていてもどうにかなるわけじゃないんだがな。

本当にヨフィアはフクロウに完全に喧嘩腰だな。


「うるさいよ。その理由も思いついているよ」

「へぇー。じゃ説明してくださいよ。リッチみたいなやつがいたとして、一番簡単に使役できる墓場の遺体を使わなかった理由を」

「簡単だ。お前も考えればわかると思うけどね……」

「あれだろう? 脆い腐りかけの遺体よりも死にたての形のいい遺体を使った方がよかったってことだ」

「やっぱりわかるかい?」

「そりゃな。まあ、それでもあくまで予想でしかないけどな」


今の所映像や写真を見て憶測でしか意見を言えない。

あくまでもリッチみたいなやつによる仕業が考えられるってことだ。


「でもさ、そうなると結局また調べないといけないんだよね? フクロウさんとかはあそこを知らべるならどうしたらいいと思う?」

「あ、そうだな。俺たちじゃ特に思いつかないし、こういう時ってどうします?」

「ん? いや、もうこのバウシャイには近寄らない方がいいと思うぞ。何が起こるかわからないからな」

「私も同じ意見だね。何か起こったのは間違いない。それにヒカリたちが巻き込まれる可能性もあるわけだ。ドローンでの監視を続けるぐらいがいいだろうね。そこはヨフィアも同じじゃないか?」


そうフクロウが言うと、ヨフィアに視線が集まる。

散々文句フクロウの言うことに文句を言ってきたヨフィアだからなんか言うと思ったんだが……。


「それは同意ですね。敵のことがわかっていないのに敵の拠点かもしれないところに踏み込むのは危険ですよ。魔族みたいな連中がいつ出てきてもおかしくないです。私としても、ババアと同意見なのはあれですが、ドローンで様子見がいいかと思います。何も犠牲なく情報が得られるんですから」


意外とこういう所はちゃんと冷静に判断できるようだ。

まあ、そうでもないとこいつも今ここに立っていないだろうからな。


「田中さんはどう思いますか?」

「わざわざ戻る理由にならないな。このままシャノウの拠点で情報を集めている方がましだろう」


俺としても、バウシャイにわざわざ戻ることはないと思っている。

ドローンで情報得られるんだから放置で良い。

何より、シャノウはゲートでつながっているしな。

拠点として活用しているのにそこから離れる理由はないだろう。


「ま、俺たちだけで決めてもあれだしな。一応お姫さんやノールタルたちにも話を聞いてみたほうがいいだろう」


違う立場からだと違う意見があるかもしれないしな。




リッチが現れて不死の軍団を作っていったっていうのは有力には聞こえます。

でも、教会内部の死体安置では腐った死体が放置していました。

それが意味することろとは?


そして、戻ってきたルーメルでは何か変わっていることがあるんでしょうか?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
腐りかけの死体を使いたく無かった……ってよりも、 オーガテンペスト戦事後処理 第60射:受け入れてそれでも進む にて「聖水はかけておいたので、アンデッド化することはない」って一節があるので、教会での…
[一言] 人間のフリをするゾンビ…厄介ですね。 フレッシュゴーレムに近いのでしょうか。 人間の死体にゴブリン等魔物の魔石を入れると魔力収集器化してゾンビ化するのでしょうか。
[一言] 魔族の正体がフレッシュゴーレム 毒かなにかで意識を奪えば良いし
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ