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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


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291/522

第290射:別の港へ

すっかり投稿を忘れておりました。

まだ日曜日だからいいよね!

別の港へ



Side:タダノリ・タナカ



ザザーン、ザザーン……。


ようやく陸地かと思えば再び波の音だけが響く海上を進むことになる俺たち。

ま、あんな意味不明な状態のバウシャイに艦隊を泊めるわけにもいかなければ人も下ろすわけにもいかない。

今はシャノウという港町。


「そこは無事だといいんだけどな」


そう呟いて、たばこに火をつけて一服する。

ふう。やっぱり煙は美味いね。


「あははー。そうなるとなおのこと大変ですね。敵がいればいいんですけど、バウシャイのように誰もいなければどうします?」


俺の声が聞こえていたようでヨフィアがいつものようににこやかに笑いながらやってくる。


「おい、結城君の所にいるんじゃなかったのか?」

「はい。そうですよ? 今日はご褒美で晃さんと一緒の部屋ですよ」

「お前は普通だな。結城君が耐えられるか見ものだな」

「大丈夫です。私の魅力にメロメロになる予定なんで」

「どっちでもいいが避妊はしとけよ」

「え?」

「不思議がるな。お前は戦力なんだからな」


妊娠なんてされれば戦場に出せなくなる。


「いや、普通に教え子である晃さんの恋人を戦場に出そうとするタナカ様に驚きですが」

「自重しろ。お前がそんなことになれば、どう考えても結城君だけじゃなく、大和君にルクセン君も足を止めるからな。帰る方法が滞る」

「あー、そうなるとタナカ様は……」

「目的が違うからな。俺は別行動するぞ」

「うん。それは私たちが死にそうですね。って、私の話はどうなりました? バウシャイのようにシャノウがゴーストタウン化してたら?」

「別にどうするもなにも、もう一度調査して次の場所を決めるだけだろう」

「普通にいいますか。そういうのはタフですねー。アキラさんたちはそこを心配していたんですけどね」

「ああ、そういうことか」


次の目的地もゴーストタウン化していたらって考えてしまっているのか、その心配もわからなくはないが……。


「気持ちはわからないでもないが、だからといって思考停止する理由にはならん。止まっても物資や時間はなくなる。次の行動に移すんだよ」


そうしなければ戦場では死ぬしかない。

自軍の拠点が吹き飛ばされてあてもなく逃げ惑うようなこともあったしな。


「ほんっとうに根っからの兵士ですねー」

「それを商売にして生きてきたからな」


とはいえ、ここに来る直前は普通に一般人として過ごしていたんだがな。

ああ、日本でのんびりとした? いや、平和な日々が懐かしい。

仕事に追われるのは勘弁だったが。


「で、タナカさん。今回の状況。どう思います?」

「今回の状況っていうのはどういう範囲だ?」


意味が広すぎて返答に困る。


「えーと、シュヴィール王国の状況ですかね?」

「今までの情報じゃ判断のしようがない。バウシャイの町は意味不明だ。とはいえ、聖女さんの言った可能性が高そうだな」

「一つの町丸々を魔術で眠らせたと?」

「ああ。まあ、魔術でなくてもできるが、話を聞けばそんな面倒をするよりも町を襲う方が確実だしな」


本当に魔術って何でもありだな。

本人たちは実現が難しいとは言ったが、それを警戒するのは間違ってないだろう。

あーあー、いやだね。使用できる特技が才能で変わるなんて兵装がわからないのと一緒だ。

こうなったら敵を見つけた先からぶっ殺す方が安心だな。

とはいえ、その敵も姿かたちも見えないのが不思議なんだよな。

まあ、拠点を放棄したっていう理由は多少思いつくが……まだ確定はできないしな。

と、そんなことを海を見ながら考えていると、不思議そうな声でヨフィアが質問をしてくる。


「あれ? 魔術でなくてもって、水では無理って言ってませんでした?」

「いや、水じゃない。そういえばノルマンディーに来た奴は空を飛んでいたからな。そっちの可能性があったと思ったわけだ」

「空から何かをしたと?」

「空気に混ぜる方がやりやすいしな。そして気が付きにくい」


空中から色々撒いたことは地球ではもうやってきたからな。

そして、現地に多大な被害をもたらしている。

とはいえ、その場合航空戦力があるってことだから、今以上に面倒になること請け合いだがな。


「でも、空を飛べるならなんでわざわざ町をって話になりません? ほかを襲撃した方がよっぽどよさそうですけど」

「そうだな。とはいえ、この大陸の状況は分かっていない。意外とバウシャイは重要拠点だったりするかもしれないしな」

「まさかー。重要拠点ならすっからかんもおかしいでしょう」

「だから、大陸の状況は分かっていないといっているだろう」

「あ、確かに。結局ここで話しても憶測ですね」

「だから、情報が得られそうなシャノウが無事なことを祈るんだな」


次こそは情報が収集できればよし。

無ければ次を探すしかないないだけ。


「さて、俺もそろそろ寝るから、お前も寝ておけ、明日になればシャノウでドンパチかもしれないからな」

「そうですね。今日は晃さんと一緒ですから英気を養っておくとしましょう」

「さっさと眠れよ」


俺はそう言って、たばこを携帯灰皿で処分をして甲板をあとにする。

あそこにいてもヨフィアがあれこれ聞いてきそうだしな。

あれはあれで結城君たちのことを心配してのことだろうな。

シャノウが火の海でも突き進むとかいえば、絶対反対するって感じだった。

下手をすると、俺が3人を離れるまえに、ヨフィアがあの3人を連れて逃げるかもな。

とはいえ、そんな状況になるようなことは俺も願い下げだ。

ヨフィアが逃げるという状況は俺が対処できないと思うような状況だ。

あいつは地球の知識はないとはいえ、生存にかけては死線を越えてきただけあって敏感だ。

だからこそそんな状況っていうのは俺が死ぬ手前ぐらいってことだ。


「そうなる前に俺も逃げるさ」


そう、好き好んで命を捨てるような真似はしない。

俺も死にたいわけじゃないからな。


「さて、眠ったあとはシャノウが偵察できる位置にはいるはずだ。いい加減ゲートを設置しないといけないし、どのみちシャノウの近くで拠点をこっそり置くか?」


死なないためにもいつでも離脱できる場所が必要だ。

幸いあいつからゲートを置くための道具はもらっている。

聖女さんも女王さんもお姫さんもそろそろ定期連絡が必要だろうし、設置して場を整えるか?

大陸内部に乗り込む分のコアをあいつから分捕るか。

補給線の維持は何より大事だしな。

と、明日の予定を考えつつ、ベッドによこになる。



「で、気が付けば朝か」


軍船というのは、窓は存在しない。

光を外に漏らすとか馬鹿でしかないからな。

あるのは時計だけ。

横になって目を閉じてあけたら朝7時。

寝た気がしないというやつか。

いや、それだけぐっすりだったって話だな。

夜中に飛び起きないだけましか。

そう思いつつ、部屋を出て朝ごはんの前にCICへと顔を出す。


「どうだ?」

「あー……。あ、田中さん」


そこには夜番だったルクセン君が死にそうな顔を声を出しながら振り返ってくる。

とはいえ、夜番は負担がないように精々3時間の交代制なんだがな。

どうせ、何か聖女やお姫さん、ノールタルあたりと話でもしていたんだろうから、自業自得というやつだ。


「で、シャノウは見つかったか?」

「あ、うん。思ったよりも早い段階で見つかってさ。夜明け前には見つけて偵察してたんだ。おかげで目を酷使して大変」

「なるほど。で、どうだ?」


ま、シャノウを見つけて俺をたたき起こさなかったのが答えだが、ちゃんと報告は聞いておく。


「良かったよ。シャノウの町は生きてる。どうやらゼランさんたちが逃げた方向とは逆の場所は手が及んでないみたいだね」

「そうか。ゼランはある意味運がなかったな」


俺がそういと、監視をしている椅子がくるっと回って、そこにはゼランがいた。


「悪かったね。でも、別の意味で運はよかったよ。タナカ殿たちと会えた。あのままシャノウに逃げていたら、打開策がないままだったからね」

「どうだろうな。意外ともう魔族の侵攻は止まっているかもしれないぞ」

「そんなことはありえないね。とりあえず、知り合いの商会もあるみたいだから、会議ではそこを伝手に行こうと思っている」


俺の忠告は一切無視ときたか。

ま、俺がモニターを見たかぎり、人々は町の中を歩き回っているし、活気もある。

バウシャイとは大違いだ。軍備の関連は残念ながら動きはないようだが。

警戒されているよりはましか。

おかげでゼランが安心して近づけると思うのも無理はない。


「そうか。木造船を引っ張ってきた甲斐はあったな」

「ああ、こういう時があると思って連れて来てもらった甲斐はあるね」


そう、実を言うとゼランたちがのってきた船はすべて一緒に引っ張ってきている。

こういう人が住む場所にはゼランたちの木造船で近寄ればいいだろうと考えていたからだ。


「……ということで、僕寝ていい?」

「交代要員は……きてるみたいだな」


俺が振り返った先には敬礼をしている船員がいる。

まあ、ゼランたちの所から徴収してこの船で使っているんだけどな。


「ゆっくり休むといい。会議はお昼だからな」

「……うん。お休みー」


そう言って、ルクセン君はCICから出ていく。


「で、ゼラン。木造船に乗る連中はどう考えている?」

「そっちも決めているさ。私の商船に乗っていた連中だけだ。町の連中はまだ駄目だ。タナカ殿が言うようにどうなるかはまだわからない」

「さっきは自信満々だったじゃないか。知り合いの商会を見かけたんだろう?」

「ああ。でも絶対じゃない。そんなところに町の連中をつれていけないよ。それに普通難民なんてのは受け入れられない。バウシャイの連中は庇護を求めるだろうが……」

「拒否された時反動が問題だな」

「ああ。受け入れられるかもしれないシャノウとの交渉もぶち壊してしまう可能性がある」


確かにな。

ちゃんと話し合えばうまくいことも、手順を踏まないせいでご破算になることもままある。

そういうところは商会をしていただけあってちゃんとしているな。


「じゃ、お手並み拝見といこう」

「ああ、全力は尽くすよ。持って行っていい物資に関しては一覧を作っておく」

「あとはその物資を出していいか、お姫さんたちが決めるか」

「交易を考えてくれていて助かったよ」


さて、シャノウでの交渉はどうなるのかね?



シャノウの無事を確認。

だけど、だからってすぐに受けるわけじゃない。

現実っていうのは厳しいのである。

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