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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


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第288射:原因調査

原因調査



Side:タダノリ・タナカ



コツコツ……。


ただ足音だけが響く町っていうのもなんだかな。

陽は上っているのに、どこかホラーゲームの様相だ。

ゴーストタウンといったが、まさにその通りだな。


「しっかし、本当に人がいませんね。私が走っても問題なかったですね」

「そうだな。だから遠慮せず先行していいぞ」


俺は先ほどからさっさと仕事を終わらせて帰りたいとほざくメイド。

だから優しい俺はさっさと仕事していいぞというのだが……。


「誰が弾除けになりますか!」


と、自分で拒否をしてくる。

はぁ、めんどくさい。


「せめて一緒に行ってくれませんか? それなら早く仕事が終わりますよ?」

「ヨフィアの意見もわかるが、歩きたい気分なんだよ」

「何ですか、歩きたい気分って?」

「焦ってつっこむと見落とすんだよ。というか、拒否するってことは警戒しているってことだろうが」

「むぐっ。確かにそうですが……」

「なら、文句言わず行くぞ」


そんなことを話しているうちに教会へとたどり着く。


「大和君。上空からの状態はどうだ?」


踏み込む前に上からの情報を得ておこう。


『こちらの方からは教会はもちろん、町中、町の周りにも何も反応はありませんわ』

「そうか。引き続き監視を頼む」

『はい。こちらはお任せください』


さて、俺とヨフィアは目的地である教会の探索と行きましょうか。

とりあえず、銃の確認をしてと。


「こっちの問題はないな。ヨフィア、武器の用意はいいか?」

「ええ。問題ありませんよ」


俺が確認を取る前にヨフィアはナイフ既に出していた。

こういう所はまともなんだがな。

結城君が絡むとポンコツになる。

色欲にまみれているとだめだなって典型的な例だ。

結婚したら前線から退かないと死ぬタイプだな。

いや、結婚してなお傭兵稼業やっている方が一般的にはおかしいか。

そんなことを考えつつ、俺たちはまず礼拝堂の方へと入っていく。

開け放たれてる扉がこちらを引き込むような感じを与えて、気乗りはしないが、ドローンでの偵察で安全は確認しているのでまずはここからだ。


「……なるほど。何かしらあわただしいことがあったのは分かるな」

「ええ。礼拝堂の長椅子が乱れていますから、ここに人が集まったのは間違いないですね」


ヨフィアの言う通り、礼拝堂の中に置いてある長椅子は綺麗に並べられてはおらず、誰かが押したりして結構ずれている。

普通教会がこんな状態を見過ごすわけもないから、長椅子を元に戻すことよりも優先することがあったというわけだ。


「とはいえ、血とかはないですね」

「そうだな。血の匂いは一切しない」


そうこんな事態となると、連想できるのは魔族が攻めてきたってことだが、その割には血の匂いはしていない。

てっきり徹底抗戦をしている人たちの野戦病院にでもなっていて、血まみれの教会内部をってイメージだったんだが、そういうのは一切ないのが逆に不思議だな。

俺はそう思いつつ、礼拝堂への奥へと進んでいく。


コツコツ……。


町中よりも響く自分の足音。

まあ、教会が音の響きやすい構造になっているからな。

そして、祭壇の前までやってくる。

こうの場所は司祭とかがいる場所であり、誰かが狙うなら絶好のポイントでもある。

俺は周囲を警戒しながら、その場に立つ。

教会の礼拝堂がよく見渡せる位置だ。

ヨフィアも周囲に注意を払っているが、特にないかが動く気配もない。


「何もありませんね」

「ああ。まあ、人の気配がないっていうのは間違いがなかったわけだ」

「そうですね」


誰か俺やヨフィアの気配察知に引っ掛からないように隠れていてもおかしくはないと思っていたが、ここまで気配がないのも不思議だ。

確かに、敵に連れ去られたとは思ったが、ここまで綺麗さっぱりいなくなるものか?

町に残らざるを得ない人たちもいるだろう。

俺たちが戦ってきた戦場でもそうだった。

どんなに街並みがボロボロになっても、その町から逃げ出さず生きている人たちがいた。

地球でもそんな状態だったんだ。

こっちの人が全員町を捨てて出ていくというのは考えにくい。

何せ、外には人を簡単に殺せる魔物というや異性動物が闊歩している。

そんな中、外へ出ていくか?

いや、一部というか町のリーダーの元、意見がまとまって脱出したというのはありえるが、それでも町に残るという人はいるはずだ。

何せ、全員が健康でケガもないというのはあり得ない。

それなりに大きい町だ。足腰の悪い老人もいれば、魔物と交戦してケガをして動けないモノもいるだろう。

そういう人たちは町に残るはずだが……。

それも含めて気配がしない。


「不気味だな」

「ええ。どこかにケガ人とかは隠れているかと思いましたが、そういう人たちも含めていなくなるっていうのはなかなか不思議な状況ですね。抵抗した様子もないですし」

「意外とリーダーシップのあるやつが残って町の人たちすべてを移送したってのもあるか?」

「あはは! そんな奇特な人がいるとは思えません。どんなに好かれても反発する人って出てくるんですから」

「ま、そうなんだが、そこで笑うってヨフィア性格ひねくれてるな」

「事実を言っているだけですー。というか、タナカさんほどひねくれてないと思いますけどねー。で、タナカさん。奥行ってみます?」


そんな軽口をたたきつつもヨフィアは次の行動をどうするかを聞いてくる。

確かにこれ以上ここで何かが見つかる気はしない。

……とりあえず、状況の確認だな。


「結城君。聞こえるか?」

『はい。聞こえます。何か見つかりましたか?』

「いえー。それが全然。何か荒れた感じはあるものの血の気配すらないんですよー」

『じゃ、本当に町の人たちはどこかにいっちゃったってこと?』

「その可能性は高いが、まだ教会を全部探索し終えたわけじゃないからな。それをするためにも、一度周りの様子を知りたい。まあ、報告がないところを見ると、敵らしきものはないって所か?」

『はい。今の所周囲に反応はありません。レーダーにもドローンの映像にも人影は映っていません。かろうじて野生の、シカのような群れは確認しました』

「へぇ。動物はいたか」

「ほほう。動物たちの群れはどちらへ?」

『あ、今もいるよ。草原の中でのんびり草食べてる』

『え? それって別のグループじゃないか?』

『晃さんの言う通りですね。先ほど見たシカのグループは別のモニターですよ』

「よくわかった。ありがとう。安全そうだから、俺たちはこのまま教会内部の調査に移る。こちらから声をかける以外は反応しないと思ってくれ。室内は意外と音が響くからな」

『了解です。気を付けて』


俺は確認を追えて教会の内部へと体を向ける。


「さて、これで本当に罠の可能性はなくなってきてな」

「ですねー。動物がのんびりと草原でお食事しているんですから、ものすごく平和ですよここら辺」

「だよな。普通人がいるような地域に動物は近寄らない。ましてやどこかに軍勢が隠れているならなおのことだ」


動物は人よりはるかに敏感だ。

この町をゴーストタウン化した敵軍がいるならそれを察知してさっさと逃げているだろう。

となると、この町に人や罠がある可能性が下がったということになる。

本当にどこに行ったんだか。


「まあ、ともかく教会の中を調べましょう。ここで何かがあったのは確かなことですし」


ヨフィアはそう言って乱れた長椅子に視線を向ける。

確かにそうだ。

ここで何かがあって教会がここまで乱れている。

だから中には何かあると信じたい。


「そうだな。とはいえ、油断はするなよ」

「わかってますって」


ということで、俺はハンドガン。ヨフィアはナイフを構えてドアを開けて教会内部へと入っていく。


……。


何も音がない世界というとこんな感じなんだろう。

クリアリングをして中に入ると無音に支配された空間が存在していた。


「……本当にホラー映画の一幕だな」

「ホラー映画? なんですかそれ?」

「ここが終わったら、タブレットで見てみろ」


このヨフィアがホラーものを怖がるとは思えないけどな。

それよりも……。


「ヨフィア、一応お前にも銃の扱いは許可してたよな? なんでナイフだ?」

「え? 確かに銃は便利ですけど、こういう狭い空間だと取り回しできないでしょう? ですから、ナイフです」

「そうだな。慣れた武器の方がいいに決まっているな」


室内では照準を合わせるよりも、手に持っているナイフを投げる方が早いというのもあるからな。

こいつやっぱり兵士だろ。


「とはいえ、本当に誰もいないな」

「隠れているにしても、人が歩いた気配すらないですねー」


ここにも埃が溜まっていて誰かが隠れて行動している様子はない。

とりあえず、警戒しながら一部屋ずつ確認していくが特になにもない。


最後は処置室。

つまり、死体安置場所だ。

ゾンビとかもいるこの世界だ。危険なので後回しにしていたが、ここまで何も情報がないとここも調べないといけない。

とはいえ、こんなところで何か見つかるぐらいならとっくの昔に何か見つかっているわけで……。


「なーんにもないですね。死体が転がっているだけです」

「死後どれぐらいだっと……。ああ、腐敗してるな」


見事なぐらいに腐敗している。

姿かたちが残っているのを喜べばいいのか嘆けばいいのか。

さっさと埋められていればこんなことにはならんかっただろう。



「はぁ、完全な無駄足だったが。何もなかったことが分かったのはいいことか」

「ですねー」


俺とヨフィアは教会をあとにして船に戻るため再び町の中を歩いている。

先ほどと同じルートを戻っているが、先ほどと違う様子もない。

あるのは埃の中にある俺たちの足跡だけだ。


『結局何も見つからなかったんだ』

「ああ。ま、これがわかっただけでもいいことだな。安全は確認できたんだ。ゼランたちを連れてきて物資でも集めてもらおう。あと、本人たちにしかわからないこともあるだろしな」


こうなると、もうここに住んでいた人々に話を聞くしかないだろう。

全く、文字通りゴーストタウンだよな。


「でも、何があって町の人全員、老人も子供もけが人も、スラムの人たちも消えたんでしょうね?」

「それがわかれば苦労はしないな。まあ、あるとすれば町全体を気絶でもさせて……」


ん? ちょっとまて、気絶?

そうか、薬か。


「ゼラン。ここの水源はどこになる?」

『水源? 確か、北門の方にある川からだけど。どうかしたか?』

「町の人がいなくなったことに心当たりがある」


しかし、この予想が当たるとなると、敵はそういう絡め手も使えるってことになるが……。

面倒極まりないな。



教会では何もみつかりませんでしたが、逆にそれがヒントになりました。

薬。

そう、薬です。

まあ規模がでかすぎるのでどんな方法かはまだわかっていませんが、敵は何のためにこんなことをしたのでしょうか?


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― 新着の感想 ―
[一言] 材料かな? 後は敵には何らかの輸送手段があることが判ったかな? 街一つ分の人間を輸送するならそれなりの手段がいるだろうし その痕跡がないってことは......空路か海路?
[良い点] いやまぁ、帰ったら結婚するんだ、とか。 家には嫁と子供が待ってるから死ねない、とか。 レベルの高い死亡フラグじゃないかな。
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