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レベル1の今は一般人さん  作者: 雪だるま


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第276射:訓練始めます

訓練始めます



Side:タダノリ・タナカ



「別にいいぞ。こっちにとって悪い話じゃない」


俺は素直にそう答える。

この意見は連合のメンバーも何もないようで、素直にうなずいている。


まあ、そりゃそうだよな。

別の大陸から来た連中がこちらに根を下ろすと管理の方で問題が山済みだ。

住まいとか物資とか、周りの根回しとか。

しかし、帰るとなれば物資を渡すだけで後はお任せだ。

うまくいけば見返りも期待ができる。厄介払いもできて一石二鳥だ。

こっちで助け分の対価をもらうべきだという連中もいるだろうが、魔族に襲われて逃げてきた連中がここにとどまるリスクの方がはるかにでかいということを理解できてない馬鹿だ。


「問題は、訓練と物資の方だが……」


俺が用意してやれないこともないが、それは最終手段だ。

あくまでもこれは国家支援という形の方がいいだろう。

色々な意味でも。

個人が助けたじゃ知りませんといわれればおしまいだしな。

国ならば無視はできないし、今回の件でつながりができることの方が価値がある。

まあ、全滅しなければってのがあるからリスクの高い賭けにはなるから、判断はそこの連合軍の大将や魔王……じゃなくてラスト王国の女王、そしてルーメルのお姫さんになるのだが、さあどうする?


「それなら連合軍の方で準備いたしましょう。どちらにしろ、今運んでくるようにと頼んでいる分がありますから」

「武器の方はどの程度が戦いに参加するかになります。600人全員が兵士になれるとは思えませんし、しっかりとした数を把握してからの方がいいでしょう」

「確かに、ユーリア姫の言う通りだな。そこはちゃんと訊いておく」

「それが良いでしょう。あとは訓練ですが、個人技量を上げるのか集団戦闘を上げるかで変わってきますな」


流石はマノジルの爺さんいい質問だ。

どういう戦い方をするかで訓練方法は変わってくる。

とはいえ、ちょっと前が抜けていることに気が付かない。


「正直な話、魔族を倒せる方法ならどれでもいい。というか、簡単に訓練したところであの力差が埋まるとは思えないんだよな。自分で言ってはなんだが。どうしたらいいとおもう?」


ゼランの言葉にずっこけるユーリア姫さんと聖女エルジュ。

まあ、確かに今更何を言ってるんだって感じだが、本人の言っていることもわかる。

倒せる気がしない敵をどうやれば倒せるのか。

とはいえ、情報が少ない。

なら、やることは一つだ。


「なら、どっちもやればいい」

「どっちも?」

「どっちが有効かわからないならどっちも鍛えるしかないだろう。それに全員が個人での戦いが優れているわけでもないし、集団戦が得意なわけでもない。どっちもわからないんだ。まずはやらせてみるしかないだろう」

「確かにそうだな」


そう、わからないならやらせてみるしかない。

話を聞く限りゼランたちがいう魔族っていう怪物は正規兵でも簡単にぶっ殺しているらしいから、ここの連中が短期間で訓練したところでどうにかなるとは思えん。

ならば、せめて得意なことを頑張る方がいいだろう。

どうせ屍になるんだ。好きなことをやらせるといい。

と、そういう冗談はいいとして……。


「今はその魔族を倒すというより、戦闘方法を覚えさせるのが先だ。元々戦ったこともない連中に戦闘訓練もクソもない」

「それもそうか」


そう、今は立派な戦闘訓練よりも基礎訓練が先ということだ。

積み重ねがないところで戦場に送り込んでも死ぬだけ。

ちゃんと足元を固めるのが先だ。


「しばらくは基礎だな。それなら俺が指導してもいい」

「「「え!?」」」


おい、なんでそこで結城君たちも含めて全員が驚くんだ。

最初から訓練することには賛成だっただろう。


「あ、えーと。田中さん直々に訓練するというとは思わなくてさ」

「はい。田中さんでしたらこの時間を使って色々情報を集めるために動くかと」

「そうそう。俺たちに一緒に基礎訓練させて、ついでにって感じでさ」

「ですねー。タナカさんならこういう訓練は指示だけだしてほかのことをすると思ってましたよー」


最後のヨフィアの言葉に全員うんうんと頷くのが腹立たしいが否定もできない。

普通ならそうするだろうな。

でも、今回はそうもいかない。


「敵がこっちに来ても困るしな。送り出した連中が全員死にましたじゃ、見返りが期待できない。俺たちがそっちの大陸に行く可能性もあるからな。安全に旅をしたい。そのための露払いってやつだ」

「「「あー」」」


今度は全員納得の顔。


「確かに、この縁をただ一度きりで終わらせるのはもったいないですね」

「はい。別の大陸の人たちと出会えたことはとっても幸せなことです。まあ原因は不幸なことですが、その不幸が取り除かれるように頑張るというのは間違っていないかと思います」


ユーリア姫、聖女エルジュも俺の考えには賛成のようだ。

国益を考えれば当然だよな。


「ま、ついでにヨーヒスが知っている人魚の知り合いから魔術のことを聞けるかもしれないからな。ヨーヒス繋ぎを頼んでいいか?」

「ああ、そのぐらいなら構わない。元からこのノルマンディーには人魚がたまにやってくるからな。ここで話すぐらいはやってくれるだろう」

「おお!! 人魚がやってくるんだ!」


ルクセン君はヨーヒスの返答に興奮している。

まあ、俺も人魚となると興味がある。魔術の有無じゃなくてその存在に。

前も考えたことがあったが、地球の伝承の怪物とかはこっちの世界から来たんじゃないかと再び考えてしまう。


「というわけだ。こっちも打算ばかりだから安心して助力してもらってくれ」

「ああ、そうさせてもらうよ」


ということで、俺たちはゼランたちの帰還を支援することになったわけだが、すぐにどうにかなるわけじゃない。

まずは、連れていく戦闘員と非戦闘員の振り分けだ。

確かに帰りたいというのは分かるが、戦えない奴まで一緒についていっても邪魔にしかならん。

そして、死んだりしたら士気にかかわる。

なので、まずは戦える人と戦えない人の振り分けの基準を決めることにする。

そこまで難しいことじゃない。


「基本的に女子供はだめってことか。それなら私も同じな気がするけどね」

「ゼランは別だろう。この船団のトップだ。それがいないと纏まらない。まあ、ある程度体力があればいいとは思うが、ただ世話されるだけの乗客を乗せている余裕はないぞ」

「確かにね。そうなると乗せられる女性っていうと……。食事や洗濯をしてくれる人材ってことか」

「ああ、戦闘ができなくてついていこうとするなら、そっちの仕事ができるのが条件だな」


ただ飯ぐらいを乗せて戦場にっていうのはなかなか聞かない。というか、ありえない。

あー、避難民救助直後に襲われるっていうのはあるか。

とはいえ、わざわざ避難民を連れて行って戦闘をするとか、どこかのアニメぐらいのものだ。

避難民の命どころか、自分たちの命までも失いかねないからな。

お荷物は置いていくのが正しい判断だ。


「田中さん。その言い方ですと、戦えるのであれば女性でも連れていくと聞こえるのですが?」

「その通りだ。大和君。こういう時は使える戦力はやる気があるなら連れていくべきだからな」


女兵士なんて別に現代の地球でも普通にいるからな。

要求基準を満たせば連れて行っていいだろう。

何より、こっちの世界はレベルがあるんだし、女将軍なんてのも普通にいるからな。

今更女だから戦うなとは言わない。


「まあ、女性は戦いを嫌う方が多いからな。男連中も同じだ、戦いたくないってやつを無理に連れ出しても話にならん。無駄に死ぬだけならともかく足を引っ張りかねん」


軍に必要なのは規律。

それを守れないようなクソを中に入れるのは軍の崩壊を招く。

弱い奴より、命令を聞けない奴の方がいらない。とはいえ、弱い奴は死んでいくから基本的に除外だな。


「そこを踏まえてゼランは避難民たちに話してくるといい。ああ、けが人、病人たちの参加ももちろんダメだぞ。足手まといを連れていく理由はない」

「わかっているよ」



ゼランとはそこで別れて俺は兵士を教育する準備に取り掛かる。

とはいえ、そこまで難しいことじゃない。ルート確認するために町を歩いているだけだからな。


「田中さん。なんで町を歩いているんですか? 訓練の準備するって言ってましたよね?」

「ああ。言ったよ。そのための町のルート選択だ」

「ルート選択? どういうこと?」

「この町には大きな練兵場はないからな。精々剣などの武器を振るってというぐらいの広さだ。体力づくりには向かない」

「体力……ああ、なるほど。走らせるのですね」

「あたりだ。大和君。体力をつけて精神を鍛えるのには一番だからな」


ランニング。

基礎にして戦いにおいて一番大事なものを育てる訓練だ。


「ああ……。あれをやるのですね」

「どうしたのですか? ユーリア様?」

「はは。お気になさらずにエルジュ様。タナカ殿の訓練は少々特殊でしてな」

「別に特殊でも何でもない。基礎だ基礎」

「はぁ。基礎ですか」


お姫さんとマノジル爺さんのおかげで俺が変人にみられている。

まあ、聖女にどう思われてもいいか……。

いや、待て邪魔をされると問題だ。


「聖女さん。俺はまずひたすら今のルートを走らせて体力の増強させるつもりだ。虐待ではないのは理解してほしい」

「なるほど。走らせて体力を鍛えるですね。はい。ちぃ姉様もよくやってるみたいです。苦しい中走り抜くというのが精神も鍛えられるんですよね」


おお、意外とこの聖女さんは理解してくれている。

というか、あの女王が実践しているのか、やっぱりウィードという国は絶対に警戒するべきだな。

アレがいてそこまでやってるなら、油断をすれば簡単に首を狩られるな。

というか、こっちの状況を向こうに伝えてみるか?

今回のことで何か支援をもらえる可能性もあるしな。


こうして、俺たちはゼランたち義勇軍を鍛えることになったのだった。

しかし、ランニングで根を上げるやつが多くて苦戦することになる。

この程度でどうやって故郷を奪還するつもりなんだろうな。



すいません。投稿するの忘れていました。

慌てて書いて投稿しております。

何とか間に合った。


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